自殺の欲望が強くなった時点で勤労意欲も学業意欲も失せてしまい、あたかも廃人になった如く振舞い、自己の思念に没頭するものだから、ほぼ一年間程度はなにもせずぶらぶらすることとなる。このような活動停止期間が25歳の時と29歳のときと二回観察されるから、Bはこのどちらかの期間に発生したと考えるのが正解であろう。あるいはこれら両時期に二回発生した、と考えてもおかしくはない。

 いずれにしても、19歳から28歳にいたるまで、このように長期にわたる継続的な精神的抑圧状態によく耐えたものだ、と感心する。体力的によくもったものだ、と感嘆するし、精神的にきわめてタフな人であったと考える。

ジ ェ イ ム ズ の B 体 験

 Bといっても、哲学的に徹底したB1ではなく、「負」の精神につきつきつめた考究
をおこなわず、逃げようと考えて逃げ、挙句の果てにBに到達し、愕然として「救い
をもとめる」B2タイプになったことから推察すると、B経験ののち欧州へ逃れて、欧
州の保養所に入った25歳のとき、と判断するほうが正解かもしれない。(B1B2につ
いては後述する。)

金持ちのボンボンというのは、お金に余裕があるだけに、危機管理のときに迂回動
作をとってしまい、確信に到達するのに無闇に時間がかかってしまうことがある。そ
の点、貧乏人のほうが、ストレートに真正面から反応するもののようだ。

 以上の伝記を読むと、彼がB体験に
遭遇したのは、25歳のときか、28
のときか、どちらかであったことが
読み取れる。精神的に著しいセット
バックが生じるのは、大願成就の直
後のことが多いことから判断すると、
28歳、博士号取得直後のことである
可能性が大きい。彼のB体験がフラン
ス語で書かれていたことからすると
25歳の欧州旅行直前のことであった
かも知れない。どちらの可能性もあ
る。