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Frescobaldi,G.(1583-1643)
Il Primo Libro delle Fantasie a Quattro.
4声のファンタジア集 第1巻

BGMはフレスコバルディのファンタジア10番(4つの主題による)です。

イタリアの作曲家フレスコバルディは、生涯の大半をローマですごし、
サン・ピエトロ大聖堂のオルガニストを勤めました。
彼の演奏は熱狂的な人気を博したといわれ、その対位法の熟達振りから、
しばしばバッハ以前のバロック音楽で最高の作曲家とされます。

フレスコバルディが25歳の時(1608)に出版したファンタジア集は、
彼がすでに4声の対位法に熟達していたことを物語っています。
その作風は師ルッツァスキ(Luzzaschi,L. 1545-1607)を思わせながら、
独自の技法が多分に盛り込まれています。

すべての曲が4/2拍子に始まっていますが、いくつかの曲は
途中から拍子が変更され、それにあわせて主題も変形されています。

非常に特異的なのは主題の扱い方です。主題はしばしば
変形されているのですが、バッハのように骨格に肉付けするのでなく、
骨格そのものを自由に伸縮させるのです。すなわち主題は
「メロディー」としてではなく「音列」として扱われ、個々の音の長さを
その場にあわせて変更し、曲の流れに馴染ませているのです。
このことは、曲の流れを妨げない工夫ではあっても
主題を不明瞭にしており、詳しく分析してみないと理解できません。

こうした音列としての主題の自由な伸縮以外に、厳格な意味での
主題の拡大や縮小も行われます。また曲によって反行形も見られます。
ファンタジア5番は2つの主題と題されているものの、
実際には主題とその反行形によるフーガとなっています。
反行の手法は師ルッツァスキから継承されたものです。

中にはカノン技法も見られます。ファンタジア5番は曲の冒頭が
4声の反行カノンになってます。またファンタジア10番では
曲全体が複数のカノンを組み合わせて構成されています。
ただしファンタジア10番におけるカノンは、主題の扱い同様に
音列の伸縮が行われており、カノンとはわかり辛くなっています。

下の表に曲集中の各曲の概要を示します。
※調の欄にある「d-a」のような記載は変格終止を示します。
※拍子の欄に複数記載のあるものは、途中で拍子が変わる事を示します。
 タイトル
調
拍子
小節数
 備 考
Fantasia Prima Sopra un soggetto
1つの主題によるファンタジア(4声)
g
4/2
3/2
4/2
68
Fantasia Seconda Sopra un soggetto solo
1つの主題によるファンタジア(4声)
g
4/2
3/4
4/2
3/2
4/2
94
Fantasia Terza Sopra un soggetto solo
1つの主題によるファンタジア(4声)
e
4/2
3/2
4/2
85
Fantasia Quarta Sopra doi soggetti
2つの主題によるファンタジア(4声)
d-a
4/2
84
Fantasia Quinta Sopra doi soggetti
2つの主題によるファンタジア(4声)
F
4/2
3/2
4/2
123
1主題による
反行フーガ
Fantasia Sesta Sopra doi soggetti
2つの主題によるファンタジア(4声)
F
4/2
102
Fantasia Settima Sopra tre soggetti
3つの主題によるファンタジア(4声)
G
4/2
87
Fantasia Ottava Sopra tre soggetti
3つの主題によるファンタジア(4声)
G
4/2
3/2
4/2
98
Fantasia Nona Sopra tre soggetti
3つの主題によるファンタジア(4声)
a
4/2
93
Fantasia Decima Sopra quattro soggetti
4つの主題によるファンタジア(4声)
a
4/2
3/2
4/2
113
2主題による
反行フーガ
Fantasia Undecima Sopra quattro soggetti
4つの主題によるファンタジア(4声)
F
4/2
99
Fantasia Duodecima Sopra quattro soggetti
4つの主題によるファンタジア(4声)
F
4/2
3/4
4/2
91
次第に主題の数が増えていくという曲集の構成は、
弟子バッティフェルリ(Battiferri,L. 1610-1682)に受け継がれています。

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