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Canon a4.
4声のカノン
BWV1074

バッハが1727年に、ハンブルクの法律家にしてアマチュア音楽家、
フーデマン(Hudemann, L.F.)に送った謎カノンです。
このことからこの曲は「フーデマン・カノン」とも呼ばれます。


上の楽譜は現代の記譜に改めたものです。

楽譜に記された音部記号は、この曲には少なくとも
2通りの解決があることを示しています。
1つは左の4つの音部記号に従った解決、もうひとつは
右の4つの音部記号に従った、転回形による解決です。

この曲は、当時のいくつかの文献において取り上げられています。
テレマンの音楽誌「忠実なる音楽の師」"Der getreue Musik-Meister"にも
掲載されていますが、この本が1728/29年に出版されたことを考えると、
バッハのカノンは早くから話題になっていたのでしょう。

マッテゾンの「完全なる楽長」"Der Vollkommene Capellmeister"には、
多大な評価とともに、このカノンの解決譜が掲載されています。







この曲は、フーガの技法のいわゆる鏡像フーガと同じく、
転回対位法によって作られた作品と見られます。
つまりバッハは、フーガの技法の作曲を開始する10年以上前から
(1727以前)、転回対位法を習得していたことになります。
しかもこの曲においては、より古く厳格に、
音程進行を変えない形での転回が行われているのです。

バッハが対位法的・学術的な作品集を残すようになったのは
主に1740年代のことですが、それ以前からこうした高度な
対位法的技術に精通していたことが、この作品から伺われるのです。

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