(アテネ考古学博物館の案内板の翻訳)

 ここに展示する四枚の墓石石版は、1876年竪穴円形墓Aを覆っていた表土のなかで他の墓石碑の破片とともに発見された。発掘者であるハインリッヒ・シュリーマンによれば、墓の上に置かれていたものもあるし、円形墓の内部や周囲に散らばっていたものもある。シュリーマンを継いだ発掘者達はもっと多くの破片を掘り出して、石版の総数は17にもなった。これらの石版は柔らかい石で造られ、それらの大部分は幾何学紋様や二輪戦車の場面が浮彫で彫られている。

 紀元前13世紀、ミケーネの砦にライオン門と西側の要塞壁を建設して拡張したのにひきつづき、墓の上の土地水準を高めて埋葬を隠蔽した。墓群は彼らの祖先への崇敬の念から城壁のなかに組込み、石版は高いレベルへと持ち上げて、直径27.5mの壁囲いで囲んだ、この壁は現在も見ることができる。古代に石碑をそのもともとの位置から移動したので、どの石版がどの墓のものなのか確認することができなくなった。しかし、装飾のない石版は女性の埋葬を示し、二輪馬車の場面で装飾された石版は男性の墓をしめしているのだと、提案されている。

 三つの最良の石版が保存されていたのはX号墓である。それらはすべて馬に曳かれた二輪馬車を表現している。それはミケーネ芸術では人気のある対象であって、壁絵、印鑑、絵柄の花瓶、認印指輪にも使われている。これらの描写は戦いあるいは狩猟の場面だと解釈され、その目的は、亡くなった英雄の功績をたたえることにあった。しかし、それとは別に、亡くなった人物をたたえるために催された二輪馬車競争をも思い出させる。それはホメロスの『イリアッド』(23章)に描かれているように、アキレスが二輪馬車競技をパトクロスの葬儀のために行った故事があるからだ。

6. リュトン(儀式用壺)

(説明板の翻訳)

材質はポロス島(Poros Island)石材、明瞭な浮彫彫刻。表面は垂直に三場面に分割されていて、両端には蛇文様。

ミケーネ出土、円形墓地A、墓U、紀元前16世紀。

(説明板の翻訳)

 上段に描かれる渦巻きは「波」を表現していて、下段の場面が海岸であることを示しているのかもしれない。二輪馬車の馭者は手綱を引いている。二人目の人物は馬車の前にいて、左手に武器(多分、剣)をもっている。
 ミケーネ出土、円形墓地A、墓X、紀元前
16世紀。

(説明板の翻訳)

 材質はポロス島(Poros Island)石材、上段は、二匹の馬によって曳かれた二輪馬車で馭者が立っている。下段は、鹿を追いかけるライオン。
 ミケーネ出土、円形墓地A、墓X、紀元前16世紀。

1. 葬式用石碑

アテネ考古学博物館ミケーネ関係展示品

なお、その他のミケーネ関係資料については次を参照してください。

(→ミケーネ関係その他の資料


以上。

画像

Websiteの説明文の翻訳

11670

「ミケーネの淑女」、ミケーネのアクロポリスから出土

 女神の真剣で考えこんでいる表情は、彼女がネックレスの贈り物を受け取った瞬間の厳粛さを表している。彼女はそのネックレスを右手でしっかり掴んでいる。彼女は透き通るブラウスの上に短袖の胴着を着用しているが、それは彼女のふくよかな胸の線を際立たせている。彼女の複雑なヘア・スタイルと豊富な宝石類(ネックレスとブレスレット)が素晴らしい。

(説明板の翻訳)

金の厚板で作られたライオンの頭部形のリュトン。
 ミケーネ出土、円形墓地A、竪穴墓W、紀元前16世紀。

(説明板の翻訳)

銀、金ならびに青銅製リュトン、雄牛の頭の形。
 ミケーネ出土、円形墓地A、竪穴墓W、紀元前1550-1500年。

7. リュトン(儀式用壺)

(説明板の翻訳)

印象的な金製王冠。頂きに押付け加工された円装飾で飾られた葉状の部品がある。

ミケーネ出土、円形墓地A、墓V(女性の墓)、紀元前16世紀。

(説明板の翻訳)

象眼装飾のある青銅製短剣。刃の上に描かれているのは、ナイル川の風景で、ネコ科の動物がパピルスの花の間で水鳥を追いかけている。

(説明板の翻訳)

象眼文様のある短剣、刃上に百合の花が描かれている。金、銀、青銅合金を使用して作った青銅製の刃の上に、薄い金と銀の装飾用シートを貼り付けてある。柄と肩の部分に百合の叩き出し文様のある金製の鍔をもつ。(764)

(説明板の翻訳)

金のネックレス。十個の金箔からなり、それぞれが力の象徴である一対の対称形の鷲のような姿をしている。

ミケーネ出土、円形墓地A、墓X、紀元前16世紀。

画像
(説明板の翻訳)

アガメムノンのマスクとして知られている金のデスマスク。このマスクは、あごひげのある男の顔への押付けを描いている。金板に叩き出し加工を行ってある。耳の付け根に穴が二つあるのは、このマスクを死者の顔に麻ひもで取り付けたことを示す。
 ミケーネ出土、円形墓地A、墓X、紀元前16世紀。

(説明板の翻訳)

 上段と下段は渦巻き文様である。中段はギャロップで走る馬に曳かれる二輪馬車とその上に立つ馭者。馬の前には二人目の男の姿があり、馭者を高く掲げた右腕にもつ槍で攻撃しているように見える。
 ミケーネ出土、円形墓地A、墓X、紀元前16世紀。

8. 壁画「ミケーネの淑女」

5. 王冠

4. 象眼装飾のある青銅製短剣

3. 金製のネックレス

2. アガメムノンのマスク