ゼリーは保冷状態にして保冷剤でくるみ、4時間以内に冷蔵庫に移し、遅くとも四日以内に食せ、という命令を受けるのです。新幹線で東京まで1時間半、車で金沢まで帰るのに4時間ですから、ぎりぎりの離れ業なのですが、彼女たちはリスクを恐れません。大層勇気ある行動ですね。男には真似がしにくいことかなあ。
でも、女性のお供というのはいろいろ気を遣いますね。ひたすら「忍」の一字なのかな。
では皆様ご機嫌よう。
女性のお供をすると、最後もやはり食べ物で、結局上田駅前にあるみすず飴本舗で30分間も付き合わされました。
みすず飴とゼリーとジャムを買い込むのです。あんなに買い込んでどう処理するつもりなのでしょう。
「明日拝観したいのですが、何時から開いていますか」と尋ねたら、「あの仏像は平成7年に盗難に遇って返ってきたばかりなので、拝観は予約制です」ということなので、早速ご主人にお願いして予約をとっていただいた。夜の9時に電話をして翌朝11時の予約をとっていただいたのです。
その柏屋別荘臨泉楼でロビーのパンフ
レットの類を見ていたら、一体だけとて
も美しい仏像の写真がありました。飛鳥
時代の法隆寺御物仏像に似た気品があり
ます。冠には化仏がなくて頭飾りが3つ
ある。胴体が美しくくびれている。パン
フレットでは白鳳の仏像で奈良時代初期
か?と書いてある。あまりに美しい仏像
だったので、宿のご主人にお尋ねしたら、
「これは塩田平の東にある長福寺にあ
る仏像です。長福寺というのは生島足島
神社の裏手にあるお寺ですよ」というこ
とだった。
こう説明したら、女将の怒るまいこと
か、「申し上げますがね。K屋本店と当
店とはなんの関係もありません。経営者
はまったく違うのです。あちらが、かっ
てにK屋本店というまぎらわしい名前を
つけたんですよ!」だって。
食事の美味しいといわれる金沢から来
て、こういうのもなんですが、金沢では
一番といわれるA屋よりも美味しかった
ですね。間違いなくお勧めです。
実は、旅館の女将から「松茸づくし」はいかがでしょう、とお勧めがあったのですが、これは断ったのです。「近くのK屋本店で一昨年、昼食に松茸づくしを食べたらなあ、匂いがない松茸なんや。あれ、塩田の松茸やのうて、中国松茸や、そう思うてまんねん」。
写真:秋の香りで、松茸と木の子の鍋
地元上田産、真田地鶏の射込み摘みれ
柿の木茸・湿地茸・榎木茸・平茸・花びら茸
食事が絶品でしたね。一品一品味わいが深く、芸術的な秋の彩りに染め上げ、感嘆おくあたわざる品々でした。どの一つをとっても美味そのものでした。松茸も地物のしっかりと実のある重い松茸で、土瓶蒸しも、地鶏との炊き合わせも、松茸ご飯も久しぶりに最高の味を堪能しました。
写真:蟹と帆立の湯葉巻 加減酢
なます・胡瓜・防風
温泉については、上品な匂いの硫黄泉なのは他と変りありませんから、割愛することとして、
「当館は山際に面している旅館でございまして、階段が沢山ありまして、ま、一口に言えば、階段だらけ」と番頭がいうのを、「おいおい、堪忍してくれよ、90歳のおばばを階段をぎょうさん登り降りさせたら、死ぬぞ、死んでしまうぞ」と脅したら、比較的低い場所にある部屋をあてがってくださったのですが、それでもまあ三〇段はありましたね。大変でした。
いつも考えることなのですが、女性は、
ことお金の使い方については、ケチケチの
ケチが本性のように見えるのに、こと観光
地での宿泊と食事の質ということになると、
「これが同じ人間か!」と思うほど大胆不
敵になるもので、男だけなら絶対に「こん
な高い旅館」は泊まらないのが、女性は、
雰囲気さえ良ければ、いや、周囲の人が
「あそこはいいわよ」と言いさえすれば、
そこが高かろうと何だろうと、大胆不敵に
チャレンジするもののようで、
今回は、私ひとりなら絶対泊まることの
ない高級旅館にとまることとなりました。
おはぎそのものも、クルミ・ソースとよくマッチしていて、非常に上品な味で私達四人一同感嘆させられました。
一人前700円なのですが、申し分なしの味わいでした。皆様、だまされたと思って試していただいてはいかがでしょう。
写真:前山寺
本堂横の座敷にあがらせていただき、おはぎをいただくわけですが、お座敷から眺める塩田平の美しいこと、南側もお寺の庭園に面していて、手入れも行き届いており、景観はどちらも最高。
前山寺は、順序から言えば、窪島 誠一郎の「無言館」の次に訪ねる、上品で可愛い小型のお寺なのですが、今年から「予約なし」で「くるみおはぎ」を食べることができるようになりました。
今年の秋は、私は仕事はすべて済ま
せてしまって時間的に余裕もあること
から、姉達のお供をして塩田平案内を
することにしました。御年90歳と83歳
の老婦人に加えて、私とはたった8歳し
か歳の違わない姪もやってきました。
写真:前山寺の座敷より眺める塩田平
法隆寺金堂の二分の一の縮尺でつくられたお堂の御厨の中におさまっておられるが、暗くて見にくいけれども、とても美しい仏像です。お堂の中にあった写真を撮影することはできるというので撮影した写真の一部がこれ。
泥棒でなくても、いかにも欲しくなるような美しい仏像でした。
翌朝、長福寺の村越住職にお話をお聞きしましたら、事情はとても込み入っていました。昭和17年まで小布施の民家にあった仏像で、戦前は国宝だったが、戦後は、出所がもうひとつ判然としないこと、右腕が後補であること、を理由として国宝をはずされ、重要文化財となった。Archaic smileがあるので白鳳仏と思われるが、火災に遭って表面が荒れている。右腕は後補であり、光背も後補。写真撮影は禁止。長野県では人気抜群で、過去三回の盗難歴がある。
旅館ご自慢のツツジは咲いていないし、建物は古いし、四階建ての木造建築だというのにエレベーターはついていない。
10月の18日といえば秋もたけなわで、リンゴも柿もたわわに実り、松茸も今がまさに盛りのゴールデン・タイムです。
写真:修那羅峠の石彫
別 所 温 泉 の 秋
2009/10/18〜20