Birth0Death

第三十三話 決戦前夜


「んじゃ、交代で寝ようぜッ!!」

くたくたサッサが提案する。勇者志望でも、魔法使いはやはり、体力がないのである。

しかも、彼は、ついさっき例のたまやー!!をやったばかりなので、よけいに疲れている。

「数多いのってええな♪」

「お前はどうせ見張りしねぇだろッ!!」

サッサのツッコミ。ララは非戦闘員だも〜ん♪なんて言って、とっとと旅のかばんに潜りこむ。ララ専用のベッドである。

「・・・スジの人たち煽ったのってきっとアクトクよね」

サティは考え事モードに入っている。

「まあ、あの鬼舟団も言ってたし・・・」

マルはサティの考え事に付合う。付合わないと後が怖い。

「アクトクか。彼は一体何者なの?」

ロナの問いにサティは肩をすくめた。

「彼も鬼舟団の一員として知り合ったんだけどね」

「確か、大商人と名乗っていたな」

クラウスは思い出していた。

あの突飛な黒髪の男。左の目をつぶした傷跡。

姿にこだわるナルシスト。

「アクトクと兄さん、何か関係があるのかな」

「どちらかというと、お前の兄さんのパーティーメンバーじゃないか?」

「勇者のパーティーメンバー・・・確か、格闘家と、賢者だったはず」

ロナは父を倒された日を思い出す。

人の良さそうな格闘家の青年と、涼しい顔で、丁寧な物腰の賢者の少女。

二人とも自分を睨みつけていた。勇者とともに・・・。

「ろ、ロナっ!?」

「・・・・あ。ごめん」

突然、ロナの頬に涙がつたった。表情はない。ただ涙だけが不自然に流れる。

「ロナ・・・大丈夫?」

サティも心配そうにロナの顔をのぞきこむ。

「・・・うん・・・・大丈夫」

今でもやはり、つらいのだろうか。

「ごめん、ちょっと、夜風にあたってくる」

「あ、待って!!」

マルは慌てて後を追っていった。

「・・・ロナ」

「あいつはときどき間抜けだな。野宿に夜風にあたるもなにもないだろうに」

「クラウス、それはひどいわよ」

といいながら、サティは思わず吹き出した。

「・・・さてと。あいつらが帰ってくるまでは見張り、してやるかな」

「私もつきあうわよ」

「・・・こいつは朝まで起きそうにないな・・・」

クラウスの言うとおり。

サッサはすでにいびきをたてて眠っていた。

 

☆    ☆    ☆

 

「ロナ、大丈夫か?」

「うん・・・・・」

ロナは夜空を見上げている。

今日も満天の星空。

 

「ごめんな、つらいこと、思い出させちゃって」

 

「ううん。マルのせいなんかじゃない。・・・私がずるいだけ」

ロナはぽつりとつぶやく。

 

「サティだってサッサだって、マルも・・・。デスの軍の襲撃を受けてるんだから」

 

私ばっかりがつらい思い出を背負っているわけじゃない。

 

「私ばっかりが弱々しくトラウマなんか背負っちゃったりして」

今でも剣を向けられると怖いだなんて。

そのせいで、このパーティーは刃物が使えないなんて。

 

「そうだよな」

マルはあっさり認める。

 

「そうだよね・・・」

余計に落ちこむロナ。

 

「けど、弱いところは弱くていいんだよ」

 

「え?」

「だってほら、僕なんて戦闘とかは、めちゃめちゃ弱いし」

にこやかに言ってる辺り情けない。だが、事実である。

「“出来損ない”って呼ばれてさ、自分でもそう思ってるうちに悟ったんだ」

 

僕は僕にできることをすればいい。

 

「そりゃ、ときどきやるせない思いをすることもあるよ」

勇者の血族、ルドの末裔が、こんなに弱いなんて。

「けどさ、弱いところは弱くていいと思うんだ。それをみんなが補ってくれるからさ」

ロナはマルを不思議そうに見つめている。

「ほら、ロナは刃物を向けられると弱いだろ。だったら僕が盾になる。そうすれば刃物、見えないだろ?」

にっこり笑うマルに、ロナはなんとなく、安心感を覚えた。

「そうだね。マルは弱いから、魔物が来たら、私が倒してあげる」

「はは、ありがとう」

ちょっと情けない、勇者弟。

だけど。

ロナが不安になったら、僕が支えればいい。それが僕にできることだ。

マルはそう、心に決めた。

星々は静かに瞬いていた。

 

☆    ☆    ☆

 

 

「な〜るほど」

 

平原で虫の写す映像を見つめる怪しげな男。

アクトクは企みの笑みを浮かべている。

「お姫様は刃物に弱いってワケか」

なんという好都合。

もともとはクラウスのものだった、立派な剣が手許にある。

これを使えば、魔王の子をなんとかできそうだ。あとはあのパーティーから魔王の子だけを、おびき寄せる方法を考えればいい。

攻撃力は皆無のアクトクだが、その分悪知恵でどうにかするしかない。

 

アクトクは草原の真ん中であぐらをかいて、目前に手持ちの道具を並べた。

数多くの命石をあしらったベルト、クラウスの剣、旅の荷物、魔法の力を借りない、様々な薬品類・・・。

「・・・・大中小の土人形、か。・・・あの虫けらと魔王の子はタクスつながりだったよな・・・」

 

いつも貧乏くじを引く、小物に過ぎない男。

そんな彼が、今、世界の危機を創り出さんとしていた。

 

☆     ☆     ☆

「・・・馬鹿な奴」

ルーワはぽつりとつぶやいた。

バッツパーティーは今、スジの宿にいる。

ルーワは帰ってきた傭兵団を宿の窓から、冷たい目で見つめていた。

 

ドラドと魔王の子の噂を聞いて、バッツは早速エンディッド平原に向おうとしている。

エンディッド平原に出るには一つちょっとした山を越えなくてはならない。

とはいえ、このバッツパーティー。強さは半端ではない。越えるのは簡単である。

「どうした、ルーワ?」

「あ、いえ。なんでもありません」

にっこりと深緑の髪の少女は笑顔を見せる。

「ルーワ、明日は早く出よう」

「どうしたのですか?」

「予感だ。いやな予感」

バッツのカンはよくあたる。

「でもよ、花火打ってきたらしいじゃねぇか、噂の魔王の子」

アイズは妙に唇をとんがらせている。

「油断は大敵だ。あの魔王の子が相手なんだからよ」

バッツも覚えていた。対峙したあの力を。

「今日のところは寝ましょう」

明日にはもしかしたら、アクトクもなんとかするかもしれない。


タクスの部屋♪

タクス「さて。本編はなんだかラストへ向けていっちょくせーん、ってな感じですけれども」

マル「なんだか投げやりだな、言い方が」

タクス「まーたマルくんですか。フッ・・・」

マル「ずいぶんと感じの悪い冷笑だなあ・・・」

タクス「番外編では世話になりましたしー、今回なんてロナとラブってますしー。(−_−)(←いじけモード発令中)」

アクトク「まー、いいじゃね〜の〜?ヒーロー&ヒロインだしよー」

タクス「ああっ、小物悪党、アクトクさんっ!!」

アクトク「なんでそ〜、棘があるかね、あんたの言葉は」

タクス「事実を述べたまでです♪」

アクトク「ほ〜。ま、過去の遺物よりましだけどな〜♪」

タクス「(ピシッと固まる)過去の遺物?」

アクトク「本編じゃ、スタート時点ですでに死・・・」

タクス「アクトクさん、世の中にはね、いわないほうがいいことも、どっさりあるんですよ?(にこやかに威圧)」

マル「(うぎゃー、不穏な空気が・・・)そ、そういえば、いい加減、ここの修理した方がいいんじゃないか?」

タクス「そうなんですよぅ、いい加減なおしたいんですよぅ」

アクトク「お?それならオレがやってやろうか〜?」

マル&タクス「「え?

アクトク「なんだよ〜。オレはなあ、奴隷時代にめい一杯苦労してんだぞ〜。建物修理なんてお手のものだぜ〜」

マル「(だ、大丈夫なのか??)」

タクス「(は、果てしなく不安です・・・)」

アクトク「さ、そうときまればさっさと終わるぜ〜次回第三十四話『滅びの時』・・・って、えーっ!?なにーっ!!

マル「どうしたんだい!?」

アクトク「(…フッ・・・・)やってやるぜ、タクスの部屋改装っ!!」

タクス「次回予告の原稿を見て、アクトクさんが壊れた(汗)」

アクトク「あ、代金は後払いでいいぜ〜♪」

マル「金とるのか・・・」

 


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