画像:九州大学アーカイブ
同時に、『天工開物』で竹紙の製造方法も確認
しておくこと。
http://record.museum.kyushu-u.ac.jp/tenko
/tenko/tyu3/179.html
東南アジアでの箔打紙の製造と異なるところは、
「豆油の燈の煙でくすべる」という箇所である。
奈良県での墨製造方法と似ている。
なお、ミャンマーにおける竹紙製造法と比較する
ことにより、アジア南部での竹紙製造法の伝播が
推定できる。箔打ち紙としての竹紙に関しては、
ガンダーラから出発して杭州へ進んだと考えるの
が合理的かもしれない。
『天工開物』
明末の崇禎十年(1637)、江西省奉新県の学者宋應星によって書かれた
中国の産業技術書
色の中でも金色というものは、この世で最も美しく貴いものであ
る。だから加工して箔とし彩飾に用いる。金七厘ごとに一寸四方の
金箔一千片がつくれる。これを物の表面に貼りつけると、縦横三尺
をおおうことができる。
金箔をつくるには、まず金を薄片としてから、烏金紙の中に包み
こんで、力まかせに槌で打ちのばすのである。[金を打つ槌は柄が短
く、その重さは約八斤]。烏金紙は蘇州、杭州で生産される。その紙
は東海に産する大きな竹の繊維を原料に用いる。豆油の燈をともし、
周囲をふさぎ、ただ針ほどの穴だけを残して空気を通ずる。この煙
にくすべられて烏金紙ができる。紙一枚ごとに金箔を五十回打って
から棄て去るが、あとは薬屋の朱の包み紙に使われて、それでもま
だ破れない。人知によってこんな不思議な物ができたのである。
この紙の中で箔にしてから、まずよくなめした猫皮を貼って小さ
な四角の板台をつくり、さらに線香の灰を皮の上にまき、烏金紙に
はさまれた箔をとり出してその上にのせる。それを鈍刀で区切って
一寸平方とし、息をとめ、手にもった軽い棒を唾でしめして、それ
で金箔をはね起こして小さな紙の中にはさむ。これで物を飾るには、
熟漆(じゅくしつ)を地に塗ってから貼りつける。[字に貼るばあい
は多く楮(カジ)の木の液汁を用いる]。陜西で皮金(きんからかわ)
をつくるばあいには、羊皮をなめし広げて非常に薄くし、金箔をそ
の上に貼ってたち切り、服飾に用いられるようにする。きらきらと
してすぐれた色がある。
(東洋文庫130 『天工開物』薮内清訳注 平凡社
昭和44年 P260)
『天工開物』にみる金箔の製法
注:九州大学アーカイブ
原典には金7厘となっているが、7厘
では金箔一片しか製造できない。
金7匁の間違いである。これは翻訳書
の間違いではなくて、中国語原典が
間違っているのである。
http://record.museum.kyushu-u.ac.jp/te
nko/tenko/ge1/191.html
画像:
金陵金箔股肦有限公司のbrochureから
『天工開物』 崇禎十年(1637)宋應星
金7匁から一寸四方の金箔1千片。縦横三尺を貼ることができる。
金の薄片を烏金紙に包み、槌で打ち伸ばす。
烏金紙は蘇州、杭州で竹の繊維から作る。豆油の燈の煙でくすべる。
紙一枚で金箔を五十回打つ。あとは薬屋の朱の包み紙に使う。
烏金紙のなかで箔にしてから、猫革を貼った板台の上で鈍刀で一寸四方に断ち切り、小さな紙の中にはさむ。
使うときは、熟漆(じゅくしつ)を地に塗り、その上に貼り付ける。
字に貼る場合は、楮(カジ)の木の液汁を用いる。
陜西で皮金(きんからかわ)を作るときは、羊皮をなめして非常に薄くして、金箔をその上に貼る。
(下巻、14 製錬 黄金)
(東洋文庫130 『天工開物』薮内清訳注 平凡社 昭和44年 P258)