犬に関する言葉の疑問

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 犬に関しての本やホームページには様々な情報があり参考になりますが、一見良い方法にみえても違う本やホームページには逆のことや批判まで出ています。
犬は叱ってはいけない⇔叱りや罰は必要だ。無視することは精神的ダメージを与える⇔しつけには無視が一番。犬に対しての行動でも、「一緒に寝ると・・・」とか「何々は必要無い」とか「権勢症候群は無い」、「行動学でいえば」とか、どちらを信じていいかわからなくなりませんか?  ここではその解釈と言葉の疑問を考えています。


社会化と権勢症候群
動物行動学では
家庭は犬の群れになるのか
人間は犬のリーダーになれるか
犬に罰は必要か
分離不安症、常同症

犬の学習理論を考える
叱るとは
権勢症候群と飼い主の勘違い
掲示板


社会化と権勢症候群 上に戻る
 社会化とは4週から12週くらい(3〜12週とか7〜12週とも言われているが)と言われ離乳が始まってから90日ぐらいまでの時期です。「臨界期」
この時期に親兄弟と過ごし、子犬は勉強(刷り込まれるともいわれる)して犬としての自覚やさまざまな情報を身につけます。これは躾けの本などでもよく書かれていることで、親や兄弟と接する中で噛み付く加減を覚えるとか上下の関係なども身につける時期ですが、それ以上に重要な時期で、一般的な行動様式、さらにはストレス反応などのような生理的機能も親から受け継ぐものでありこの時期をきちんと親兄弟と一緒にすごさない犬に問題行動や権勢症候群(実際には存在しない)・分離不安症、常同症が多く出てしまいます。

 早期離乳は不安傾向やストレス反応、脳内の神経機構形成に大きな影響を与えていると思われ、ストレス反応や不安行動などに関連の深い分子にターゲットを絞って、それらの発現量、発現調節メカニズムなども東京大学動物行動学研究室で研究されている。

問題行動は、一般には飼い主の問題(飼い主の問題なんですが)とも言われますが、問題行動は社会化不足が最大の原因と言っていいでしょう。

 親と離す時期
これも(45日だ、60日だ、70日だ)諸説あり迷うところですが、社会化の時期から考えれば、60日くらいが適当ではないでしょうか?   
 どうして、なぜ
社会化の時期に親兄弟と一緒にいさせることはもちろん、人間社会や飼主との関係も作る時期と考えられます。
社会化の時期は12週までだと考えられていますから、この社会化の時期に飼主の手に渡らなければいけないのです!  この説明でお分かりのように、最終が12週(約84日)ですから、70日くらいが適当と考えている方も多いようで、一般化してきていますが、 ・・・・・・・・
社会化の時期は個体差にもより、前後2週くらいの差があります、ですから社会化が10週(70日)くらいで終わってしまう犬も出てくるはずです。
親から70日で離された犬は人間社会や飼主の元での社会化が不足することも考えられます。
平均を考えれば70日でも良いのですが、個体差を考慮したり多くの犬のことを考えると最低60〜65日くらいで飼主の元に来ることが適当と考えられます。   


動物行動学では 上に戻る
心理学は哲学から生まれました。「心理学は行動を研究する学問である」といわれるように行動学はもともと心理学の分野として分かれた物で、「心は全部条件反射で説明できる」といわれた「パブロフの犬」の動物実験でもおこなわれ、
スキナーという学者(スキナー・ボックスという実験箱)も心理学の中でも証明に使われ学習理論(学習理論を考える)となった。
これらは実証主義とか行動主義と呼ばれていたのですが現在の心理学では、心に目を向けるものなどにも分かれてきています。

行動学を参考にすると、犬は必ず群れで行動し生活をする動物で強い階級意識があり上下関係がはっきりしています。
雄と雌でそれぞれのリーダー(αと呼ばれる)がいて、群れ全体を仕切るリーダーもいるようです。トップのリーダーは犬の行動学では「アルファと呼ばれ、以下「ペーター」「ガンマー」と続きます。
階級の違いで食事、就寝場所などが異り、トップの犬のリーダーシップが強ければ強いほど群れは安定するそうです。
また喧嘩を仲裁できることもリーダーの条件のようです。
 動物行動学だけ重視する人もいますが動物行動学は成長のような形を取らないもので、刺激や行動に対しての研究です。抑制方法も脳からの情報を何の薬で止めるかとか、どんな薬で何を遮断できるかとかの研究です (動物行動学会の研究方法(下記)を見ると胸を締め付けられます)
 下記の下線部分を読めばお分かりのように、犬の心や信頼、飼い主の心や愛情など育てたりはぐくむ物は関係無い学問なので、しつけに「動物行動学では〜」などを表現する人をあまり信用していないのが私の気持ちです(行動学も重要なんですが、いかにも知っています的表現や他への批判が嫌いなんです)


行動の定義  http://ja.wikipedia.org/ 動物行動学参照

動物が体のある部分で何らかの変化を起こすのはよく知られた当然のことである。これは単なる反応ではあるが、それが成長のような形を取らないもので、それらが一連の組み合わせで、 結果としてその動物の生活に一定の役割を果たす場合に、それを行動という。一般に、動物は”動く物”であるので、その反応には移動を伴うが、必ずしも移動しなければ行動とは呼ばないわけではない。広い意味では体色変化や発光も行動の一部であり得る。 行動には、一定の目的が存在する(これは必ずしもそれを動物が認識していることを意味しない)。だから単純な反応であっても、目的があれば行動と呼び得る。



日本動物行動学会の研究方針  日本動物行動学会 http://wwwsoc.nii.ac.jp/jes2/index.html 参照 

(1)研究に当たっては、研究対象動物に与える苦痛の大きさと時間が最小限であるようにするべきである。実験的処置を施す際には日常の訓練や順化措置と適正な麻酔等を用いて苦痛の軽減を行なうことが望ましい。
(2)研究者は、研究の対象動物の扱いを十分習熟する必要がある。
(3)野外研究においては、捕獲、マーキング、テレメトリーシステムの装着、採血や組織採取などによって動物に与える負の影響をなるべく軽減することが望ましい。
(4)異種あるいは同種間の攻撃行動を実験的に研究する際には、研究の目的にもよるが、攻撃を受けた個体用の逃走路確保や保護用柵の設置などによって攻撃を受けることによる被攻撃対象動物の死傷をなるべく減ずるようにすることが望ましい。
(5)嫌悪刺激や飢餓条件は、動物の健康状態に十分注意し、研究目的に沿う範囲で必要以上に強い刺激や飢餓条件とならないようにする必要がある。
(6)隔離と過密飼育は、研究目的に沿う範囲で必要以上に長期間課することのないように注意することが望ましい。
(7)病原体や寄生虫に人為的に感染させる処置を研究に適用する際は、動物の状態をなるべく頻繁に観察し、健康状態の悪化が観察された場合には適宜適切な治療処置や時にはできるだけ苦痛を与えないような方法で殺処分を行なうことが望ましい。また、物理的化学的材料あるいは病原体を扱う実験においては、人の安全の確保と飼育環境の汚染により研究対象外の動物が障害を受けることのないよう十分に配慮しなければならない。実験施設周囲の汚染防止にも注意を払う必要がある。


家庭は犬の群れになるのか 上に戻る
「人間社会にやってきても人間を全く別の生き物とはっきり区別する」とか「犬と人の間に階級制があるかどうかは疑問」「人間と順位を争うことは無い」とも言われていますが、ちょっと疑問も残ります、「居心地のいい場所を占領してどかそうとすると威嚇する」「餌鉢をとろとしたら噛まれた」などいろんな犬と人間の関係や行動を見て、犬は優位性行動を取ることがあったり猫や他の動物でも受け入れたり、知らない人間が侵入したら吠えたりもします、このような例からみて、家庭や家族を守ろう(本当かは不明ですが)としたり、仲間を受け入れたりするのも事実です。犬が言った訳ではありませんが「家庭=家族=仲間=集団=群れ」と言ってもいいのではないでしょうか。(厳密には学者の言う群れとは違うかもしれませんが)

人間は犬のリーダーになれるのか 上に戻る
「家庭は犬の群れになるのか」の問題からの進展になってしまいますが、犬が家庭で家族と生活するならば、主導権を持ち人間のルールを教える人たちをリーダーだといって良いのではないでしょうか、また同格ではできないリーダーシップも必要でしょう。
ですが人間が力を知らしめることによってリーダーだと勘違いしている飼い主もいますが大間違いで、犬から信頼されてこそリーダーになれるはずです。
リーダーとは:
指導・統率・影響とかあり、ルールを教えたり、安全・安心を与え、信頼される者で、責任を負う者がリーダーである。
α(アルファ)とは:
統率・影響・力・繁殖などがあり、群れや集団が生き残るために必要であり 強い者を残すなど、種の保存に必要な者がα(アルファ)で攻撃などの手段も必要だと考えられる。

以上から、αは生存に必要な同種であり、人間はアルファにはなれない。
しかし、ルールを教えたり、安全や安心を与えたり、責任を取らなくてはいけない飼い主はリーダーになりえるし 人間社会で生活する犬に対してはリーダーシップが必要になる。

リーダーは誰が決める:
食事を与えたり、散歩に連れて行ったり、世話をしたからといって飼主がリーダーにはなれません! 飼主は試されているのであって、誰がリーダーかは犬が決めるものです。

注:  記述の中でアルファ症候群とはあるが、リーダー症候群と表記していないのはここにある。

犬に罰は必要か 上に戻る
 罰というとひどいことのように考えてしまいますが、どのようなことが罰というかで考えが変わってきます。
普通に考えると、罰など与えてはいけないし望ましい行動を罰では覚えさせることができないはずです。またいつも叱っていると叱りや罰に慣れちゃう事や神経質になってしまったり、恐怖を感じたり攻撃や逃避につながる可能性があるのです。これが先生と呼ばれる人や罰を否定する人の考えなんですが!!
この罰は、心理学や学習理論の中でも効果が実証されています、この罰をしつけに応用する場合は罰や叱ることは力の固持や体罰などの直接罰を否定することで(罰や叱りの解釈と方法の違い)有効な方法になります。

直接罰
犬に直接与える罰で叩く、怒鳴るなど犬に誰がやったかわかる罰
間接罰(天罰ともいわれる)
ペットボトルが落ちてきた、水鉄砲や音の出る物などやった人が確認できない罰
社会罰
無視や状態から抜け出すなどの精神的な罰 (無視の方法も幅広くあり方法を間違えないこと)

人間でも「鍋を掴んだら熱かった(罰)、次からは鍋つかみをつかおう(反応)」(レスポンデント反応) 犬だって 「蛇にちょっかいを出したら噛まれた(罰)次からは手を出さない(反応)」 「犬が他の犬の食べ物を取ろうとしたら噛まれた(罰)怖いのでもうやめよう(反応)」 このような反応は動物には経験として積み重ねられていきます。
これを犬の勉強(しつけ)と考えれば、「スリッパをかじったら苦かった(罰)もうやめよう(反応)」「甘噛しても褒めてもらえなかった(罰)甘噛はしなくてみいいか!(反応)」こうなります。
 この反応は消去にも応用されます、条件刺激→無条件刺激というレスポンデント条件付けをおこし、これによって恐怖が条件付けられた上で、その次に、行動→恐怖→回避という動機が生まれ正しい反応を身につける、という恐怖に基づくオペラント条件付けが起こるというものです。
この反応は心理学でも説明されています、しつけに利用する場合は、この恐怖も「あ〜怖かった」とか「いやな思い」のような心的であって身的であってはならない。

離不安症、常同症 上に戻る
東京大学動物行動学研究室では
分離不安
犬に留守番をさせた場合にのみ認められる無駄吠え遠吠え、破壊活動、不適切な排泄といった行動学的不安微候や嘔吐、下痢、ふるえ、舐性皮膚炎といった生理学的症状。
常同症
尾追い、尾かじり、影追い、光追い、実際には存在しない蝿追い、空気噛み、過度の舐め行動など、異常な頻度や持続時間で繰り返し生じる脅迫的もしくは幻覚的な行動

と定義しています(東京大学では行動治療カウンセリングを行っています)

この分離不安や常同症も社会化不足が原因で良くおこります。