RainbowBird

第4章 港町〜3〜




いつまでたっても水の感触はない。
それどころか妙に気持ちがいい。
ふとんの上にいるような感覚。
 
 そうかルストたちのことは夢、だったのか。
そっと目を開いてみた。

  白い。
 
 「あ、あれ?」
 
 「気がつきよったか。まったく無茶しよるわい」
 
 「あー!!フクロウレル!?」
 
 「わしゃ、ホワイトローレンスピータルチオサンデイロックウェルオンリイザ、フクロウレル、じゃ」
 
 フクロウレルの背は温かい。夜の闇に負けない純白の羽毛を持っている。

 翼を広げた彼の姿は思いのほか美しかった。

 顔に当たる冷たい夜風すら気持ちいい。
 
ロイはなんだか、泣きたいような、笑いたいような気分になった。

 「助けてくれたんか。どうもありがとう」
 
 「お前さんにゃ借りがあるからな。さ、ついた」

 フクロウレルは急降下で着地した。
 
――その頃。
「そろそろ来る頃かしら。お茶の用意しときましょ、っと」
 
 「あ、あたしも手伝うよ」
 レッジはラレアといつのまにやら「ため口」をきける仲になっていた。

レッジはついつい『白い衣の女』のことや虹の鳥の羽根のことをラレアにしゃべってしまっていた。
 
 「じゃあ、テーブルの準備、お願いするわ」
 
 「はぁい」
 ラレアはやはり舞っているようにお茶の準備をした。
 
 ラレアはいま二十歳である。
祖母から譲り受けたこの店を十八歳の時から一人で切り盛りしているという。
この店の二階がラレアの家だった。
 
 そうこうしているうちに戸からコツコツと音がした。
 
 「伯父様だわ。はーい」
 
 「あー!!ホワイトローレンスピータルチオサンデイロックウェルオンリイザ、フクロウレルさん」
 レッジが叫ぶと一同は畏敬の目でレッジを見た。

 本人以外で彼の名を言えた人は今までにいなかったらしい。
 
 「あれ、どうしたの、みんな」
 
 「や、なんでもないんじゃ。それより途中で拾い物をしてきたぞい」
 
 「拾い物?ロ、ロイ!血、出てるよ!!たいへんだ!!!」
  フクロウレルの背からおろされたロイを見て、レッジは叫んだ。
 
 「こんくらい、へ、へっちゃら、だべ」
 
 「全然へっちゃらじゃないじゃん!顔色悪いし」
 
 「とにかくみんな、中へどうぞ」
 ラレアは実に冷静だった。
 
 「すご〜い!!」
 フクロウレルの羽根から不思議な粉がパラパラと降り注ぐ。

きらめく銀の粉によって、弾丸にえぐられた、ロイの肩の傷は見る間に回復していく。
傷はフクロウレルの『力』によって完治した。

横で見ていたレッジは驚きの声をあげていた。
 
 「フクロウレル実は、蛾、だったか!?」
 
 「傷を治してもらってそれはないじゃろ。わしゃ、もー数少ない、純な妖精じゃぞ。ヨ・ウ・セ・イ」
 フクロウレルはガミガミと言った。
 
 「そういえば、国立学院の妖精棟の人たちを石にしちゃったでしょ、フクロウレルおじさん」
 
 「そのうれしそうな呼び名はやめい」
 
 「伯父様、またやったのね。前は時間止めちゃうし、わたしの苦心の作、レッジたちにあげちゃったし〜」
 ラレアはお茶を入れていた手を止め、あきれていった。
 
 「さあ、なんのことじゃったかの」
 とぼけるフクロウレルだった。
 
 「麻袋、ラレアがつくったんだべか?」
 
 「ええ。あれはわたしがまだ純粋に『力』が使えていた頃、作ったの」
 ラレアはお茶を入れたお盆をテーブルに運び、そしてエプロンで手をふいた。
その後、語り始めた。
 
 「わたしの母は妖精。父は人間だった。だから、伯父様が梟なんだけどね。一応、『力』は使えるけど、年とともに弱くなったみたい。で、小さいときには麻袋作れたんだけど、今はムリってわけなのよ」
 麻袋は便利なだけあって、作るのが難しいようだ。
 
 「ふーん、そうなんだ〜。あ、妖精と人間のハーフなら『力』使うときに血、いらないの?」
 
 「ええ、まあね。でも、あなたたちだってブラッドルビー持ってるじゃない。だったら血はいらないわよ」
 
 「え!?そうだったんだ…だからこれ、ロイにくれたのかな。ロイには妖精な親戚いるみたいだし」
 
 「でも、俺、そんなのすんのはいやだ」
 ロイはだだっ子のごとく嫌がった。
 
 「あ、そうだ、麻袋。これはロイがもっといてよ」
 
 「俺、首にものかけんの嫌いなんだけんどなぁ」
 ロイはしぶしぶ首に麻袋をかけた。
 
 「ところでロイ君はどうして撃たれてしまったの?」
 
 「あ、黒革ジャン集団にやられたんだ。ボスはルストとかいう、ほれ、レッジ、あの金バッチが黒幕だったんだ」
 
 「ル、ルスト!?来てるの!!やばやばだわ」
 
 「なに、なんなの?」
 
 「近頃増えてる、妖精を狙った事件、全部あいつが黒幕らしいの。もともとこの国、妖精を結構迫害してたのよ。まあ、他の大陸よりましだけど」
 
 「他の?」
 
 「ほら、鳥の頭の形した大陸。あそこは酷いらしいわ。いまでも。まあそれはそれ。ルストはね、もともと学院で妖精学のうちの妖精の歴史を研究してる人だったらしいんだけどね。砂漠の遺跡、鳥の体の形の大陸にあるんだけどね、そこから帰って来てから「妖精は女神の手下。すべて侵略者だ。」っていいだしたの」
 
 「砂漠の遺跡…だべか」
 ロイはふと、どこかでその言葉を聞いたことがある気がしていた。
 
 「くわしいね、ラレア」
 
 「ええ。まあ全部ワーパの情報だけどね。ワーパって海の妖精なの。船乗りよ。ぴったりの職業よね」

 「ワーパ!?世の中せまいな。そん人に会えって、シルバーのおっちゃんがいってたんだ」

 「シルバーさんと言えば、伯父様、ちゃんと学院の人たちに謝りに行きなさいよ」

 「ほいほい、んじゃ、行っちまうかな」
 フクロウレルは狭い部屋で大きな翼を広げるわけにもいかず、ちょこちょこと、扉の方へ歩いた。

 「はよう開けてくれ」

 「もういっちゃうの?」
 レッジは驚いた。

 「いつものこと、よ」

 「さすがにせまいんでな。じゃ、またな」
 フクロウレルは白い翼を広げると2,3度、はばたいて、暗い夜空に飛び立った。
それは星の瞬きのようだった。

フクロウレルの姿はいつしか消えていった。

 「さてと、行きましょうか」

 「はぁ?」
 レッジは思わず聞き返した。

ラレアは腕を腰にあてて店を見まわしている。

 「決まってるでしょ。ワーパのところよ。ルストが来てるのからなおさら行かなきゃ。
彼、この辺りの妖精の委員長さんみたいなものですもん。ついでに『女神』様のところまでいってあげちゃう」

 「レッジ、骨董屋に言われたでねぇか。簡単に虹の鳥の羽根のことはなしちゃいかんって」

 「だって〜。ラレア、ワーパさんちまででいいよ?」

 「え〜、いいじゃないの。わたしは行くわよ。ど〜こま〜でぇ〜も〜♪」
 ラレアは思いきり気合をいれている。こぶしの利いた口調である。

 レッジとロイはただラレアがせっせと旅じたくをするのを見ているしかなかった。

 数分後………。

 「す、すごい」
 思わずレッジはつぶやいた。

 ラレアの準備はたいへん早かった。しかも完璧だった。

 ラレアはいつのまにかに着替えている。
 
 ベージュのストレッチパンツに白のツインニット。そこに淡い七色のスカーフを巻いている。
手には茶色の小さなバスケット。同じく茶色の、革靴をはいている。

見事な金の髪も今はまとめて上げて、そのスラリと高い身長だけで目立つのに、その姿は全くもって目立っていた。

 ラレアは店の品物に深緑の布をかけ、しっかりと窓のかぎを閉めた。
 「さ、いきましょ」

 電気を消して店を出る。

あっというまに整ってしまった旅の準備にレッジはなぜか寂しかった。
ラレアは、店に迷いもなく鍵をかけた。

 「レッジ、行くざ」

 「…うん」
 ワーパの家へ向かって歩き始めた。
 
 レッジはふと、丘を振り返る。

明りの消えた小さな店は黒い塊のように、寂しげに見えた。
しばらく店を眺めていた。

そして、レッジはラレアとロイの後についていった。

  ☆               ☆                ☆

 「なんだか様子がおかしいわね」

 ラレアが急に立ち止まった。
ワーパの家はもう目の前である。
あたりは真っ暗。
しかし一件だけ明りがともっている。

 「どうしたの?」

 この辺りは良く似た白い壁の平屋が立ち並んでいる。船乗りたちの暮らす地域だ。

ワーパはすでに船長であるから、もっと「立派な家」に住める。
しかし、彼はこの平屋をたいへん気にっているらしい。

 明りのついている家、それがワーパの家だった。

 「誰か来ているのかしら」

 「誰か?―あ!ルストが来てるんかもしれんのだった〜」

 「ルスト!?あの金バッチだね、ワーパさん、助けなきゃ」
 レッジはあと先考えずに、ワーパ家のへ走る。

 「おい、待て、待つんだべ〜」
 ロイはレッジのあとにつづく。

 「もう少し、計画性をもちましょうよ」
 ラレアはあきれて呟いた。
 
(つづく)



ご挨拶
    どうも、優です。
♪まだ〜〜港〜やっぱり〜港♪
 やっと、来た来たロイロイ♪と、言ってる間に、再び出発!ってな感じです。ロイに休息はないの〜酷いです〜。可哀想に〜。でも、まあ、いいや。
 ラレア姉さん、騙ってます。いえ、語ってます。ややこし〜〜。鳥の頭?鳥の体?ふっ…。ニワトリを思い浮かべて下さい。あんな形の世界地図です。レッジたちの世界は。ん?ひよこでも、インコでも、OKです〜。ホントかな。まあ、いいや。
さらに〜ラレア姉さん、ついて来てしまいます。これでますます、レッジ主人公説〜(?)が危うくなってまいりました〜。レッジさん、無茶しいですし〜。お命すら危ういかも〜。でも、まあ、いいや。

次はワーパが出てきます。(はああ。ここが一番やなとこなんだよな〜なに考えてたんだろ、中学生、私。)


 

ろう・ふぁみりあの勝手な戯言〜

 

・・・あれ?
あー、そかそーか、そいえばレッジさんって主人公でしたね(オイ)。
いや、なんかロイ関連のイベントが起きてるんで、すっかり忘れてました(酷すぎ)

いや、それは置いといて(置いとくなよ)

うーん、しかしフクちー(愛称)(勝手につけるか)が再登場。
でも、フクロウって遠目で見ると蛾にも見えるかもしれない(笑)

しっかし、ワーパさんが海の精霊って聞いたときにペンギンを思い浮かべてしまったオイラはダメダメかも(笑)

 


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