Rainbow Bird

第八章 基地 〜1〜









「ロイ、そっちはどうだ?」
「ん。OKだべ。」

 ロイは麻袋からキャンプ用のガスボンベをいくつか出し、鍵のかかった部屋の入り口にすえつけた。

「あとは、炎の妖精、集合!!」

 ジィンクは元気に集合をかけた。炎の妖精はジィンクもいれて六人いる。

「あれ、できるよな。」

 ジィンクが言うと、他の五人は一様にうなずく。
 六人の炎の妖精はみな両手をガスボンベの方にかざしている。
 他のものはできる限り、部屋の端っこにより、固唾を飲んでその様子を見つめている。
 うすぐらい部屋の中で、炎の妖精たちの手が、赤く光って見えた。

 仄かな輝きだったのが、徐々に光を増す。
 それとともに、ガスボンベの金属がとけて、変形しはじめた。

「もう少しだ。」

 ジィンクはさらに『力』をこめていった。









 そのころ。

「さあて。ここが基地の入り口なのね」

 谷間の荒れ果てた村に来た。村というより、すでに草原。
 妖精たちが隠れ暮らしていたその場所。
 過去、村だった跡として小さなお堂が残っている。
 真ん中にぽつんと大きな石を積み上げて造られたお堂は、本当に、ごくごく小さなもの。

 そしてこれが基地の入り口だ。

「地下、嫌いなのよね。」

 ラレアはぼそりとつぶやきながら、お堂に入った。中に小さなお墓がある。

「お墓が入り口・・・。悪趣味だわ」

 ラレアはひとりごちながら、そのお墓の石に触れた。
 石に触れる、硬い感触はない。
 それどころか、水の中に手を入れたように吸いこまれていく。
 ラレアは整えられた眉をひそめて、体中を駆け巡る激痛に耐えた。

 ―― 風の妖精も楽じゃない、わ ―――

 ラレアは苦笑しながら、基地へと潜っていった。









「五分、五分・・・」

 レッジは時計とにらめっこしている。

「あと三分・・・・・あと二分四五秒・・・」

 先ほど『基地』を見下ろした場所からさらにちびちびと進みながら、時計を睨む。
 レッジはすぐ近くの少し小高いところに、身を隠していた。
 幸い、まわりは木々に囲まれている。木の爽やかな香りがする。が、今のレッジはそれどころではない。

「あと・・・1分」  

 レッジのカウントダウンは確実に進んでいた。









 『基地』は『避難所』とそっくり。部屋が幾つも見られる。
 ラレアはその中をまだスカーフをしたまま歩く。
 ラレアの右手には手榴弾。左手にはやっぱり手榴弾。

「大暴れっていったら、やっぱこれよね」

 そうつぶやいて、ラレアはさっそく行動を開始した。
 手当たり次第に手榴弾を投げこむ。  

 「お、おわ〜〜!!な、なんだああ〜〜〜」
 「しゅ、手榴弾!?いや、煙があ〜〜〜うわっ!!髪が真っ白に・・・!!」
 「こ、こりゃ、はくしゅん。はくしゅん・・・・・・胡椒!?」

 それぞれの部屋から様々な悲鳴が聞こえる。ラレアの不思議道具、爆発である。

 ―― さてと。――

 ラレアは今来た道をふりかえり、スカーフを取り去る。
 そして、大きく叫んだ。

 「不審者で〜〜す!!」









 「どこなのかな〜?」

 無事、潜入に成功したレッジは、『基地』内をうろうろしている。
 『基地』内は『避難所』とかわらない、と、レッジは思う。
 兵士とすれ違うたび、壁に張り付いてどきどきしていたが、やはり、レッジの姿は見えないようだ。
 ラレアの暴れっぷりはかなりすごいようだ。
 兵士たちのほとんどが、ラレアのいると思われる方へ走っている。  

 ラレア、なにやってんだろう。

 ふと、不安になったが、そんなことより、ロイを捜さなくてはならない。
 ドーンという破裂音とともに、瓦礫の崩れる音がする。

 「わ、な、なに?」

 レッジは音のしたと思われる方向へ、野生のカンを頼りに向かっていった。









 廊下に立つ兵士たちがいる。

 「なにごとだ!!」
 「捕虜が脱走をはかりました〜!!さらに、不審者があばれています〜〜!!」

 隊長風の兵士に下っ端風の兵士は次々に報告している。

 「う〜〜〜なんてことだ〜〜〜」

 隊長さんもちょっとお間抜けである。
 そうこうしているうちに、二人は、いきなり頭を殴られて、伸びてしまった。

 「悪いな、あんたら。」
 「ジィンク、暴力はいかんがの。」

 そう言いつつも、ロイの手には、さっきの爆発でできた石の破片がひかっていた。

 「そうもいってられないぜ。ほれ、これ、頂いておこう。」  

 捕虜だった人々は、分かれて脱走することにした。
 ロイはジィンクと一緒だ。  
 兵士の服を剥ぎ取って、ジィンクは一方をロイに渡した。  

 「す、すまんの。」

 伸びている兵士に謝って、ロイは軍服を身につけた。
 さすがに麦藁帽子はかぶれない。残念そうに麻袋へしまいこんだ。



 








「ロイ〜、どこにいるのよ〜」

 レッジは小声でロイを呼びながら、廊下を歩いている。確実に、爆発音のした方へ近づいている。
 何人かの兵士とすれ違ったが、やはり、レッジには気づかない。
 角を曲がると、そこに、一人の兵士がいた。

 「何者だ!!」
 「え……」

 兵士は長剣を鞘からとりだし、レッジに向けて、構えた。

 「私が、見えるの?」
 「風の妖精の道具を使うとは、こ賢しい人間めッ!!」  

 兵士はレッジを睨みつけている。
 やはり、この兵士にはレッジが見えているようだ。

 「な、なんで見えるの?!まさか、風の妖精…?でも、地の妖精とは共存できないんじゃ…」
 「風と地のハーフ…といったらどうする?」
 「そんな、反則だよッ!!」
 「うるさい。人間め。お前らのせいで俺のような半端者は生み出された。お前らのせいで…。死ねッ!!死んで償え!!」

 兵士は長剣をかまえて、斬りかかって来た。目には憎しみの光を湛えて。
 レッジは自分が銃を持っていることすら忘れて、ブラッドルビーにいのった。

 ――あたしを守って!!――
 ブラッドルビーは祈りに答えて、赤く輝き、赤い光で、兵士の攻撃をはね返す。

 「ブラッドルビーか。生意気な。これならどうだッ!!」

 兵士が左手を高らかと掲げると、大風が巻き起こる。
 大風はレッジを巻き込み、壁に激しく叩きつけた。

 「くっ……」

 息ができない。胸はつまり、めまいがする。
 その隙を逃すはずもなく、兵士は長剣を振り上げた。
















 『レッジ!!!!』

 ロイの声が、聞こえた気がした。

















 もうダメだ。・・・レッジは目を閉じる。斬られることを覚悟して。






















 その痛みを待ったが、痛みがない。
 そっと目を開く。

「ロイ……」

 そこにはロイが立っていた。
 右手に握った剣らしきものは、残像となって消えていった。  
 ロイの足元には、赤い血に塗れた、兵士が、すでに事切れて、倒れている。
 いつもは穏やかな茶色いロイの瞳が今は、仄かに赤く光っているように思える。

「レッジ、無事か?」

 ジィンクがレッジに呼びかけた。

「うん・・・でも、ロイが・・・」

 ロイは異常なほど激しく肩で息をしている。
 兵士の服を着たロイは、ロイには見えない。

「ロイ・・・」

「・・・レッジ・・・。俺、俺・・・」  

 ロイの瞳がいつもの色に戻るにつれて、その目に涙が溢れてきた。

「・・・人、殺した・・・・・・・」

 ロイは力なく、その場に座り込んでしまった。
 ジィンクはその姿から目をそむけ、ぽつりとつぶやいた。

「オレでよかったのに。殺しはオレが・・・・・・」
「ロイ、ありがとう」

 ロイの肩を抱いて、レッジはささやいた。
 ジィンクはゆっくり、事切れた兵士のもとに近づいた。
 ジィンクは死体から剣を奪い、そして手をかざし、なにやら、呪文を唱え始めた。

「…ジィンク?」
  ロイを支えながら、レッジは不思議そうに、ジィンクの行動を目で追った。  

 ―――焼き尽くせ この者の なきがらを 我が手に『灰』を ふらすため――

「ジィンク!!?」

 レッジの声と、妖精の『力』の気配に、ロイも驚いて顔を上げた。
 その目には、ジィンクの赤々と輝く手が見えていた。
 手の輝きはやがて、赤い光となり、兵士の遺体を包みこんだ。
 少し離れた、レッジたちまで、その熱を感じる。  
 兵士は音も立てずに燃え尽きた。
 床には、灰色の、しかし仄かに紫色に輝く、『灰』が残っていた。

「なんてことするだ!ジィンク!!!」
「・・・戦場で、生き残るすべだ。

 この兵士はもう、生きかえりはしない。
 それに、これで、オレたちは『灰』を手にいれることができた」  
 ジィンクは静かに言った。  
 戦場に生きるジィンクには、レッジやロイの気持ちが痛いほどわかったが、
 今は自分たちの命を守る、必要がある。感情を押し殺さねばならない。・・・それが、戦場である。  

「・・・うん。そうだね」
「・・・・・・レッジ!?」

 ロイが、一番の親友が、人を殺した。
 自分、レッジが生き残るために。そして『灰』を手に入れる。
 さらに自分たちが生き残るために。・・・それが、戦場なのかもしれない。  
 レッジは心のどこかで、そのようなことを感じていた。





 ジィンクは『灰』を集めて、ポケットから取り出した小壜に詰めた。

 「走るぞ、二人とも」
 レッジとロイは立ちあがり、無言で、ジィンクのあとにつづいた。






挨拶

こんにちは。優です。

ろうさん♪いつも編集ありがとうございます!!

そして、今回も、お願いしますね(爆)


内容は・・・こんなんなりました☆

いやあ〜なんちゅうか〜。ゲームっぽくって楽しいかったです〜♪

見事にきれぎれ。誰がどの行動してるか、わからんくなってくる〜。

ま、いいか。(よくない。)

や〜、なんだか、重た〜い雰囲気で終わったし。ヘヴィーだわ〜♪

次は、なんだか、二面のボスキャラ登場(?)っぽくなりそうな感じです。



ろう・ふぁみりあの勝手な編集〜(オイ)


まあ、そういうわけで。
今回も編集です。とゆか、編集するのってけっこう大変なんですよねー。もしもオイラに対して少しでも悪いと思うのならば早く次読ませてください。んでもってまたオイラが編集してさらにまた悪いと思って間断なく送ってくれると嬉しいかもしれないとかムチャを言ってると自覚がある自分。

・・・上の三行は無視してください。単なる本音です(くをら)。

さーって、新章突入! RBでの新章とは、即ち場所が変わること!
タイトル見たとき何気に「基地」と「墓地」を見間違えて、背景を黒にしようとしたのはご愛嬌とか置いといて。

・・・やっぱ、ラレアさんだよなぁ。
墓地―――もとい基地で暴れ回るラレアさんってば最高。とゆか「地下、嫌いなのよね」のさりげない一言がいい感じだった様な気がするのはオイラだけでしょうかね?(←おめだけだよ)
うんうん、RBのキャラの中じゃラレア姉さんがかなり素敵でステキ♪ ふぁんくらぶでもつくろうかしら。

・・・しかし。

やはり、今回の見所はラレア姉さんじゃなくて、ロイ君ですかなー。ロイロイ〜(←実は気に入ってたりする)。
「守ラナキャ」いけないレッジを救うために、その凶刃を振るう少年!
いやこの頃は影薄い上に、前回「守ラナキャ」とかレッジに言われてちょっと情けなさ一歩手前とか思ってたり。
しかし、今回―――くぅ〜、ヤバイぞオイラってばこゆ「殺すか殺されるか」で、「殺した」人間のことを考えてしまうようなキャラに弱いんやぁっ!

今回のことが今後、ロイとレッジの旅路にどのように反映するのか―――いや反映しないかもしれんけど(苦笑)。

次回はボス登場!?
戦え! 戦うのだロイ! 「守ラナキャ」―――その言葉を果たすために!(と、強引に締めるオイラ)。

(2001/05/28)


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