Birth0Death

第三話 宴会inライン!


「ごめん、お待たせ」
旅の準備万端で片手にマントと水晶玉を抱えている。

マルの手の中の水晶玉は、まん丸ではなく、すこし横に長い楕円形をしている。
辛うじて、マルの手のひらに収まるサイズのものだ。
これも命石の一種だ。
これを使えば、占いだけでなく、眠りの魔法を呼び起こすこともできる。
だが、無色の命石というのは珍しい。

命石というのはそもそもヴァースの魂であり、ヴァースに生きるものは必ず、ヴァースの大地を支えるなんらかの力を持っている。そこに生きている間には気づくこともない力を、それぞれが司っているのだ。
その力のクリスタルゼーションが、すなわち命石なのである。
だから命石には、どのような力を司っているか一目でわかるような色がついている。
しかし、マルの水晶には色がない。透明の石なのである。

この水晶は、いつのまにか、マルの手もとにあった。
いつ、どこで、どうやって手に入れたか。
その記憶が、彼にはなかった。…あまり考えた事もなかったが。

「あれ?ゴンドラさんは??」
ラック荘の談話室にいたのはルリちゃんだけ。
「もう行っちゃった♪」
サティもすでにいない。マルはルリに肩をすくめて見せた。
「じゃ、占うね」
まあいいか、と、マルは水晶玉に向かった。
「うん、お願いね」
わくわくとルリは目を輝かせる。マルはルリのこの表情が好きなのだ。
目を閉じて、すうっと息を吸いこむ。
ルリちゃんの運勢を・・・・・
と、マルは念じる。
ぼんやりと浮かんでくるシーン。

多くの人物が沈んだ顔で、町に入ってくる。
その中の一人が妙に輝く光の筋を手にしている。
多くの人物がいる、ということだけは見えるのだが、それが誰かははっきりしない。
ただ、その人物たちを迎えるのが、ルリ。
ルリの一声に、沈んでいた人々の顔に輝きが戻る。

まるで枯れた花々が復活していくように。

「ごめん・・・・なんだか、旅立ち前に嫌な感じの結果になっちゃったね」
比較的不吉な結果と言っていいのかもしれない。
ルリも、占いの中でぼんやり見えた人々のように、ちょっと沈んでいる。
「だ、大丈夫だよ、僕たちのことじゃないかもしれないし」
ちょっとばっかり、いやな予感もしたが、マルはにっこり笑ってルリを元気付ける。
「そうだよね!!ありがと、マル。じゃ、広場に行こうよ」
「へ?広場???」

☆      ☆      ☆

「うっそ・・・・・・・・」
ライン城の中庭。
今は広場という愛称で親しまれている。
そこでは、ちょっとしたお祭りが繰り広げられていた。
ポールが建てられ、花やなんやで飾り付けられている。
万屋から持ってきたと思われる大きな長テーブルが並ぶ。
白いテーブルクロスがかけられたその上には、サラダや、ウィンナーの皿、カナッペ、果物、ワインなどご馳走が並べられている。
町中の人々が皆集まっているのだろう。楽団まで出張って、楽しげなメロディーを奏でている。

「あ、来た来た。今日の主賓!!」
ちょっと高くなった壇上のテーブルから、カリンがマルを呼ぶ。
「が〜〜カリンさん、なんなんっすかこれはっ!!」
薄い色つきの紙でつくられた花が、ポールに飾られている。
それだけでなく、壇上には生の花も、巨大な花瓶に飾られていた。
「いやあ、旅立ちはやっぱどかんと、送ってやらなきゃ!!ね、クラウスさん」
カリンの横に、座っている、というか明かに座らされているクラウスは、仏頂面で返事もしない。
もう一人の客人、妖精ララはそこら中飛びまわって、独特の訛と高音の声を披露している。
「ま、旅立ち前のちょっとした昼食会だよ」
「そうそう、パーティーにもれたんだから、かわりにこのくらいのパーティー開いてやらにゃ」
がははと笑うのはルリの父、万屋店主&ゴンドラ。
どこがちょっとした、なんだか。
年末のカウントダウンパーティー並みに華やかである。

マルはもはやつっこむ気力もなくして、いわれるまま席についた。
無論、壇上の1等席。
おそらく、城から引っ張り出してきたであろう、立派な木製の椅子に腰掛ける。
少し色のくすんだ赤いクッションがそれでも、今でも、ふかふかしている。
ちゃっかりその横にはサッサとサティも待機していた。
「おうおう、我らが勇者〜!!」
さっそくサッサが絡んでくる。
「サッサ、まさかお酒は飲んでないよな?」
マルは一抹の不安を覚えた。
「おう、でぇ丈夫でぇッ!!」
すでに呂律が回っていない。
だめだこりゃ。
「サッサ〜〜」
マルはがくんと肩を落とした。
「俺たちはッ!!!!!」
サッサが、そんなマルの両肩をがしっ、と、つかむ。
「魔王を倒すぜ〜ッ!!!!」
「おいおいおいおい〜違うってば、ジュカに行くんだって」
マルは呆れて訂正してみる。
「にっくき悪魔どもを、倒すんだぜ〜ッ!!!!!」
サッサの目が恐ろしく据わっている。
「だ〜か〜ら〜〜〜」
言ってもしかたがない気もするが、一応がんばるマル。
「積年の恨み、晴らしてやるぜッ〜〜!!!!」
だめだこりゃ。
マルは、さらにがくっ、と、肩を落とした。

「バッツが黙って行ったわけ、わかった気がするわ」
サティのにが笑いに、マルは激しく同意した。

「・・・・・・・・ララ」
今だ酔いを見せないお客人はララに囁く。
「なに〜?」
どうやって飲んだのか。彼女もちょっと酔い気味。
「知られたら、どうなるだろうな」
「ん?ああ、あのサッサって子は特にやばそうやね。熱血漢っぽいし」

絡まれて困り顔のマル、その勇者弟に絡みまくるサッサ。
その横でにが笑いを浮かべるサティ。
その三人を見つめて、クラウスは額を押さえて、ため息をついた。

「勇者は、きっと大丈夫やよ」
ララはにこやかにマルを見つめていた。
ああいう雰囲気の人に悪い人はいない。
ララは、一番の相棒の姿を思い出していた。今はもういない、相棒の姿を。

結局、この『勇者弟を送る会』は夜更けまで続いた・・・・・。


次回予告!!

サッサ「うわーうわーッ!!なんだここッ!!?」

タクス「やあ、サッサくん。はじめてのこちら召喚、おめでとう♪」

サッサ「めでたくないッめでたくないッ!!」

タクス「いやあ、そんなに喜ばなくっても(^^)」

サッサ「うれしくないッうれしくないッ!!!」

サッサ、ふるふると首をふる。

タクス「ララもクラウスも、マルくんさえも君ほど動揺しなかったというのにねぇ」

サッサ「だってよ、このふかふかソファはなんだよーッ!!ばっちりフラワーアレンジメントは何だって言うんだよーッ!!」

タクス「やだなあ、セットにケチつけないでくださいよ。我が敬愛する徹○さんの部屋を真似たものですよ♪そーですね、名付けて“タクスの部屋”」

サティ「・・・て、そのまんまじゃない」

タクス「ああーっ!!愉快な名前のサティ・ビブールさんではありませんかっ!」

サティ「(ムカッ)それはどういうことかしら?」

タクス「サティさんのお名前は某ショッピングセンターの名前からつけたのだそうですよ。いやあ、よく新聞に出てましたからね〜一時期」

サッサ「おおッ、あの経営が悪化してた・・・」

サティ、無言でサッサを殴る。

サッサ「いってーッ!!何すんだよッ!!!」

サティ「ったく。そういうサッサの名前だって、某大河ドラマからついたそうじゃないの」

サッサ「や、それはなかなかカッコイイだろッ!!」

サティ「フン。サッサ・マサナリなんて、ゴロが悪いじゃないの」

サッサ「うるせーッ!」

タクス「うんうん。今一つ派手さが足りないヒトですよね、大河ドラマでも。(※ファンの方ごめんなさい)いやあ、まわりの人々がすごいですしー(ホント、豪華すぎだよ、『某まつ』 笑)

サッササティテメェがあんたうなーッ!!

タクス「ゴフッ(吐血)」

サティ「あらら。タクスさん、倒れちゃった♪えっと次回は・・・外の世界は危険です?(この原稿書いたのこいつ(←タクス)ね・・・)第四話 「はじめての魔物遭遇」です。お楽しみに」

タクス「ぐぉう・・・また・・・・・・(がくっ)」


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