縦じまと横じま

　『エルマーのぼうけん』という本があります。しばらく前のこと、子供がこの本に出てくる“りゅう”の絵を描いていたのですが、縞模様の向きがちょっと変でした。尻尾がなめらかにカーブしている絵だったのですが、尻尾の向きにかかわらず、縞模様は機械的に平行に描かれていたため、根元では横じまだった尻尾が、先端では縦じまのようになってしまっていました。あたかも、包装紙か何かから曲がった尻尾のかたちをきりぬいた、といった感じでした。

　これを見て、「ちょっと変じゃない？」という話になったのですが、どうやらうちの子はまだ縦じまと横じまの区別があんまりよくわかっていないようでした。そこで、縞模様のものをいろいろ挙げてみて、「縦じま横じまクイズ」をやってみました。まあたいていはこちらが期待した答が返ってくるのですが、そうじゃないときもありました。私達は普通、どうやって縦じまと横じまを区別しているんでしょうか？

　最初に生き物から考えましょう。縞模様の生き物といったら、例えばトラ・シマウマ・シマリス・エンゼルフィッシュ・シマヘビ・・・まだまだたくさんいます。このなかで縦じま・横じまはそれぞれどの生き物でしょうか？

　次に乗り物を考えます。たとえば自動車。縦じま模様の自動車、横じま模様の自動車、といったら、それぞれどんな方向の縞模様をイメージしますか？　パトカーは白黒に塗り分けられていますが、あの境界線は縦線でしょうか、横線でしょうか？　列車も塗り分けられたデザインが多数ありますが、ほとんどがパトカー同様、進行方向に平行です。あれは縦じまでしょうか横じまでしょうか。

　船だったらどうでしょう？　船はよく喫水線に平行に色分けされていますが、あれは縦でしょうか横でしょうか？　じゃあ“たらいぶね”だったらどうでしょう？　気球のバルーンもよくカラフルな模様のものがありますが、あれは縦横はどうでしょう？　飛行船だったらどうでしょう？

　建物についても考えてみましょう。東京タワーの紅白のシマシマ、あれは横ですよね。じゃあドーム球場の屋根のメッシュ、あれはどっちかが横じまでもう一方が縦じまなんでしょうか？　それとも両方縦じま？　見る方向によって違う？　では、かまぼこ型の農作物用のビニールハウスはどうでしょう。（2001年5月11日現在、このサイトのライブカメラの画像にビニールハウスが写っていると思います。）半円形の骨組は、ちょうど動物の肋骨のようですが、あれは横じまでしょうか縦じまでしょうか？　動物なら横じまですが・・・。

　身の回りのものについても考えてみましょう。コップに縞模様をつける、これは横じまと縦じまははっきりしています。では、平べったい丸いお皿に縞模様をつけるとしたら、横じま、縦じまはどうなるでしょう？　では、お刺身とか焼き魚とかを載せるような、和食器の四角いものだったらどうでしょう？　たとえばサンマがのっているような細長いものだったら、お皿の縦横は、サンマ自身の縦横と同じでしょうか？

　大きなものについても考えてみましょう。虹は七色といわれますが（余談ですが、これは文化によって規定されるらしく、国によっては６色とか５色とかもっと少ない民族とかもあるそうですね）、あれは横じまでしょうか縦じまでしょうか？　土星の環もたくさんのリングの集まりですが、あれはあえて言うと横でしょうか縦でしょうか？　地球だったら、緯線が横じまで経線が縦じま、という感じがありますがそれはなぜでしょう？

　まだまだいろんな例があると思いますが、皆様これまでの例について、縦じま横じまをきちんと理屈をつけられますか？　とりあえず私なりに考えてみると、たとえば

　・対称軸に直交するのが横
　・重力方向（自然に見たときに上下方向）が縦
　・長いほう（進行方向）が縦

というようないくつかの原則があるように思えます。これらの原則が矛盾するように見える場合もありますが、たいていの場合は理屈がつけられます。たとえばシマウマは横から見ると縞模様は上から下、つまり重力方向ですから縦ですが、シマウマは生き物なので脊椎に直交する方向は横じまです。シマウマを真上から、つまり背中側から見ればちゃんと横じまになっています。

　これだけのルールでちゃんと説明がつくか、というとどうもうまくいかない場合があります。これは本来私達の身の回りのものは３次元であるのに、それをむりやり縦と横という２方向に分類しようとするから無理が出ることがあるのです。本当なら軸は上下・左右・前後（天地・東西・南北でも同じ）の３方向あるので、それぞれの軸に対する縞模様があるのです。

　たとえば、ドーナツを考えてみてください。ドーナツの横じまってどんな模様でしょう？　縦じまのドーナツってどんな模様でしょう？　これはさっき挙げた原則にかなっているでしょうか？