Birth0Death

第一四話 召喚のとき


 

朝。

草原に降り注ぐ光も、まだ柔らかい。

風がマルの頬をそっと撫ぜていく。土の香りが鼻腔をくすぐる。

 

「うらーっ!!おきんかーい!!!」

「おわっ!?」

ララの甲高い声が耳にじんじん響いた。マルは軽く頭を振って、ねぼけを打ち消す。

 

「おはよう、ララ」

と、言ったところでマルのお腹がぐーっ、となった。

「お腹、減ったな」

昨日の晩ご飯も食べていないのだ、育ち盛りにはちとつらい。

着の身着のままテレポートしたのだから、当然、旅の道具もない。

「お?クラウス??」

いつのまにか焚き火の位置が移動している。

 

「起きたか。ほら、食え」

「おっとと」

投げられた櫛刺しの鶏肉をどうにかキャッチした。どうやらクラウスが近場で狩りをしてきたようだ。

「クラウス、あんた大丈夫か?」

おそらく昨夜は一睡もしていないはず。

「俺は大丈夫だ・・・・・・」

背を向けて、クラウスは鶏を焼きつづける。

 

「マル、マル」

「ん?」

耳もとでララがささやく。

 

「たぶんな、クラウス、動いてないといやなんや」

「え?」

「ほら、昨日のいろんなこと、考えてしまうやろ?」

 

考えてみれば、サッサやサティの言葉に傷つかないはずがない。

 

「慣れてるとはいえ、仲良くなったとこやったからなあ・・・ショックやったと思うわ」

「それにしたって、体、壊さないかな」

「大丈夫や、クラウスはタフやから・・・・」

ララの目はそうは思っていない、心配げな表情を浮かべていた。

 

もくもくと食事をする。

 

食事を終え、焚き火の後始末をして、クラウスが立ちあがった。

 

「ララ、もう召喚、できるか?」

「おうッ!!うちはばっちりや。マル!!」

「な、なに?」

突然振られてマルは焦りながら答える。

 

「幻の森は三時間や」

 

「は?」

「三時間しか呼び出せないんや。三時間たったら、消える」

「なんでだっ!?」

「うちの魔力じゃそれがいっぱいいっぱいなんや。そりゃ、タクスみたいにアホみたいな魔力の持ち主やったら、ずーっと呼び出しつづけるんやろうけどさ。うちは三時間が限度」

ララは胸を張って答える。

 

「呼び出すって、召喚するってことだよな?一体幻の森を召喚する、ってどういうことなんだ?」

 

「デスのセカイジュ」

クラウスがぼそりと答える。

 

「え?」

「デスでもっとも貴い樹木。セカイジュを呼び出す。それがジュカだ。セカイジュはまわりの木々と密接な関係にある」

「せや。だからセカイジュを呼び出すと、まわりの森までついてくるんや。やから幻の森っていうねん。ついでにな、ジュカは樹木の下って意味の樹下やねん」

「セカイジュっていうのはデスにあるものなのか?」

 

「なんや、召喚のしくみ知らんのやな」

 

ララが講義モードになった。

「デスはヴァースの地下の時空に存在するやろ?」

そう、地下世界といっても、本当に地下にあるわけではない。ヴァースの地下にはきちんとマグマがある。

ではなく、デスとヴァースの関係は時空上の差なのだ。

「デスにあるセカイジュをな、こっちに運ぶんや。それが召喚。デスとヴァース、両方の血をひいとらんとできひんのやで」

ララはさらに胸を張っていばる。

 

マルはふと、郵便の転送魔法システムを思い出した。

「じゃあ、魔方陣みたいなの、いるのかい?」

「その準備もできている。あとはマル、お前の決心がついたらはじめる」

クラウスの言葉にララもうなずいている。

「そっか・・・」

「うちは呼び出すのでいっぱいいっぱいやから、ジュカにはついていけん。気をつけてな、マル」

「うん、ありがとう」

少し青ざめたララにマルは力強くうなずいて見せた。

 

サティもサッサもいない今、それは空元気だったけれど。

きっと大丈夫。

マルはマルなりに覚悟を決めた。

 

 

――絶対ジュカに辿りついてやる!

 

 

「じゃあ、よぶからな・・・」

ララは草原の草を抜き、地面に描いた小さな魔方陣の上に立った。

円と、マルの知らない文字と、幾何学模様で構成された魔方陣である。

ララは小さなその手を広げ、目を閉じた。

 

小さな魔方陣が緑色に光る。

 

その小ささにも関わらず、巻き起こる風にマルは飛ばされそうになる。

じょじょに増していく光にマルは思わず目を閉じた。

 

「いくぞ」

「え?」

クラウスの呼びかけに目を開くと、目の前に巨大な木々が立ち並んでいた。

「これが、幻の森・・・・」


タクスの部屋!!

マル「あの〜タクスさん?」

タクス「(T_T)ああ、ああ〜マルくんっ!」

マル「(こないだ、勢いで噂のプロフィールデータ、焼いちゃったからなあ、この人)」

タクス「解説調な回想をありがとう、マルくん(T_T)」

マル「おわっ!?人の心をよむなー!!」

タクス「フフフ。私は仙人ですよ?そのぐらい、可能なのです。そう、私に不可能はないっ!!」

タクス、神々しく復活っ!!

マル「・・・おいおい」

タクス「そう、次回はね、私が、私が出るのですよ!!」

マル「へ?」

マル、しばし止まる。

タクス「フフフ、そう、本編にっ!!」

タクスの早着替え(笑)

マル「うわーっ!?いつぞやの(第四話あとがき参照)そーめん服っ!!!」

タクス「知っているかい?あの、燃えてしまった(涙)プロフィールの中でも、最も特徴の薄いのが君なのだ、マルくん」

マル「そ、その格好で、いきなり何を言い出すんだっ!?」

タクスの目に怪しい光が。

タクス「フフフ。主人公ともあろう君がね。好きな食べ物はハンバーグ(←ありがち)だし、嫌いな食べ物はピーマン(←ありがち)だしっ、しかもカラオケの18番がスピッツっ!ありがちにもほどがあるっ!」

マル「ぐっ・・・・(←いい返せない)」

タクス「その点、私は主人公となるべき特徴を山ほど背負っているのですっ!」

マル「・・・カラオケの18番がモー娘の主人公・・・・ (ぼそっ)」

タクス「・・・ぐっ(←痛いところを突かれた)と、ともかく私には主人公となるべき素質があるっ!!」

マル「いや。あんたが主人公だと、ただでさえおかしな物語が、余計にこじれる!!!」

タクス「そんな、どきっぱり言わなくても(T_T)」

マル「(また泣き出したよ〜この人)ま、まあ次回は登場できるなんて良かったじゃないか」

タクス「そう、そうなのですっ!次回第十五話「過去の幻」・・・・・・な、なにーーっ!!過去なのか!?私は幻なのか―――っ!!」

マル「あ〜あ(ため息)」


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