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田園、山、海そして終着駅へ 第1回

留萌本線とは?(留萌本線の紹介はこちら)

(12年6月の旅)

まずは田園風景を眺めながら

 留萌本線のディーゼルカーに乗り込む。2両編成にはなっているが、後ろの1両は留萌での折り返し用の回送車両とするようで、事実上の単行運転となる。それも留萌で列車番号は別々となるのだが、事実上増毛行きという運用である。今時珍しいというか、北海道なればこそできる冷房の入っていない車両で、窓はすべて開いており、天井には扇風機が回っている。これだけ暑いのは一年でもほとんどないようで、気温だけを考えると塩梅のよくない時にあたってしまったと苦笑いせざるを得ない。留萌までは向かって左側の座席がよいとの事前情報をもとにしっかりと座席確保し、出発を待つ。ローカル線らしく、乗客はあまりいない。その代わりに、私と同じような旅行客や鉄っちゃんらしき個人客の姿はみられる。それもボツボツといったところだ。

難読駅名である北一已(きたいちゃん)
 

 列車はゆっくりと深川駅を出発する。複線の堂々とした函館本線と分かれ、非電化の単線を淡々と走る。留萌本線は、本線の冠はついているがそれとは名ばかりの典型的な地方ローカル線である。だからこそ、ローカル色たっぷりな雰囲気で列車旅が楽しめる。これから書いていくが、この留萌本線は広々とした田園風景、里山や原生林など山の風景、そして日本海沿いの海の風景と3つの車窓が堪能できることに特徴がある。まずは、石狩川沿いにできた広大肥沃な土地に恵まれた盆地を進む。田園風景を走るローカル線といえば、最近廃止されたばかりのくりはら田園鉄道があったが、雰囲気はそれに近い。やがて最初の駅の北一已(きたいちやん)に着く。田園のなかに古いバラックのような駅舎があり、雰囲気が出ている。駅名の漢字を見てすんなりと読める人は地元住民以外にはほとんどいない難読駅名である。

 次は秩父別駅。こちらもなかなか堂々たる木造の駅舎がそびえたっている。深川から乗車した客の半分ほどがこの駅で下車したので、ターミナル駅のひとつになっているようだ。読み名の「ちっぷべつ」もなかなか読める人はいないであろう。このあたり、田園風景とところどころに民家が点在するというごく平凡な風景が延々と続く。そのはるか向こうには山が見えるが、稜線はなだらかでいかにも北海道らしさがある。しかし、最も高いと思われる山の頂上付近にはいまだに雪が残っているのには驚いた。北海道ということだけでなく、とりわけ積雪の量が多い地域ならではの光景だろう。

 窓が全開状態のため、車内の案内放送はまったく聞こえない。実はこの秩父別の次の北秩父別駅は通過したのであるが、その事前確認ができなかったため、何気なく車窓を眺めていて急に駅名板が通り過ぎていったのに驚いた。北秩父別は田んぼの真ん中にあるような小さな駅で、かつての仮乗降場。留萌本線は各駅停車しか運転していないが、このように通過してしまう駅も存在する。

 北秩父別を通過した次の駅は石狩沼田。ここもターミナル駅のひとつで、かつては札沼線の終点として札幌までレールがつながっていた。しかし、石狩沼田―新十津川が廃線となってしまったため、札沼線は新十津川という何とも中途半端な終着駅を持つ路線になった。札沼線もかつて乗ったことがあるが、こちらはほとんど田園のど真ん中を走るローカル線で、終端部は一日3往復しか走っていない超閑散路線である。それはさておき、石狩沼田からの乗降客は1人もなく、列車は次へと向かう。これまた田園の真ん中にある小さな駅の真布である。こちらは物置にしか見えないような待合室と木製のホームだけという簡素な駅で、やはり仮乗降場だったところであろう。

(つづく)
続いては原生林の山の中へ