以前の「ひとこと」 : 2017年1月前半
1月1日(日) チェスの駒を用いたパズルの話(その1)
更新を3週間ほどお休みしてしまいましたが、再開したいと思います。更新できない間にご訪問下さった方にはお詫びいたします。
○ 5×6の盤面に、チェスの白い駒を図のように配置してみました。チェスをご存知ない方、申し訳ありません。
図 1 チェスの駒は、キング(将棋の王将と同じ動き)、クイーン(飛車と角を合わせた動き)、ビショップ(角の動き)、ルーク(飛車の動き)、ナイト(八方に桂馬の動き)、ポーン(移動は1歩前のみ、捕獲は左右の斜め前のみ)の6種類があります。パズルとして考えた場合は、ポーン以外は盤の向きは意味を持ちません。ここではポーンは画面の下から上へ移動するものと考えてください。
キングが2つ、ナイトが4つ、ビショップが2つ、ルークが1つ、ポーンが6つあります。この配置は、ある規則に従ってそれぞれの駒を置いています。どんな規則なのかわかりますか?
(つづく) <おまけのひとこと>
お正月休みは本当にのんびり過ごしました。
1月2日(月) ケンプナー級数(その1)
昨年末からちょっと調べている数列・級数の話をご紹介します。
自然数 1,2,3,4,… の逆数を、無限に足し算してゆくことを考えます。足される数はどんどん小さくなってゆきますが、項は無限にあります。
図 1 数列の各項を足し算したものを級数といいますが、上の級数のことを「調和級数」(harmonic series)と言って、この級数は無限大に発散することが知られています。(その昔、高校の数IIIの教科書にその証明が載っていて、とても感心した記憶があります。)
小さくなってゆくものでも無限個を足せば必ず発散するかというと、決してそんなことはありません。有名な、ゼノンの「アキレスと亀のパラドックス」でも、アキレスが亀に追いつくために、どんどん小さくなる無限個の区間を走らなければならず、「無限個の区間を走る時間の総和は無限大に発散する」というロジックがパラドックスのポイントでした。
今からだいたい100年ほど前の1914年に、アメリカのイリノイ大学のケンプナー(J.A.Kempner)という数学者が考案した、ケンプナー級数という級数があります。これは、調和級数のうち、分母の数字に9を含むものを取り除いて残った項だけを無限に足す、というルールで作られた級数です。
図 2 この級数は収束するでしょうか? それとも発散するでしょうか?
(つづく) <おまけのひとこと>
昨年末にインクジェットプリンタを買いました。無線で接続できるタイプにしようと思っていたのですが、お店に在庫がなかったので、結局一番値段の安い機種にしました。
1月3日(火) 初詣ほか
年末年始は息子と娘が帰省してきていたので、元日の朝、諏訪大社に家族で初詣に行きました。
駐車場が混雑していて、30分ほど待ちました。息子と娘には先に降りてお参りに行ってもらいました。合流してから話をきくと、二人で「おみくじ」をひいたそうで、息子のほうは中吉、娘のほうは凶だったようです。
お昼を済ませて、私の実家に御年始に行きました。2時間ほどお茶を飲んで話をした後、母も加えて5人で上田の「大河ドラマ館」に行きました。大変混雑していました。
2日の夜は家族で最寄りの中華料理屋さんに食事に行って、3日は子供たちと家内は同じ列車で東京に行きました。穏やかな正月休みでした。
<おまけのひとこと>
昨年2016年は大河ドラマが「真田丸」で、私の出身地の上田がたいへん盛り上がっていました。年賀状にもそんなコメントを書いてくれた方が何人もいました。
息子と「サッカーしょうぎ」を1回やりました。考えてしまうと膠着してしまう、というのが欠点かなあと思いました。(将棋ではもはや息子にかないませんが、サッカーしょうぎは一緒に検討する、という感じで楽しかったです。)
1月4日(水) ケンプナー級数(その2)
調和級数から、数字の9を含む項を全部取り除いた級数は収束するでしょうか? という話の続きです。
こちらThe American Mathematical Monthlyのケンプナーの記事を見ると、収束することが証明されています。
2ページ程度の記事なので、なんとか読んでみました。求める級数を、「分母が一桁の部分和」「分母が2桁の部分和」というふうに部分和に分けます。それぞれの部分和の上界を求めて、その和が有限であることを示しています。
分母1桁の9項のうち、9を含むのは1項だけなので9分の1です。分母2桁になると、1桁目に9を含むものと2桁目に9を含むものがありますから、90項のうち9+9=18項が9を含みます。こうして、桁数が増えるほど9を含む割合が高くなってゆきます。
もちろん、どこまでいっても9を含まない数は無限にありますから、ケンプナー級数の項は無限個あります。でも、ケンプナー級数はわずか23程度にしかならないのだそうです。
(つづく) <おまけのひとこと>
興味がある方は元論文を読んでみることをお勧めします。WikipediaのKempner seriesもわかりやすいです。
1月5日(木) 調和級数の部分級数の話の続き
ケンプナー級数は、調和級数のうち、10進法で数字の“9”が出てくる項を取り除いたものでした。ケンプナーの元論文は、1914年に発行された“A Curious Convergent Series”(奇妙な収束する級数)という名前の論文でしたが、関連する論文として、2008年にT.SchmelzerとR.Baillieによって発表された“Summing Curious, Slowly Convergent, Harmonic subseries”(奇妙でゆっくり収束する、調和級数の部分級数の和)という論文があります。
この論文では、最初にケンプナー級数に言及したあと、調和級数のうち“314159”という数字列を分母に含む項だけを取り除いた場合にどうなるか、という議論をしています。(お気づきだと思いますが、314159という数字の並びは円周率 3.141592… から選ばれていると思います。)
数字の9のときと比べると、314159を含む項というのはものすごく少なくなると感じられます。それでもなお、のこった級数は有限の値に収束してしまうのです。逆に、314159を含む項だけの部分級数は無限大に発散します。直観的には、314159を含む項のほうが少ないような気がしますが、無限というのはつくづく恐ろしいというか面白いものだと思います。
この議論は、数値が9だろうが3141592だろうか、それ以外の任意の数で成り立つ、というところがポイントです。
<おまけのひとこと>
本当は調和級数が発散する証明も書こうかと思ったのですが、これこそいくらでも情報がありそうなので割愛しました。
1月6日(金) 聖の青春
お正月休みに「聖の青春」を読みました。
歳のせいか、本人の大変さ、すごさはもちろんなのですが、ご家族がどれほど大変だったのかが強く印象に残りました。お勧めです。
<おまけのひとこと>
将棋界は昨年度三浦九段の問題で大変でした。とても残念に思います。
1月7日(土) 三乗した答の各桁の和が元の数に等しい数(出題編)
こんなパズルを知りました。
ある数を3乗します。その答えの各桁の数を足し算したら、もとの数に戻りました。もとの数は何でしょうか?
8と17の例を挙げておきました。“1”は自明解ですが、これ以外に見つけられますか?
<おまけのひとこと>
プログラムを書けば簡単に求まります。
1月8日(日) 幟建て
1月8日(日)は地区行事の幟建てでした。(過去にも何度か書いています。)例年、10時から作業を始めて、10時半からは地区の新年会を公民館で行います。ここ数年、だいたい同じ場所に座って、だいたい同じ人と「一年ぶりですね」といってお酒を飲むことが多いです。
昨年は御柱祭があったのですが、単身赴任をしているためなかなか準備に参加できず、失礼していました。それでも声を掛けて下さる方が何人もいらして、ありがたいなあと思っています。
<おまけのひとこと>
昼間からお酒を飲んで、いい気持ちで帰ってきました。
1月9日(月) 素数が無限にあることの証明(その1)
ここ数日、調和級数の話を書いていますが、自然数の部分集合である素数の逆数の和も発散することが知られています。素数は無限にあります。とはいえ、数が大きくなると、素数はどんどんまばらになってゆきます。無限にあるからといってその逆数の和が発散するとは限らない、という話はケンプナー級数のときにも書きました。
式1:素数の逆数の無限級数 たとえば任意の数Nを考えると、自然数の列の中に、合成数(素数ではない数)が連続してN個以上続いている区間が必ずあることが示せます。Nが一億だろうが一兆だろうが、もしくは10の百万乗(ゼロが100万個ついている数)だろうが、それだけ合成数が続く区間があるのです。(以前にも書いたことがあると思いますが、これは、Nの階乗から始まるN個の数を考えると明らかです。)
素数が無限に存在することの証明は、ユークリッドのものが大変有名です。最大の素数を仮定して、すべての素数の積を考え、それに1を足すとその数は素因数分解できない、すなわち最大の素数の仮定は誤っていた、という証明です。
調和級数が発散することから素数が無限に存在することを証明する、オイラーの証明があります。これが大変美しい証明なので、ちょっとご紹介しようと思います。
まず、下のような無限級数の無限積を考えます。
式2:素数の逆数の無限級数の無限積 この無限積を展開するとどうなるでしょうか? それぞれの級数も無限個あって、それを無限個掛け算するのですが、ポイントはここで登場するのが「素数」というところです。 「素因数分解」を思い出してください。全ての自然数は、素数の積としてたった一通りの方法で表されます(素因数分解の一意性)。ということは、この無限積を展開すると、すべての自然数が1回だけ現れることになります。
式3:自然数の和 つまり、式2は式3と同じになるはずです。
式2と式3を逆数にしてみます。
式4:オイラー積表示 式4の右辺は調和級数で発散します。左辺はオイラー積表示です。
式5:無限級数の和を計算 式5は、式4の左辺の無限級数を計算した結果です。等比級数なので、答は簡単にわかります。式5の右辺のそれぞれの項は1よりもちょっと大きな数値になります。もしも素数が有限個しかないのであれば、式4の左辺は有限の値になるはずです。しかし式4の右辺(調和級数)が発散するということは、左辺も発散するということで、これは素数が無限にあることの証明になっています。
<おまけのひとこと>
素数の逆数の和が発散する証明も、オイラー積表示から示すことができます。そこまで書こうかと思ったのですが、挫折しました。
1月9日(月)の朝は雪がかなり積もっていました。朝5時半くらいから2時間ほど雪かきをしました。汗びっしょりになりました。日中はかなり陽が射して気温も上がり、だいぶ雪も融けました。
1月10日(火) 素数が無限にあることの証明(その2)
私が最近知った、素数が無限に存在する新しい証明をご紹介します。
N_1は2以上の自然数とする。N_1とN_1+1は互いに素であるから、
N_2=N_1(N_1+1)は異なる素因数を2個以上持つ。
さらに、N_2+1 はN_2とは互いに素であるから、
N_3=N_2(N_2+1) は異なる素因数を3個以上持つ。
これを繰り返すことで、異なる素因数が無限に生成できる。連続する2つの自然数NとN+1は互いに素である、というところがポイントです。サイダックによる証明とのことです。
<おまけのひとこと>
素数は面白いなあと改めて思います。
1月11日(水) カードを裏返してゆくと…
コンピュータのプログラミングの練習問題として、こんな問題を知りました。
1から順番に、自然数の番号が書かれたカードが並んでいます。最初はすべてのカードが伏せてあります。最初は2枚目から2枚目ごとにカードを裏返します。次は3枚目から始めて3枚ごとにカードを裏返します。これを繰り返してゆくと、最後に裏向きのまま残るのはどんな数でしょうか?
図1 プログラムを書くと簡単に答えが求まりますが、なぜそうなるのか、考えてみると面白いです。
<おまけのひとこと>
これは答は書かないつもりです。
新しいコンピュータ言語を勉強するときに、こういうパズルをその言語で書いてみる、というのは私にとってとても役に立つ勉強方法です。
1月12日(木) 彫像の問題
「彫像の問題」というのを知りました。1471年にドイツの天文学者・数学者のレギオモンタヌスが、友人に宛てた手紙の中で「垂直に立てた棒がいちばん大きく見えるのは、地上のどの位置に立ったときか」という疑問を書いているのだそうです。
図1 図1の青い部分が「彫像」だと考えてください。点線は目の高さです。彫像から遠く離れているとき(A地点)は、彫像の視野角は小さいはずです。だんだん近づくと、視野角は大きくなるはずですが、像の根元に近くなると(B地点)、視野角は再び小さくなってしまいます。この途中のどこかに最大値があるはず、という問題です。
(つづく) <おまけのひとこと>
大相撲の初場所で、地元出身の力士の御嶽海が活躍していてとても嬉しく思っています。今場所の番付は前頭筆頭なのですが、4日目にして金星2つです。今後が楽しみです。
1月13日(金) 1から9までの数を1つずつ使って
1から9までの数字を並べて、その間に四則演算の演算子を入れるか、もしくは数字を連結して2桁の数字にして、トータルで100になるような式を作る、という「小町算」というパズルがあります。それとは違いますが、1から9までの数字を1つずつ使って、123,456,789という9桁の数字を作る、という式を知りました。
この式の左上の(2×7+86) は100になります。なので左辺は (10,000,000,000-91)/81 になります。面白いです。
<おまけのひとこと>
今年は1月の第一週はお休みをいただきました。なので今週(1/10〜1/13)が年初の最初の出勤でした。この年末年始でだいぶ太ってしまいました。
1月14日(土) 三乗した答の各桁の和が元の数に等しい数(解答編)
先日、「ある数を3乗します。その答えの各桁の数を足し算したら、もとの数に戻りました。もとの数は何でしょうか?」という問題をご紹介して、1,8,17がその答の例になっているという話をしました。これ以外の解として、18,26,27があります。これ以外には存在しないそうです。
この問題の考案者は有名なパズル作家のデュードニーだそうで、この数のことをデュードニー数と呼ぶそうです。
<おまけのひとこと>
じゃあ4乗だったら? 5乗だったら? という疑問がすぐに浮かびますが、まだ試していません。
1月15日(日) チェスの駒を用いたパズルの話(その2)
1月1日のひとことでご紹介した「チェスの駒を使ったパズル」の話の解説です。
図1 盤上のすべての駒は、他のたった1つの駒だけが捕獲できる状態(「利き」状態)になっており、駒の利きをたどってゆくと、全体が1つの輪っか(ループ)になっている、というのが駒の配置の条件でした。
使われる駒の種類や盤面のサイズを限定することで、様々な解があることが解析されています。詳しくはこちらをご覧ください。図を見ているだけでとても楽しいです。
<おまけのひとこと>
2週間分の更新をまとめてしまうとさすがに大変でした。