「よし、散開して計画通り行動せよ」

 

全員が吊るサブマシンガンが黒く輝く

 

「はっ」

 

押し殺した応答

 

続き響く、軍靴の音

 

巨大戦艦は進路を真北に転じ、一路ウラジオストクを目指している

 

巡航速力27ノット

 

微かに揺れる、黒き要塞

 

白い航跡が二本、その後を付いていく

 

未来など、誰も知らない

 

だが、誰もが、それを創ることが出来るのだ…

 


CRAZY ROAD

第三話
『月下プレリュード』


 

「ちっきしょ〜…やっぱ食わせモンだぜ、あのクソ親父ぃ〜…」

つい言葉に出しちまったか…。けど、冗談じゃねーぜ。ったく…帰ったらジャーマンスープレックスの一発でもかましてやらねーと…。

低い天井。円い窓と、そこから差し込む月光。机に載せられた小さなテレビ。見れば見るほど狭ぇ部屋だぜ。

…ま、殆ど揺れねーだけマシか。こんだけ馬鹿デカけりゃーな。しっかし…。

「がぁぁ―――っ! 寝らんねぇ――――!!」

叫んだってどーにもなんねぇよな…。なんせ、“隔離棟”だもんな…。

そうだった。彼のキャビンは艦首側の外れにあり、周りはなんと砲弾の格納庫なのである。

物騒なんてもんじゃねーぜ。ヤニも吹かせねぇじゃねーか。どいつもこいつもオレをナメやがって…。

「お前はどう思うよ? え? トカレフちゃんよ?」

銃が答えるわけねーよな…。寝るか。なんとかして。

柄にもなく溜息をつきながら、ベッドに潜り込む龍二だった…。

 

 

 

 

同じ頃、前檣楼・司令塔。

「では、私はそろそろ部屋に戻る。後は頼んだぞ」

全員の『了解』の声を背に、白い軍服のよく似合う老年の男が、一人部屋を出ていく。艦長だ。

そして、そのまま仕事は続く。

ドン!

突然だった。

轟音と共に、男の悲鳴が、部屋の外から響く。

「ぜ、全員銃を構えろ!」

副艦長が叫ぶ。が、もう遅い。

機関銃の一連射を受け、司令塔は一時その機能を停止した…。

 

 

 

 

 

そして、再び龍二の部屋。

ザッ ザッ ザッ ザッ …

ああ? 足音か? こんな時間に何だよ…。

止まりやがったな。

「おーぅ、何だ。おもしれー事なら何でも歓迎するぜ」

 

ジャキッ

 

――!?

 

ズガガガガガガガガガガガガ!!

 

乱れ飛ぶ銃弾。乱れ舞う破片。乱れ散る銃声。龍二は直感した。マシンガンだ。何者かはすぐに蜂の巣となった扉を蹴破って侵入してくる。

「お…おもしれーじゃねぇか…。上等だ」

床に伏せた龍二は、悟られぬよう立ち上がる。侵入した二人は、油断無く辺りを警戒している。

「歓迎してやるぜ、コラァ〜〜〜!!」

あるモノを投げつける龍二。振り向いた二人に、信じがたい閃光と轟音が、そう、丁度落雷の如く炸裂。スタン・グレネイド(※)という物だ。

  (※スタン・グレネイド: ノンリーサルウェポンこと非殺傷兵器の一種で、光・音・催涙ガス等で戦闘力を奪う爆弾)

赤外線暗視装置など付けていた二人の視界は、例えようもなくぶち壊され、大きな隙を生む。

パァンパァン!!

龍二&トカレフは的確だった。サブマシンガンが宙を舞う

「へっ、たった二匹でオレ様に勝とうなんざ、5兆年早ぇってんだよ。天上天下唯我独尊世界最強宗像龍二をナメんな。
 さて、オレ様に喧嘩売ってくれた分、たっぷりと感謝してやるから覚悟しとけよ、コラ」

バキバキと骨を鳴らす龍二。その後、何が起こったかを描写する必要は無い。

 

 

 

 

「う〜ん…どうしましょう…」

龍世の部屋。長い茶髪の毛先を弄びつつ、何か考えている龍世。

その脇には、龍二の場合と同じく、男が一人転がっている。ただし、ロープでぐるぐる巻きということは、死亡していないということだ。

勿論暴れ込んできたのは男の方であり、従って返り討ちに遭ったわけだが、その経過を描写することは無意味だ。

なぜなら、“見えなかった”からだ。

それはそうと、あちこちから銃声と怒声、叫び声が聞こえる。

「とりあえず、あなたは何者ですか?」

にこやかに問う龍世。相手は答えない。

「聞こえませんか?」

目の前に直剣・菊花丸を鋭く突き立て、再度問う龍世。なおも相手は答えない。

「大した人なんですね。では、ちょっと御免なさい」

「…!?」

襟首を掴んで持ち上げ、鳩尾に一撃加える龍世。男は一瞬奇声を発し、そのまま崩れ落ちる。

龍二くんは大丈夫でしょうし、狂さんは問題ないですね。取り敢えず、艦橋に向かってみましょうか。

そう考え、さっさと着替えを済ませた龍世は、部屋を後にした…。

 

 

 

 

その頃、狂。

彼のキャビンは、機関室の真上。

そのキャビンに、異常な音響が響き渡る。

「クックックッ…ハーッハッハッハ!! 今宵、我が紅月の錆となるがよい! さあどうした? 遠慮は要らんぞ!(妖笑)」

朱に染まった大鎌・紅月と、朱に染まった頭、胴、手、足。そこに異常な笑みを浮かべ、狂は立っていた。いや、ゆっくりと歩いている。

「う、撃て!」

命令と共に、サブマシンガンの轟音が異常な声を圧する。それに対し、弾雨を物ともせず、なおも前進する狂。

異常な笑みに、銃弾が命中する。

それでもなお、狂は歩き、近付いていく。

「クックックッ…遠慮は要らんと…さっきから言っているではないか。聞き分けが…悪い!」

轟音の中、紅い光が一閃。

派手に血を噴き、首の無い胴体が床に崩れる。そして、そこからじわーっと赤い染みが広がっていく。

既に、同じ物が三つある。かつて、人間と呼ばれていた肉塊が。

恐怖。

恐怖に、生き残った二人の顔が歪む。

「う…うわぁぁ〜〜!!」

一人が逃げ出す。

「お、おい待て! …クッ…仕方ない」

そして、もう一人も。

「少しやり過ぎたようだな…まあいい。クックックッ…」

紅月を振って血を払い、一人そう言う狂。まさしく“狂”の名に恥じない雰囲気であった…。

 

 

 

『全員に告ぐ。“ながと”は現時刻を以て、我々の支配下に入った。
『元乗員、及び来賓は、速やかに武器を捨て、投降せよ。従わぬ場合、命の保証はしない。繰り返す…

事実、この時点で既に、艦の80%はこの武装集団により、制圧されていた。

そして、翌朝を待たずに、乗員の手により首相官邸へと打電され、衝撃を与えることとなる…。

 

 

 

 


あとがき

………………………………………

…………………………………

……………………………

ありがちな話だ(屍)。

まあ、まだ始まったばかりですし、しかもこれは第一ラウンドに過ぎないのですが(妖笑)。

それはそうと、狂はやりすぎだったかな…などと回想。

では。


ろう・ふぁみりあの勝手な戯言〜


「すぐ楽にしてやる・・・」

「俺が怖いのか?」

「泣け、叫べ、そして死ねぇっ!」

「くっくっく・・・はっはっは・・・はーっはっは!」

「そのまま・・・死ね!」

・・・・・・

とりあえず、今回の狂クンを見て頭に浮かんだセリフ集。
なんか、そのウチヤヴァめの血のせいで、吐血の一つでもしてくれそーな気が(妄想)。
いや、実は技が好きだからよく使うんですけどね(なにがだ)。


それはともかく。


ってか、いきなし襲撃ですかっ!?
むう、言われてみればアリガチのよーな気もしないでもないですけど。
だがしかし、楽しかったから気にしませんっ。

てゆーか、龍二クンの言葉づかいがモロやんきぃ♪ でちょっと新鮮、ある意味すごくカッコいい人かも。
・・・トモダチにゃなりたかないですが(苦笑)。


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