MASUTERCROSS 第四章 『新たなる刺客…?』
「……………」
俺は、かなりの間無言だった。
どうしてかは分からない。
いや……分かっている筈だ……
あかりが消えた……
そして雅史が利用された……
全てがインフィニティが復活したことによって起こされたことだ。
俺はすでに怒りすら忘れている。
……どう言う感情なのかというと、はっきり言ってわからない。
奴等の狙いは俺とディスティニィ……そして、浩之とカズマ……シンジ。
かっ、かっ、かっ、かっ、かっ、かっ……か。
今まで、周期的に鳴り響いていた靴の音が突然止む。
無論、俺が足を止めたからなのだが……
それには理由がある。
「……誰だ?」
俺は、目の前にいる少女に言った。
年は、俺の見かけより年下だろう。
銀色……セシルの髪の毛の色によく似ている色、だな。
おとなしそうで、かなりかわいい……が。
そんなことはどうでもいい、彼女から発されるものは人間が扱えるような力ではない。
それに、瞳の色が雰囲気に合っていないしな……
おそらく……この子も雅史と同じ。
「わかっているでしょう?私が大体どう言うものなのか」
さも楽しげに言う。
「やっぱそうか……さしずめ…プレイヤー四天王『黒帝のアクア』、か?」
「あたりよ?……ふふふ……流石ね、ディスティニィとインフィニティ様が共同して作り上げた無と混沌……いえ…プレイヤ−様達をを司る……最強の戦士『カオスティック・シルバ−』だけはあるわねぇ」
そう言うと彼女を俺は睨みつける……
「人をっ……人を道具みたいに言うなっ!俺は……俺はカオスではない!魔龍 銀と言う……一人のただの人間だ!!!」
だっ!
俺は走り抜け、カオスブレ−ドを振り上げる!
彼女は、それを魔法の壁で弾こうとするだろう……
と、思った……
だが。
「!?」
俺の剣から、全く逃げようとしない、いや、それどころか防ごうとすらしない。
俺は想わず、上段に振り上げ構えていた剣をとめてしまう。
まさに紙一重で俺は彼女に攻撃をせずにすんだ。
これは、俺の超瞬発力のおかげだろう。
彼女を殺すわけにはいかない。
肉体を持っている少女の方には、なんの罪もないのだ。
「あいかわらず、甘いわね……カオスッ!」
ズバァァァァァァァ!
すさまじい衝撃波が俺を打つ、とっさに回避行動が取れたものの……直撃には変わりない。
「が……」
ドガァァァァァァァァァン!
その衝撃波を受けた俺は壁に思いっきり吹き飛ばされてしまう。
壁に穴が開くほどの衝撃……
「ぐはっ!……ゴホッ!…ゴホッ!…ゴホッ!……」
「あら?ごめんなさい。今は魔龍 銀だったはねぇ?」
「て、てめぇ……」
赤い……赤い血が俺の口から滴り落ちる。
どうやら、内臓まで来たらしい。
「くそぅ……」
俺は想わず毒づく。
椿と……それに、カカオと似た声してやがるが……最悪だぜ。
いや……これは、このからだの持ち主の声か……
「どうやら……勝負は見えたようね?カオスティック・シルバ−」
「…ぅるせぇ……てめぇは…俺が、その娘に傷を付けないで絶対に倒して見せるぜ……」
「できるかしら?死ぬほど甘いあなたに」
挑発的な言葉に今回は乗らない。
いや……正確に言えば今回は乗れなかった。
いつもなら、挑発合戦でもやっているんだが……
傷が……運が悪いことに、内臓にまできている。
今回ばかりは余裕がねぇ……
「くっ……」
俺はよろよろと立ち上がる。
だが……
シュンッ!
目の前に奴が現れる。
しまった!空間転移か!?
「相変わらず……ね」
どがっ!
奴の右ストレ−トが俺の腹に直撃する。
「ぐぅ……がはっ!」
意識が……朦朧としてくる……
だめ……なの…か……?
俺の中で絶望が広がる。
そんな絶望に押し負けて入られない……
そう思うが、この感覚が消えない。
「死になさい!カオスッ!!!」
奴の魔法が放たれる。
やべぇ……たたねぇと……
だが、無情にも体に力が入らない。
死ぬのか?いや――まだ死ねねぇ!ぜってぇ!
俺がそう思い無理やり立とうとした時……
俺にとっては救いの声が聞こえてきた。
「無理すんなよ?」
「ああっ!ここは任せてくれよ!魔龍!」
「そうだぜ」
この声は……?
まさか……
「シン……ジ…ト、キオ…クロス……!?」
そう、現れたのはアオイ シンジ、トキオ・サ−ガ、そして……俺の友、クロスティア・フリ−ダムだった。
「すいませんね、少し遅くなりましたよ」
「ああ……全くだぜ」
俺は毒づくが表情は安堵の表情を浮かべていた。
……たくっ……
「お前の相手は俺だぜ?」
「貴様……あの時の男か?!」
あの時……ああ、最終決戦の時か……
「ブレイブ……ブレスト(破壊斬)!」
「なにっ!?」
クロスの放った攻撃が、闇を打ち砕く!
「なにっ!?」
そのまま、その攻撃は……
がぁぁぁぁん!
奴の剣は折れどこかへと飛んで行く!
「ぐ……後は、頼んだぜ、魔龍……!」
そして……クロスも崩れ落ちた……
「くくく……あの時の復讐もやっとできるってことね?」
「俺の相手をしてくれるのかい?……それに復讐されるようなことをやった覚えはないぜ?少なくとも常人にはなっ!」
そして、向かって行くクロス!
「すまねぇ……な」
「気にすんなよ……」
「そうですよ」
俺はシンジとトキオに共同で回復魔法をかけてもらっていた。
「どう転がると思います?」
「正直な所……わからねぇ……」
「分からない……?」
トキオが俺の言葉を再び聞き返す。
「ああ……」
俺は、その言葉に肯定する……前回の戦いのときは、ワンサウザンドウォーズ【千日戦争】に発展したのだから……
「グライド・ストラッシュ!」
「球炎牙!」
クロスの放った光が……
アクアの放った炎が……
一つとなる!
ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!
派手な音とともに視界が光で満たされる。
そして、その力を突き破り、クロスとアクアの……それぞれの武器が交わる!
ガキィ!パァン!
だが、二人はそろえたようにそのまま思いっきり弾く!
「ひゅっ!」
その後即座にアクアが妖刃『殺死』【さっし】をクロスに向けて即座に放つ!
「はぁっ!」
それを、クロスは辛くも防ぎ打ち返す!
がぁん!
そして、お互い間を取る。
「………………」
「………………」
まさに攻防一体……
「実力は……全く一緒みたいだな……」
俺がそう囁く。
これは予想外のことだった……
スピ−ド、パワ−、技の切れ……どれも互角なのだ。
俺は、てっきりアクアの方がスピ−ドが上でクロスはパワ−と技の切れが上だと思っていたのだ。
まさか……全くの互角とは……
だっ!
俺の思考がそこまで行った時!まさにその時を狙っていたかのように奴とクロスが動く。
「クロス・ルシフェ−ド!」
「四精 覇天斬!」
クロスの剣が輝き、アクアの刃が七色に輝く!
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
二つの剣が重なり合う!
そして……爆発……!
どがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!
しかし、例え爆発が置きようがなにがおきようが……
がぁん!きぃん!
剣のぶつかり合う音は消えない!
「はぁ!」
「やぁ!」
そして、お互いの威勢のいい声が聞こえる……
まだ……お互い無傷らしい……
「はいっ、終わり」
その時、俺の治療も終わった。
「……お〜し」
俺は手を握ったり開いたりしながら立ち上がる。
クロス……わりぃな、許せ……
俺は力を限界まで貯める…
「魔闘鬼神流……いや」
俺は、その力をすべてカオスブレ−ドに注ぎこんだ……
いくぜ……必殺!
「破邪龍聖流 奥義 青心黒殺断!」
闇を飲み込む青い塊が……とっさに離れたクロスを避けアクアを飲み込んだ。
「なにをするんだ、魔龍!?」
クロスは俺の方を睨みながら言う。
俺は……
「何馬鹿やってんだよ!?まだ終わってねぇぞ!」
と、叫び返す。
「えっ……?」
その言葉に、もう一度その方向を見なおす……
少女は床に倒れていた……
そして……もう一人……
「味なことするねぇ……魔龍 銀」
先程とは違う含みを持った声……
「そうね……いいかげんあの肉体も目障りになったわ」
そう言ったのは……本当の姿の『黒帝四天王 水のアクア』だった。
ざざっ!
俺は即座に移動し少女を安全な位置まで連れて行く。
「サンキュ……魔龍」
クロスはそう言いながらも、奴との視線をはずさない。
すでに始まっているのだ、この戦いは。
「……本当の戦いが始まるな……」
「そうだな」
いつになく真剣な二人の声。
この雰囲気に緊張しているのだ、この二人が……
かと言う俺はすでにもう、この戦いに集中している。
腕の中にいる少女は寝ている。
だが、そんなことは今は関係ない。
お互いの足かせが消えたのだから……
だっ!
両方が一斉に動く!
がぁん!
お互い一瞬にして剣と剣が交わり一つとなる!
「ディス――!」
「ライトニング――!」
お互いの剣に黒い光と白い光がお互いの剣に集まる。
やべぇ!
俺達はともかく、この娘は……!
「シンジ!トキオ!」
「ああっ!」
「分かっています!」
即座にシ−ルドを貼るシンジとトキオ。
「――ティレクション!」
「――クロス!」
二つの技が解き放たれた。
どがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!
すさまじい爆発……剣と剣が振るえる。
だめだ……二人だけの力じゃ……ディス・ティレクションとライトニング・クロスの至近距離の余波を……普通のシ−ルドじゃあ、十秒とてももたねぇっ!
「ヴォイス・シ−ルドォォッ!!!」
ズガァァァァァァォォンッッッ!
限界にまで達した力の余波が、俺の創った壁を破壊しようと押し寄せてくる。
俺は、腹の辺りが熱くなってくるのが分かりながらも更に力をこめる。
「馬鹿ッ!止めろ、魔龍っ!」
トキオの声が聞こえる、だが、俺はそれを無視する。
ッ!
一応直ったと言えどもその後すぐに無理をすれば……
「ごほっ…!ぐぅっ……!」
どうやら……再出血したらしい。
関係ねぇな……
「……ふぅ……」
力も完全に収まった頃、俺はヴォイス・シ−ルドを消す。
がくり……と、膝を付く俺。
だが、意識を失うわけにはいかない。
……戦いは始まったばかりなのだ。
「大丈夫ですか?魔龍さん」
「なん…とか、な」
かすれた声で俺は言った。
だが、その間にも戦っている彼等からは視線をはずさない。
勿論、その間にも右手で少女を抱え左手で腹部の傷を回復している。
だが、その時その少女に変化があった。
「う…う……ん…」
今まで静かに眠っていた少女の瞳が開いた。
俺の腕の中で眠っているその少女が遂に起きたのだ。
……最も、よくよく考えてみればあれだけ派手なドンパチをやっていたのに今まで起きなかったのが不思議だったのだ。
俺は、無言でその少女の目をふさぐ。
「あ、あの……」
当惑気味に彼女は俺に話し掛ける、まぁ男に抱きかかえられて目を塞がれていたのでは驚くのが普通だろう。
気の弱い少女なら震えてるかもしれない。
「見ない方がいい……今、君の目の前にある光景は」
断続的に聞こえる金属のぶつかりあう音が耳に届く。
決して……この娘には人が死ぬところを見せないほうがいい。
「シンジ、トキオ、シールドの方を頼む……いつまたあの衝撃波が来るかわからねぇ。ついでに音もシャットアウトしてくれ」
俺は静かにそう言い放った。
「でやぁ!!」
「はぁっ!!」
クロスは神速の動きで拳を横凪に振るい、アクアは自らの日本刀……殺死を受け止めるように真上から振るう。
ガァン!!
硬い金属がぶつかる音がし二人が吹き飛ぶ。
どうやら、剣がぶつかった時に生じた疾風が二人をはじいたらしい。
だが、二人とも即座に体を入れ替えかまえる。
「これはどうだ!?」
アクアはそう言いながら魔力を剣に込め力を展開させる。
「甘い!!」
その攻撃を切り裂きながらクロスは剣を鞘にしまう。
でるなっ!?
「聖刃抜刀術 龍思牙!!」
収めた鞘から裂帛の気合と共に剣を振るいだす!!
振った剣から龍が出でる、その龍はまるで意思があるかのようにアクアを飲み込もうとする。
「そんなもの!!」
そうクロスを嘲りながら彼女はその技をよけた。
「甘いわぁ!!」
「甘いのはお前だ!!」
そう言いながら、クロスは剣を収めたままもう一度気を高める。
無論この間にもかなりの隙ができてしまう。
「舐めるなぁ!!」
それを自分への嘲りと取ったらしい、だが、その考えが正しくないのが分かるのすぐ後である。
なんと、先程放った龍思牙がアクアに向かってきたのだ。
流石のアクアもこれには慌てた。
「しまっ……!!」
だが、時すでに遅しアクアはあっさりとその技に飲み込まれてしまった。
それに追い討ちとばかりに彼は溜め込んでいた今までで最高位の気と魔力を発動させた。
「これでとどめだ!!聖刃抜刀術 奥義 昇龍陣っっ!!」
クロスが放った技は迷うことなくアクアへと向かった。
龍思牙に足止めを食らっていたアクアはそれをあっさりと受ける。
「ぐぎゃあああああああああああああああああ!!」
昇龍陣……名前の通り敵に命中した途端、まるで龍が天へと舞い上がる―――昇龍するかのごとく光が辺りを包んだ。
天空を貫く光!
その中にアクアの断末魔が聞こえた。
そして、光が消えた後には何も残っていなかった。
「どうやら、終わったみたいですね」
シンジが静かに言いシールドを消す。
「そうだな」
トキオもそれに同意しながら同じようにシールドを消す。
辺りは静かだった、先程までの爆発が嘘のようだ。
だが、先程の戦い……結界が張られていたのにそれを突き破るかのごとくすさまじい光が辺りを包んだのが分かった。
しかし、どちらにせよクロスが勝った事に変化は無い。
俺は、静かに少女の顔から手を離した。
その少女の瞳が開かれる。
そして、俺の顔を見辺りを見ながら困惑する。
「あ、あの……」
「……知らない方が良い、ともかくこの学校から離れるんだ。……いいな?」
俺はその少女に静かに言う。だが、とても威圧のある声だ。
「は、はい……先輩」
どうやら俺をこの学校の生徒……て、そう言えば生徒だな。
そう思いながら苦笑する。
だが、すぐに真剣な表情に戻り俺は彼女を立ち上がらせた。
「じゃあな」
「さようなら」
「……それじゃあな」
俺は静かにその少女に言い手を振りながら去った。
シンジとトキオもそれに習い手を振りながら少女の前から去った。
一人少女は熱に浮かされたような表情で俺達を見送った。
座談会
シンジ:またですね
トキオ:まただな
魔龍:作者ああああああ!!!(外に出る魔龍)
シンジ:あれ、書置きがありますよ。
トキオ:どれどれ……モールス信号だな。
シンジ:ですねぇ。
トキオ:ちなみに、身の危険を感じたため先に退場させていただきますBY:作者。と、書いてあるな。
シンジ:ほお、流石ですねぇ逃げ足だけは速い。
トキオ:あきれるほどにな……
シンジ:ですけど……ま、今日以内にはみつか……
ボガァァァァァァァァン!!
トキオ:……った、みたいだな。
シンジ:アーメン……
トキオ:ふっ、まぁ、俺達には関係ないな。
シンジ:そうですね、では!
トキオ:じゃあな
ろう・ふぁみりあの勝手な戯言〜
むぅ。
カッコいいし、今回。いやいつもカッコいいけど。今回は特に。
クロスさんとアクアさんのぶつかり合いは中々堪能させて頂きましたッ。
しかし、続々とキャラがでてきましたなー。わからない人にはぜんっぜんわからないキャラとか。
今度設定資料集とか作ってくださいな。プレイヤーの設定とか。
ところで「一人少女は熱に浮かされたような表情で俺達を見送った。」・・・って。
まさか、オイオイっって展開ですか!? ですか!?(←なんだコイツ)
さぁて。次回どうなるのか!?
・・・いや、すでに貰ってるんですけどね。第五話(早く更新しろよオイ)。