Birth0Death
第二十四話 パーティー復活
「サティ、交代してやるぜ〜」
「あら、アクトク。お帰り」
にこやかにサティはアクトクを迎えた。
彼女は、今だ目を覚まさないマルの枕もとで、丸椅子に腰掛けていた。
「おや?ステッキ振りまわしてたのかい〜?」
「ええ、まあね」
マルの肩の傷に回復魔法を施したのだ。時間がたちすぎているため、あまり効かなかったが。
「じゃあ、私も休ませてもらうわね」
「おうおう、お休み、マイスイートハート〜♪」
アクトクの抱擁をさらりとかわして、サティは部屋を出ていった。
「ちっ。さ〜てと。あの魔王の子、ばっちりいるんだもんな、宿の前によっ」
ぼそぼそ言いながらアクトクは自分の荷物の中から、人型の粘土を幾体か取り出した。
命石を人間の調度心臓にあたる部分に埋め込めていく。
「死の商人アクトク様の自信作。とくと受けてもらいましょ〜♪」
窓を空けて、入り口へぽいぽいっと投げていく。二階から地面へ届く間に、人形たちは大人なみの大きさに変わっていく。
「侵入者を、殺せ」
ぼそりとアクトクは人形たちに命じた。
その声は普段のにやけた、ふやけたしゃべりとは、全く違う冷たいものだった。
☆ ☆ ☆
サティはその頃、サッサを叩き起こしていた。
「んだよッ、オレはねみぃ〜んだッ!!!」
「しっ、ねぇサッサ、私どうもアクトクが信用できないの」
「はぁ?何いってんだッ!?」
サティは無言で血で汚れたハンカチを取り出した。
「んだよ、それ?」
不安げにサッサは引いた。
「マルの肩の傷を手当してあったものよ・・・・なんでかしらね、アクトクは、クラウスのときよりもよっぽど信用できない」
マルの傷に気がついていなかったとは思えない。センまでずっと運んできたのに。
「クラウス、か・・・ドラドだったんだぜ、あいつは。それ以上の裏切りはありえないぜ・・・」
「けど、アクトクは余計に・・・」
例え、ヴァース人でも。
「・・・確かめた方がいいかもな。ワルモノかどうか」
もう、前みたいな“裏切り”はいやだから。
☆ ☆ ☆
「土人形だ」
「土人形?」
宿屋をうかがう、怪しい人影が二つ。むろん、ロナとクラウスである。
「命石を土人形にこめることでつくる魔物だ」
「人工の魔物、ね」
「ああ・・・こいつはやっかいだな」
「なぜ?」
「・・・ロナ、お前は先に中に入れ。まっすぐアクトクを狙え。絶対、まわりを見るな!」
土人形の装備が剣、ということか。
「わかった」
ロナの声に緊張が混ざる。足手まといになるわけにはいかない。
マルが聞いたら泣いてしまうかもしれない。足手まといどころか、ロナはマルよりず、ずっず〜っと強いのだから。
クラウスが弓を引き絞る。
目でうなずき合う。
「いくぞっ!!」
銀の矢がまっすぐに土人形の頭を貫く。
慌てた土人形たちが態勢を整える前に、ロナは宿屋へ入っていった。
「・・・うまくやったな」
土人形たちが、一斉に抜刀する。数は数十体といったところ。
ガラス玉の目が怪しく光る。
クラウスはロッドをゆっくり構えた。
「一暴れ、するかな」
そのころ、ロナは宿屋の二階にいた。
マル、マルはどこにいる?
ロナはゆっくりと息を整え目を閉じた。
空気をうかがう。マルの空気。
・・・ゆったりとした、優しい空気。心が落ち着くような、そんな空気。
奥の部屋から感じる。弱々しいが、確かに彼だ。
強い、淀んだ空気の中で、押しつぶされそうなマルの空気。
一緒にいる淀んだ空気は、淀み方が尋常ではない。
・・・・あの、“滅びの穴”の淀みのような空気・・・!!
「マルっ!!」
ロナは走り出した。
☆ ☆ ☆
「勇者くんよ〜」
眠るマルの頬を、満足げにつっつくアクトク。
マルはうなされている。顔色も真青だ。
「てめぇ、むかつくんだよな。・・・はじめてみたときから」
アクトクの声が、低く、毒々しくなる。
無論、返事はない。
アクトクは手早く、かけ布団をはいで、巻かれた包帯をとっていく。
それでも起きないのは、それだけマルの眠り魔法が強力、ということだろう。
血が止まった傷口は、それでも痛々しい。
「この、“悪魔がえり”の混乱した世の中で・・・・お前はぬくぬく生きてきた・・・」
魔物と戦うすべすらまともにもたない。そのくせ、デスを恐れもしない。
「・・・ムカツクぜ」
アクトクは胸元のポケットから小壜を取り出した。
中に紫色のおどろおどろしい液体が入っている。仄かに白い煙が上がっている。ルーワ印の毒薬だ。
ただでさえ、強力な毒薬なのだ、傷口にたらしてやればより強力に効き目をあらわすだろう。
「ま、これでさよなら、だ」
アクトクは一人、ニヤリと笑う。
「うわーなんだ、あいつっ!!」
「ま、ま、魔物ーっ!?」
扉の外から声が聞こえる。
「ちっ、さっさと済ますか」
アクトクは小壜のフタをぽんっ、と開けた。
小壜を傾けると、紫色の液体が流れ落ちていく。
毒薬が、マルの傷口にふりかかる。
「マルッ!!!」
ロナの声は鋭く響いた。
魔王以上の力を持つだけのことはある。
ロナはそのすばやい動きでマルをかばう。
「ぐあっ・・・!!」
アクトクは、押しのけられた反動で、床に吹っ飛ばされた。毒薬の壜が音をたてて転がる。
飛びこんだロナはその背の翼に毒薬を浴びた。
激しい衝撃がロナを襲う。
たまらずロナはその場に崩れ落ちた。
「どうしたッ!!?」
「げっ、サッサ・・・・」
アクトクにとってはバッドタイミングで、サッサ&サティが部屋に入ってくる。
毒薬の壜は、調度サティの足元に転がっている。その中味が漏れて、しゅうしゅうと木の床を溶かしていく。
「・・・これ、毒?!」
サティは目ざとくその壜を見つけた。
その言葉に、さすがのサッサも悟る。アクトクが、マルを殺そうとしたことを。
「アクトク、テメェッ!!!」
「・・・・うっ」
サッサがアクトクの胸倉をつかむ寸前、ロナが苦しみの声をあげた。
「あの子っ、マルをかばって毒薬を!?」
ロナの背の黒い翼が解けていく。
あの毒薬は、体を溶かし、ついには全てを消す作用があるのだ。
サティはとっさに解毒の魔法をロナにかけた。
「どういうことだッ、アクトクッ!!!」
サッサが詰め寄るよりもはやく、アクトクは立ち上がった。
「ちっ・・・」
失敗、完敗、だめだめである。
アクトクは命石を投げつけて、その場をとんずらしていた。
テレポートの命石魔法。――― 人、一人分の命石が砕け散る。
「・・・・うっ・・・・」
うめき声をあげて、マルが目を覚ます。
「マルっ!!」
傷ついた翼の痛みも気にしない。ロナはマルに駆け寄った。
「・・・・ロ・・・・・・・・ナ・・・?」
子どものような無邪気な笑み。
サティははっ、とした。
幼い頃、マルがよく浮かべていた笑み。
ただただ純粋な微笑。優しい気持ちが溢れて浮かぶ笑い。
本当に嬉しいとき、マルが浮かべる笑みは本当に無邪気で、美しかった。
いつ以来だろう、この笑みを見るのは。
「よかった・・・・・」
サッサは見ていた。
この魔王の子であるはずの魔物。
姿はほとんど人と変わらない。目が紅く、耳が少しとがっているぐらい。
背の黒い翼も今は痛々しく溶けて、なくなっていた。
そしてなにより、その目に輝く涙は、ヴァースもデスも変わらない。
「・・・・・・マル」
サティはマルに呼びかける。
ロナはばっ、と振りかえり、慌てて涙を腕でぬぐった。
そして、警戒をした、それでいて怯えた表情を見せながら睨みつける。
サッサとサティに今気がついたようだ。
「サッサ、サティ?」
サッサもサティも攻撃してこない。
「・・・・ごめん、マル。この子、魔王じゃないんだな」
「ちがう、私は魔王の子っ!!!」
全身に警戒心を現して、ロナは叫ぶ。
「・・・・言い方わるかったな。あんた、ワルモノじゃないんだ」
ロナの様子にサッサは慌てて言いなおす。
「そうよね、体を張ってマルを助けてくれたんですもの」
サティは優しくロナに回復の魔法をかけてやった。
「え、ええっと・・・」
ロナは照れたようにあたふたしている。
「ロナッ!!マルッ!!!」
クラウスが飛びこんできた。
「・・・・サティ、サッサ・・・」
すぐにサティとサッサの姿を見つけ、緊張した面持ちになる。
「クラウスも、ごめんね」
「え?」
クラウスは呆然とサティを見た。
「ドラドって聞いただけで、あなたたちのこと、ワルモノにしてた」
「・・・いい、かまわん」
ふっ、と目をそらすクラウス。そんな彼にマルはにこにこ笑う。
「話、聞いてもらえそうだよ、今なら。な?サッサ」
「おうッ、聞くともッ!!!」
タクスの部屋♪
サッサ「パーティー復活だぜッ!!!」
クラウス「張りきってるな、サッサ」
マル「ほんとだ〜、サッサ、燃えてるな」
サッサ「当ったり前だぜッ!!英雄とその仲間たちがそろったんだからよッ!!!(←やっぱり英雄好き 笑)」
サティ「そういえば、みんな揃うのも久しぶりよね〜♪」
ロナ「人が多いと楽しいね」
ロナ、にっこり微笑む。
マル「(か、かわええ・・・)う、うん、そうだね♪」
クラウス「・・・・・。そういえば、タクスは?」
クラウスを除く全員「・・・あっ?!」
タクス「・・・・・・ひどいです(T_T)(T_T)(T_T)ここは私が主役の大スペクタクルロマンですのに〜(T_T)(T_T)」
サッサ「(大スペクタクルロマンってなんだ?)」
マル「(そーゆーとこはツッコんじゃ可哀想だよ 笑)」
ロナ「タクス、泣かないで。はい、ハンカチ」
タクス「おおぅ(T_T)ありがとうロナ、さすがヒロイン、優しいですっ(T_T)ロナ、君が支えてくれれば私も次回予告が言えそうな気がします」
サティ「そういえば、タクスあんまり次回予告言えないものね」
クラウス「今回ばかりはゆずってやろう。大挙してここに押し寄せた詫びだ」
サッサ「チッ、しょうがねぇなッ!」
マル「サッサ、ちょっと残念そうだよ(笑)」
タクス「ありがとうありがとう、本編、主人公パーティーっ!!ではっ、私が次回予告を・・・・・・」
フッフッフ・・・・・
マル「こ、この笑いは!!」
ララ「させへんでーっ!タクスッ!!」
タクス「ララッ!!!」
ララ「次回第25話『ルドの伝説』物知りサッサの大講義大会やで!!!・・・ふう♪(爽やかに汗を拭う)」
タクス「ララ、ひどいですよぅ(T_T)」
ララ「いいやろ、うちはっ、うちは・・・・・・」
ロナ「ラ、ララ?」
ララ「主人公パーティーがいい感じに復活しようと・・・」
ララのまわりに不穏なコスモ(違)が・・・。←(注 コスモのことは『聖闘士☆星矢』にきいてね☆)
ララ「いまだに寝とるんやからーーっ!!」
マル「今、ララの魂からの声を聞いた気がする (笑)」