RainbowBird

第7章 避難所〜3〜



 ル−シーの部屋も液体入口だ。レッジは肩に黒い鞄を引っ掛けて,こっそり部屋を抜け出した。

 悲しげなメロディーが聞こえてくる。

 「なにこれ…」

 通路に傷ついた人々が倒れている。

ごく普通の格好の人だけでなく、あずき色のぴしっとした兵隊の制服を着た人も混じっている。それに、妖精の雰囲気を漂わせる人々も傷つき、倒れていた。

 まだ動ける人々が必死で介護に当ってる。

 その中に子守唄を口ずさむル−シーの姿をみつけた。ル−シーの歌はとても美しく,優しい。

 ル−シーは兵士の手当てをしていたが、その兵士はとても穏やかな顔をしていた。  
 
 「ル−シー、どうなってるの!?」
 
 「『避難所』のそばで戦闘があったの。反乱軍と政府軍の。そのとばっちり、ね。政府軍

によって、『力』を消す『灰』を辺り一帯に巻かれた。そのせいよ、『力』でこの建物ごと地

下に隠れていたのに地上に出てきてしまった。そこからは最悪」

 ル−シーは淡々と述べている。

しかし唇を噛み締め,包帯を持つ手は震えていた。その表情はやるせなさに満ちている。

 「…ここが戦場になってしまった」

 「え!?」
 レッジはさっと振り向いた。

そこに疲れきったフォーマーが立っていた。肩に血の跡がある。

 「……居住区が一番酷かった…犠牲者が出た…また…」

 「え、居住区!?じゃあ、ロイ…ロイも?!」
 レッジは居住区のあった場所へと駆けて行った。

 「あ、待て、レッジ!!」

 「元気ねあの子。私達も見習わなくちゃ。ここ、壊れちゃったけど、大丈夫、またつくれるわよ」
 ル−シーは包帯をきっちり巻き終えて、立ち上がった。
 
 「そう、だな」
 
 「…私達は妖精も人間もそれぞれの『力』を生かして、生きていただけなのに。ここが新しい故郷になろうとしていたのに…ね」
 
 「ル−シー…」
 ルーシーもまた、『争い』の犠牲者だった。
 
 「…すまない」
 
 「フォーマーが謝ることじゃないわよ」
 ル−シーは気丈な口調でフォーマーに微笑んで見せた。あまりにつらい微笑だった。
 
 「さ、フォーマー、私はレッジを見てくるわ。あの子たちは関係ない人達だったのにね」
 ル−シーはレッジのあとを追いかけていった。

 残されたフォーマーは医務室へと入っていった。

 


 住居区はひどい有様だった。

 人々が食事をとる,食堂だったところにレッジは立っている。

 塩や胡椒などといった、調味料をいくつか置いた,長テーブルがある。

 カウンターの向こうには切りかけの材料がまないたの上にのっている。

 白タイルの調理場には大なべやフライパン、それに食器が並んでいる。

 それらにたくさんの弾丸がうちこまれ,白タイルには複数の血のあとがついていた。真っ赤な血のあとが、そこらじゅうに……。
 
「ロイ、ロイ!!」
 ロイを捜して居住区を巡ったレッジは食堂に辿り着いた。

 息が荒い。

 レッジは鋭く部屋を見まわした。
 
 「ロイ…」
 レッジはその場にしゃがみこんだ。

ロイは生きているのか,死んでいるのか。それすらもわからない。

 「レッジ」

 「ル−シー、ロイがいないよ…」
 レッジの泣き出しそうな目を見て、ル−シーは胸がいたんだ。

はじめてレッジにあったときから、心配だったのだ。この国についても、世界についても何
も知らない。

 純粋な少女が傷ついていくのを、もう、見たくはないと、ル−シーは思っていた。
 
 「大丈夫、きっとロイは生きているわ。大丈夫…」
 
 「……そう…、そう、だよね?……ロイ…お願い、生きていて…」
 レッジはブラッドルビーを握り締めて、祈るしかなかった。
 
 ブラッドルビーは仄かに温かみを増していき、内側からかすかに輝き始めた。






 一方その頃。

 灰色の、剥き出しの壁が部屋中を取り巻いている。

『避難所』とたいして変わらないつくりの建物だ。

しかし、雰囲気は全く違う。

はりつめた空気が流れている。入り口の鉄の扉には、頑丈に鍵がかけられている。


 ここは、反乱軍の『基地』なのだ。

『避難所』から連れてこられた人々は、この10畳ほどの何もない部屋に入れられていた。

 連れてこられたのは、みんな若い男だ。20名ほどいる。その中にロイとジィンクもいた。
 
 
―――
 むさい部屋だな。男ばっかだ。

ジィンクはひざを抱えて座っている。

―――
 これから、反乱軍の奴らに脅されたりして政府軍のスパイにされたりするんだろうな。

人間だったら、強硬手段で、『力』をかけられるのかもな。
――――

 これからされてしまうであろうことを、少しだけわくわくしながら、想像していた。

 ロイはそのかたわらで、深い眠りについている。

 「こいつ、また、眠りについちゃってるしなあ。まいったぜ」
 ジィンクはロイのあどけなさを残す寝顔に思わず苦笑いをうかべた。

 彼の『力』を使って、ロイのまわりの温度を少し、上げてやった。それは毛布のかわりになるだろう。

 そう、彼も妖精だ。彼は炎の妖精といわれる妖精である。

 
 ただ、そのことを人に言ったことはない。言わなかったから、だれにも気づかれることもなかった。


 ジィンクの目は、ハッキリとした二重だ。

 ロイの目よりさらに大きな、赤い目をしている。

 今、その目はぎらぎらと静かに輝いている。

 中年にさしかかる一歩手前の彼は、どんなことにも焦らない余裕を持っている。

目にかかる黒髪をかきあげながら、ジィンクはのんびり、逃げ出す方法を考えていた。

―――
 ここにいる兵士は妖精ばかりだ。

妖精の『力』は妖精が死んだときにできる『灰』で防げるが、死ぬなんて、いやだしなあ。

 殺しもできれば、したくない。

 誰一人、死ぬことなく逃げ出さなくては意味がない。

―――
 ジィンクは元来、楽観的な男である。

 なんだかんだいっても,なんとかなると思っているのである。

 今までもそれで何とかなってきた。

 彼にはそこから生まれた余裕があった。

 おれは妖精だからここの兵士に紛れ込めるかな。

 紛れ込んで逃げ道をつくればいっか。紛れ込むっていっても、水の妖精多いんだよな〜ここ…。

 「…ううん」

 ロイの唸り声で、ジィンクの考え事は打ち破られた。

 「おっと。ロイ,またうなされてる。おいロイ」

 「…母さん…守ラナキャ……」

 「オレお前の母さんじゃないって。おい、ロイ」
 変なところで怖がるジィンクは、本気であせっていた。

 「あ、あれ?ここ、どこだべ」
 ロイは寝ぼけ眼で起き上がった。

 「お前,またうなされて、寝言言ってた。今度は"レッジを守ラナキャ"じゃなくて、オレのこと"母さん"って言ってたんだぜ」

 ロイは別にジィンクのことを「母さん」といったわけではない。ロイもそのことにはばっちり気がついている。

 「…俺ときどき見るんだ。おっかねえ夢。変な、遺跡みたいなとこで、父さんも、母さんも何かに襲われる夢」

 「ロイ、親御さんは?」

 「いねえ。もう、死んでしもうた。けんどじいちゃんがいるから俺はいいんだ。あ、ここはどこだ?」

 「反乱軍の『基地』だよ」

 「そうだベか。あ、レッジ、俺は無事だベよ!!」
 突然ロイは天井に語りかけた。

 「なんだよ、突然。」

 「レッジの声がしたような気がしたんでな。ところでジィンク」

 「なんだ?」

 「逃げ出す方法は考えたんけ?」

 いつになく強気なロイだった。



ご挨拶

 どうも、優です。

 あら?レッジ、あんまり激走してない?ま、いっか〜♪

 小さいことは〜気にしな〜い♪(気にせいよ。)

 またも、二人は離れ離れ〜♪これも、意地悪な、私のなせること。

ごめんね、レッジ&ロイ♪でも、強く生きるのよっ!!と、勝手に応援しつつ…。

                    次は突撃レッジの大冒険(?)です〜♪


ろう・ふぁみりあの勝手な戯言〜


うわぁい急展開っ♪
レッジさんは激走してませんけど、物語はじゅーぶん大爆走っ!

しっかし、またまた二人はお別れですか―、うわぁ優さんってば悪い人(笑)。
でもこの二人ならすぐにめぐり合えるでしょうしね♪ あんまり心配はないですねぃ。あはは。

さて。
次回はレッジがメインですかねー。・・・とと、そいやラレアさんは大丈夫でしょうか?
そしてロイ君とジィンクさんは無事、脱出できるのでしょうか?
そして反乱軍VS政府軍の行く末は・・・・・

次回もとっても楽しみですー♪


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