RainbowBird
優
第7章 避難所〜2〜
「ラレア、ラレア!!」
医務室に飛びこんで,レッジは持ち前の大声でラレアを呼んだ。ほとんど叫び声に近かった。
「ちょっとあなた、ここは怪我人や病人がたくさんいるのだから、静かにしなさい」
レッジは部屋の奥から出てきた女に怒られた。
「お、レッジじゃないか」
「ジィンク、ラレア知らない?」
レッジは黒い瞳をいつもの倍ほど開いて,辺りを見まわした。レッジの目が、血走っている。
『避難所』の電灯は薄暗すぎる。だが、だんだん目が慣れてきて医務室にいる人々の様子に気がついた。
「あ、すごい人…」
レッジの握っていたこぶしが、力なくたれた。
「レッジ〜やっと追いついたべ」
ロイも息を切らせて入ってきた。レッジは呆然と立ち尽くしている。
医務室にはベッドなぞない。ロイのうちの畑ぐらいありそうな部屋に、人々が重なりそうなほど、寝かされている。
「なんなの、この子?」
「レッジだ。ロイ君の大事な人だよ」
「この子が『守ラナキャ』いけない子?」
医務室のお姉さんは皮肉な口調で言った。
レッジの耳には入っていない。まだ呆然と立っている。
「おい、レッジ」
「え?あ、ロイ。あれ、あなたは?」
ロイにつつかれてレッジはようやく気がついた。
「"あ、ロイ"はないでしょ。レッジちゃん。私はル−シー、人間、よ。職業は女医。ここは怪我人を集めた部屋。あなたが捜している、ラレアさんは向かいの医務室で眠っているわ。他の妖精と一緒に。ラレアさんのところについていってあげる」
白衣姿のル−シーは高飛車に言った。
まっすぐなセミロングの黒い髪は、ル−シーの性格をそのまま表しているようだ。見事なつり目を持った人である。茶色の瞳の奥には知的な雰囲気が漂っている。
いつも冷静な先生として『避難所』の中では有名なのだ。
医務室の向かいの壁にル−シーは手をついた。そこも、液体の入口だった。
「…ラレア」
ラレアは恐ろしく整った姿で眠っていた。妖精たちの『力』でつくった、ガラスの棺の中で。部屋にはそんな棺がいくつも置かれている。
「この棺の中にいれば、ラレアさんは死ぬことはない。でも、上につれていって、治療しないと目を覚ますこともないの」
「ラレアは人と妖精のハーフなのに」
「ハーフだからまだ生きていられるんだ。もしハーフじゃなかったら、君らの船を導くために使った、風の『力』で精神を使い果たしていただろう」
なぜかついてきていたジィンクは、そう、静かに言った。
「虹の鳥の羽根…」
「え、なんだべレッジ?」
うつむいたレッジにロイは聞き返した。
「虹の鳥の羽根!!あれを使えば、ここにいる人達の怪我もラレアの眠りも全部、癒せるんじゃない!?」
「虹の鳥の羽根…君たちが持っているのか?」
ジィンクは驚いて、レッジを見つめた。
「うん。持ってるよ。お兄ちゃんに届けている途中だったの」
「お兄ちゃん?」
「うん。ラーネッドっていうの。女神の塔にいるって…」
レッジはジィンクたちに『白い衣の女の人』の話をした。レッジの話しが済んでも,ジィンクはしばしば考えこんでいた。
「虹の鳥、レインボーバードの羽根があっても、傷を治す『力』をもつ妖精がここにはいない。それにそれは君のお兄さんが必要としてるんだろ。じゃあ、使えないよ」
「でも…」
「大丈夫よ、レッジ。私がいるじゃない。どんな怪我も、この名医、ル−シーさまが治して見せるわ」
ル−シーは自信たっぷりに言った。
「でも、ラレアは?」
ル−シーは黙り込んでしまった。
「とにかく、なにより君も休まねば。何日も海を漂っていたのだろ?よく無傷だったよな。しかも妙に元気だし」
ジィンクは話しをかえた。
確かにレッジは元気だった。ロイよりも長く海を漂っていたのに、今のロイよりよっぽど元気だ。
「え、この子、海を漂ってたの!?しかも今日、助かったの?もう、それを早く言いなさい!!そうよね、妙にボロボロだと思ったわ」
ル−シーはレッジをしげしげと見つめた。
レッジはにっこりと微笑んでみた。ル−シーはすっかりあきれた。
「ほら、男どもは居住区に戻りなさい。レッジ、さき食事にする?それともお風呂?」
ル−シーは新婚夫婦のような質問をレッジにあびせながら、てきぱきと動き始めた。
レッジを連れて、3つめの医務室である、ル−シーの部屋へと向かった。
何日ぶりのお風呂か、思い出せない。
ルストが化け物になって、ワ−パが救命ボートで向かっていって、あたしたちは大海原に出てそして嵐にあった。それから、気がついて。
シャワーにうたれながら,レッジは海でのことを考えていた。
湯気の温かさを感じることが、今はとても、気持ちいい。
あの海の上でのこととはまったく違う。ルストは一体どうやってあんな化け物になったのかな。妖精の『力』は集結しないはずなのに。あれは『力』が集まって生まれた化け物だったらしいって変な話しだな〜。
レッジは湯船につかりながら,深呼吸をしていた。
「服はここ置いとくわよ。私のお古だけど着れるでしょ」
「うん、ありがと〜」
レッジは湯の中に半ばもぐりながら、返事をした。今は、このお風呂の中がレッジにとってのすべてだった。
お風呂からあがって、ル−シーのお古を着てみる。
レッジには少し小さい、水色のTシャツと、ちょっと大きい紺色のジーンズだ。
レッジはジーンズのすそを何回か折り曲げながら,お風呂場から出てきた。
頭には白いタオルをかけたままだ。腰まである髪が濡れている。濡れた黒髪はレッジを少し,大人に見せていた。
「んー気持ちよかった。洋服ありがとう」
「ええ。あなたの服は今、洗濯してるわ。さ、食事をとって、そのあとしばらくは寝てなさい」
「えー、あたし、全然元気だよ。はやく探険したいな。ラレアのことだってなんとかしたいし」
「他人の心配してる場合?これは、医者の命令。だいたいなんであなた元気なのよ、おかしいわ。おかしすぎ」
ル−シーは薬を調合しながらぶつぶつ言っている。
レッジはおとなしく、おかゆをすすった。ル−シーの部屋は診察室だ。
奥には風呂場や炊事場があるが、ベッドも3つほど用意してある。白いものの多い部屋だ。薬の匂いも漂っている。
「ロイは?」
「君のナイトくんは居住区よ」
「ロイがナイト〜似合わなすぎ」
ずいぶん失礼なレッジである。
「ロイ君、あなたのこと、ずいぶん心配してたのよ。『守ラナキャ』って、ここに運び込まれたときからずっと、うなされてた。まあ、その彼も今ごろ洗濯真っ最中ね、多分。そうそう、これあなたのでしょ?ロイ君が置いていったわ」
ル−シーはレッジに黒い鞄を渡した。
「うん、ありがとう。ふう。おなかいっぱい。本当に眠くなってきちゃった」
「うんうん寝ときなさいしばらく。ほら、子守唄、歌ってあげるから」
「え〜子守唄はいいよぉ」
レッジはいつのまにか、ル−シーの穏やかな子守唄を聞きながら,すやすや眠ってしまっていた。
彼女の子守唄は優しさに満ち、心地よい空間をつくりだしていた。
どのくらいたっただろう、レッジは目を開いた。静かだ。おそろしく、静かだ。光りの入らない『避難所』なのに、ル−シーの部屋は妙に明るい。
「ル−シー?」
返事がない。レッジは起き上がった。
頭がくらくらする。
まだ寝ぼけているのが、自分でもわかった。だが、そのことに関係なく,なにかがおかしい。
ご挨拶
どうも。優です〜♪
避難所の生活です〜。のん気モノには福がある(?)
なんだか、この辺りは中学の時に書いた『Rainbow Bard』と内容がかなり変わってます。
(言わなきゃばれんのに。)ま、いっか。
さてはてららら〜とルーシー先生に世話されるレッジさんになってます。たいへんたいへん。
次はレッジが避難所を大激走するかも。
登場人物紹介
ルーシー(29)
避難所イチ、クールで優しい女医さん。
高飛車。釣り目、そして白衣をひるがえして歩いているらしい方。どうだか。
ろう・ふぁみりあの心の嘆き(をい)
ちょっとまてー! ここで“続く”ってそりゃないでしょー。
ああああああ、なんかすごく続きが気になるんですけど。とゆかラレアさんはどうなるんですか!? ラレアさぁぁぁぁん!(壊れ)
はうー、なんかレーシーさんがどういう位置に居るのか興味津々。
しかも次回は大激走の予感!? 避難所はどうなってるんでしょーか。
それはさて置き、今回のかんそー。
ルーシーさん。
この人のキャラ好きですー。レッジとのやり取りは「医者」らしくてナァイス。
ぜひぜひ白衣を翻して歩いて欲しいですね(なんだそりゃ)。とゆか、日常生活でも白衣を着ているタイプと見た!(笑)
次回、どういう形ででてくるのかが興味ですっ。
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避難所〜3〜