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魅惑の渓谷鉄道へ 第1回

高千穂鉄道とは?

(02年11月の旅)

高千穂駅

高千穂から天岩戸へ

 そもそも高千穂鉄道は、国鉄高千穂線として延岡から工事が始まった。日之影温泉から高千穂までは建設されてまだ30年しか経っていない。鉄路はさらに延び、熊本県の高森で結ばれ、九州を横断する動脈の一本になる予定だったが、難工事のうえ国鉄再建によって工事が中断されているうちにJRに民営化されてしまい、九州横断の夢はついえた。さらに、赤字線だった高千穂線は廃線の対象になったものの、地元の熱意で第三セクター鉄道として再スタートを切り、廃線の危機から逃れた。

 その高千穂駅は、こじんまりとした山間の町の小駅である。いかにもこの小さな鉄道の終着駅にふさわしい。一両編成の小さなローカル線を想像していた私の目の前に、たかちほ号と呼ばれる車両が止まっていたから驚いた。半信半疑で乗り込むと、先ほど一緒の定期観光バスだったおっさんが「後ろは貸切だよ」と教えてくれた。3両編成のこの車両の先頭車のみが一般客用で、後ろ2両は団体が乗っていたようだ。

 思いがけずにたかちほ号の指定席に座れたのであるが、それもつかの間。3駅先の影待で降りなければならない。とはいうものの、悪い気分ではない。列車はゆるゆると動き出し、次の駅「天岩戸」へと向かう。乗車の記念にと、「高千穂→天岩戸」の最短区間切符を買っておいた。逆の方がより神話っぽいが、天岩戸駅が無人駅なのでやむを得ないといったところだ。

高千穂鉄橋より

 天岩戸駅を出発すると、すぐに高千穂鉄橋にさしかかる。ここで列車は止まるくらいの速度で徐行を始め、車内アナウンスが入る。高千穂鉄道は、観光客をかなり意識しているようで、こうした観光名所にさしかかると時折徐行運転をし、アナウンスを入れてくれる。地元の人には迷惑かもしれないが、まあ鉄道の生き残りのためにはいいアイデアではないかと思う。

 さきほど、この高千穂鉄橋の向かいにある雲海橋から鉄橋を眺めたが、鉄橋からの景観もなかなかのものである。岩戸川の流れははるか下に見える。ただ、この鉄橋を渡った人がよく言うように「足がすくむ」という感じまでにはならなかった。よくよく考えてみると、往路に使った国道バイパスのいくつかの橋の方が、下を見下ろすという点では迫力があった。同じ鉄道で言うなら、真下に民家が点在する餘部鉄橋やトロッコ車両で窓から顔を出して見れる大井川鉄道の関の沢鉄橋の方が怖かった。

 トンネルを抜けると、深角駅に到着する。ここも秘境駅のひとつである。やはり周囲には人家はおろか、人家に通じるような道路も見当たらない。次の影待で下車した後、状況によっては折り返しこの駅まで戻ってくることにしよう。

(つづく)
さあ、いよいよ影待駅へ