ウッドウイル16年のノウハウ に 新機能を加えた
最高峰のスピーカーシステム/エンクロージャーの提案です
1章 従来のスピーカーとの比較、検討を通して潜在する問題点を考え、 その解決方法を探ると言う形で新作の解説を進めます。 今迄の文章による機能説明をなるべく避け、 可能な限り実測値やグラフなど検証可能な例を用いて解説します。 ウッドウイルは音質向上を目指して個人工房ながら製品開発を進めて来ました。 今回の発表でスピーカーエンクロージャーの最高峰に到達出来るレベルに近づいたか、と考えます。 製作するのは全ての機能を盛り込んだ最高の作品だけでは勿論ありません。 注文製作のメリットとしてお客様のご要望に添って必要な機能を持たせた作品を提案致します。 今後はこれらの音質向上のノウハウを基により短納期で製作出来る手法を開発し、 コストダウンにつなげればと考えています。 |
2章 「従来の一般的なスピーカーエンクロージャー」 ![]() 1.6枚の板材を組み上げた直方体構造。 2.スピーカーユニットは何の疑問も持たずにエンクロージャーに取り付けています。 3.このシンプルで永く慣れ親しんだ構造に潜む問題点、これから検証していきます。 |
3章 「直方体構造には定在波が生じる」 ![]() 1.相対する平行面の間に、有る周波数の音を加えるとその距離に応じた(共振)定在波が生じます。 2.音叉を鳴らし、その固有周波数と同じ共振(定在波)を生じる箱構造物に近づけると 音が大きくなる事を知っています。音叉の固有周波数と箱構造が共振する現象です。 この現象をここでは定在波と呼びます。 3.可聴周波数帯での定在波を発する様な距離(寸法)を持つエンクロージャーは、 共振して固有の音だけが強調されます。 4.定在波は固有の周波数で共振します、これは基本波での共振と言い、 実際には基本波に対して2倍、4倍、8倍...、1/2倍、1/4倍、1/8倍...と永遠に続きます。 これを偶数時、奇数時倍の高調波による定在波と呼びます。 5.直方体構造のエンクロージャーでは、幅/高さ/奥行きの3面での定在波が発生しますので、 上記の基本波、偶数倍、奇数倍の周波数の種類は更に3倍に増える事になります。 6.これら定在波が生じるのは構造的な原理から止める事は出来ません。 製品ではこれらの定在波が重なる(共振が増加されます)事を避けて、 幅/高さ/奥行きなどの寸法やその寸法比を慎重に検討します。 7.次ではその定在波の具体例を見て検証します。 |
「エンクロージャー内部に発生する定在波とは」 −1.定在波発生の予測 1.上記のW/H/Dを下記の寸法と仮定します。 W:500mm H:680mm D:340mm 2.この寸法から計算される定座波は下記の条件のみに限って検証しますと。 1/4倍波 1/2倍波 基本波 2倍波 4倍波 W: 170Hz 340Hz 680Hz 1.4KHz 2.7KHz H: 125Hz 250Hz 500Hz 1.0KHz 2.0KHz D: 250Hz 500Hz 1.0KHz 2.0KHz 4.0KHz 3.作図しますと概ね下記の様になります。 ![]() (計算によるイメージ) 4.同じ周波数が重なる定在波の共振(振幅)は大きくなります。 基本波に重なる共振(振幅)は更に大きくなります。 1/2、1/4...と続くに従い共振(振幅)は少なくなります。 5.この例には奇数波を考慮していません(共振のピークが多過ぎて作図不可となるから) 4倍以上、1/4以下も含まれていません。 それでは実機での様子を次に見てみます。 |
「エンクロージャー内部に発生する定在波とは」 −2.最近の中高級機クラス製品の定在波発生の様子 1.ペア50万円クラスの最近の市販品の例です。 直方体ですが、一部にはテーパー状(手前と奥の平行面寸法が違う)も有り。 吸音材は対向する3面の内、一面だけに貼り付けています。(何故三面に張らないのか不可解) 2. ![]() 3.約80Hzの信号に対しての定在波の分布です。 左端が基本波で、右側の高域に行くに連れて高調波による定在波は次第に小さくなります。 高調波の最大振幅で約45dB、フラットな帯域よりも約180倍のピークを持った定在波を読み取る事ができます。 4.3KHz以上は無数の定在波で判読不可です。 これはエンクロージャー内部の定在波ですので、リスナーが聞くユニットから出る音の波形とは違います。 5.エンクロージャー内部の定在波がユニットから聞こえなければ障害にはならないので、 次は、この定在波がスピーカー正面からのユニットの音にどれだけ含まれているかを見てみます。 |
「エンクロージャー内部に発生する定在波とは」 −3.定在波がユニットを通して聞こえる成分は 1.市販品で約200Hz時の定在波を測定したものです グラフ上:ユニット正面 / グラフ下:エンクロージャー内部 ![]() 2..約600Hzポイントを見ますとエンクロージャー内部定在波のピークは下図で約+5dB。 .同様にユニット正面の上図では-40dBとなり、定在波は45dB減衰してユニットから聞こえています。 .定在波は-45dB減衰していますが、尚、ユニットからは他のフラットな帯域よりも20dB大きな ピークを持った音が出ている事が分かります。 3.高音質再生を目指すスピーカーの再生周波数特性に20dBのピークが有る事は 到底許容されませんので、定在波対策が必要な事が分かります。 |
「エンクロージャー内部に発生する定在波とは」 −4.定在波減衰対策の吸音材の効果とその功罪 1.定在波対策で一般的なのは吸音材を充填する事です。試験に用いた市販品も吸音材を用いています。 音響エネルギー(音波)が吸音材の中で共振しながら摩擦で熱エネルギーとして消費されるからです。 2.吸音材以外にも他の手法が有りますし、吸音材にも多種類存在します。 3.ここでは吸音材の効果と功罪について考えますので、その種類については考慮しません。 4.下記の図は市販品スピーカーでの200Hz〜300Hz時のエンクロージャー内部の定在波を測定したものです グラフ上:吸音材有り グラフ下:吸音材無し ![]() 2.縦軸の波形の振幅に注目して下さい。 .吸音材無しでは概算で40dB〜90dBの定在波が読み取れます。 .吸音材有りでは概算で15dB〜75dBの定在波が読み取れます。 .大凡1KHz〜高域で顕著な特徴が出ています。 .吸音材により定在波が減衰している事が確認出来ます。 .吸音材は低域成分の吸収効率が低い。 3.市販品スピーカーでの200Hz〜300Hz時のユニット軸上で測定したものです グラフ上:吸音材無し グラフ下:吸音材有り ![]() 4..スピーカーユニット軸上から測定して定在波が確認されていますが、 その定在波が吸音材の有無によってどの様に変化するかを見たグラフです。 .一見すると吸音材充填により定在波が吸収されて効果的に見えます。 .しかし、吸音材には定在波と音楽信号を区別する機能は有りませんから、 全ての帯域で波形成分を吸収します。 .図により吸音材によって大凡−15dBの波形吸収効果が有る様に見えます。 言い換えますと音楽信号のダイナミックレンジが-15dB(約1/6)悪化した訳です。 エンクロージャーと吸音材による機械的コンプレッサーを通した音となってしまいます。 5.下グラフはウッドウイルの代表する「ウイング」で約200Hz時の定在波を測定したものです。 グラフ上:ユニット正面 / グラフ下:エンクロージャー内部 ![]() 6.下図では、約200Hzを入力していますので、基本波は現れます。 しかしその他の偶数時や奇数時などの定在波はごく僅かに現れている程度です。 7.上図では定在波以外の周波数のピークが幾つか見られますが、 これは回析現象等の影響と考えられます。 8.ウイングにはハガキサイズの吸音材を使用しています(内蔵するネットワーク部品を包む量です) 他のエンクロージャー内面全体に張る量と比べると極めて微量です。 9.構造的に定在波を発生しないラウンドエンクロージャーの特徴を理解いただける事と思います。 総括しますと定在波を発生するスピーカーシステムでは 1.解析出来ない程の多量のピーク波形の存在によって 再生周波数特性の乱れが生じ、音質への悪影響は計り知れない。 2.定在波吸収の為の吸音材は音楽信号をも吸収し、機械的コンプレッサーとなっいる。 全てのオーディオ機器が目指す機能の一つ、ダイナミックレンジの確保。 音楽を聴いて感動する一番重要な要素の一つが失いかねない大きな損出です。 3.ウッドウイルはこの2点を許容出来ません。 10数年間、多種多様なラウンドエンクロージャーを開発する過程で、 理論的にも実測でも定在波の生じない構造に取り組んでいます。 |
4章 「ラウンド(曲面)エンクロージャーの検証」 −1.回析現象 1.ラウンドエンクロージャーは相対する平行面を持たないので原理的、構造的に 定在波を発生しない事を3章で検証しました。 2.定在波が生じない事から必要悪の吸音材も使わないので、その弊害も生じない。 3.ここでは下記、模式図を用いて「回析現象」について検証します。 4.ユニットから出た音(音波)は基本的に全周囲に向かって拡散して行きます。 5.下図の左側は直方体エンクロージャーを想定した物で天から地を見ています。 ユニットから全周囲に拡散する音波が鋭利な角等に当たりますと、そこで反射が生じます。 鋭角で有れば有る程、その反射は顕著で大きな物になります。 6.図の左側の角はバッフル面の脇に当たります。 全周囲の音波が角に当たりますと、そこで反射が生じ、その点が新たな音波の発生源となります。 ユニットとは別の音波が発生する訳です。 7.角を超えて側板に到達した時には入射/反射角による拡散が生じると考えられています。 8.ユニットの音波と角から生じた音波が複雑に影響し合い干渉します。 これを回析現象と呼びます。 9.図の右側のバッフル脇が曲面の場合は直角部での反射が少なく、 側板表面を滑らかに添いながら拡散していくと考えられています。 ![]() (イメージ図です) 10.下図はその回析現象を市販品を利用して測定したグラフです。 黒波形:ラウンド 赤波形:角 ![]() 11.測定に用いた製品のバッフル脇は直角です。 その角を囲む様に円柱を被せて便宜上バッフル脇をラウンド(曲面)とします。 12.グラフから約1KHzを境に低域側ではバッフル角では波形にディップ(凹)が見られます。 13.高域側ではピーク(凸)やディップ(凹)が不規則に生じている様子が分かります。 14.このグラフでは黒色波形/赤色波形のどちらが優れた波形かの判断は難しいですが、 相対的に見て、バッフルの角と曲面では明らかな違いが生じている事は確認出来ます。 15.官能評価(試聴感想)では定位、広がり、音場感が向上しますので、 再生周波数特性の変化よりは位相が乱されている事の障害が、 より大きな悪影響を与えていると考えられます。 総括しますとエンクロージャーの直方体構造では回析現象が発生する 1.回析現象の生じない曲面のエンクロージャーが望ましい。 2.スピーカーからの物理的な特性の悪化は他のオーディを機器ではカバー出来ない 3.実際のリスニングルームでの再生周波数特性はフラットで無い事が多く、 室内補正も可能な現在、上記の波形の乱れは重要には見えないかも知れませんが、 スピーカー自身による不自然な回析により生じた乱れは、 室内で更に反射されてリスナーに届きます。 回析による乱れは室内補正では困難な事から原因源を断つ事が重要と考えます。 |
5章 「エンクロージャー振動の検証」 −1.ユニットの作用と反作用による振動 1.下図はユニットとエンクロージャーの相関関係を表す模式図です。 2.ユニットの振動板が前方に振れる信号(作用)@が働いたとします。 3.ユニットの磁気回路は振動板を前に押し出す仕事を行ったので、 磁気回路が固定されているユニットのフレーム構造全体には 作用と反対の方向に向く仕事、反作用が生じます。 4.フレーム構造の反作用の方向はAとなります。 5.ユニットはエンクロージャーに固定されているので バッフル板もユニットのフレームと同じ方向のBが生じます。 6.ユニット振動に相応する大きさでエンクロージャーも振動します。 7.この振動を減衰させる為に各種の対策を施します。 硬い材料/厚い材料/補強/等々です。 8.この振動を積極的に利用したスピーカーが響きを活かした音色(官能的)となります。 9.振動を徹底的に減衰させたのがモニター的なと言われています。 ![]() 10.物理法則により振動エネルギーを減衰、減少させる為には 何らかのエネルギーに変換して消費(燃やす)事が必要となります。 11.響きの豊かなスピーカーはエンクロージャー振動と空気振動に変換して減衰します。 12.モニター的スピーカーは補強等で振動を制御したとしても、 その振動エネルギーはエンクロージャーに留まったままです。 実は振動は平均的にエンクロージャーに分散出来た事でしか有りません。 官能的スピーカーよりも音は長くエンクロージャー内に留まっているかも知れません。 13.十分な充填量の吸音材に吸収させて熱エネルギーに変換する事も出来ます。 吸音材の必要悪を承知の上で。 14.もう一つは反作用のエネルギーを運動エネルギーに変換して消費出来る程の 大重量のエンクロージャー構造とする事です。 15.このエンクロージャー振動についての解析は下記の項で既に調査済みです。 http://www.lcv.ne.jp/~woodwill/Enclosure-analysis.html 16.参考までに)エンクロージャーがどの程度振動しているのかを実感する為の音源です。 JBLランサーL-101のエンクロージャーにセンサーを取付て収録します。 ユニットの音は入っていません。バッフル/側板/背板の振動音だけを拾った音源です。 http://yahoo.jp/box/LtXwrc 手順:上記URLの希望のファイルをクリック→次画面左上のダウンロードボタンをクリック→次画面下のファイルを開くをクリック →数十秒待ちます→PCの再生プレーヤーが立ち上がり再生開始(方チャンネルのみ/エンクロの振動の音ですので小さめです) 総括しますとエンクロージャーの振動は許容出来ない 1.エンクロージャー振動は想像以上に大きい。 2.反作用を充分に受け止められない(故に振動する)事でユニットは能力を発揮出来ない。 3.ユニットからの音とそれ以外の音(エンクロージャー振動)で、総合干渉しての悪影響。 |
「エンクロージャー振動の検証」 −2.ユニット振動とエンクロージャー振動は逆位相 1.上図9.をもう一度ご覧下さい。 振動板が前に振れて作用運動。 ユニットは反作用で後ろに振れて逆方向。 バッフルも同様に後ろに振れて逆方向です。 2.振動板の音とその周りのバッフルの音が逆位相で同時に鳴っています。 3.回析現象で検証した様にここでも何らかの障害が生じている事が想像出来ます。 4.ここでヴァイオリンやチェロを例に弦楽器の振動を考えてみます。 .弓で弾くと弦は響板と平行の振動を生じる。 .響板を効率良く響かせるには弦の横振動を縦振動にする必要が有ります。 .その為に響板に駒という変換装置を用いています。 .次に響板の響きで空気室を共振させ、同時に底板を効率良く響かせる必要が有ります。 .響板と底板を細い丸棒(魂柱)で連結する事により響きを豊にしています。 5.弦楽器は振動させるのが役目の道具ですからスピーカーとは異なりますが、 全ての振動ベクトルは同一方向に向かっていると言う事です。 6.スピーカーに戻りますが、ユニット振動とエンクロージャー振動は互いに協力関係にあるか、 互いに完全に独立して影響を与えない事と考えます。 総括しますとエンクロージャー振動は複雑に音質に影響をしている 1.ユニット音とエンクロージャー振動音は逆位相。 2.ユニット音とエンクロージャー音は相互に干渉している。 説明は次の章のMGESで。 |
6章 「MGES搭載によるユニットとエンクロージャー振動の吸収」 ![]() 1.5章−16.JBL L101のエンクロージャーから発生している音をお聞きになりましたか? 2.エンクロージャー振動によって音が濁る、明瞭度が落ちる、低音の締まりが悪い、 等々の悪影響の一つが、ユニット以外から音が発生している事で理解出来たと思います。 3.エンクロージャーはユニットの作用/反作用を埋め止める程の強度が有るのでしょうか? 4.結果はどの様に補強等を工夫しても不十分の様です。 ですからエンクロージャーが振動します。 ウッドウイルはその解決方法として「MGES」エムゲスと呼びますを開発しました。 「Mechanical Ground Earth of Speaker Unit」 の略 振動系質量の数百倍の質量を備えた「MGES」によりユニット振動を吸収して受け止めます。 5.振動を吸収した「MGES」は床(仮想アース)から立ち上がった支柱で支えます。 6.ユニットは「MGES」に固定しますので、例え振動が残っても仮想アースに消えます。 7.ユニットはエンクロージャーに固定しません。 8.ユニットとエンクロージャーは密閉しますが機械的に絶縁します(振動を伝えません)。 9.エンクロージャーはユニットに空気室を与えるだけの「エンクローズ」、 囲い込むだけの本来の機能のみを受け持ってもらいます。 10.エンクロージャーはユニットの作用/反作用の機械的振動の影響を受けません。 これがウッドウイルが考える5章のエンクロージャー振動への解決策です。 11.参考画像です ![]() 上図がMGES搭載で約300Hzで-45dB / 下図が非搭載で同じく−5dB MGES搭載で約300Hzで40dB(1/100)の減衰効果を確認出来ます。 詳細は下記で http://www.lcv.ne.jp/~woodwill/MGES-Main.html 総括しますとMGES搭載で音は劇的に改善します。 1.振幅の大きな低域帯の音質向上は予想範囲で向上します。 2.音場の幅や奥行きなどの音場の広がりが得られます。 3.回析効果減衰時と同様の効果が得られます。 4.ユニット音とエンクロージャー音(振動音)の相互干渉で 位相特性が乱れていると考えられます。 |
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