Birth0Death
第二十六話 宴会inセン!
セン名物の山鳥のパイを筆頭に、様々なご馳走がテーブルを埋め尽くす。
「おーい、全員にまわったかッ?!」
サッサがその場をとりしきる。ビールの入ったジョッキがそれぞれの前にまわってくる。
「んじゃ、乾杯だーッ!!」
「な・・・・なんでこうなるんだ?」
はりきりサッサの脇で、マルはジョッキをもちつつ、こっそりツッコミを入れた。
たっぷりと眠ったあと。
宿の近くの酒場に集って、宴会が始まった。幹事はサティ&サッサ。
隣りを見ると、ロナがうれしそうに笑っている。・・・とても幸せそうだ。
「ま、いっか」
その笑顔を見て、マルもそんな気分になった。
「じゃあ、マル、音頭とってね」
「え、ええっと・・・」
サティに言われて慌てるマル。
そういうの、苦手なんだよ〜。
あたふたしていたが、またも隣りに座るロナのニコニコ顔にあって、きっ、と立ちあがった。
・・・がんばる。
「えっと、サッサ、サティお帰り&ロナ、パーティー加入を祝して、カンパーイッ!!!」
・・・ノリがサッサである。
「おうッ、カンパーイッ!!!」
サッサもサティもカチーンと、小気味のいい音をたてて、みんなと乾杯をかわす。
クラウスも照れくさそうに乾杯している。ロナもしばらくぼーっ、と見とれていたが、嬉しそうな笑顔を見せて、乾杯に加わった。
「私、こういうの、はじめて」
「あ、そうか・・・」
「すごく、すごく嬉しい」
本当に嬉しそうに笑っている。マルもなんだか、うれしくなった。
「うちは飲むでぇーッ!!!」
魔法の使いすぎでダウンしていたララも、今では復活していた。完全復活というやつである。
「おうおう、飲め飲めッ!!!」
サッサもじゃんじゃん飲んでいる。その横で、サティはにこやかに飲んでいる。
・・・飲んでいるものが、強い酒で有名な、テキーラだったりするあたり、ちと怖い。
店のサービスで、ギターの演奏がはじまった。ステージに立って女性がにぎやかな歌を歌っている。
いつもなら輪から外れて見ているだけのクラウスも、今日だけは輪の中にいた。
サッサはその賑やかな性格を生かして、店のほかの客たちとも仲良くなっている。
いや、知り合いも、知らない者もみんな巻きこんで、今宵の宴会はつづいていた。
店の中の空気も、一気に熱くなる。そうして、夢のような宴の夜は過ぎて行く。
☆ ☆ ☆
やがて、マルは酔いがまわったため、そっと扉を開き、外に出た。
店の中の赤いような黄色のような光が、窓からわずかに漏れ出す。
だが外は紺、青、群青の世界。寒色のグラディエーションが辺りを染める。
夜風が心地よく頬を撫ぜる。
「ふーっ・・・」
火照った体に夜のひんやりした空気が気持ちよい。
「マル」
「あ、ロナ」
こっそりと、ロナも出てきた。
二人は並んで歩く。赤いレンガも今は黒く見える。町は夜の姿になっていた。
酒場のすぐそばに、小さな公園がある。
こじんまりとしていながら、木々に覆われた、ちょっと隠れた場所。
なんとなく、二人はベンチにこしかけた。
「マル、ありがとう」
「どうしたんだよ、急に」
思わず照れる。ちょっと口調がぶっきらぼうなのは、マルが酔っている証拠である。
「“悪魔の扉”開いてくれたのが、あなたでよかった」
「え?」
「聞いた。お兄さん、魔王を倒した英雄だって・・・」
「ああ」
魔王、それはロナの“パパ”。
そして、ロナをも斬りつけた。
そのせいでロナは今だに、恐怖心を抱えている。
「・・・ごめんね」
ぽつりとロナはつぶやく。
「え?」
うつむくロナにマルは慌てた。なんでロナが謝るんだ?
「・・・気にしないで、とは言えない。気にせずにはいられない、でしょ?例え、自分のせいではなくても」
兄がロナの“パパ”を殺し、ロナを傷つけた。確かに気にしないではおられない。
「けど、私もそう」
魔王が魔物を放ち、ラインや他の町を傷つけた。
魔王の軍である、ドラド軍が侵攻しなければ、マルの父母が結界を張ることもなかった。
「忘れちゃいけないんだよな」
「うん」
マルの言葉にロナは瞳を閉じてうなずいた。
二人はいつしか寄り添っていた。
そっとその手を重ねる。
互いの温かさを感じながら、夜空の星を静かに眺めていた。
その様子にイライラしている人たちが・・・・・・・・。
「あ〜あ、なんだありゃッ!!じ、じ、じれってぇッーーー!!!」
植えこみの影から、声が聞こえる。
「静かにしぃっ!!気づかれるやんか!!!」
「ララもうるせーだろ〜ッ!!」
「いーんやもん、うちは♪」
「大丈夫♪あの二人には聞こえないわよ」
「うわッ、サティまでいたのかよッ!!」
「・・・・おい、そろそろ酒場に戻るぞ」
結局、こっそり、のぞきみ組は、パーティー全員だった。
タクスの部屋♪
タクス「ううあ(T_T)ううあっ(T_T)」
マル「なっ、どうしたんだい、タクスさん?」
タクス「マ〜ル〜く〜ん・・・・・・(恨)」
マル「なんだか呪われそうな気分だよ(汗)どうしたの?」
タクス「よくもまあ、いけしゃあしゃあと“どうしたの?”などと言えますねぇ(呪)」
マル「あは♪ロナのことだね☆(←幸せそう 笑)」
タクス「わかっている辺りムカツきますね♪だいたい、なんでマルくんなんぞが来てるんですか!!」
マル「なんぞって言われた…」
タクス「いまさらショックを受けないで下さい(^^)マルくんなんぞ、なんぞで十分♪そうっ、マルくんなんぞ、○で十分!!」
○「うわっ、名前が○にされてる(汗)」
タクス「ふふん。この天才仙人、タクス・キョウ・トウゲンにかかればこんなもんです♪」
○「別にいいけどね」
タクス「な、なにーっ!!もっと口惜しがってくださいよぅ(T_T)」
○「いんや、構わないね。読み方はマルに違いないんだし。だいたい、アクトクに比べればずっとましだし」
タクス「く・・・・。なんだか妙に前向きですね」
○「だってさ。僕にはロナがいるから・・・・・」
タクス「・・・うっ、うううっ!!!」
ラブファイアーにやられて、タクス、爆発。
マル「うわあっ!!!?タクスさん!?タクスさん〜!!?」
次回第二七話『宴のあとで』・・・サッサの詫びタイム。・・・・とうとうナレーションが次回予告。
マル「・・・って、黒文字はナレーションだったんだね・・ってタクスさんは?!」
爆風がやみ、黒こげタクス登場(笑)
マル「ああっ!?タクスさん!!?」
タクス「ケフッ(@_@)」