Birth0Death

第二十七話 宴のあとで


夜も更け、それぞれが、宿の部屋に戻っていく。

「あのさ、クラウスッ!!」

そのとき、廊下で、サッサはクラウスに声をかけた。

「・・・なんだ?」

「オレが倒したのは、お前の友人だったのか?」

「・・・ああ」

クラウスはうつむいた。

 

セミ。

彼の乳母兄弟。ボーダーの悪魔と成り果てていた。

 

「・・・そうか、やっぱり・・・・」

「サッサ?」

「だがなッ!!オレは謝ったりしねぇぞッ!!オレは、自分が正しいことをしたって、信じてるんだッ!!!」

強気に言っているが、目が不安げだ。

そういえば前にサティが言っていた。サッサは言うことは強気だが、弱虫なんだ、と。

本人は後悔して後悔して、たまらないのかもしれない。

クラウスはこっそりため息をつき、言った。

「謝る必要はない。かえって礼を言いたいぐらいだ」

「お、おうっ、言え言えッ!!」

「・・・ありがとう。セミを苦しみから開放してくれて」

素直すぎるお礼にサッサは呆然とした。

クラウスの礼は確かに本心からの礼だった。自分では、決してセミを倒すことはできなかったはずだ。

そうなれば、セミはもう一つ罪を増やすところだった。

「う、うう・・・バカヤローッ!!!」

大声で叫び、サッサは走って去っていった。

「クラウス〜な〜にやってんやか」

廊下の陰から、ララが現れた。

「ああ、ララか。悪いがサッサを慰めてやってくれ。・・・いじめたような気がする」

「しゃーないなぁ。自分ほんま不器用やな」

ララはサッサが駆けて行った方へ、フラフラ〜と、飛んでいく。

ふぅ。と、クラウスは再びため息をついたのだった。

 

☆   ☆   ☆

 

「ほ〜れ、サッサ、泣いとらんと、はよ寝なあかんで?」

「う、うるせーッ!」

廊下の端の非常階段で、サッサはボロボロと泣いていた。

「まあ、そんなけ素直に泣けるのも羨ましいわぁな」

ぽつりとつぶやく。

一体、自分はいつから泣いてないだろう。

そんなことをふと、思いながら。

ララはサッサの頭にちょこんと乗って、あやすように、ぽんぽんと叩いてやる。

「あんた、まだまだちびっこやもんなぁ」

「ガキ扱いするなッ!!オレだって、もう、16だッ!!!」

「うちの十分の一やん」

「へ?」

「うち、160歳やもん」

ララはこともなげに言う。

「・・・えぇッ!!!なんだそりゃッ!!!?」

「すごいやろ?タクスとな、うちだけやってん。そんな長生きしとんのは」

「すごいんだな、お前」

「その分人の生死はいろいろ見たんやよ?」

160年という長い長い年月で、一体、幾人の人の生と死を見てきたことだろう。

もう、そう簡単に泣けもしない。

「・・・オレさ、謝りたいんだ」

「せやろうね。仲間の友人を殺したんやもんな」

こともなげにララは言い放った。

そういうしがらみは、“悪魔がえり”が起ころうと起こるまいと関係なく、何度も見てきた。

「う、うん」

「けどな、謝って許してもらっても、何もかわらへん。事実は事実や」

「・・・そうだよな・・・・・・」

ララの言葉にサッサはますます落ちこむ。

 

「だーっ!けどな!あんたはそんな後悔ばっかしとる場合じゃないやろ!!」

 

キンキン声をはりあげるララに流石のサッサも驚いた。

「ああ〜、うち、こういうの苦手やねんッ!ええか、忘れたらあかん。マルとロナも言っとったやんか。事実は消えへん。消えんけど、それを背負って“今”をすすまなあかんねんッ!!」

小さな顔を真っ赤に染めて、力説をする。

「・・・けど・・・・」

「けどやないッ!!あんたはな、生きてるんやで?生きてるからには、そんくらいせなあかんッ!!」

ララはサッサの鼻先に立ち、真正面から睨みつけた。

「・・・おうっ。わかったッ!!!」

なにかをふっきたかのように、サッサは立ちあがった。

「おうっ、あんたはなッ、嘘でもいいから、うるさくなきゃアカンのやッ!!」

「うるさいだとッ!!オレはうるさくないぜッ!!!熱い心が燃えてんだッ!!!!」

走り去りかけたサッサはふり返って叫ぶ。

「ララッ、ありがとなッ!!!」

ララは答えるように右手をあげた。

まったく、可愛らしいやっちゃで。

と思いながら。

 

「あら、ねぇララ、今ここに、サッサいなかった?」

サティが、非常階段をのぞきにきた。

「おったおった。まーったく、このしがらみだらけのパーティーのお守は大変やで」

ララはくたくただ、といわんばっかりに伸びをした。そのわりに顔はにこにこしているのだった。

「まあまあ、いーじゃないの♪」

その様子に、サティはふっ、と軽く笑うのだった。

 

☆   ☆   ☆

 

サッサは部屋に入っていく。

マルはまだ戻っていないようだ。クラウスは武器の手入れ中。

「クラウスっ、さっきはええっと…」

上手く言葉にできない。謝るのはもういい気がするし、お礼をいうのもおかしい。

考え込みだしたサッサに、クラウスはちらりと目を向けて、再び矢じりを研ぐ。

「…もしこれから、殺したくもない奴らが押し寄せてきたら、お前はどうする?」

クラウスは、顔を上げることなく、言った。

「は?」

思わずサッサは聞き返す。

「もし、何を言っても、もう聞きいれてもらえない、そんな人々を目の前にしたらどうする?」

「オレは・・・・」

サッサは考えこんだ。

殺したくないやつらが、自分の命を狙ってきたら。

「そりゃ、倒すぜッ!!」

「もし、それが、そいつらから見て正義といえなくとも、か?」

「なにが言いたいんだッ?!」

難しいことは苦手である。

「オレはドラド。ロナは魔王の子だ。もしそれが、町の人々に知られたら、どうなる?」

はっ、とサッサは息を呑んだ。

 

スジでもそうだった。

人々はクラウスがドラド家の者だと知った時、大群を率いて、襲撃してきた。

あのときは、ララのおかげで助かったそうだけれど・・・・。

 

「暴徒と化した人々に言葉は通じない」

その一言はサッサを重い気持ちにさせた。

サッサ自身もそうだったのだから。

クラウスがデス人で、しかもドラドだったと知った時、その事実以外、見られなかった。

クラウス自身を信じることができなかった。

「サッサ、お前と俺がこのパーティーでもっとも殺傷能力を持つ」

考えてみればそうである。

ロナもそりゃ強い。

強いけれど、なんでも剣を向けられると動けなくなる。妙な発作が起こるらしい。

サティは鞭を使うが、そもそも回復係。

ララはテレポートが使えるぐらいで戦力にはならない。

そして、マルに至っては、眠り魔法ぐらいしか、戦闘に期待できない。

 

「・・・ばっかやろーッ!!!オレはあみだすぜッ!!」

 

「何を?」

握りこぶしを握り締め、サッサはふつふつと燃えていた。

「確かにオレは炎の命石魔法が得意さ。だけどなッ、必ず人の死なない、炎魔法、編み出してやるッ!!」

前向きサッサらしい解決法だ。

クラウスは思わず笑えてきた。顔を隠して笑う。肩がどうしてもゆれてしまう。

なんて簡単なこと。人を殺さないで、自分の身も守る。

そうすればいい。

「んだよッ、笑うなよッ!!」

「いや、お前を見習わなきゃな」

何者かが襲ってきたらすぐに、そいつを殺さねばと思うのは、デス人の特色なのかもしれない。

それじゃいけない。殺すのではなく、止める。

「ふんッ!!あったり前だッ!!!!」

サッサは偉そうにふんぞり返っていた。

頭の中では、どういう魔法を編みだそう、と、考えが巡っていた。


タクス「くはーッ!!(復活)前回は○くんのせいで酷い目にあいました」

サッサ「おう、マルは○になっちまったんだなッ!!」

タクス「ええ。あんなのは○で十分ですッ!!」

ララ「ちっこいツ、うつってんで、タクス」

タクス「おうッ!!い、いつのまにッ!!?・・・な〜んて。ララじゃないですか☆」

ララ「タクスの笑顔が怖いわ・・なんやのん?」

タクス「フッフッフ。とうとう出ましたね、ララの年齢(笑)」

ララ「・・・・。酒の恐ろしさって奴やね・・・・・・ああ(苦悩)」

サッサ「そうそう、160歳だよな〜、すげぇよなッ!!一世紀半と十年ッ!!」

ララ「その言い方、いややわ(怒)」

タクス「まあまあ。小僧の戯言ですよ(^^)」

サッサ「小僧っていうなーッ!!だいたいあんたは幾つなんだよッ!?」

タクス「知りたいですか(ニヤリ☆)それはこの物語の根源に関わる大事な話ですよ?」

注:関わりません。

サッサ「・・・う。やめとく(←びびり)

ララ「それはそうと、次回はアレらしいな」

タクス「アレ?」

サッサ「おう、ますますマルの立場ねぇよなッ(笑)」

タクス「!?なんですか、次回はっ!!」

サッサ「おう、次回予告だッ!!次回第28話『ラインにて ―勇者バッツ―』とうとう勇者バッツの物語にッ!?」

ポーズを決めて叫ぶサッサ。

タクス「なんですと!?とうとう○くん、主人公降板ですか(笑)」

ララ「ある意味それに近いで・・・。恐るるべきは勇者バッツや・・・」

タクス「・・・・・・。ここにも来るんですよね、やっぱり(−−)」


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