RainbowBird
優
第4章 港町〜2〜
レッジが、〜早くこいこいロイロイ♪と、歌っている頃。ロイの逃亡は続いていた。
ようやく港についた。
ワーパの家も近いはずだが、この状況で行くのは迷惑だろうと、ロイはのんきに考えていた。
なんといってもまかないと。と考えつつもまけないでいた。
昼の港はにぎやかだが今はもう夜。
人気はない。街灯が辛うじて辺りを照らしている。
土砂の山や灯台や、それに倉庫の集まった、倉庫街などがあった。
ロイは今、倉庫街にいる。
倉庫の壁が妙に寒々しい。
倉庫は一つ一つも横長に大きいが、数もたくさん立ち並んでいる。
そのせいか海はまだ見えない。
星も見えない夜の港をロイは走り続けた。
だんだんと、倉庫街の奥へ奥へと進んでいく。
そこが、黒革ジャン集団のいつものたまり場とも知らずに。
気がつくと黒革ジャン集団はいなくなっていた。
「まいたんか?」
ロイはひとりごちた。一応まいたようだ。
ロイは今、倉庫の前に置かれた荷の陰に隠れて、辺りの様子をうかがっている。
黒革ジャンどころか誰もいない。
どうしたのだろうと耳をすます。
低い声が聞こえてきた。
「見つかったか?」
「いや、でもま、袋の鼠だな」
「ああ。みつけたら、ぶっぱなしてもいいってさ。ここなら遠慮もいらん。ただ、殺すんじゃねぇぞ。話しが聞けないと困るらしいからな」
ぶっぱなすって、拳銃だべか!?
ロイの体から、冷や汗が吹き出てきた。
この国は拳銃の売買どころか、持っていても罰せられる国であるはずだ。
それがあたりまえであり、「ぶっぱなす」などという言葉を聞いている自分が信じられないロイだった。
ロイは入ってはいけない世界で迷子になった子どものような気分になった。
実際その通りなのだが。
男たちの会話はまだ聞こえる。
「もうすぐ、ボスもこっちに来るってさ。もう来ているかもな」
「妖精の親玉はいいのか?」
「親玉っていっても小物らしいぜ。それよりもレインボーバードの羽根のほうが興味あるのかもな」
虹の鳥の羽根が話しに出てきた。ロイはますます聞き耳をたてた。
「妖精を創った鳥の、その羽根ね〜。高く売れるのかな」
「おう、ボスが高く買い取ってくれるらしいぜ。」
「けどよ、その前に妖精に呪われるぞ」
「へへへ、おっかね〜やつらだからな。どっかにまとめて隔離すりゃいいのによ」
「そんなこと言うと学院のやつらが目の色変えて襲ってくるぜ」
「確かにな。学院に呪われる〜」
下品な笑い声を残して男たちは遠のいていった。
ロイは声のする方とは反対の方向へ静かに走る。
ともかく、あの男たちにばれないように丘の店に向かわなくてはならない。
捕まったらボコボコにされるどころの話しではない。
それどころか殺されるかもしれない。
倉庫には隠れられそうな荷物の山がたくさんある。
ただ、じっとしていると恐くて、どうしても走ってしまうロイだった。
黒革ジャン集団は今や手に手に拳銃をもってロイを捜していた。
一つの倉庫から明りがもれている。
ロイは近くの荷物の山に身を隠してこっそり中の様子をうかがった。
中から男たちの声が聞こえてくる。
「虹の鳥の羽根を持つ子どもはまだつかまらないのか?」
穏やかなしゃべり方だが、その声は威圧感に満ちていた。
「はあ、申し訳ありません」
いつぞやロイを殴った黒革ジャンの声である。
今日は妙にペコペコしているようだ。
声も、弱々しい気がする。と、ロイは感じた。
「虹の鳥の羽根か。世界に何枚、残っているのだろうな」
「わかりませんねぇ」
「君から回答を得られるとは思っていない。ようやくあの女を始末したというのに、あの女、名もなき子どもに羽根を預けるとは。」
レッジにゃ、ちゃんとレッジって名前があるべ。ロイは心の中で反論した。
ロイは勇気をふりしぼって中をのぞいた。
中にはあの、駅で威張っていた、金バッチが今も偉そうにそこに立っていた。
「あいつが黒幕だったんか」
どうやらこの国で、虹の鳥の羽根争奪戦みたいなのが繰り広げられてるみたいだ、とロイは考えた。
『白い衣の女』がなんとか羽根を手にいれてそれをレッジの兄に届けようとして…
「なんでレッジの兄ちゃんなんだ!?」
ロイはついつい大きなひとりごとを言ってしまった。
「いたぞ!!あのガキだ」
「し、しもた」
見つかってしまった。
ともかくロイは駆け出した。
もう、必死で。後ろから銃声が聞こえるが、気にしている余裕はロイにはなかった。
弾丸がロイの右肩をかすめた。が、痛さをこらえつつ、走るしかなかった。
「う、うそだ…」
ロイの足は止まった。
目の前に広がるのは夜の海。暗い空には星すらない。
「もう君は、逃げられないね」
ふりむくと、そこに金バッチ男が立っていた。
黒革ジャン集団をひきつれて。
「君だね、虹の鳥の羽根を持っているのは」
「お、俺は知らね」
「おじさんはね、ウソツキが嫌いなんだ」
優しげな口調が余計に不気味だ。
「も、もし持ってたとしても、あんたなんかにゃやらんぞ」
「なんだと!?てめぇ、痛い目にあいてぇのか?」
「まあ待て」
金バッチはいきり立つ黒革ジャンのボスをたしなめた。
「ルスト様!?」
金バッチ――ルストは、ロイの上から下までを冷たい目で、じっと観察する。
「…ほう。君は……」
ルストは小さくつぶやいた。
ルストの口にニヤリと笑いが浮かぶ。
「ふふふ、勇気があるね君は」
「俺にゃ勇気なんざねぇし、あんたに言われてもうれしかねぇべ!!」
なんとか逃げ出す手はないか。ロイは辺りをうかがう。
「さすが、彼の息子だな」
「へ?」
キョトンとルストを見つめる。
「…ロイ君。君は確かに勇気があるね。友達をかばって自らおとりとなるとは」
「べ、別におとりなんかでねぇ」
恐怖で引きつりながらも、ロイは一生懸命言い返す。
そんなロイに、ルストが近づく。
「な、なにすべ」
ルストは逃げ腰のロイの両肩をつかんだ。
はたから見ると、「期待しているよ君」とでも言われているよう。
抵抗しようにもロイの華奢な肩をつかむ、ルストの力は強い。
「ウソツキは嫌いだ」
ロイの肩をつかむ手に力が入る。
とくに血を流している、右肩をつかむ手に。
あまりの痛みに一瞬目の前が白くなる。
「君が持っているはずの、妖精の麻袋がない。君はどこかで君の友達と落ち合う約束をしているのだね?そこに虹の鳥の羽根はあるというわけか」
ルストの読みは大正解である。
「落ち合う場所はどこだね?教えてもらおうか」
「や、いやだ」
ロイは怖々とそれでもはっきり言った。
ルストはロイを睨みつける。
負けずにロイも睨み返した。
内心、ものすごく恐かったが。
ルストの唇の片側があざけるように少し上がった。
その顔をみてロイの背筋に冷たいものが走った。
「子どもをいたぶるのも楽しそうだな。今日は妖精を一匹つぶしに行くのだよ。君も連れて行くとしよう」
ルストはようやく肩をつかんでいた手を離した。
「車の用意だ」
今しかない!!
ロイはルストが黒革ジャンに指示を与えている間に海にダイブした。
何もかも呑み込んでしまいそうな暗い暗い水の塊が、そこにはあった。
ロイは目を閉じる。
きっと冷たく深い海が待っているだろうな、と思いつつ。
(つづく)
ご挨拶
どうも、優です。
♪港〜ああ〜港〜〜♪
ロイ君、港におります。港はやっぱり悪の香りがする……(なぜだーーー!!)
そこで、悪の親玉が登場しました!!(そういう理由で悪の親玉出すのはやめなさいな〜)
ロイ君、ちょっと痛そうです。悪の親玉、ヒドイヒト。
そして、ロイ君、海の中〜〜〜♪ははは〜〜〜。です。
登場人物
ルスト(年齢不詳)
悪いヒト?です。悪の親玉。
黒だ、黒!!
猫背、灰色の髪。残酷そうな瞳。
ニヤリ笑いが得意なヒト。
…レッジの歌はいつまで続くのでしょう?〜早くこいこいロイロイ♪(←気に入ってるらしい)
ろう・ふぁみりあの勝手な戯言〜
港。港と言えば悪の取引。
何故か波止場って麻薬の取引が頻繁に行われるのかが不思議。
たまには富士山の頂上でやってみろとか思うけどダメ?
まあ、それはさておき。
いや、ロイ君カッコよすぎ〜。
うんうん、なんかもぉヒーローって感じですね!
ちょうど悪人も出てきたことだし。
・・・レッジさん歌ってる場合じゃないでしょーに(笑)
早くこいこいロイロイ〜♪って。
・・・次回も出番がなかったりして(爆)(主人公なのにね)(一応)(一応かい)