Birth0Death

第十二話 ヴァースとデスと


「はい、クラウス、頼まれてたロッドよ」

「すまない」

クラウスはサティからロッドを二本、受けとった。

 

一体なんの為に使うのだろうと、マルはぼんやり疑問に思いながらも、ぼーっと、テーブルに向っていた。

 

サッサはやはり戻って来ていない。

 

「ね、どうしちゃったの?」

マルもクラウスも返事ができない。

もう、とっくに日は暮れている。サッサはどこにいるのか。

宿の酒場はマルたち以外に客はいない。

 

夕食の時間が来てもやはりサッサは戻らない。

 

「お腹すいたわね・・・探してこようかしら」

サティはそう言って立ちあがった。

「実は・・・」

マルは慌ててそれを止めるように話始める。言葉にしたがってサティは再び席につく。

と、

「俺が話す」

話し出そうとしたマルを制してようやく、クラウスが口を開いた。

「クラウス?」

サティがきょとんとクラウスを見つめる。

 

「あいつは事実を知った」

 

「事実・・・?」

いぶかしげな表情を浮かべるサティに、クラウスはうなずく。

「俺はデス人だ」

「え!?うそ・・・・」

サティは咄嗟にララを見る。うつむきかげんにララはうなずいた。

「せや。クラウスはデスの人や」

「けど、クラウスが倒したヴァースの鳥は命石にならなかったわよ?」

 

“デスの者がヴァースの者を壊すとき、命石が現れる”

 

その言葉は嘘ではない。現にサティも見たことがあった。

 

暴れる魔物たち。

断末魔の悲鳴。

上がる血飛沫。

そして輝く石へと変わっていく人々。

 

「それは俺が“出来損ない”だからだ」

「“出来損ない”?」

マルはどうすることも出来ず、無言でいるしかない。

ただただ、サティまでも、サッサのようにクラウスを拒絶することがないように、祈るしかなかった。

「あいつはそれを知った。だから戻ってこない」

 

「けど・・・・」

 

パリンッ!!

宿に石が飛び込んできた。窓ガラスが割れる。

 

「なんだッ!?」

「う、うそやろ・・・」

 

なんだか外が騒がしい。

窓の外はたいまつを携えた人々。

 

「おい、ここかっ!!」

宿を取り囲むように人々が集っていた。

 

「ドラドっドラドがいるのはわかっているッ!!」

「悪魔めッ!!出て来いッ!!!!」

「ドラドなぞ、殺せッ!!殺してしまえッ!!!」

 

憎しみの暴徒と化した、町の人々。

 

「!!!?まさか・・・」

慌ててマルは窓に近寄って、外の様子を見た。

 

暗い夜。

浮かぶたいまつの明かりが一つ、二つ、三つ・・・いや、片手では数えきれない。

 

「あかん、取り囲まれとるッ、クラウス・・・・」

「クッ・・・・・・」

クラウスは立ち上がり、窓に近づいた。

外の様子を伺う。

 

と。

 

「・・・ドラド?」

 

今まで、テーブルについたままだったサティが、静かに尋ねた。

立ち上がったサティはゆっくりと、クラウスと向かい合う。

 

その様子があまりにサティらしくなくて、マルは不安になった。

 

「・・・ああ。俺はドラド家の者だ」

クラウスは振りかえり、サティの目を見返して言った。

 

「・・・・ドラド?ドラドですって・・・」

 

窓際に立つクラウス。扉に向って背を向け、クラウスと対峙するサティ。

 

「あなた、マルになにをさせるつもりッ!?マルを、マルを利用させないわよ?!!」

 

サティの言葉に驚いたのはマルだった。

 

「サティ、何を言って・・・」

 

「わからない?"悪魔の扉"の向こうにいるのはとらわれの姫なんかじゃない・・・」

「ちがうっ!!」

サティの言葉を遮って、クラウスは叫ぶ。

憂いをたたえた緑の目で、サティをそしてマルを見つめる。

「“悪魔の扉”の向こうには、とらわれの姫がいる!!」

クラウスの必死の言葉も、サティには届かない。

 

「・・・悪いけど、信じられないわ」

サティの言葉はいつになく、冷淡だった。

 

そのとき、宿の扉が開いた。

 

「あれだっ、あれがドラドだ!!」

「逃げ場はないぞ、観念して死ねッ!!」

「アンナの・・・妻の仇ッ!!!」

街の人々が、狭い酒場に押し寄せる。

 

ちっ、と舌打ちをしてクラウスはマルの右手首をつかんだ。

「ララっ!!!!」

 

「なんでや・・・なんでこうなっちゃうんや・・・・」

 

白の閃光と衝撃波。

あまり眩しさに目をつぶる。

目を開けたとき、すでにマル、ララ、クラウスは消えていた。

 

「なんてこと・・・消えてしまうなんて」

「おいッ!!!!」

呆然と佇む人々を押しのけてサッサが宿に入ってきた。

「サッサ?サッサ!!!・・・あなた、何をしたの?」

サティはサッサに駆け寄った。

「サ、サティ?何って・・・なんでこんなに人がいっぱいいるんだッ!?」

「・・・サッサじゃないの?サッサが、クラウスはドラドだってことを町の人に言ったんじゃ・・・」

「んだよッ!?オレはそんなことしねぇッ!!!」

 

「あんたら、あのドラドの仲間だったのか?」

ようやく我に帰った町の人がサティらに声をかけた。

「ええ。そうよ。だけど・・・知らなかったの。彼がデス人で、ドラド一族だったなんて・・・・・」

「こいつら、嘘ついてるんじゃねぇか?」

「罠かもしれねぇっ」

「もしかしたら魔物が変身してるんじゃ・・・」

サティとサッサのまわりを人々が遠巻きに囲む。思わず二人はしゃがみこんでしまった。

 

「違うッ!!オレたちはラインから来たッ!!!勇者の町からッ!!!」

 

「本当か?」

「いや、うそくさいぜ・・」

人々は疑惑の目で二人を見据えた。

「やっちまうか?」

だめだ・・・この人たちは信じてくれない。

「ち、違うってッ!!!」

サッサの言葉も町の人々の耳には入らない。

 

「殺せっ!!!」

 

サティは振り下ろされるオノを呆然と見ていた。

 

「ちょっと待ったあ〜ッ!!!」

 

「う、なんだよアクトクさん」

オノを振り下ろそうとしていた男はすんでのところで動きを止めた。

「この人たちはほんとにライン出身のヴァース人だぜ。あんたらそんな人らをやったら、殺人だって」

「アクトクッ!!?なんでこんなとこにッ!!!?」

「あ〜あ、さらわれちゃったね。勇者の弟。魔王の手下にさ〜」

「なにッ!!!」

サッサはアクトクの胸倉をつかみ睨みつける。

まわりを取り囲む町の人がざっ、と刃物をサッサにむけた。

「ああ〜も〜。まあまあ。ちょっとくるし〜よ」

サッサは手を離した。さっそくアクトクは衿を正す。

 

「言っただろ〜。魔王の情報があるって。今度こそ、聞いとくか?」

 

無言でうなずくサッサとサティを見て、アクトクの口元にはニヒルな笑みが浮かんだのだった・・・。


タクスの部屋!!

ララ「〜で、あとはやな〜」

タクス「うわーっ、まだララがいるっ!しかもまだプロフィール語ってる!!ララ、本編はどうしたのですか?」

ララ「(ニヤリ)」

タクス「(^_^;)ララ、今の笑いは一体・・・」

マル「さて、はじまりました、タクスさんの部屋。今日のゲストは僕、マル・スカイブルーとララ・サンオリーそしてクラウス・エル・ドラド」

タクス「でたな、本編でシリアスシリアスしてやがる奴ッ!」

クラウス「タクス、口調が変わりすぎだ(汗)」

タクス「ああ、失礼しました(笑)」

マル「(か、確信犯だな)」

タクス「ララのプロフィールも気になりますが、今をときめくクラウス・エル・ドラドさんのプロフィールも気になりますね、ね?マルくん♪」

マル「う、うん。(タクスさんの笑顔・・・怖いんですけど)」

クラウス「俺のプロフィール?そんなもの、あってないようなものだ」

タクス「いや、ありますよ、ここに!!」

タクスの苦労の結晶、総数一万ページに及ぶBirth0Death登場人物プロフィールデータ現るっ!

ララ「(っは!あの紙はキケンやで、クラウス)

クラウス「なに!」

クラウス、プロフィールを奪う、が失敗。

タクス「はーはははっ!この私が二度も同じ失敗をするはずがあるまい」

ララ「(クラウス、クラウス、作戦変更や)

クラウス「(どうするんだ?)

ララ「(簡単や・・・)さっすがタクス!仙人のなかの仙人やっ!」

タクス「そーでしょう、そーでしょう♪」

クラウス「(!!ほめ殺し作戦か)そ、そうだなっ、だてに白髪なわけじゃない

マル「それって褒めごとばなのか・・・?」

クラウス「マル、いらんことを言うな。・・・命は惜しかろう?」

マル「ひ〜(汗)(クラウス、やっぱ悪人!?)」

ララ「やっぱなあ、マルが主人公するよりか、もう、タクスが主人公になるべきやわっ!!」

今だ続く褒め殺し(笑)

タクス「そーでしょう、そーでしょう ┌|∵|┘ズンチャ└|∵|┐ズンチャ┌|∵|┘ズンチャ」

クラウス「フッ・・・隙あり!!」

タクス「だーっ、しまったあ」

クラウス、見事、プロフィールを奪う。ちらりと目をやる。

マル「ク、クラウス?」

クラウス「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

ビリッ

無言で切り裂く。

タクス「がーっ、なんてことをっ!」

ララ「これでクラウスは救われたんや!!(感涙)」

マル「・・・一体あのプロフィールには何が書かれているんだ・・・」

ララ「マル、あんまり気にするとハゲるで、自分。さて、次回は第十三話 「離散」マルパーティーとサッサパーティー、それぞれを追うっ!お楽しみにー!!」

タクス「クックック・・・・・クラウス、私に逆らうとは。覚悟はできておろうな?」

マル「う、うわー、タクスのまわりに異様な殺気がうずまいてるー!」


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