金(かね)と金(きん)

 漢字で「金」と書いて、音読みでは「きん」、訓読みでは「かね」
と読むわけですが、日本語では「きん」と「かね」は同じ漢字を使用
するにもかかわらず、中味は完全に別物であります。

 「かね」は五七五に続ける下句「それにつけてもかねのほしさよ」
の「かね」、「金銭」という通俗的な「金」を指すわけですが、「き
ん」はそれとは異なっております。

 どこが異なっているかというと、

       「かね」・・・・・はシンボライズされた価値を指すときに用
                         いる単語で、例えば、一万円札の金(かね)
                         はいまや金(きん)に兌換されないから、
                         象徴としての価値しか持ち合わせないので
                         す。英語で"money"。      

       「きん」・・・・・はそれにひきかえ、価値そのものでありま
                         す。世界中どこでも「金(きん)」を持っ
                         ていけば交換すべき物品が手にはいります。
                         貴金属としての価値そのものであります。
             英語では"gold"。

 だから、ここぞという肝心なときは、人間は貨幣としての金(かね)
に頼らずに、金属としての金(きん)を使うことになります。真実を
表現すべきときには「金(きん)」に頼らざるをえないのです。

画題:

Piero della Francesca
The Queen of Sheba in adoration of the Wood
and the Meeting of Solomon and the Queen of Sheba
c. 1466
Frescn
336 x 747 cm
San Francesco, Arezzo

http://www.ibiblio.org/wm/paint/auth/piero/san-francesco/

 西暦紀元前950年頃、旧約聖書に出てくるシバの女王は、
今のイエーメン一帯を治める女王だったのですが、現在のヨ
ルダンで権勢を誇っていたソロモン王の支配下に入るために、
会いにやってきた。手土産はなんと4トンの金(2007年5月11
日現在価格で111億円相当)だったのです。