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「岩泉線」乗車体験記 第1回

岩泉線とは?(岩泉線の紹介はこちら)

(01年9月の旅)

茂市駅停車中の岩泉線

ローカル線ノスタルジー

 翌朝、午前5時過ぎに起きた。外は昨日とは打って変わってすばらしい青空が広がっている。さわやかな気分で目覚めたのであるが、ちょうどこの日の未明に痛ましい歌舞伎町ビル火災が発生しており、そのニュースを見ながら旅支度を整える。未曾有の大惨事だけにニュースをもう少し見たかったのであるが、列車の時間が決まっているのでホテルをチェックアウトする。

 ホテルを出発したのは午前6時。なぜこんなに朝早くに出なければならなかったかというと、これから岩泉線に乗車するためである。岩泉線は3往復しか走っていないが、その1往復が朝の時間帯なのである。それを逃せば、昼過ぎまで列車はない。同じことを枕崎線でも経験しているが、これはすべて通学時間帯に合わせた時刻設定なのであるから仕方がない。

 宮古駅のキオスクが朝早くから開いていたため、ここでパンを購入し朝食とする。待合室でしばらく待っていると、乗車案内があり、改札口が開いた。まずは山田線に乗って岩泉線の起点である茂市へと向かう。改札の様子を見て「案外、乗客がいるんだな」と思ったのもつかの間、ほとんどの乗客は釜石方面へ向かう列車に乗り込んだ。私が乗る盛岡方面の列車は盛岡まで行かず、途中の川内駅で折り返し運転をする。これもおそらく、折り返し後は宮古に通う学生たちが乗り込むものと思われる。

 乗客がいない・・・。正確に言うと、私を含めて3人の乗客が乗り込んだのだが、一見してわかるように3人とも旅人、さらに言うならマニアである。これがローカル線の現状といったところであろうか。まあ、折り返しまでは回送列車のようなものなので、乗客がいないのは承知の上で運転しているのであろう。発車ぎりぎりになって、ようやく地元の男子高校生が乗り込み、4人を乗せたディーゼルカーが出発する。

 私がもっとも旅の気分を味わうのは、こうしたローカル線に乗るときである。そのポイントは、ディーゼルカーであることと、ボックスシートであることだ。非電化のディーゼルカーには、なんとなくノスタルジーを感じる。その昔、少年時代にディーゼルカーに乗りたくてしょうがなかったという思い出があるせいだろうか。

 山田線のディーゼルカーは、手でドアを開けるタイプである。もちろん、私にとって初乗車となるタイプだ。シートも窓も一昔前の感じ。ますますノスタルジックになってしまう。そういう思いと、このあと乗車する岩泉線への期待に胸をふくらませながら、車窓を眺める。宮古を出て、5分もしないうちに集落は途切れ、やがて川沿いの美しい風景が広がっていく。

 列車は茂市駅に到着した。ここで岩泉線に乗り換える。ふと隣のホームを見ると、高校生を乗せた車両が停車していた。「岩泉線って、茂市からこんなに乗客がいるのか」とドキッとしたが、この列車は宮古へ向かう山田線だった。岩泉線のほうは、ホームの階段を渡った違うホームに停車していたのである。予想通り、くだんの2人のマニアも私同様に岩泉線の車両を目指す。そしてもう一人、途中駅の千徳から乗ったおばさんも乗り換える。岩泉線の車両内にも地元男性が一人乗車していた。

(つづく)
いよいよ発車します