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以前の「ひとこと」 : 2016年12月前半



12月1日(木) 正八面体の中の正五角形(その1)

 正八面体の稜の上に適切に5つの点を取ると正五角形ができる、という話をしました。では、1つの正八面体の中にある正五角形をありったけ描画したらどんなかたちになるのか、やってみたものをご覧いただきます。

図 1

 今日のところは出来上がった立体が回転するCGをご覧ください。

 これ、どんなかたちでしょうか?

(つづく)

<おまけのひとこと>
 わかってみると「ああそうか、そういうことか」と思ったのですが、最初はちょっと興奮しました。






12月2日(金) 正八面体の中の正五角形(その2)

 昨日のかたちを作ったステップをご紹介しておきます。まずはありったけの正五角形(の枠)を赤で描画してみました(図1)。全部で24個あります。これだとごちゃごちゃしてよくわからないので、面を張ってみました(図2)。たぶんこの図2がいちばんわかりやすいのではないかと思います。

図 1 図 2
図 3 図 4

 赤い枠を外して、正八面体の骨格と24枚の正五角形だけにしてみました(図3)。最後に正八面体の骨格も外して、目的のかたちだけにしてみました(図4)。これを回転させたのが昨日のgifアニメーションです。

 さて、このかたち(図4)、どんなかたちなのかわかりますか?

(つづく)

<おまけのひとこと>
 すみません、この話題、もう少し引っ張ります。






12月3日(土) トロムリッツの鍵盤とフルートのためのソナタ(その1)

 すみません、今回の更新はほどんどが音楽の話題です。

 前回の更新では、Croubelisという作曲家の話をご紹介しましたが、今回はトロムリッツ(Johann George Tromlitz:1725-1805)という作曲家の作品の話です。興味がない方はごめんなさい。

 IMSLPというすばらしいサイトがあって、よくお世話になっています。昔だったらヨーロッパの博物館とかに行かないと閲覧できなかった、昔の楽譜のファクシミリとか手稿譜とかの画像を、遠い東洋の日本に居ながらに見ることができるのです。

図 1

 この楽譜が面白そうだったので、演奏してみたくなりました。鍵盤とフルートのためのソナタ集です。

図 2
図 3

 図2が冒頭の画像です。上に「ソナタ1 フォルテピアノ もしくはクラヴィチェンバロ」と書かれていて、五線の大譜表の左側には Grazioso と書かれています(と思います)。図3は3番のソナタの冒頭です。こちらは Moderato と書かれていると思います。

 この図を見ていると、決して読みやすいとは言いませんが、なんとかこのまま印刷すれば演奏できるのではないか、と思って印刷してみたのです。ところが、いざ演奏をしようとしてみると、なんだか様子がおかしいのです。初めて見る楽譜で演奏を始めるときには、まず拍子と調性を確認します。通常、鍵盤曲の場合は右手がト音記号で左手がヘ音記号の大譜表で書かれますので、てっきりそのつもりで見てみたら、どうもおかしい。

 実際の楽譜を読み進めてみると、これは4分の2拍子(四分音符2つ分)だということがわかります。ということは、この数字の分母は4だということがわかりました。次に、どうやらフラットが1つだけ付いているので、ヘ長調らしいということがわかります。でも、左手はともかく右手のフラットの位置が普通ではありません。

図 4

 図4は、図2の部分を現代譜でト音記号で書き直したものです。つまり、音部記号が違っていたのでした。一応一通り鍵盤で弾いてみたのですが、なかなか厳しいです。仕方なく楽譜を起こすことにしました。

図 5

 この週末(12/3、12/4)はフルートと鍵盤のソナタを2曲と、パート譜だけ持っていない楽譜のパート譜を2曲、楽譜を作って印刷して、妻に弾いてもらって合わせてみていました。充実した週末でした。

(つづく)





 サッカーのJ2、地元長野県の松本山雅はプレーオフ準決勝で負けてしまいました。がっかり。

<おまけのひとこと>
 12月4日(日)に、12/3〜12/9の一週間分の更新をしています。先日の更新で日付を更新し忘れていた日があったのですが、メールで教えていただくことができました。感激しています。ありがとうございました。






12月4日(日) ハ音記号(その1)

 昨日、「ト音記号ではない表記の楽譜」で苦労したという話を書きました。以前にも書いたこともありますが、現在では大部分の楽譜はト音記号かヘ音記号で書かれますが、例えばビオラとかチェロとかのように、ハ音記号を使って楽譜がかかれる場合があります。以下の例をご覧ください。

図 1 図 2 図 3 図 4

 図1はビオラ記号とかアルト記号とか呼ばれる音部記号(cref:クレフ)です。図2はよくご存じのト音記号です。図3はテノール記号、図4はソプラノ記号です。図1から図4には1つずつ音符が書いてありますが、これらはいずれも「ド」の音です。ただし、図2と図4は中央の「ド」ですが、図1と図3は1オクターブ下の「ド」です。

 図1、図3、図4は記号の名前としては「ハ音記号」ですが、その位置がずれることで違った譜表になります。古い楽譜では、ハ音記号だけでなくト音記号がずれているものもあります。

図 5

 図5、トロムリッツの手稿譜の左下に「くしゃくしゃっ」とした線が描かれていますが、これがハ音記号です。縦の二重線の右側に、数字の3のようなかたちが描かれていますので、ハ音記号だとわかります。ハ音記号の中心が五線の第1線を指しているので、これはソプラノ記号だということがわかりました。

図 6
図 7
図 8

 図6の手稿譜を、そのまま現代譜に描き直したのが図7です。このままでは演奏が大変なので、ト音記号に直しました(図8)。これなら簡単です。

 私が使っているのはオープンソースのすばらしいソフトウェアであるMuseScoreというものです。これは、音符入力モードのときに、数字キーで入力する音符をセットしておいて、あとは音の高さを音名のアルファベットでキーボードから入れてゆきます。手稿譜を見て音名を入れていきます。音符の数としては1曲でたぶん千個を超えると思います。さすがにこれだけ入れてゆくと、だんだんソプラノ記号にも慣れてきました。でも、続けていないとすぐに忘れると思います。

(つづく)

<おまけのひとこと>
 12月3日(土)の早朝、というよりは12月2日(金)の夜中から楽譜づくりの作業を始めて、1曲が仕上がったのが翌朝でした。午前中の10時くらいに演奏してみて、気にったのでもう1曲楽譜を作ろうと思って、午後から始めて夜遅くまでかかりました。楽しいです。






12月5日(月) ハ音記号(その2)

 現在ではほとんどがト音記号とヘ音記号で用が足りるのですが、昔はなぜたくさんの音部記号を使ったのでしょうか?

図 1

 図1はよくある大譜表です。「真ん中のド」を中心に、2オクターブ分の音符を描いてみました。

 ピアノの楽譜などは、ト音記号とヘ音記号の間をもっと空けて表記することが普通ですが、楽譜というのは本来は横軸が時間で縦軸が音の高さを表すグラフですから、図1のようにちょうど線が1本分の間を空けるのがグラフとしては美しいです。

 描かれていない「真ん中のド」を通る線を引いてみました(図2)。

図 2

 こうすると線は11本になります。人間は、パッと見て物の数がわかるのは4から5が限界だと言われています。大部分の人は、それ以上になると意識して数えないと瞬間的に数がわかりません。(もちろん私もそうです。)線が5本だと間は4つ、これだと瞬間的に位置がわかります。

 11本の線と鍵盤との関係を図示してみました。

図 3

 こういう図を描くのもとても楽しいです。

(つづく)

<おまけのひとこと>
 なんだかハープみたいです。






12月6日(火) ハ音記号(その3)

 昨日、「なぜ五線なんだろう?」という疑問に対して、人間が数えずに直観的に数がわかるのが4から5までだからではないか、という話をしました。

 ではなぜ、たくさんの音部記号が作られたのでしょうか?

 昔の楽器や人間の声は、演奏に使える音域はだいたい2オクターブとちょっとくらいでした。なので、1つの五線の上下にちょっとはみだすくらいで充分だったのです。さらに、できるだけ五線からはみ出さないほうがコンパクトで情報を詰め込みやすいのです。昔は紙も貴重でしたし、効率がよかったのです。

図 1

 図1に、いくつかの音部記号の例を描きました。要は、自分の楽器の音域をできるだけうまくカバーする音部記号を使って、五線からなるべくはみ出さないようにしていたのです。なので例えばソプラノ記号を読むときには、一番下の第1線を頭の中で消して、一番上に目に見えない第5線がある、と想像するとト音記号が見えてきます。( ただ、私は「移動ド」派なので、ホ長調だと思って読むほうが早いですが。) 

 私が疑問なのは、同じパートを表現するときに音部記号を変えることで何かニュアンスを表現するようなことがあったのだろうか、ということです。ト音記号ではなくあえてソプラノ記号を使うことで何か表現したいことがあったのでしょうか。

<おまけのひとこと>
 こんな疑問をこのページに書いても仕方がないかなあとは思いますが。






12月7日(水) トロムリッツの鍵盤とフルートのためのソナタ(その2)

 トロムリッツのソナタが気に入ったので、どんな人だったのか少し調べてみました。そうしたら、あのクララ・シューマンの母方の祖父だったということがわかりました。

 シューマンがクララと結婚するときに、クララの父でありシューマンのピアノの師であるヴィークの反対で苦労した話は有名です。シューマンの生涯の数々のエピソードや、ブラームスとクララ・シューマンのエピソードなどを思い出しました。そんな風に自分が知っていた人とつながっていることがとても面白く感じました。

 画像はすべてWikiPedia のものです。トロムリッツの肖像に描かれているフルートが興味深いです。当時は肖像画を描いてもらうのはとてもお金がかかったようで、きっとご自慢の楽器や服装なんだろうなあと想像します。

 「ご自慢の」肖像画、というと、化学者のラボアジェを思い出します。高校の化学の授業だったか、大学の化学系の何かの講義だったか、今となっては記憶があいまいですが、その時にきいたラボアジェの生涯についての話はとても印象に残っています。恵まれた出自で、本業は高収入の徴税請負人をしていたこと、現在の日本円であれば年収は数億円くらいあったこと、その資金を使って特注の非常に高価な実験装置を揃えて、数々の優れた実験を行って「近代化学の父」と呼ばれること、そのご自慢の実験装置を肖像画に描かせていること(これを連想しました)、でもフランス革命で処刑されてしまったこと、

 連想した話を書きはじめるときりがないです。ラボアジェについて検索してみたら、こんな資料がありました。お勧めです。

<おまけのひとこと>
 作曲家のエピソードは、子供の頃に家にあったレコードの全集の解説書を読んで覚えた内容がほとんどです。数学者や化学者のエピソードは、本で読んだり学校で先生から聞いたりした知識が多い気がします。今はネットに知識や情報はあふれていますが、ありすぎて何を見たらいいのかわからないような気がします。学校教育というのはありがたいものだなあと今更にして思います。






12月8日(木) 二桁の掛け算の話

 道を歩いているときとか、見かける車の4桁のナンバーを、2桁ずつの数字だとみなして掛け算してみる、という遊びを半ば無意識にやっています。先日、たまたま2台並んでいた車のナンバーが[75-76]と[95-60]でした。いつものように掛け算してみたら、

 あれ? 答が同じになりました。75×76のほうは、こんな風に計算しました。

 末尾が5の数字の二乗は計算が簡単です。なのでこうやって分解して計算しました。95×60のほうは、

 こんな風に計算しました。素直に90×60+5×60=5400+300 でもよかったかもしれません。

 素因数分解してみれば明らかなのですが、見た瞬間にはわからなかったので面白かったです。

 今回はたまたま覚えていましたが、「あれ、この計算おもしろい!」ということが何度もありますが、後で思い出そうとしても「あれ、今日はどんな数字の計算を面白いと思ったんだっけ?」と思っても思い出せないことがほとんどです。でも、飽きないあそびです。

<おまけのひとこと>
 プライベートの時間が足りなくて、やりたいことがなかなかできません。






12月9日(金) MuseScore

 このところ楽譜を作るのに時間をかけていますが、使っているのはMuseScoreというソフトウェアです。

 上記はキャプチャした画像なので、ここからはリンクしていません。すみません。

 楽譜を作るときにやりたいことがたくさんあるのですが、どのような操作をすればよいかわからないことが多くて、そのたびにGoogleで検索しています。調べたのは「3連符の入れ方…[Ctrl]+[3]」、「影譜(小さな音符)に変換する方法…[F8]でメニューが出る」、「連続する全休符の小節を1つにまとめる…[M]を押すと切り替わる」、「コピーライトを後から追加する…[File]メニューの[プロパティ]で入力」、などです。

 あと、これはMuseScoreは関係ないのですが、古い楽譜のpdfは、ページ数が多くて、しかも各ページが高解像度の画像の重たいファイルが多いのですが、この中から指定ページを抜き出す処理、フリーのツールだとCubePDFとかSepPDFなんていうのが有名ですが、今回そのいずれもがハングアップしたり異常終了してしまうファイルがありました。これを分割するのに、Webブラウザでそのpdfを開いておいて、印刷機能で指定ページをpdfに出力するようにしたらうまく切り出すことができました。ブラウザは大きくて重たいファイルでも扱える設計になっているようで、感心しました。

<おまけのひとこと>
 出版されている楽譜として入手が難しいような楽譜で、自分が手稿譜から起こしたり、通奏低音パートをリアライズしたりした楽譜を、そろそろ公開しようかなあと思い始めています。IMSLPとかに投稿すればいいのかなあ、とか、せっかくだから自分のサイトにそういうコーナーを設けようかなあとか、どうせなら英語のページにしてみようかなあとか、いろいろ妄想を膨らませています。






12月10日(土) トロムリッツのフルートソナタ

 先週に引き続いて、今週の更新は完全に音楽の話題です。すみません、最近はプライベートの時間はほとんど音楽に費やしているのです。

 先週、出張でパシフィコ横浜に行ってきました。長野県から中央本線で行くのですが、今回は八王子から横浜線に乗り換えず、新宿まで行って、副都心線→東急東横線→みなとみらい線に直通の列車で行くことにしました。帰りに新宿に戻って、少し時間があったので西新宿の村松フルートに行って楽譜を探してきました。全部で5冊買ってきたので、1冊ずつご紹介します。

 先日来、トロムリッツが気になっていたので、まずはトロムリッツの作品を選びました。

図 1

 フルートソナタ ト長調 第一楽章 Allegro、第二楽章 Allegretto Grazioso alla Ronda の2楽章です。

図 2

 こんな風にシンプルに始まります。いったいフルートはいつ出てくるのだろうとページをめくってゆくと、4ページ目にようやく出てきます。まるでコンチェルトのようです。

図 3

 フルートのパート譜、56小節の休符と、3小節分の鍵盤右手の影譜(自分は演奏しない、他のパートの音符で、長い休みの後、どこから入るのかわかりやすいように書かれる)があるので、曲の冒頭の59小節はお休みです。

 明るくて素直な曲です。でも、何度も演奏したくなる曲ではないかなあというのが率直な感想でした。先週、自分で手稿譜から起こした曲のほうが何度もやりたくなります。

<おまけのひとこと>
 12月10日(土)の早朝から午前中にかけて、このページの中身を書いたり、実際に演奏してみたりしながら12/10〜12/15の6日分の更新をしています。






12月11日(日) J.C.F.Bach のフルートソナタ

 先週入手したフルートソナタの楽譜を1冊ずつご紹介しています。2冊目は、ヨハン・クリストフ・フリードリヒ・バッハ(1732-1795)のフルートソナタニ短調です。

 有名なヨハン・セバスティアン・バッハは最初の奥さん(マリア・バルバラ)との間に7人、二番目の奥さん(アンナ・マグダレーナ)との間に13人の子供がいましたが、このフリードリヒ・バッハは、アンナ・マグダレーナの第9子で、バッハの息子たちの中ではあまり著名ではない音楽家です。

図 1

 ちなみに、このSCHOTTという出版社の楽譜の印刷は、比較的見やすくて好みです。楽譜の五線が細すぎても太すぎても見にくいのですが、ここの出版社の楽譜の五線は見やすいなあと思います。

図 2

 この曲は第二楽章が特徴的で、穏やかなフルートのアンダンテと、鍵盤のレチタティーボとアレグロが交互に現れます(図3)。 18世紀のフルート音楽は、鍵盤の役割が多様化して面白いです。

図 3

 『バッハの四兄弟 フリーデマン、エマヌエル、フリードリヒ、クリスティアン ― 歴史と現代に響く音楽』(音楽之友社 久保田慶一 2015年3月発行)という本があります。バッハの息子たちの中で音楽家になったこの4人の生涯や作品について、最近の研究の内容が書かれており、とても面白い本でした。

図 4

<おまけのひとこと>
 楽譜の画像は、楽譜を床に置いて真上から写真を撮っています。図3の譜例はページが平らになっていない状態で撮ってしまったので、右側が盛り上がってしまいました。






12月12日(月) フリードリヒ大王のフルートソナタ

 18世紀のフルート音楽というと、フリードリヒ大王とその宮殿の多くの音楽家のたくさんの作品はとても存在感があります。フリードリヒ大王の生涯は波乱万丈で、多才で強烈な性格の人だったようです。王のフルートの作品がたくさん遺されています。彼が築いたサンスーシ宮殿(無憂宮)で、フルートのクヴァンツ、ヴァイオリンのグラウンやベンダ、鍵盤のエマニュエル・バッハなどの当時の一流の音楽家が演奏していた、たいへん贅沢な空間だったのですね。

 (ちなみにブラームスは、大王の作品を「いったい誰が作曲したのかわかったものではない」と言っていたそうです。)

図 1

 フルートソナタだけでも100曲以上が王の作品として残されているということですが、今回、117番イ長調の楽譜を買ってきました。これとは別に、4曲入って6千円くらいの楽譜もあったのですが、こちらは1曲で1,800円くらいだったので、値段に負けてこちらにしました。(もちろん、一応楽譜に目を通して、ざっと読んでみて、悪くない曲だと思ったので選んだのですが。)

図 2

 イ長調(シャープ3つ)は、ちょっとだけ大変です。途中で属調のホ長調(シャープ4つ)になりますし。

 3つの楽章からなる曲なのですが、鍵盤譜が各楽章2ページずつでページめくりがないのがとてもいいです。第一楽章の同じ高さの音の連打があるところが管楽器の曲っぽいです。フリードリヒ大王の曲にしては素直に明るい曲でしたが、良い曲だと思いました。

<おまけのひとこと>
 鍵盤の役割が重要になってくると、ソロパートだけを吹いていても「いい曲だ」と思いにくくなってきます。なので鍵盤をつけてもらうととても楽しいのです。






12月13日(火) ベンダのフルートソナタ

 サンスーシ宮殿に集う音楽家の一人、ベンダのフルートソナタです。ベンダ一族というのもバッハ一族のように音楽家の家系です。

図 1

図 2

 通常、楽譜の右上には作曲者名が書かれます。生没年も書かれることが多いです。でもこの曲は“Benda”とだけ書かれています。楽譜の解説(序文)を見ると、遺されている手稿譜に、“Benda”としか書かれていないため、ベンダ一族の中の誰の作品なのか確定していないようなのです。音楽学者の研究の結果、候補としては、フリードリヒ大王の宮廷楽長だったフランツ・ベンダ(Franz Benda 1709-1786)もしくはその弟のゲオルグ・ベンダ(Georg Benda 1722-1795)が有力だということです。

<おまけのひとこと>
 音楽学者というのも面白そうだなあと思います。誰でも歳を取ると歴史や昔の文献などに興味が出てくるそうですが、御多分に漏れず私もそうなのかなあと思っています。
 ベンダの生涯、略歴なども読んでいるととても興味深いです。その当時の職業音楽家がいろいろなツテやコネをたどってより良い職を得ようとする活動、価値観の違いや人間関係に苦労する姿は、いつの時代でも同じなのだなあと思わされます。






12月14日(水) ドヴィエンヌのフルートソナタ

 先週まとめて買ってきた5冊(5曲)のうちの最後の1冊のご紹介です。ドヴィエンヌ(Fransois Devienne 1759-1803)のフルートソナタ 二長調 op.68-1 です。

図 1

 IMC(International Music Company)の楽譜で、フルーティストのランパル(Jean-Pierre Rampal)が監修したたくさんのフルート曲の楽譜のうちの1冊です。(うちにも何冊もあります)

 ドヴィエンヌは少し時代が新しい音楽家です。先週からご紹介しているトロムリッツは、キーが4つとか5つとかついたフルートを使っていましたが、ドヴィエンヌは頑なに昔からの1-keyフルートを愛用していたそうです。大変なフルートの名手だったそうです。難易度が高い、でもとても美しい曲が何曲も遺されています。

図 2

 こんな風に素朴に始まりますが…

図 3

 容赦なくこんなパッセージがでてきます。モダンフルートならまだしも、トラヴェルソにはなかなか厳しいです。(というのは言い訳で、トラヴェルソでも楽々演奏できる方はたくさんいらっしゃいます。これはトラヴェルソにとってもっとも易しい二長調で、ほとんどスケールなのでそんなに大変ではないはず、なのですが…)

 ドヴィエンヌの楽譜も何冊もあったのですが、他の曲はさらに難易度が高そうだったので、この曲を選んで買ってきました。

<おまけのひとこと>
 ドヴィエンヌの曲は美しいです。が、まともに演奏できる気がしません。






12月15日(木) 市川健夫先生

 市川健夫先生が亡くなられたという記事を読みました。

 大学1年生の前期に、教養で地理学を選択したところ、講師の先生が市川先生でした。指定のテキストが『雪国文化誌』(日本放送出版協会 1980)でした。同郷の大先輩(出身県が同じというだけですが)ということで、なんとなく親しみを感じていました。試験ではなく、レポートで単位をもらったのですが、レポートのテーマは「地方出身者は帰省時の車窓からの風景を観察・分析しレポートせよ」というものでした。あまり成績はよくありませんでした。今考えると当然だと思う稚拙な内容だったなあと思いました。

<おまけのひとこと>
 年末になって、なにかと慌ただしいです。






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