RainbowBird

第7章 避難所




いつまでたっても、なんの衝撃もない。レッジはゆっくり目を開いた。
 
「あ、あれ?」

 剥き出しのコンクリートの壁が目の前にある。いつのまにか四畳ほどの、正方形の部屋にレッジとロイは立っていた。

 「ここが、『避難所』だべ。よかった〜来かた、憶えとって」
 ロイはほっとしていたが,レッジはほっとするどころではない。なにがなんだか、わからない。

 「わっ!!ロイだったのか。よかった、無事だったか。突然消えたから、びっくりしたぜ」
 男が部屋に入ってきた。

 「あ、ジィンクさん」

 「この子は?もしかして、レッジかい?こんにちは」

 「こんにちは」
 ジィンクは物腰柔らかな人だった。レッジのカンでは、この人は苦労人である。

 レッジと同じように、探険隊服を着ている。ただし彼の探険隊服は深緑、また、サブリナパンツではなく、長ズボンである。

 「あ、そうだ、この人、ジィンクだ。俺を助けてくれた人だべ。ジィンク、えっと、これがレッジだ」

 「ふふふ。元気になったみたいだな。ロイ」
 ジィンクはにんまり笑った。

 「うん、ありがとうございます。あ、まずフォーマーのとこ行かんと」

 「そうだな。お前のこと、かなり心配してたからな。ちゃんと無事だって報告しとけ。じゃあ、またあとで」
 一緒に部屋を出たジィンクは逆方向へと去って行った。

 『避難所』はかなり広いようだ。ここは地下にある建物。なのになぜか、窓らしきものがところどころに見られる。

 まっすぐにつづく通路は、入口の小部屋と同様、剥き出しの壁だ。いくつの扉を通り過ぎるのかレッジは数えていたが、途中で数えるのをあきらめた。
 
 ここにはたくさんの人々が暮らしている。人だけでなく,妖精たちもたくさんいる。見かけは全く人と変わらない妖精もいるし、フクロウレルのような人ではない他の姿をしているものもたまに見かけた。

 「あのさ〜」

 「ん?なんだべ、レッジ」

 前を行くロイがふりかえった。

 「あたし、状況が把握できてないよ。一体なんなのここは。この国、どうなってるの?それにラレアは?」

 「ん、この国のことは、フォーマーが説明してくれるよ。ここだべ」
 ロイは剥き出しの壁に手を伸ばした。まるで水のように壁が分かれた。

 「へ、変すぎる。ここ」
 レッジは嘆きつつ、あとに続いた。

 液体入口の向こうには暗い部屋があった。蝋燭の炎が揺れている。まるで書斎のような部屋である。机の向こうに背の高い男が立っていた。

 「ロイ君、無事だったか。おや、この子はもしかして…」

 「レッジだ。なんでか知らんが、気がついたら、レッジのところにいたんだ」

 「レッジ君か。はじめまして。私は自衛団のリーダー、フォーマーだ。カモフラージュに驚いたんじゃないかな?」

 「え、ええ。はい。びっくりしました」
 レッジはがらにもなく緊張して答えた。 

 フォーマーは背が高く、がっしりした体型の男だ。
 
 黒のシャツにボロボロの茶色のジャケットを羽織って、首にはこげ茶のネッカチーフを巻いている。
 ネッカチーフとよく似たこげ茶色の髪は深く刈り込まれ、瞳もまたこげ茶色で、もとは穏やかだったのだろうが、今は油断なく光っている。
 口元もぎゅっと結ばれて、険しさを漂わせている。戦いに明け暮れた盗賊の親分という感じだ。
 
 しかし、彼はなぜか気品も持ち合わせていた。フォーマーは油断なく光る目で、レッジをしばらく見つめていた。
 
「ブラッドルビー…そうか。ロイ君はジジの孫だったな。そして君が『守るべき人』と言うわけか」

 フォーマーはひとり納得をしていた。何を納得しているのか、レッジには皆目、見当もつかない。

 なにより、ジジを知っていることに、密かに驚きを覚えていた。
 しかし、今は聞かなければならないことが、他にあった。

 「あの、この国はどうなっているんですか?」

 「なにも、知らない、か。この国の終身大統領にクーデターを起こした妖精たちのことも、人間対妖精の戦いとなってしまっていることも…」

 この国では、妖精は『力』を引き出すための道具や、『力』の無理な実験をする実験体にされていたという。
 
 すべて、国の終身大統領、ハンスを中心とした、中央政府の方針だった。

 そんなハンスの政府にクーデターを起こした人物、それがアリス率いる反乱軍である。
彼女らは妖精のみの軍だ。反乱軍は一つの独立国家をつくろうとしているという。

……妖精だけの国を。

 「…正直にいうと、妖精だけの国ができれば、妖精は幸せかもしれない。私とてそうだ。しかし、この国にはそんな土地はない」

 「土地?」

 「海の妖精も、森の妖精も、火の妖精も、闇の妖精も、無事に生きられるような、すべての環境がそろった土地はない。だからアリスたちは奪う」

 「奪う?」

 「人の土地を、人の生活を、人の命を。自衛団は行き場を失った人々が集まっている。そして、行き場を失った、妖精も」

 「妖精も?だって、アリス軍は妖精の軍なんでしょ?」

 「そう、しかし、10人の水の妖精の中、一人の火の妖精がいたら、彼は死んでしまう…それに、自衛団にいる妖精たちは政府軍によって村を破壊されたものも多い」
 
 「そうなんだ…。でも、ここなら大丈夫なの?どんな妖精もいれる場所なの?」
 レッジは無邪気に聞いた。
 
 「いや、ここは土の妖精がつくった場所。だから、君たちの友人、ラレア君は目覚めない」
 フォーマーは目をそらして言った。
 
 「ラレアが目覚めない!?どういうことなの?」
 状況を知るのに必死だったレッジも、今の言葉で、それどころではなくなった。
 
 「ラレアは風の妖精なんだべ。だから、風のないところでは生きられない。でも、ここは地下だから、風がないんだ」
 
 「ラレア、ラレアはどこにいるの?ラレアに会わせて!!」
 
 「ラレアはこの先の医務室にいる。そこも…」
 
 「ありがと」
 
 レッジは話しを後まで聞かずに、液体入口に飛びこみ、駆けて行った。なんのためらいもなしに。
 
 「お、おい、レッジ待っておくれ〜、あ、フォーマーさん、失礼しますだ」
 フォーマーにお辞儀をして、ロイもレッジの後を追いかけた。
 
 「ロイはジジ以上に苦労しそうだ」
 フォーマーは一人、つぶやいた。



挨拶

どうも、優です。

さてさて、物語がちと、ややこしくなってまいりました。

登場人物も増えてまいりました〜。(密かにお気に入りはフォーマーなんだけど。)

ロイのおじいさん、ジジの話もちらほら…。ってか、ロイ、あんた主人公ちゃうやろ〜といいつつ。今回はラレアもとめて、三千里〜(違)って、終わっています。

 そして……。状況を把握するのに必死なのはレッジだけじゃないのよ〜!!!!

ええっと、どうだったかしら。
この国の状況解説
 ・鳥の頭の大陸は、『妖精軍(妖精)』と『政府軍(人間)』が争っています。
それぞれの軍によって帰る場所を失った人々が集う場所、それが第3の場所、『自衛団(妖精と人間)』となっています。

・ 『妖精軍』は「妖精だけの国」を創ろうとしています。

・ 『政府軍』は「妖精は道具にすぎない、人間中心の国」として、国を動かしていました。

・ 『自衛団』はそのどちらからも、逃げてきた人たちがいます。
……なんだか、「うそつきさんと、正直さん」のクイズのようになってまいりました。
ま、いっか。なんか、ややこし〜。ともかく、しばらく、『避難所』生活が続きます。

       次はレッジが走りまわって怒られます。医務室では静かにしましょう!迷惑な話だ。
久しぶりに。登場人物紹介


ジィンク(27)
 中年、一歩手前な方。短い黒髪を持ち、赤い目をしている。結構な苦労人…とレッジに勝手に思われている人。レッジより先に流れ着いたロイと、親しくなったらしい。
深緑の探険隊服を着ている。自称、冒険家?かもしれない。

フォーマー(29)
 自衛団の隊長、う?リーダーっていうのかしらん?なんでも知ってそうな、物知りさん♪
 こげ茶色のネッカチーフがトレードマーク。リーダーできるぐらいなので、かなりな『力』を使えるとか。使ったらの話だけど。(ところで、ネッカチーフとスカーフって違うのかな…。ふとした疑問。)


 

ろう・ふぁみりあの勝手な戯言〜

 

はいっす。ゲームとマンガと小説とその他諸々のせいで更新が遅れた使い魔です〜
あうう〜す、スイマセン〜

さてキチンと謝ったことだし(ヲイ)。さて置いときまして(コラコラ)

今回は避難所の中でせうねー。

しかし妖精って言うのは不便というかなんというか。
確かに水の中に火は居られないし、その逆も同じってコトですけど。
うみうみ、地下だから風が吹かない、ってのは「ををっ!」とか思いました―――オイラだけかな。

んー? ネッカチーフとスカーフの違い? ネッカチーフってなんでしょう?(殴)

とりあえず、話の形は見えて来ました。
人間と妖精の争い、そしてレッジさんたちはそれを抑えようとする動き。ですね。


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