Birth0Death
第十一話 翳り
海だ。
穏やかな波の音が絶間なく続く。
ここはマルたちのいる砂浜から少し離れた、岩壁。
青く蒼く藍い海。
この海で泳ぐことをセミは望んでいた。
クラウスはドラドの紋章のついた首飾りを握り締める。
岩壁の向こうは海。
海を好んだ少年。彼はもういない。
「おいッ!!!クラウス!!!」
「!!!?お前らか」
驚いた。
自分が油断していたことに。
ヴァースに来て油断なぞ、したことはない。
まわりはみんな敵だった。同郷の者さえも。
「何やってんだこんなとこで?・・ん〜?なんだ、それッ!!!!」
ふざけてサッサは、クラウスから首飾りを奪い取る。
クラウスは小さく舌打ちをした。
厄介な者に見つかった。
「こらこら、サッサ」
気弱な勇者弟が、勇者志望の少年をたしなめる。
「ふふん。隙ありだぜッ!!!」
マルの言葉なんぞ、サッサは聞いちゃいない。得意げに胸をはる。
「返せ」
無表情のクラウス。
ふっと、サッサは奪い取った首飾りに目をむけた。
「・・・・この紋章ッ!!!」
サッサの表情が一変して、険しくなった。
「返せ」
先ほどより低く緊張した声でクラウスは言う。そして、サッサから首飾りを奪うように取った。
それを握り締め、海に向って投げる。
「お、おい・・・・・・・・」
「セミを・・・乳母兄弟を、海に返しただけだ」
そうつぶやくと、クラウスはそのまま二人に背を向けて歩き出した。
サッサはその背中に向かって、一歩踏み出す。
「待て、クラウスッ!!!!」
「なんだ?」
振り返るクラウスの顔は暗い。深く、傷ついたような表情だ。
「説明しろッ!!!なんでテメェが、あの紋章を持ってやがったんだッ!!!!」
サッサはクラウスを怒鳴りつける。いつもの騒がしさとはまったく違う。
醜ささえ伴う怒鳴り声を発するサッサ。その背中からは暗い淀んだ空気が漂う。
マルはただただ呆気にとられるしかなかった。
「俺の友人の物だ。俺の家の家紋でもあるがな・・・・」
それだけ言うと、クラウスは振りかえらずに行ってしまった。
「・・・・・・サッサ?」
クラウスの言葉を聞いた後、サッサは微動だにしない。
「友人?・・・・家紋?」
サッサはクラウスの言葉を反芻している。
「おい、サッサ?」
「ははは・・・ははははっ」
サッサは笑い出した。その狂った様子にマルは寒気を覚える。
「お、おいサッサ・・・・?」
「あの紋章、魔王の軍、ドラド将軍のしるしだぜ」
振りかえったサッサの目は、いつもの輝きを失っている。
「え、いや、サッサ、何を言ってるんだ?」
サッサの言葉にマルはただ、混乱していた。
「あいつ、デスだ」
「サッサ?」
サッサの目が、今や濁って見える。
「しかも、あいつは、デスなだけじゃない。ドラドの血筋だ。いつ魔物になってもおかしくない」
ドラド将軍。
ラインにも攻めてきた恐ろしい魔物の軍。それを率いていた悪魔のボス。
サッサの脳裏にはラインに攻めてきた魔物たちの姿がはっきり映っていた。
冷酷で残虐で。彼らの後には血と命石が溢れていた。
「けど、そんなことで・・・・・」
クラウスは「自分も“出来損ない”」だと言っていた。
酔っていたとはいえ、ボーダーでのクラウスの言葉をマルは少しは覚えている。
「お前は城にいたもんな。10年前、ラインを襲った魔物の様子を全然知らない」
そう言い放ち、サッサはしばし黙った。
沈黙が重い。
「くっそ、あんなやつと旅していたなんてッ」
サッサはうつむいて言った。右手の握りこぶしが小刻みに震えている。
怒りだ。隣にいるマルにも伝わってくる怒り。憎しみと怒り。
サッサのまわりの空気が、マルにはひどく淀んで見えていた。
「けど、クラウスは悪い奴じゃないと思うけど・・・・」
おずおずと言ったマルにサッサは翳りの見える表情で首を振る。
「デスにいい奴なんているわけない」
憎しみのこもった言葉を冷たく言い放つ。
呆然とするマルを残して、サッサは絶えられないように、走り去っていく。
あれほどまでに、闇を纏ったサッサを見たのははじめてだった。
マルは正直、ショックだった。
クラウスが魔王の軍の者だ、ということよりもサッサのあの翳りのある表情に。
☆ ☆ ☆
一方、走り去るサッサを建物の影から、見ている者がいた。
あの、アクトクである。
彼の背にはクラウスの剣がばっちり、光っていた。
「くっそ、とっとと向かって欲しかったのによ〜。ちょーっと早すぎだっての、こじれるの」
アクトクは一人、愚痴る。
こりゃ、ちょっとばっかり煽るかな。町のやつら。
そうすりゃ、あいつらも急ぐだろ。
ニヒルな笑いを浮かべ、彼は踵を返して去っていった。
タクスの部屋!!
タクス「本編ってば、シリアスっちゃってますね〜♪ついでに短いですね〜♪(←めちゃめちゃうれしいらしい)フフフ。前回は屈辱的な間違いを犯してしまいましたが、今回、このタクスの部屋、あげましてのキャラクタープロフィールをば、紹介いたしますっ!」
マル「いたします!」
タクス「うわぁ!お・・・おどかさないで下さいよぅ。大体、なんでマルくんがこっちに二連チャンで来るのですか!」
マル「いやあ、本編でさ、す〜っかりサッサとクラウスにお株を奪われましてね。はは(どよ〜ん)」
タクス「(ああ、淀んでるよ、この人、淀んでる〜←マル化中)」
ララ「ついでにうちもおるよ〜」
タクス「おお、微妙に目立たない、ララ・サンオリー!」
ララ「タクス、うちとあんたの仲やけど、その一言はひどいと思うわ」
マル「(この二人、ど〜ゆ〜関係なんだ?←そこは本編で・・・出るのかな?笑)」
タクス「まあまあ、とりあえず、今回は本編短いんですから、こっちでがんばりましょうね♪」
マル「な〜んかさ」
ララ「やな感じやねー。タクスのお仲間扱いされてる気分やわ」
タクス「(図星)・・・さて。ここにいらっしゃる、ララからプロフィールを紹介しましょうか♪」
ララ「え?うちから?こーゆーのは主人公からいくもんやないの?」
タクス「フッ、主人公?サッサとクラウスに主役の座を奪われているよーな不甲斐ない人物の紹介を紹介する気なんてありませんね」
マル「・・・ひどい、ひどいよ、タクスさーん(泣)」
ララ「あそ。(似たもの同士やね)んじゃ、うちからどーぞ」
タクス「ではでは・・・(ニヤリ)」
ララ「(っは!!)ちょっと、その紙みせてみーっ!!」
タクス「ああ、しまった」
ララ、プロフィールの紙を奪い見る。
ララ「・・・ああ!?・・・・・・・・・嘘ッ!!・・・・・なんで!?こ、こんなことまで・・・・・・・・・」
マル「な、何!?なんなんだっ!?」
ララ「・・・・・・・・・・」
マル「ら、ララ?」
ビリッ
ララ、無言で紙を引き裂く。
タクス「ああ〜っ!!なんてことするんですかっ!!」
ララ「フー♪プロフィールなんてな、自分で言えばいいんやね♪」
マル「(なんなんだー!?)」
ララ「うちはララ・サンオリー♪名前の由来はキキラ○ちゃん♪そう、あのサン○オ♪下の名前もそのまんまやね☆」
タクス「ああ、そんなことよりも、あのプロフィールに書いたことを言った方が・・・」
ドカッ
マル「(な、なぜミニマムなララがタクスをあしげにできるんだーっ!?)」
ララ「まあ、見たまんまの妖精で、好きな食べ物はクッキーや」
マル「あ、えーっと、タクスさん(汗)」
ララ「・・・マル、うちのプロフィールききとぉ、ないんか?」
マル「(殺気!?)い、いえ、で、でもそろそろ次回予告してもいいんじゃないかと・・・」
ララ「そっか、そんな時間か。えっと次回第十二話 「ヴァースとデスと」本編はやっぱりシリアス風味。大変なことが起こるで〜。ほな、また来るわ♪」
タクス「そうして、私はセリフを失う・・・」
マル「がんばろうね、お互い」