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櫛
前5世紀末−前4世紀初頭
ドニエプル川流域、
スキタイ文化
ピオトロフスキー、
『エルミタージュ美術館』
加藤九祚他訳、
岩波書店 1985
ぺテルスブルグのエルミタージュ美術館には、通常の参観者が
入れない金庫のような「Gold Room」がある。
この美しい「櫛」はその金庫室のなかに保存されている。高さ
が15cm程度の小さい細工物であるが、それだけに精緻な細工が光
る。
ロシアの歴史は、東スラブ人が四世紀頃、ドニエプル流域より
北方へと移動して現在のキエフのあたりに移動したことから始ま
っている。
スラブ人によるロシアの王朝は九世紀後半、北方より下がって
きて、ノブゴロド、リュウーリクなどの新しい町を建設したこと
に始まるのであるから、スキタイ文化のこの「櫛」はロシアの歴
史の先史に位置されるべきものである。そういう特別の意味合い
をもっている。
その製造技術の精細さからして、ドニエプル川流域に移住して
いたギリシャ人によって作られたのではないか、と推測されてい
る。
「金」という金属の無変色に注目しよう。「金」は経時変化が
なく、観るひとに「永遠性」を暗示させる効果がある。