RainbowBird

第7章 避難所〜4〜




「ロイ…今、ロイの声、聞こえた気がする。」
「レッジ?」
「どこにいるんだろう…妖精?妖精が多い場所…」

 レッジの目が、操られているように、虚ろになっている。

「ちょっと、レッジ?」

 ルーシーは慌ててレッジを揺さぶった。

「山奥みたいだ。あれは、なんなんだろう。」
「レッジ〜!!」

 ルーシーの叫びにレッジはようやく我に帰った。

「ルーシー、この辺りに山、ある?紫色の山。」
「あるわ。反乱軍の『基地』よ?」

 ルーシーは驚いている。  

「そっか。ね、ルーシー、ロイは言ってたよね。
 あたしのこと『守ラナキャ』…って。だったら、あたしが、ロイを『助ケナキャ』いけないと思うんだ。
 きっとあたしが海で漂っていても元気でいれたのはロイのおかげだと思う。
 ブラッドルビーの『力』できっとロイの元気をあたしにくれてたんだと思うの。
 だから今度はあたしのばんだよ!!」

 レッジは自分のにぎりこぶしを見つめた。あまりに小さい握りこぶしだった。やがて、弱々しくこぶしを下ろした。

「なんで、なんでこの国は争いをつづけるの?どうすれば、争いを終えられるのかな?
 巻きこまれてから言うのはずるいかもしれない。だけど、やっぱ、いやだよ、こんなの」
「レッジ。私たち、みんなそう、思っているわ。
 たくさんの町や村が戦場になって、でも、かわることなんて、なんにもなくて。」
「争いを終える方法ってないのかな。とにかく、ロイを助ける!!」  

 レッジは再び元気に得意の大声で言った。

「レッジ、わたしがいること、忘れてない?」
「ラレア?ラレア!!」

 レッジとル−シーは同時に振り返った。ラレアはあの舞うような動きで食堂に入ってきた。フォーマーも一緒だ。

「医務室のガラスの棺、開けてみたんだ。もう、ここは地上に出てしまっているからな。
 まさかフクロウレルの姪御さんだったとは。世の中せまいものだ」

 なぜかこの状況で井戸端会議化している。

「ラレア、ロイはきっと反乱軍の『基地』にいると思う!!」
「なんだって!?なぜ、わかる?」
「わかるものはわかるの!!ロイだけじゃなくって、他にも何人かいそうだよ」

 レッジに論理性をもとめるのは無理なのであった。

「な〜んか、この国たいへんなんでしょ。
 さくさくロイを助けましょ。う〜ん!!この手のことは得意よ。わくわくしちゃう。
 救出作戦決行。反乱軍の『基地』とやらをめざしてゴーゴーよ!!」

 ラレアのテンションは異常に高い。
 せき止めていた何かを、一気に放出しているかのようだ。
 しかも、レッジの言うことに疑問すら持たない。

「ようし、行こう、ラレア!!」

 レッジもラレアのおかげですっかりテンションが上がってしまったのだった。

「まちなさい、あなたたち二人で行く気なの?」

 ル−シーの問いに、レッジとラレアはあたりまえのようにうなずいた。

「ラレアはともかく、レッジには危険すぎる!!」

 フォーマーは慌てて止めたのであった。止められて止まるようなレッジではない。

「いいの。あたしたちは行く!!ロイを『助ケナキャ』いけないもん。絶対。
 そりゃ 『力』もないし、特技はでかい声、ぐらいだけど」
「それに私たちは反乱軍にとってはどうでもいい外人だもの。
 そ〜んな立場を役に立てないでどうするの。大丈夫、私達に任せなさい!!」

 ラレアは逆にフォーマーをたしなめたのだった。

「捕まった友達を助けるためなら、なんの迷いもないって、すごいわね」  

 ル−シーはいつのまにか、レッジたちの無謀とも言える勇気に感心していた。

「迷いか…」
「フォーマー、この子たちは止めても無駄よ、きっと」

 ル−シーは気がつけば、すっかりレッジたちの味方になっていた。

「なら、せめて、我々と一緒に行こう」
「う〜ん、でもそれって、新たな争いになるんじゃない?
 反乱軍と自衛団が戦ったら、政府軍の思うつぼって感じするわ」

 ラレアはこの国の事情を把握しているようだ。

「だから、わたしとレッジでロイを助けに行くわ。
 で、ついでに他の人たちも助けてくる。あ、でも、丸腰でいくのは怖いから、なんか貸してくれる?拳銃とか」
「拳銃って、ラレア、すごい」

 さすがラレア、骨董屋さんの友達なだけのことはある。と、妙な感心のしかたをするレッジだった。

 

 

―――――――☆  ☆  ☆―――――――――

 

 

「うん?なんか違うな〜。ありゃりゃ、間違えた」

 今,レッジはフォーマーの部屋にいる。

 ル−シーのお古の服はそのまま着ている。
 それでも、なんと言ってもこれから『基地』に潜入するのだ。それなりの準備はしている。 
 生まれてはじめて見た拳銃や、黒かばんには爆弾まで持っている。
 Tシャツの上には防弾チョッキを着こんでいる。
 虹の鳥の羽根はなんだか守ってくれそうな気がするのでかばんにいれたままだ。  

 レッジはどうしても液体入口になれることができない。
 医務室に行くつもりが,フォーマーの部屋に入ってしまったのであった。

 フォーマーの部屋はレッジの父の書斎にそっくりだ。
 本棚には古い本がたくさん並んでいる。雰囲気的に似ているのだ。

 レッジはなにげなく、部屋を見まわしていた。机の上に写真立てがある。

「あれ、これって…」

 レッジは写真立てを手にとって、しげしげと眺めた。
 写真には4人の男女が楽しそうに微笑んでいる。

 髪の長い金髪の美女、今より若いフォーマー、銀色の髪を持った美女−なんだかこの人には見覚えがある。あの『白い衣の女の人』だと思われる。そして眼鏡をかけた、まじめそうな青年それは…。  

「お、お兄ちゃん!?お兄ちゃんだ。フォーマーのしりあいだったのね」
「なにをしている!!」  

 フォーマーが部屋に飛びこんできた。壁にはまだ波紋が残っている。  

「フォーマー、この写真の人って、知り合い?」
「ああ。妖精科学者、ラーネッドと探険家マリー、そして妹の…アリス。反乱軍のリーダーだ」
「反乱軍の!?」

 レッジは兄がフォーマーの知り合いということや、『白い衣の女の人』の職業が探険家であること、名前がマリーというのだということにも驚いた。しかし最後の言葉が一番驚いてしまった。

「なんで!?なんでアリスは反乱を起こしたの?」
「アリスとマリー、それに私は兄弟だ。
 マリーは君の国の学院に行き、アリスは妖精の『力』の使い方を村の子どもたちに教えていた」
「フォーマーは?」

 レッジは自分の村の様子を、思い描いていた。

「私は村長の補佐をしていた。
 そう、実に普通の村だった。ただ一つ。政府から隠れ住んでいた。そこが普通の村とは違っていた。
 この国では、妖精は隠れ住むか、政府に捕まって、実験体や奴隷にされるかしかない、とされていた。
 だから村が壊された。政府の軍人によって。そのとき以来、私と彼女の道は別れた」

 フォーマーは淡々と語る。

 レッジは頭の中で自分の村が壊される様子を想像した。が、恐ろしくなって,頭を振って、想像をうちけした。

「アリス、反乱、起こすわけだね。あたしがアリスでも、きっと、戦ったと思う」
「どうだろうな」
「ん、でも…。」

 レッジは戸惑いながら続けた。

「アリスは、何がしたいのかな?」
「何がしたい?」

 フォーマーは聞き返した。

「妖精だけの国をつくるのが無理なんだって、アリスなら、よく、わかってるんじゃないの?」
「そう、だな。」
「じゃあ、なんで、妖精だけの国をつくるために、戦ったりするんだろう?」
「そう、だよな」
「アリスも政府の人たちも、やってることは同じな気がする。」

 レッジはぼそりとつぶやいた。

「え?」
「あ、そうだ、ごめんなさい勝手に部屋はいっちゃって。医務室と間違えた。じゃ、いくわ」

 他の者だったら疑われるような理由も、レッジが言うと妙に信じられてしまう。
 とても単純な性格だ。まだ子どもと言っても良い。だが、あるところでは正しいとフォーマーは考えさせられた。

 レッジが立ち去ったあとも、フォーマーは考えこんでいた。











 ――――山脈に囲まれた谷間に、『基地』はあった。
 紫の山。不思議な山。妖精の多く住む場所。

 そこは戦闘で破壊し尽くされた場所でもあった。地上はもはや、だだっ広い草原。
 しかし本当の基地は、『避難所』と同様に、地下に隠れているらしい。
 『基地』の入り口もばっちりわかっている。

 ラレアはこの情報をフォーマーからばっちり仕入れていた。
 今、二人は遥か下に村の見える場所に身を潜めていた。

「ここが『基地』…。ね、ラレアって風の妖精だから、地下は駄目なんじゃないの?」
「もちろん」

 ラレアは全身、黒のレザースーツを着ている。
 自慢の金髪は黒いニットの帽子の中に詰め込まれ、サングラスをかけ、怪しさ倍増である。

「へ?」
「わたしはおとり役。レッジは潜入役。OK?」
「えー!!」
「まあ、相手も言葉通じるんだし、大丈夫よ」
「うん、けどさ、泥棒みたいなマネしなくても、素直にロイを返してって言えばいいんじゃないかなあ」
「言ってみてもいいけど、どうなるかわからないじゃないの」
「うん。でも、言うだけ言ってみたい気もする」

 レッジは人気のない村を見ながら、思わずため息をついていた。

「それに助けるのはロイだけじゃないのよ、他の人たちだって捕まっているんだから」
「そうだよね。」  
「あ、レッジ。はい、これ。」
「ん?なあに?これ。ラレアのスカーフじゃん。」
「ふふふ、妖精のお道具!これを…こうすると…。」

 ラレアは淡い七色のスカーフを広げてはためかせ、頭からかぶった。と、ラレアの姿が見えなくなった。

「ラ、ラレア?」
「ね、これでレッジは見えなくなれるってわけよ。潜入にはぴったり。」

 スカーフをとりさると、再び怪しげな黒ずくめのラレアがあらわれた。

「じゃ、わたしは『基地』に混乱を起こしてくるわ。その隙に潜入してね。」
「うん。でも、大丈夫?ラレア一人で。」
「もちろん。わたしには、伯父様直伝の、とんずら技術がありますもの」

 あまりほしくない技術である。

「じゃ、今から5分たったら、『基地』に向かって。絶対に、無事に帰るのよ。」
「ラレアもね!!」
「ふふふ。久しぶりに、暴れるわ!!」

 ラレアは不気味な笑いを残して、『基地』へと向かった。


 こうして、無謀な二人組みは、無計画なロイ救出作戦を実行に移したのであった。






挨拶


お久しぶりです、優です。

タグを使ってみました。
・・・なれんことはするもんじゃない。ろうさん、編集お願いします〜(爆)
反省しました。


で、今回のお話は〜。セリフが長いぞ大会でした(?)
レッジさん、ちょこっとだけ、主人公っぽくなってきたんでない?っとよろこんでみたりして。
がんばって〜主人公〜。でもごめん〜。うちはジィンクがお気に入りかも〜。最近。・・・ってな具合です。

次は〜たぶん、書いてていっちゃん楽しかったところ〜♪です。
争いは〜そういうもんですね(?)♪では。



ろう・ふぁみりあの勝手な編集〜

・・・もとい戯言。
はっは、いや〜なんか編集しといてとか言うもんだから、オイラの書き方で編集しました(おい)
つーわけで、編集ばーじょん0.1くらいだと思います。作者様からクレーム来たら再編集するつもりだし。

それはともかく。

おおおっ!? レッジ嬢が主人公している!?
とゆーか「守ラナキャ」とか言われて、立場無いぞロイ君(笑)。

しっかし、ラレアさん復活。レッジ&ラレアのコンビネーションがビシバシ決まってました〜♪
なんか、この二人って暴走仲良し姉妹って感じでよさげです〜(暴走つけるなー)。

さて。次回。
書いてていっちゃん楽しかったところ・・・むぅ、楽しみな。
とゆわけで、楽しみに期待してレッジ&ラレアさんの活躍を期待してますね〜

・・・ついでに、ロイ君も(笑)。


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