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Fuga a 3 Soggetti リーマン補完版

演奏は第3主題の呈示部からです。

音楽辞典の著者として知られるドイツの音楽理論家、
リーマン Riemann, K.W.J.Hugo(1849-1919)は、
フーガの技法の編集・出版を手がけており、
その中で未完フーガを自ら補完しています。

曲の冒頭には「ノッテボームの証明に基づき、編者が完結」したと
書かれており、ノッテボームの主張に基づいていることがわかります。
ノッテボームの発表は1881年、リーマンの楽譜出版は1899年ですので、
4重フーガとしての補完の中では初期のものと言えます。

曲の構造はシンプルで、中断部以降3主題の結合を再度実施し、
ドミナントに半終止した後、4主題の結合へと続きます。
基本主題の呈示部はありません。

小節
内容
小節数
1-113
第1主題の呈示
113
114-192
第2主題の呈示
2主題の結合
79
193-254
第3主題の呈示
3主題の結合
62
255-288
4主題の結合
34

主題の扱いについては、ちょっと意外なものもあります。
例えば3主題の2度目の結合では、第1主題が調性的に変形されています。


テノールの第1主題を青い音符で示しました。

また4主題の結合においては、
第2主題の1小節目が3度上にずれています。
下の楽譜は269小節〜の下属調での主題呈示ですが、
269小節のテノールの第2主題冒頭を、
本来なら b♭で始めるべきところを d' で始めています。
270小節以降は本来の音高となっています。


テノールの第2主題冒頭とアルトの第1主題を青い音符で示してあります。

更にこの箇所ではアルトの第1主題も、g' で始めるべき所を
 d' で始めており、主題全体を5度(下4度)ずらしているのですが、
これはノッテボームが見出した組み合わせの1つで、
12度の2重対位法による入れ替えです。

ボエリの補完でも、3主題の結合において第1主題に
12度の2重対位法が用いられていましたが、
ここでは更に基本主題も加わっているのです。

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