火葬戦記 〜跳梁跋扈!?〜
第十九話
1945年11月11日 満州帝国 ハルビン郊外 「あ〜っ! 何なんですか、これ! 危ないじゃないですか! 爆発したらどうするんですか!」 「バカヤロウ。軽装備でこんなトコに来る方が、死ねるだろうが」 「バカモノォッ! 声が高い!!」 荒木と五十嵐の口論に、小隊長の一喝が割り込んだ。 一番声が高いのは小隊長だが、そんなふざけたツッコミを入れる奴は、流石にいない。 「どうした?」 「え〜っ、何スか、曹長。二号車に行ってくださいよ、二号車に」 騒ぎを聞きつけた新田が、99式自走12糎無反動砲の一号車に寄ってきた。 阻止せんとする五十嵐だが、その行為が、何か良からぬ事を隠さんがため…と、逆に悟られてしまう。 「何だ、上官に対してその言い草は。貴様という奴は大体…いや、ちょっと見せてみろ」 まさか皆の見ている前で、上官を襲ったりはせんだろうと思いつつ、新田はハッチから中を見た。 暗い車内、その容積の1/3ほどを、なるほど何か大きな筒のような物が、多数占拠している。 一番手近な物を見れば、それは29号軽対戦車誘導弾だった。 「…貴様、どこで盗んだ?」 「ははっ、第三中隊の集積所からであります!」 ピシッと背筋を伸ばし、敬礼をしながら、開き直る五十嵐。 後ろで溜息を付く、荒木と島村。 怒りを通り越して、呆れる新田。 ちなみに彼等は第二中隊所属である。 「貴様という奴は…。はぁ…。もういい、今のところは不問に付すから、さっさと場所を用意しろ」 「は〜い。…何スか、場所って」 「場所は場所だ。本官の乗るスペースをつくれ」 さも当然のように、新田曹長は言った。 「え〜っ!? このくそ狭いのに…屋根上に乗れば良いじゃないッスか!」 「な、何だと、貴様!? そういう…」 ポンポンと、五十嵐は自分の鼻を叩いて見せた。 記憶が甦る―― “るせーっ、ハゲ! 鼻削ぐぞ、鼻ぁーーーっ!?” この世の物とは思えない。 「う、うむ。確かに狭いな。致し方ない」 鼻を切り落とされたりしたら、たまったものではない。 やりかねないから恐ろしいのである。 すごすごと引き下がる新田。 しかし…。 「何をしとるんだ、新田曹長。貴様がそんな馬鹿な場所にいたのでは、伝わる命令も伝わらんだろうが。車内に入れ!」 「えっ?」 小隊長の声が、再び割り込んできた。 そして…。 「ちくしょーっ! 俺は豆タンク一号車の車長だぞ、なんで屋根上なんだ、コラァ!? おいーーーっ!」 「そこの痴れ者! 見つかりたいのか、静かにしろ!」 「ちっくしょー、俺が何したってんだよ…」 上官に暴行を加えたのである。 寝静まったハルビンの街へ、ゆっくりと小隊は接近中であった。 「第一分隊には威力偵察を命じる」 「ええ〜っ!?」 「何が、“ええ〜っ”か、大うつけッ!! 誰かが、この勇敢な任務をこなさねばならん、その栄誉を与えてやろうと言っているのだ!」 街まであと数百mのところまで、彼等は来ていた。 相も変わらず騒がしい連中だが、それ以上にエンジン音が大きいので、関係ないのだろう。 小隊は三つの丘陵に上手く身を隠し、数人が双眼鏡で街を観察している。 「歩哨が居ますが、数は多くありません。ご覧下さい」 叫ぶ小隊長の横から、一人の兵士が彼に言った。 くわえタバコの、柄の悪い兵隊だ。 「ん? あ、貴様、タバコは狙撃される恐れがあるから持ち込むなと言っただろう! 本当〜に、馬鹿の集団だなッ!」 そう吐き捨てながら、小隊長の中年少尉は、双眼鏡をひったくった。 ふん、と変な気合いを入れながら、彼は街を覗く。 他人に馬鹿の何のと言いながら、実はこの男も、相当な変人なのだ。 「…」 変な時間が過ぎる。 「威力偵察はどうなるっスか?」 たまりかねて、五十嵐は口を挟んだ。 ゆっくりと双眼鏡を下ろし、小隊長は口を開く。 「バカモノォッ! 貴様、この状況下で威力偵察など必要あると思っておるのかッ!?」 自分で言い出しておいて、怒鳴る小隊長。 「…いや、え〜と…、了解しました。それで、作戦の方は」 「一斉攻撃だ! 皇軍の栄光は、突撃の下にのみ、拓かれるのだッ!! かぁぁぁぁッ!!」 異常な気合いを漲らせ、彼は、その有り余るエネルギーで、軍刀を振り翳した。 鬼神の形相。 その迸る精神力を、一号車に乗る四人は、唖然とした表情を凍り付かせて、眺めていた。 この男なら、竹槍でB−29を墜とせるだろう。 「何だそのアホヅラはッ! さっさと準備に掛かれッ!」 誰のせいでアホヅラを晒しているのかも気付かず、彼は怒鳴った。 弾かれるように、小隊の面々は、それぞれ車輌(豆タンクばかりではない)に飛び乗る。 五十嵐も、定位置の天井上へと収まった。 そして、後からやってきた新田曹長へ、言った。 「あの小隊長、だいぶキてますね」 「うぅむ…」 曹長は、言葉少なにハッチへ潜り込もうとする。 「…顔が青いッスよ」 「気にするな…」 そのまま、新田曹長は車内に潜り込んでしまった。 今度の任務は、逃げ場がない。 まあ、怖いのも当然か。 五十嵐はそう思った。 「撃てぇええええッ!!」 とんでもない形相で、小隊長は吼えた。 10輌の自走無反動砲の、連装の12糎砲が、一斉に火を噴く。 うつらうつらと見張っていた歩哨が、泡を食って逃げ出す。 「うはははは! イケイケ突撃! 大日本帝国バンザーーイ!!」 「しょ、小隊長…?」 相変わらずトンデモナイ形相で、興奮の極みにある小隊長。 部下が心配げに声を掛けるが、まるで聞いていない。 砲声。 それがさらに、彼を興奮させる。 ぐんぐん街が迫り、やがて無限軌道は土ではなく石を踏みしめるようになる。 ハッチから身を乗り出し、腕を振り回し、叫び狂う姿は、多くの人間に目撃された。 豆タンクがソ連兵を追い回す。 「は〜っはっはっは! 逃げろ逃げろ〜! さもないと、やむを得ず轢死だぞぉ!?」 まるで、ヤクザが子供達を追い散らすような戦い。 機関銃を撃って健気に抵抗する即席トーチカに、3輌から車載重機の集中砲火が浴びせられる。 どこから出て来たのか、自走重砲に、12糎砲弾が何発も連続して命中する。 「突撃! 突撃! 突撃ィーーーーッ!!」 今や小隊長の興奮は、最高潮に達していた。 先陣を切るのが一号車、小隊長はその次の二号車だ。 「バカヤロウ! もちっと弾、節約せぇや!」 一号車に乗る五十嵐は、車載重機を発射しながら、マイクに怒鳴った。 言うそばから、12糎無反動砲が派手に火を噴く。 腹に応える爆発音が轟き、立ちはだかる障害物が爆砕された。 『ケチって死んだら、目も当てられないですよ!』 ヘッドフォンから、回答。 「あぁ〜、どうなっても知らねぇぞ!」 時速70kmで突進する豆タンクの屋根上で、彼は真正面を見据えた。 「川だ! 減速しろ!」 残骸を踏み砕きつつ、一号車は急停車した。 二号車以降が、連られてつんのめるように停まる。 「どぉしたぁ!! とつげ…」 「小隊長、川に出ました!」 「なにぃッ!? …よし、陣地を構築する! 第四、第五分隊は橋を確保しろぉ!」 市街地は、斜めに走る川に分断されているのだ。 現在、彼等はその南半分を、支配下に置かんとしていた。 「そろそろだ。主砲戦用意。目標、左舷前方のソ連機甲部隊」 先頭を行く戦艦伊勢が停止し、その主砲群が、ゆっくりと左舷を指向する。 後続部隊も、それに追従する。 「撃ち方、はじめ」 重々しい砲声が、一斉に大満州、長春郊外の天地を揺るがした。 炎が空を焦がす。 3個戦隊の誇る、41cm砲64門、36cm砲56門、総計120門の一斉射撃だ。 平原一杯に広がったソ連戦車軍団を、巡洋艦を一撃で屠り去る大爆発が、次々と薙ぎ払っていく。 『陸上艦隊』 それは、日本海軍が企画した、世界最強の破壊力を持つ陸上部隊。 伊勢型戦艦 特五式機動砲 特六式機動砲 それは、無限軌道で走る戦艦だ。 巨大な図体による、長大な航続力。 圧倒的な火力。 それに見合う防御力。 これを20隻も同時に投入する事の意味は、最早言うまでもない。 これこそが、「大魔王計画」の真髄なのだ。 日本陸軍の戦車部隊が、これまた一杯に展開し、各々主砲を放ちつつ、突進する。 四式戦の大編隊が、孤軍奮闘するIl−10“シュトルモヴィク”に襲い掛かる。 「アソ1、攻撃に入る!」 柳井大将の駆る荒鷲は、さらにその一方的展開を、助長しに掛かった。 大気を裂き、天を揺るがす轟音を引っ提げて、超音速戦闘機が飛ぶ。 柳井は、爆撃演算器を起動した。 ヘッドアップディスプレイ 光像式統合照準器が、弾着予想点を正確に表示する。 フットバーを思い切り蹴り込み、機体を滑らせる。 見渡す限りの敵の群だ。 どこに落としたって構わない。 「アソ1、投下!」 スロットルに取り付けられた引き金を、引く。 軽い衝撃の後には、明らかに機体が浮き上がる感覚が残る。 それを感じるか感じないかの内に、彼はスロットルを全開にしながら、操縦桿を引いた。 甲高いエンジン音がさらに高さと大きさを増し、振動が僅かにその強さを増す。 強いG。 そして、高迎角にも関わらず、機体は加速しながら駆け上がっていく。 「すげぇ飛行機だ…」 Gに耐えながらも、彼はそう漏らした。 彼の機が投下した24個の500kg爆弾が、バラバラと地上を襲う。 ヒューという音の後には、閃光と衝撃波が走り、大爆発が大穴を開ける。 第二斉射が、地獄の咆吼を伴って、大量の砲弾を吐き出した。 戦車複数をまとめて吹き飛ばす通常弾。 鉄の雨を降らす散開弾。 反撃しようにも、射程が足りない。 制空権は日本側にある。 一発でも発砲した砲には、たちまち攻撃機が殺到し、爆撃がそれを沈黙させる。 信じがたい火柱が、大重量のJS−2をも空中に高々と放り上げる。 炎と煙が、何もかも呑み込んでいく。 残されるのは残骸とクレーター、煙と死骸。 ソ連陸軍96個師団の精鋭は、次元の違う投射量の前に、撤退を余儀なくされつつあった。 完全なワンサイドゲームが、始まろうとしている。 誰もがそう思った。 11月15日 アメリカ合衆国ホワイトハウス 新聞の大見出しで、某人物暗殺の記事が載っていた。 男は、それを見てニヤリと笑った。 まあ、反対派の首班が死んでくれれば、嬉しいのは当然だ。 だが、その笑み、それだけではないのだ…。 「閣下、大統領閣下」 呼ばれた男、W・B・トルーマンは、顔を引き締め、 「入れ、開いてるぞ」 そう答えた。 あまり見慣れない男が入ってくる。 「何だ?」 誰だったかな、などと考えながら、大統領は口を開いた。 「謎の感染症ですが、原因が掴めました。これをご覧下さい」 巨大な風船が、電柱に引っ掛かっている写真。 「風船爆弾…? というと…、きゃつら、まさか!?」 「はい、検出されました。98%の確率で、間違いありません」 「ただでさえ気に入らない奴と思ってたが、こんなマネまで…! 汚いぞ、トージョー!」 机を叩き、彼は猛然と立ち上がった。 風船爆弾に炭疽菌を載せ、米本土を直接脅かす。 そういう事だったのだ。 「…しかし、公表するわけには行かんな。今まで通り、ワクチンと抗生物質の調達を急がせろ」 「最善を尽くしております。詳細は、この報告書をご覧下さい」 トルーマンは、20枚ほどにまとめられた報告書を受け取った。 …事実を公表して、何になるだろう。 混乱を煽るだけだ。 単なる流行で済ませ、一方政府の対策、その効果は強調する。 そうだ。 それが政治だ。 しかし、彼にとっても、それはとても歯がゆいことだった。 彼は、電話を取った。 「ワシだ。アレだが…。うんうん…、そうそう、問題があったら、すぐ言ってくれ。…そうだ、急げ。期待しているゾ」 すぐにでも報復攻撃をしたいが、焦ってはいけない。 「…卑怯者め、卑怯者め! 卑怯者めぇーーーっ!? 今に覚悟せぇよ、ワシのスーパー忍術で、ワカらせちゃるぅううぅぅ!?」 窓の外の青空に、力一杯叫びながら、それでも彼は、無謀な命令を下すことは無かった。 そう、青い空。 抜けるような純粋な青を見ていると、怒りなども馬鹿馬鹿しく思えてくる。 「…それでも、許せん。許すわけには行かんのだ」 そう、既に病魔に襲われ、苦しみ、死んだ者も居る。 アメリカ人だから武器は持っているかも知れないが、それでも非戦闘員の命。 変人トルーマンといえども、大統領なのだ。 同日、ハルビン 「結局、威勢の良いのは初日だけだったよなァ」 「そうですね」 「ま、でも、生きてられたってだけで、御の文字じゃないっすか?」 「まあな」 建物の陰から川面を睨む一号車、その中で戦闘食を摂りながら、彼等は話していた。 川の対岸には、ソ連側の司令部が置かれているようなのだ。 本当は落としたいところだが…。 味方の航空機はすべて前線に出払っており、こちらには計画通りに輸送機型富嶽しか飛んでこない。 むしろ、時折敵機が現れる状況だ。 「しっかし、あの小隊長でも、川を泳いで奇襲しろ、とは言わねぇもんだな」 「ま、さすがに…」 結局、橋はすべて壊されてしまったわけである。 川を泳いで渉ったりしたら、どうなるか。 冬の満州。 ソ連軍を待つまでもなく、それだけで、答えは出るというものだ。 それに引き替え、連中は架橋車を持っているようなのだ。 まあ、監視していれば、問題は無い。 『バカモノォッ!!』 唐突に、とんでもない大声が、無線機を通じて車内を貫いた。 跳び上がって驚き、頭をぶつける3人。 「畜生、あの壊れ小隊長が、何考えてやがんだ!」 頭をさすりながら、五十嵐は怒鳴った。 しかし、その声にもどこか諦めが入っていた。 「そういう人なんじゃないですか…」 島村一等兵が、より強い諦めを込めて、そう言った。 『友軍より連絡、敵の残存兵力およそ50個師団が全力でこちらへ潰走中! 一両日中に接触するため、一刻も早く街を制圧し、背後を固める!! ついては作戦会議を開くので、直ちに全員出頭せよーーーーッ!!』 それを言うのに何故叫ぶ必要があるのか、甚だ疑問であるが、3人の関心は別の所にあった。 「ごっ、50個師団!? 車長、逃げましょう!」 「バッカ、どこ逃げるってんだ」 「それは…」 口ごもる荒木一等兵。 「対岸が一番安全だろ。小隊長の馬鹿もそう言ってるだろ? さ、会議だ会議だ。行くぞ」 会議は当然司令部だろう。 司令部―――まあ、そんな良い物ではないが―――は、接収したホテルに設けられている。 占領した、いや、奪還した街の、市長以下市民への説明。 実は、これにこそ一番手間取ったりしたが…。 五十嵐は、自ら豆タンクのエンジンを掛けた。 50個師団。 味方の本隊に徹底的に叩きのめされた敵とは言え、たった1個小隊の彼等にしてみれば、哨戒艇で戦艦にぶつかるようなものだ。 赤い洪水だ。 表向きは平静でも、五十嵐も又、怖くないと言えば嘘になる。 この街が、俺の最期の地かな。 一瞬だけ、彼はそう思った。 そんな事は無いと打ち消してみるも、やはり貧乏くじを引いたということは、間違いないように思われた。 「ツイてねえ」 彼は一言だけ、そう言った。 「気を付けェェィッ!!」 ホテルのロビーに、異常な叫び声が轟き渡った。 およそ80人の兵士が、ビシッと敬礼を取る。 「よし、楽にしろ」 明後日の方向に突き出した軍刀を鞘に収めつつ、小隊長は言った。 やれやれと、思い思いに好き勝手なポーズを取り始める兵隊達。 ポケットに手を突っ込む者、鼻くそをほじくり始める者、タバコを吸い始める者…。 まったくもって、行儀の悪い連中である。 従業員達が、気付かない振りをしながら、自分の仕事をこなす。 「キェエエエエエッッ!!」 気のゆるみを突いて、小隊長は再び叫んだ。 稲妻が走るように、場の雰囲気が震える。 「状況は、極めて悪い」 対照的に、彼は穏やかな口調で言い切った。 「これを見よッ!」 彼は懐から何かを抜き放ち、ビシッと構え、ボタンを押した。 壁掛け液晶テレビが、光を宿す。 戦場情報はリアルタイムでホテル屋上のアンテナにも送られ、そこからこのテレビに流れ込む。 ソ連軍を意味する大きな凸マークが、さらに大きな凸マークに押されて、この街に向かってくるのである。 「押し潰されそうだなぁ…。小隊長、逃げましょう」 「黙れ、痴れ者め。敵前逃亡は銃殺であるッ!?」 得体の知れない、どこかの拳法の真似事と思われる構えを取りながら、小隊長は怒鳴った。 この瞬間、彼等は戦闘を義務づけられたのである。 「何か、ますますおかしくなったんじゃねぇのか、あの野郎…」 五十嵐の一言。 最早、階級ですら呼んでくれない。 「関わり合いになりたくないですね…」 「それは無理ってもんだ」 「そこォッ! 士気が低いッ!! 貴様等は後で腕立て500回だッ!」 地獄耳である。 三人は固まってしまった。 「さて、敵は兵力推定50万。我が方は80人。これだけで、勝ったも同然であるッ! 従って、野戦を挑む!」 何という屁理屈。 三人に留まっていた硬直は、たちまち全員へと波及した。 「ただし、一号車のうつけ共には、対岸の制圧を命じる。準備に掛かれぇーーーーッ!!」 再び軍刀を抜き放ち、彼は、明後日の方向を向いて、ド派手に吼えた。 これのどこが作戦会議だ。 訓示にもなってない。 誰もがそう思ったが、それより何より、遺書に何を書くかの方が、気掛かりだった…そういう者も、少なからず居たようだ。 しかし、まじめに考えてどうなるのか。 街を捨てるという選択肢は、上が認めないのである。 黙って逃げたら、極めて高い確率で銃殺だ。 それくらいなら、奇跡に期待する方が良い。 切り札があるのであろう。 そう、期待したいのである…。 つづく |