Birth0Death
第二十二話 交錯する者たち
紅い町、セン。
センの町を囲む外壁は石でできているが、町唯一の入り口は木でつくられている。
魔物が入らないようにと、御神木で作られた門だ。
木製のため、今は濃い茶色をしている。立派な門となっている。
夜の間、この門は閉じられるようで、今はまだ、開いていない。
センの町の門前に佇む二人組。
もちろん、ロナとクラウスである。
セカイジュの召喚、二度のテレポート、大活躍だったララは、すっかりくたびれてクラウスのマントの内側で眠っている。
ロナは不安げな表情を浮かべて立っている。
マルがセンに運ばれるかどうか、そんなことはわからない。
「・・・あいつらのことだ。必ず、ここに来る」
クラウスは自信たっぷりにうなずいた。
朝の合図の鐘が鳴る。
と、同時に門が音を立てて開く。
この頃にはセンの町の前には多くの旅人が集っていた。
もちろん門の向こう側、センの内側にも多くの旅人が集う。
行くものと来るもの。
朝、ここで二つの大きな流れはすれ違う。人々の交差がはじまった。
「うっ!?」
ふいにロナが振りかえる。
青ざめたロナ。彼女の横を通りすぎていった青年も、時を同じくして振り返る。
・・・青い髪の青年。
「どうしたのですか、バッツ?」
鋭い視線でまっすぐにロナを睨みつける。深緑色の髪と目をした、小さく華奢な少女。ふいに、その唇に笑みを浮かべた。
「いや・・・なんでもない、ルーワ」
空気は違う、違うが、あの魔王城で見た姿に似ていた。
「はやく、剣をゲットしにいこっぜ」
やたらガタイのいい男が、二人に呼びかけている。黒い髪をみつあみにした男。格好からすると、東方の国の者のようだ。
「ああ、そうだな」
曖昧にバッツはうなずく。まだ、ロナを気にしていたが、ふっ、と前に向き直った。
まさか、魔王の子?
・・・・・・・・・なわけないっか。
「バッツ、アイズ、あなたがた、先にラインに行っていてくださいませんか?」
ふいに、ルーワが言う。二人はそう驚きはしない。ルーワが旅の途中でふらりと消えるのはよくあることだから。
「大丈夫か、カイタ山登るんだぞ?」
カイタ山は世界有数の大山脈である。その山を越えていけば、ラインにすぐ着く。
だが、あまりの険しさによっぽどの者じゃないとのぼれない。まあ、このバッツたちは"よっぽどの者"ではあるが。
「大丈夫です。魔法で行きます」
その一言にアイズはふるふると、握りこぶしを握った。
アイズにとって、魔法は苦手なもの。その便利さに対抗心を抱いている節がある。
「ま、まあまあ。俺たちは体力あるしな。先行こうぜ。着くのは後になるかもしれねぇけど」
「うおぉおぉー負けねぇぞっ、オレはっ!!」
その一言に、アイズはますます山登りに燃えていた。
「ロナ、今のがどうかしたのか?」
「・・・・魔王を倒した勇者一行だ」
「なに?」
ロナの顔色が蒼白になっていく。発作に近い。クラウスに支えられて、どうにか立っている。
「私はあいつに斬られた。そう、あいつに・・・」
「おい、大丈夫か?」
大丈夫ではなさそうだ。宿屋へ連れて行きたいところだが、いかんせん、お金がない。
よりによってマルが財布を持っているとは。
「・・・ここで野宿するか」
門前広場で野宿という、ちょっと悲しいはめに陥るロナたちだった。
☆ ☆ ☆
「見えてきたぜッ!!!」
「く、お、重い〜」
アクトクはふらふらである。マルを肩に乗せたままずっと歩きつづけたのだから、たいしたものだ。
今はもう、お昼近い。センの町がようやく見えてきた。
状況は暗いが、町の様子はものめずらしい。
サッサは今を忘れた時だけ、町の様子にわくわくしていた。
紅い町と呼ばれるだけあって、門をこえると町中に赤レンガの建物が立ち並ぶ。
どちらかというとごちゃごちゃした感じの町並みだが、角度によってはとても整然として見える。
石畳も、大きい石を使っていたり、小さい石をつかっていたり、まちまちだが、やはりなにか、秩序を感じる。
「まずは、宿屋に行かないとね。マルを寝かさなきゃ」
「お、言ってるそばから、あったぜ〜宿屋♪」
中々綺麗な宿屋だ。やはり赤いレンガの建物。下にひかれた絨毯まで紅い。
サティはさっそく宿屋で二部屋を取ろうとしたら、アクトクがとめた。
「どうせなら、三部屋にしようぜ?マルの分と、サティの分と、オレたちの分」
サッサとアクトクは同室ということだろう。
「でもマルを一人にするって言うの?」
「違うぜ〜。看病は交代でってことさ。オレもさ、サッサといたら疲れがとれないし〜」
「あんだとッ!!!」
サッサは速攻で、アクトクの胸倉をつかみにかかる。
「・・・確かに一理あるわ。じゃ、三部屋、とるわね」
「じゃ、まず看病を、二人のうちのどっちか、頼むぜ〜」
アクトクはやれやれといわんばかりに、マルをベッドに置くと――寝かせるというより、まさに“置く”という感じなのだ。
――さっさと宿屋を出ていった。
「どこ行ったんだ、あいつはッ!?」
「さあね。サッサも、ちょっと寝ておいたら?」
「・・・・・そうするかな」
サッサはマルのことをサティに任せて、とっとと部屋に引っ込んだ。
「・・・そういえば、なんで、アクトクは看病なんて言ったのかしら?」
マルの寝顔は苦しそうだ。
サティはその様子をじっくり観察する。
そういえば、マルの肩にかかっているマントをはずさないと、邪魔である。
ばっ、とそれを取ると、変色したハンカチがあった。マルの利き手の右腕に施したにしては、綺麗で丁寧な止血。
サティは腑に落ちない顔で、そのハンカチを見つめていた。
タクスの部屋♪
タクス「さ〜て、はじまりました、タクスの部屋です♪なんだか正統な始め方ですね(じーん)」
マル(血まみれ中&睡眠中)「やっほー。タクスの部屋、はじまったんだね☆」
タクス「うわっ、ステータス異常&某FFならばHP黄色字状態の主人公、マルくんではありませんか」
マル「はははー。某の意味ないし〜」
タクス「・・・マル君?何かテンションがおかしいような・・・」
マル「はははー。僕ってば、ただでさえ地味なのに、今回、寝てるだけなんだよ〜(涙)」
タクス「(汗)ああ、マル君・・・哀れなり」
ララ「待ちやっ!!うちだってそうなんや〜っ!今回寝てるだけしかも、名前すら出てこないんやで」
タクス「おお〜。本編テレポート係〜微妙に地味なララ・サンオリーじゃないですか」
ララ「コロス(キラーン)」
タクス「ぎゃー!?ラ、ララ、落ちついて落ちついて〜、そんなコロスだなんて、簡単に言わないでください〜(T_T)(T_T)(T_T)」
マル「なんだか、ここにいるのって、寝てるだけコンビ+永眠・・・」
タクス「マ・ルくん♪」
マル「はい?」
タクス「コロス(キラーン)」
マル「ぎゃーっ!!タクスさん、顔が変わってるよ〜ってか、目が目が光ってるぅ〜!!」
逃げるマル、追うタクス。
ララ「マルってば、よぅあのキズで走れるわ。・・・やれやれ。さて、次回はっと。・・・ん?な、なんやてー!!?」
タクス「どうしました、ララ??」
マル「(変わり身、はやっ)」
ララ「大変や・・・」
タクス「どうしたんです?」
タクス、原稿をのぞく。
タクス「な、な、なんですとー!?」
マル「どうしたんだい?次回予告言わないのかい?しょうがないな、地味主人公のこの僕が、じきじきに言ってあげよう(←偉そう 笑)」
ララ「い、いや、やめた方がええよ…」
マル、ララから原稿を奪う。
マル「次回「命より重いもの」・・・・な、なんだとー!?ア、ア、アクトク・スペシャルゥー!?あのアクトクなんぞに主人公の地位を奪われるのか〜!?僕の立場って一体(T_T)(←マル、タクス化)」
ララ「・・・・哀れなりマル」