雰囲気としてはこうだ。


気の触れた女が背負うのは救
いようもない瀕死の赤子。

絶望的な、いくらあがいても
救われることのない暗さ。

あてどもなく辿る夜道。

赤子がヒーヒーなくが、乳も
でない女。近づく死。

道を照らすのは、亡くなった
誰かの命の残りかす、燐光だ。

雰囲気としては、

   暗い
   救いのない暗さ
   行方が見えない
   命の残り滓
   そして、
      死

P176
妖怪

百妖又千怪
(ひゃくようまたせんかい)

太平の時に現れず
(たいへいのときにあらわれず)

天地否塞の際
(てんちひそくのさい)

或いは此の物を生じ来る
(あるいはこのものをしょうじきたる)


この心のなかの化け物は
こころが平和でゆたかなときには現れ
ない。

現れるのは、かならず
こころが疲弊したときだけなのだ。

高 井 鴻 山 漢 詩 選 集 (2)

画像:
『高井鴻山妖怪画集』小布施町
1999

鬼妻は鬼児を負い
(きさいはきじをおい)

深夜何れの処にか之く
(しんやいずれのところに
かゆく)

鬼児は呱々として泣き
(きじはこことしてなき)

鬼燐は路を照らして飛ぶ
(きりんはみちをてらして
飛ぶ)

では、妖怪が出現する条件はなにか?
鴻山は説明する。

画像:『高井鴻山妖怪画集』小布施町 1999

そのときの心の雰囲気はどうか?

P175
妖怪