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以前の「ひとこと」 : 2009年8月後半



8月16日(日) ヤジリンを2本の線で(その1)

 先日、ヤジリンを1本線だけで解くというのをご紹介しましたが、できあがり図の面白さやきれいさを考えて、2本線で解くというのをやってみました。

図 1 図 2

 途中経過の写真を撮ってみました(図1)。これ、1本線よりも難易度が高いような気がします。まあ慣れれば似たようなものですが。

 もちろん、鉛筆で下書きなど一切しません。いきなりペンで描ける線から描いていきます。黒マスになるところにもいっさいしるしはつけません。楽しいです。

(つづく)

<おまけのひとこと>
 16日は送り盆で実家に行ってきました。






8月17日(月) ヤジリンを2本の線で(その2)

 1本線と2本線を比べてみました。同じ「ヤジリン」の本の見開きの左右を別の手法でといてみています。

図 1

 まるで印象が違います。左のほうは1つの「輪っか」の内側と外側がはっきりします。右のほうは幅が1マスのくねくねした管の印象が強いです。

図 2

 「ヤジリン」の本のパート4の一番マス目の数が多いものもやってみました。描き間違えるとおしまいなので緊張しますが、この解き方、気に入っています。

<おまけのひとこと>
 お盆休みが終わって、今日から仕事です。






8月18日(火) OLE Coordinate System

 ふとしたきっかけで、OLE Coordinate System:インタラクティブだまし絵 というものを知りました。藤木淳という方の作品だそうです。こちらの情報処理学会の論文を見ていただくと、どういうものなのかがよくわかります。

 これは上記の論文の最初の図です。OLE Coordinate System というのは、パーツを3次元的に配置したり、それらを見る視点を変えたりできる一種のエディタのようなソフトウェアです。

 このソフトウェアでは、論文の2ページ目の図3から図7にある5種類の「主観的動作」が起こるように動作します。キャラクタ(「ひと」)が動くことによって、一見真下にあるように見えて実はまるで違った場所にある(真下にない)場所に着地できてしまったり、一見つながっているように見えて実は高さも場所もまるで違う場所に移動できてしまったり、ということが起こります。これによって「錯覚」「錯視」を非常に強調する効果があって、それがとても面白いのです。

 調べてみると、ダウンロードして自由に試せるフリーウェアがあるようです。(たとえばこちら。)ただし、このフリーウェアはDirectX 9.0以降が必須ということで、手元のPCにはインストールしていなかったため、とりあえずこちらのJavaで動くweb版で遊んでみました。以下の図は、すべてこのweb版で動かした時の画面のキャプチャ画像です。

図 2

 web版で使えるのは、右側の5つのメニュー(上から、「ひと」を配置する、ブロックを置く、落とし穴をつくる、ブロックを1つ削除する、視点を変更する)と、画面左下の「全消去」です。図1にある「階段」は作れません。これらを使って遊んでみました。

図 3 図 4

図 5

 図3は、2本の角材が直角に接続されていて、その上に「ひと」が二人のっています。3人目は柱とはべつのところにいます。「ひと」は、手前の柱を手前から左上に向かって歩き、そこで90度向きを変えて斜め右上に向かって歩きます。そして黒い「落とし穴」から下に落ちます。3次元的な配置を考えると、この落とし穴から落ちたらその下には柱はないはずですが、図3の視点方向から見ると、局所的に見ると、あたかも手前の柱の上に着地が可能なように見えないこともありません。その結果、このソフトウェアでは図3のように柱と落とし穴と「ひと」を配置すると、「ひと」はぐるぐると歩き続けます。

 図3は一番シンプルな「無限回廊」で、時計回りに無限に歩き続けます。図4は反時計回りに無限ループができます。図5はエッシャーの「滝」ってどんなかたちだったっけ?と思いながら作ってみたもので(あんまり似ていません)、ひたすら流れ続けるように見えるように、「ひと」をたくさん配置してみました。

図 6 図 7 図 8

 図6は、2段階の「飛び降り」を含む無限ループを作ってみたくてデザインしてみたものです。図7、図8で視点を変えてみて、実際の構造がわかるようにしてみました。実は短いL字のパーツのほうが、長いぎざぎざのパーツより下にあります。図6の上側の落とし穴の真下に、L字型のパーツの先端が来るように設計しました。そのため、(実際に真下にあるので)視点をどのように変えても、1つ目の落とし穴の下にはL字パーツがあるので着地ができるのですが、2つ目の落とし穴のほうは、特定の視点位置にしたときにのみ、着地が可能です。

 たいへんおもしろいです。お勧めです。

<おまけのひとこと>
 朝夕がだいぶ涼しくなってきました。






8月19日(水) ジョンソンの立体J91と正十二面体、立方体による空間充填について(その1)

 7月9日のひとことで、ジョンソンの立体J91と正十二面体(以下、場合によってはDodecahedronの頭文字でDと表記します)、立方体(同じくCubeの頭文字でCと表記します)による空間充填ができるということを積み木インテリアギャラリーいたち丸の中川さんから教えていただいたという話を書きました。そのときにはJOVOブロックでJ91を3つ4つ作って実験した写真を載せました。

 昨日、中川さんから、とある方から「J91とDとCとでは空間充填は不可能ではないか」という指摘を受けたというメールを頂きました。私は可能だと思っているので、検証と説明の一助となることを期待して、CGを作ってみることにしました。

図 1

 最初に、J91の骨格モデルのCGです。正五角形4枚、正方形2枚、正三角形8枚から成る凸多面体です。

図 2

 このJ91を12個、図2のように1つずつ正十二面体を囲むように置いてゆくことができます。とりあえず正五角形と正方形の部分のみに面を張ってみました。このとき、正方形の部分がちょうど立方体を形作る構造になります。

 正十二面体Dは大きな立方体に内接させることができます。この空間充填構造は、大きな立方体に内接する正十二面体を、大きな立方体ごと積み上げていくことで実現できます。Dと1辺の長さが同じ、空間充填に使われる立方体Cは、Dが内接している大きな立方体の頂点を中心としています。そして、大きな立方体の稜12本の部分がJ91になります。このあたりのことについては、佐藤郁郎さんのデルタ充填とジョンソン・ザルガラー充填(その2)(09年7月21日)にすでに解説されています。

 このJ91+D+Cの空間充填は、私は自分で試して考えてみて納得したのですが、「不可能ではないか」というご指摘もあるとのことなので、もう少しきちんと説明してみたいと思いました。今日はその準備のための最初のステップとして作ってみたCGをご紹介しました。

(つづく)

<おまけのひとこと>
 「数学セミナー」という雑誌を毎月買っています。高校生の娘が、学校の最寄り駅の近くの本屋さんで定期購読してくれているのですが、御盆休み前後は学校にいかなかったっため、昨日ようやく入手しました。濱中裕明先生(敢えてこちらにリンク)の記事が載っていてとても楽しく読ませていただきました。

 また、今月号には昨日ちょっと詳しく紹介した、“OLE Coordinate System”がちょっと出ていてびっくりしました。最近は私のサイトを見に来てくださる方は一時期よりもだいぶ少なくなっているみたいですけれども(見に来て下さる方、本当にありがとうございます)、数学セミナーを先にご覧になった方は、数学セミナーのこの記事が情報源だと思われたかなあと思いました。実際はそうではなくてSIGGRAPH2009のDVDを知り合いから借りて見た中に、この“OLE Coordinate System”のmovieがあって、感心して調べたのでした。






8月20日(木) ジョンソンの立体J91と正十二面体、立方体による空間充填について(その2)

 稜の長さが等しいジョンソンの立体91番(J91)と正十二面体(D)と立方体(C)による空間充填ができるという話の続きです。昨日は正十二面体を囲むようにJ91を配置するgifアニメーションをご覧頂きましたが、今日はJ91が「上下」「左右」「前後」の方向に並んだものが組み合わさって空間充填がなされる様子をCGでご覧頂きたいと思います。

図 1 図 2

 図1はJ91を上下方向につないだもの(白)が帯状に並んでいる様子です。図2はJ91が前後方向に配置されているもの(赤)です。空間充填では、図2のJ91は前後方向に繋がるのですが、今回は1層分だけとりだして描いています。

図 3 図 4

 図1の「上下」と図2の「前後」を重ねて描くと図3になります。正方形4枚による「筒」ができていること、正十二面体の一部をなす、正五角形4枚による「くぼみ」ができていることが見て取れると思います。

 図4は、左右方向にJ91をつないだもの(緑)を図3に追加してみたものです。これで(見えなくなってしまいましたが)正方形のふたがされて、立方体ができました。また、正五角形8枚による「くぼみ」ができて、性十二面体がはまる様子がよりはっきりしています。

 この後、上下方向の白いJ91が手前に重なり、前後方向の赤いJ91が間に入ることで正十二面体は完成します。これを繰り返すことで空間充填ができていることがわかります。

 このように、このJ91+D+Cの空間充填は、完全に立方体の基本格子の上に実現される構造になっています。正十二面体がそのような対称性を持っていることがポイントです。

図 5

 ずっと以前にもご紹介したものですが、鏡を3枚直角に組み合わせることで正十二面体の構造を作る「錐体鏡」のCGをおまけとして掲載しておきます。

(つづく)かも

<おまけのひとこと>
 子どもたちの夏休みも終わって学校が始まっています。今日は娘の誕生日なのですが、朝、みんなでデザートにケーキを食べることになっています。






8月21日(金) 折り紙建築

 ふと思い立って、折り紙建築の手法でカードを作ってみました。

図 1 図 2

 今住んでいる家をモチーフにしています。

図 3

 型紙はこんな感じです。

 「折り紙建築」というのを初めて知ったのは、確か高校のころ(1980年代のはじめころ)に、家にあった雑誌(「婦人之友」だったと思います)に「白い舞台」(link先は 子どもの本とおもちゃ:百町森 の中の画像です) の写真が載っていて、とても感心したのがきっかけです。ほかの折り紙建築の写真があったのかなかったのか、よく覚えていません。とにかくこの「白い舞台」がとても気に入って、そのたった1枚の写真に触発されて、階段やステージ、フロアが組み合わさったいろいろなかたちを作ってみたものでした。

 2006年2月16日のひとことで、当時作っていたもののうち、手元に残っていたものの写真をご紹介しています。(これも解説を書こうと思って書かずじまいになっている話題でした。)

 これは単語カードに鉛筆で下書きを入れてカッターで切って作ったものです。ですからかなり小さなものです。「白い舞台」をまねしているのがよくわかります。

 こんなものをたくさんつくっていたおかげでしょうか、私は階段というものがとても好きになりました。今住んでいる家もスキップフロア構造で、階段がたくさんあります。

<おまけのひとこと>
 「折り紙建築」の創始者である茶谷正洋先生は、昨年の11月に亡くなられているのですね。








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