Birth0Death

第七話 宴会inボーダー!


 

「いやあ、ハッハッハッ!!!!!」

豪快な笑いが聞こえる。

 

ここはボーダーの宿。

昨晩マルたちが泊まり、今朝出発したあの宿である。

もう日は暮れて、宿を中心として広場まで、お祭り騒ぎになっていた。

豪快な笑いの主はもちろんサッサ。

舟を出せないほどに川を荒した魔物。その魔物に止めを刺した英雄サッサ。

と、いうことで、サッサはこの宴会の主賓も主賓、超VIP扱いになっていた。

ちゃっかりララはサッサの肩に乗っていたりする。

マルとサティはその横で、お互いに、にが笑いを浮かべていた。

クラウスは、少し疲れたといって、先に休んでしまっていた。

 

 

そんな彼らの様子を離れたところから見ている者たちがいた。

 

一人は背の高い男。青色のフードつきのローブを着ている。

フードを目深にかぶっているため、表情は見えない。

もう一人は背が低い。体つきも華奢である。どうやら少女のようだ。

彼女の方はゆったりと、少し大きめなベージュのローブを纏っている。

肩より少し長い、豊かな深緑の髪が印象的な少女である。

 

「動き出したね」

深い緑の髪の少女が、クククと笑う。少女らしくない笑いだ。

 

「そうだな、結構長かったな。待ちくたびれたって感じだぜ〜」

男の方が答える。

 

「だいたいアイツがさ、早すぎたよね、魔王倒すの」

少女は愚痴るように言う。

「だよな。おかげでしちめんどくさい目にあっちまったぜ。タクスの野郎も余計なこと、しやがってさ」

「けど、やっと“悪魔の扉”が開かれる・・・・・・・」

「んとに、開くのか〜?」

疑いを含んだものいいに、少女は眉をひそめた。

「大丈夫“出来損ない”のクラウスくんが、大活躍だったからさ」

「ああ、ドラドの子か?」

少女はその邪悪に満ちた口調とうらはらに、透明で美しい笑顔を浮かべる。

「そう。彼。ルドの血筋を見つけたから。ほら、いまあそこで騒いでる」

少女はまっすぐにマルたちが泊まっている宿をさす。

「“奇跡”を起す一族、か〜」

男は、嘲るように鼻で笑った。

「あれなら開けるね、きっと」

確信を持って少女はうなずく。

 

「けど、大丈夫なのか?その後が、さ」

にやりと笑みを浮かべ、少女は答える。

「つれているのは、“出来損ない”の弟。ヴァース人も一緒だし。ちょっといじれば問題ないよ」

「いじるのは俺、だろ?」

にやりと、男は笑みを浮かべた。

「あたしはよく出来た兄の方で忙しいからね」

少女は肩をすくめて答えた。

 

「そろそろ戻った方がいいんじゃないかい?」

「そうだね。じゃ、気をつけて」

「・・・ほ〜。あんたの口からそんな言葉を聞くとはな」

男は意外そうだ。

「アイツラといると癖になる」

ふっ、と笑って、少女は音もなく消えた。

 

男は青いフードを被りなおす。その口元にはシニカルな笑みが浮かんでいた。

 

☆   ☆   ☆

 

「うぅ・・・・・ぎもちわるぃ・・・・」

マルは木製の丸テーブルにつっぷした。

ここは宿屋の一階、一番奥にある酒場。

「大丈夫?マル」

サティはにが笑いを浮かべて、マルの背中をさすった。

 

目の前がぐるぐるぐるぐる回る。まわりまわるよ世界は回る。

……サッサに絡まれ飲んで飲んで呑まれた結果が、これだ。

 

「僕、そろそろ部屋にひっこんでいいかな」

「そうね、今のうちにひっこんでしまえばいいんじゃない?」

これほどまでに飲ませた張本人は、今は宿屋の主人に絡んでいた。

「・・・・・部屋まで戻れる?」

「うん、ばっちりさ!」

マルの口から自信に溢れた言葉が出るとは。

どうやら、完全に酔っているようだ。サティはかなり心配になった。

 

 

ふらふら〜と、マルは歩き出した。

酒場を出ると少し空気が冷える。夜らしい涼しさ。

「ふぅ」

頭が今だくらくらする。

宿屋のフロントを通りこし、階段へ向けて廊下を進む。よろよろと。

部屋にいく前に少し休憩。窓の枠に手をついて外を見た。

 

「あ、クラウスだ」

 

昨日剣の特訓をしていたあの場所にて、クラウスが特訓をしている。

酔いのせいか、気が大胆になったのだろう。

マルは中庭に出て、いっちょ、クラウスを問い詰めてやろうと心に決めた。

 

「クラウスッ!!!」

「な、なんだっ!?」

焦るクラウスなぞ、そうそう見れるものではない。

と、マルは思っているが、ララやサティが聞いたら笑うだろう。

不器用なやつなのだ、クラウスは。

 

「な、なんでさ、あの魔物の止め、刺せなかったのさ?」

「酔ってるな、マル」

「気になるぞ〜〜」

マルの目が据わっている。かなり酔っているようだ。

 

これだけ酔った人間に何を言っても平気だろうな・・・・・。

 

クラウスはいっとき、自嘲気味な笑みを浮かべて考えた。

誰かに、自分のことを知ってもらいたい。そんな思いがあったのかもしれない。

 

 

「俺はな、デス人だ」

「デス?」

「デスも知らないのか」

「ああ、知らないね」

威張って言うようなことではない。と、いうか知っているはずである。

デスといえばヴァースにやってくる魔物たちの住処。

地下世界のことである。“悪魔がえり”の原因とも言われている。

「・・・・・・ま、いい。お前たちとは違うんだ」

「なんだよ、僕だって違うじゃないか。勇者の一族だしさ。そりゃあんたはデスだかなんだかなんだろうけど」

妙に絡んでくる。

「・・・・そういう意味じゃない。いや、そういう意味か」

「なんだそれ?」

「俺もな、“出来損ない”だった」

 

そう、“出来損ない”。

デスの地で、彼は高い身分の子息だった。

 

クラウス・エル・ドラド。

ドラド家の長男として生まれ、ドラドの軍を率いるべき子だった。

期待された一族。それはマルの勇者の一族だという期待と良く似た期待だ。

だが、彼には"魔"の力がなかった。全くと言っていい。

デスの民ならば、必ず持つという魔の姿すら、彼にはなかった。

 

「そのせいでな、“悪魔がえり”で俺は、取り残されたんだ」

 

狂ったように力を求め、殺戮を繰り返していく父。

常に魔物化する、ということはすべきではない。

魔物化は大切なものを守るときに発動されるべき力。

そう教えられてきたというのに、ヴァースに来てその教えはことごとく打ち破られた。

魔物化していくドラドの兵士たち。

 

彼らはただヴァースのものを壊していった。あとに命石を残して。

 

 

「でも、取り残されて良かったと、今なら思える・・・・・・・」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・グー・・・・・」

 

「グー?」

 

はっ、と気がついて横を見ると、見事大の字になって寝ているマルがいた。

 

 

「これで、一応素性は語ったことになる、か」

ふっ、と笑いクラウスはその場を立ち去った。

30分後、庭でぐっすり眠るマルを発見したサティは、その上にかけられた見慣れた茶色のマントに、くすりと笑いをもらしたのだった。


タクスの部屋!!

タクス「・・・とんだ乳母兄弟を持ってるのですね、クラウス」

クラウス「す、すまん」

タクス「と、いうことで今回は青空の下で行います、タクスの部屋〜!!」

クラウス「(やっぱりそういう名前なのか・・・)」

タクス「クラウス〜、また眉間にしわ出てますよ〜」

クラウス「ほっといてくれ」

タクス「まったく、クラウスは。私の方が若く見えますよ♪」

クラウス「いや、それはない。俺の方が若い」

タクス「えーっ、そういえばいくつでしたっけ?」

クラウス「今年で21だ」

タクス「なんですとーっ!?21歳!?」

クラウス「そんな、驚くことか?」

タクス「いや全然♪・・・って、ステキなこけ方してますね♪」

クラウス「(しくしく)そういえば、他のやつの年齢はどうなっているんだ?」

タクス「お?知りたいですか〜」

クラウス「いや、別に

タクス「(T_T)(T_T)(T_T)(T_T)(T_T)(T_T)・・・・

クラウス「あ、う、うそうそ。知りたいぞ、ああ、ぜひとも知りたいぞ」

タクス「ふっ!そうでしょう、そうでしょう。この青空版タクスの部屋、総力をあげて調べました。Birth0Deathキャラクター年齢表!」

クラウス「表って・・(ちらりと見る)お、まだ本編で、出てきていない奴ばっかりだぞ?」

タクス「なんですとー!?ああ〜っ、まだ、七話目ですもんね(T_T)」

クラウス「あ、いや、せめて主人公パーティーの年齢ぐらい発表してみれば・・・・」

タクス「ああああ〜全てのキャラの趣味、特技、生年月日から好きな食べ物まで、調べに調べたというのに(どよ〜ん)」

クラウス「だああっ、わかったからタクス、いつかまた、発表大会しような?」

タクス「おぅおぅ(泣)さすがクラウス〜。そうそう、ついでにクラウスの苦手なものを教えて・・・」

クラウス「言えるか―ッ!!(必死)」

タクス「(び、びっくりしたー)そ、そんな怒らなくても(T_T)」

クラウス「(言えない言えない・・・・クールな俺が蜘蛛を怖いなんて言えない・・・本編にはでないけど)次回、第八話「暴走舟にご用心」・・・ちっ、またバカ話だ」

タクス「あ〜〜〜〜〜クラウスくーんー(T_T)」


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