RainbowBird

第三章 首都



 首都に着いた。今はもう真っ暗。夜の冷え冷えした中、二人は降り立った。街灯の明りが薄ぼんやりと辺りを照らす。レンガづくりの背の高い家々や灰色の石畳の町並みも今はほのかな青白さを帯びていた。

 せっかく首都に着たが、やはり夜中はどこも寂しいものである。そんななか、駅近くの小さな宿だけが黄色い暖かな光りを放っていた。二人はとりあえず、すべて明日、ということにした。


 次の日の、朝がきた。
 「さあて、とりあえず、学院に行ってみよう!!」

 「麻袋のことはどうすっべ?」

 「それはあと。だって、学院はすぐそこなんだもん」

 確かに駅のすぐ近くに学院はあった。昨晩とはうってかわって、明るい町並みである。
首都は歴史あふれる古都だ。町の中央に駅があり、そのまわりを図書館やお役所、そして国立学院など国の主要な建物が点在し、その間に数々の洒落た感じの店や、家が立ち並んでいた。

 この国はたいへん治安の良い国である。拳銃などの武器の保持は固く禁じられている。妖精は法でその権利を守られており、妖精の『力』に関する学問、妖精学も国立学院で熱心に研究されていた。「『力』のある者もない者もともに生きるのだ」と政府の重鎮は常々述べている。

 首都はとくにその考えが浸透している地域のひとつだった。

 学院は駅から東に位置している。

 レッジとロイは準備を整えて、宿代を払ってさっそく学院に向かった。宿代を払ったら非常用のお金もほとんどなくなっていた。

 さすがに治安の良い国の首都だけあって、いかにも平和そうである。宿から徒歩10分のところに学院はあった。

 「うわあ、大きい」
 ひときわ大きなレンガづくりの建物が広い敷地内に並んでいる。

 「ここは工学部と海洋学部のキャンパスだ」

 「ロイ、良く知ってるね」

 「んー昔、ここに住んでたかんな」

 「そ、そうだったの?!」

 レッジは驚いた。ロイは昔から村にいた、と思っていたのだ。思えばロイの両親は見たことがない。

 「や、どうだろ、あんま記憶がないんだわ。ま、ど〜でもええ。レッジの兄ちゃんは何学部だったんだべ?」
 
 「ええと、お兄ちゃんは神学部、妖精科学科だったと思うけど」

 妖精学はこの世界に存在する妖精の伝承を研究する学問だ。フクロウレルのような妖精は数こそ
少ないが、確かにこの世界にあたりまえに生きている。妖精科学は妖精の不可思議な『力』を人の不可思議な『科学』で解明しようというものだ。

 「ん、妖精学棟か。あっこはすんげぇ綺麗だで、よう覚えとる。こっちだべ」

 レッジはロイのあとについて歩いた。いつも農作業をしているロイがこんなに学院に詳しいなんて変な感じ。ロイの頭の上で揺れている、麦藁帽子を見ながらレッジは思ったのであった。
 
 神学部妖精棟は他の建物とはまったく違っていた。

 妖精棟はまわりを自然に囲まれていた。石膏のように白い建物は彫刻をさまざまなところに施してある。窓には虹の鳥をあしらったステンドグラスが入っていた。塔のような背の高いものが建物の真ん中に建っている。それを取り巻くように背の低い建物が建っていた。上から見ると正方形で縦でわったら冠状だ。中央にある入り口は大きな木製の扉で、それにはなにか物語の彫刻が刻まれていた。森に囲まれたその建物は神聖に感じられる。それはまるでなにかの寺院のようだった。

 「ここ、だべ」

 「ここ…だよね」

 「さ、入るべさ」
 建物のようすに圧倒された二人はこそこそと中に入った。


 中はまるで誰もいないかのように静かだった。

 「な、なんだろか。昔は確かもっと忙しそうな人でいっぱいだったんだけんども」

 「…静か、だよねぇ。あの〜ごめんください」

 レッジの声は奥の方まで響いた。なぜだか辺りは真っ暗。開け放った扉からの光りが唯一の光りだ。窓からもれる光りはステンドグラスの模様を灰白色の床に映していた。

 「俺、ここにいたことあるはずなんだけんどなぁ」 

 「ロイ、ここのこと覚えているの?」

 「いんや、ぜんぜん。雰囲気とかはなんとなく覚えている気もするけんど」

 二人はよく小さい頃、村のお化け屋敷と言われた家を探険して歩いた。その時のように二人は妖精棟をずんずん進んでいった。二人の足音だけが辺りに響いては消えていた。
 
 建物は外から見たよりも広く、2階建て。塔の部分の高さのみ4階か5階分ぐらいである。1階は全て教室で、2階に教授たちの研究室や実験室があった。
 
 柱も壁も真っ白なはずだが光りがあたっていなくて灰色の世界に見える。教室のドアは両開きの立派なもので、どれも入り口のものと同様、物語らしきものが彫られている。また、ときどき突拍子もないところに石の像が置かれている。
 
 1階にも2階にも誰もいない。ロイとレッジはとうとう中央の塔に続く巻階段を登りはじめた。
 
 「どうなってるんかな」
 
 「わかんない」
 
 「とりあえず、学院の人に話し聞いときゃあよかったな」
 
 いまさらながら思いつくロイだった。
 
 「ともかくあとは塔だけ、だね」
 
 「ん、だな」
 
 辿り着いた塔の上には聖堂のようなものがあった。ドーム状の部屋は非常に小さい。そして全体、石膏のように白い。部屋の奥には木を磨いてつくられた台が置いてある。これにも見事な彫刻がされている。その上にある銀の燭台の明りが唯一の光りだ。そしてそこには光りに照らされた、一人の白いローブの少女が立っていた。
 
 「あ、あの…」
  レッジは少女の背中に声をかけた。
 
 「どなた?」
 少女はゆっくり振り向くと、ロイに気がつき、微笑んだ。輝くような笑顔だ。
 
 「あら、ロイではないですか。お久しぶり」
 
 「え、え〜と」
 突然、可憐な少女に話しかけられ、ロイはどぎまぎしている。向こうはロイを知っているようだ。
 
 「サラですよ。覚えていないの?」
 
 「あーあ!!サラか」
 ロイ、この人のこと覚えてないな。
 ロイのわざとらしい大声にレッジは思った。サラも同じことを思ったようである。ちょっと気を悪くしたようだった。
 
 サラはなぜか神聖な感じがした。白いローブからわずかに見える髪はまっすぐに流れるような薄茶色をしていた。小さな顔、そこにある大きな瞳は澄んだ青色だ。肌は雪のように白く、唇はバラのように赤く小さい。年はレッジよりも一つ二つ上か。まじめそうな目をした少女である。サラは確かに器量良しであった。それよりなにより"可憐"であった。
 
 「忘れているのですね。あなたのお父様とよく遊びに来ていたではありませんか。それに…」
 
 「お、親父と、だべか?」
 
 ロイはサラの話の途中で驚きの声を上げていた。
 
 「そのようなことも忘れているのですね。…小さな頃でしたし、しかたがないのかもしれないですね。ところであなたはどなたですか?」
 
 「あ、あたしレッジ。ええと、ロイの幼なじみです」
 レッジは『幼なじみ』をなぜか妙に強調していた。
 
 「幼なじみですか。それで、妖精棟になにか御用ですか」
 レッジは兄、ラーネッドのこと、彼がこの妖精棟のキャンパスで、シルバー教授のもと研究に励んでいたことなどを話した。
 
 「ラーネッドさん、ですか」
 
 「シルバー教授にあって、お兄ちゃんの行方を聞かなくてはいけないの」
 
 「シルバー教授は私の父です。でも、いま少し困ったことになっているのです」
 
 「困ったこと?」
 思わずレッジもロイも同時に聞き返した。
 
 「気がつきませんでしたか。この建物にいた方々がみんな石になってしまったのです」

 「石ぃ!?」
 
 淡々と述べるサラにも驚きである。建物に転がっていた石の像は『人』だったのだ。本物の。
 
 「そ、そんな、たいへんじゃあないかい」
 
 「ええ。おばあ様のところから戻ってみたらこうなっていたのですもの。何が起こったのか、これから見ようとしていたのです。あなた方も見ますか」
 
 「うん。でもこんな聖堂で?」
 
 「聖堂ではありませんよ」
 サラはまた微笑んだ。二人は驚きっぱなしだ。小さな女神像らしきものは飾ってあるし台の上には水をはった銀の大聖杯などが置かれている。これではやはり聖堂だ。
 
 「では、はじめます」
 
 「な、なにすっだ?」
 
 サラは再びレッジたちに背を向た。いきなり台の上の、銀のナイフをとりあげ、おもむろにローブの右手のそでをまくりあげた。
 
 「な、なにすっだって!?」
 ロイは慌てて止めようとした。
  
 サラは目を閉じ、唇を噛み締めて痛さをこらえている。
 腕から一筋の赤い血は流れ、その一粒が銀の大聖杯に落ちた。すると聖杯から光りが放たれまるでスクリーンのようなものがうつしだされた。
 
 スクリーン上に実験室が映し出された。試験管や奇妙な管などが見える。白衣を着た人々が忙しそうに辺りをかけまわっている。人々はなにかの実験の最中のようだ。何の実験かは、レッジやロイにはさっぱりわからない。しかし…
 
 「あ、あれって…」
 
 「フクロウレルのじいさんだべ!!」
 
 「彼ですね。人々を石化したのは」
 
 「フクロウレル、悪者だったんだべか?」
 
 「ちがいます。彼は数少ない協力者です。おそらく思った以上に『力』がでてしまったのでしょう。ほら、石化のメカニズムを調べる実験中のようですもの」
 サラはにっこり微笑んだ。
 
 「『力』の出しすぎで妖精棟の人みんなを石にしちゃうとは」
 
 「ええ、彼は本当に純粋な妖精ですから、『力』も強力なのです。でも彼は少し無責任なところもあるのです」
 妙に納得する二人だった。
 
 「ともかく原因はわかりました。あとは彼の羽根を手にいれなければ。あ!!」
 サラの大声にロイはとびあがって驚いた。
 
 「ごめんなさい、驚かせてしまって」
 
 「いやぁはは〜」

 素直に謝られてなぜか照れるロイであった。
 
 「で、どうしたの?」
 
 「彼はどこにいるのでしょう…。彼を探して羽根をもらわなくては」
 レッジとロイは顔を見合わせてにやりと笑った。
 
 「フクロウレルの羽根ならほれ、ここにあるべ」
 ロイは帽子についた羽根をはずしてサラに手渡した。
 
 「あら、フクロウレルと知り合いなのですね」
 サラは落ち着いた娘だった。

 「んー、まあ、そういうもんだかな?」
 
 「でも、少し待ってくださいね」
 サラはフゥ、とため息をついた。
 
 「どうしたの?」
 
 「血が必要なのです」
 
 「…血!?」
 淡々と述べるサラに、ますます驚くレッジだった。
 
 「血があれば『力』使えるんか?」
 ロイは思わず自分の腕を見ながら言った。
 
 「いいえ。でもロイなら使えるかもしれませんね」
 
 「俺?」
 
 「私たちのひいおばあ様が妖精なのです。だからでしょうね。私も勉強した結果、血を使えば『力』を使えるようになったのです」
 
 「なに、私たちって?」
 レッジはなにより、その言葉を気にしていた。
 
 「ああ、私とロイは母方のいとこどうしですよ」
 
 「なあんだ、そうだったんだ」
 なぜか安心するレッジだった。
 
 「ロイはサラのこと忘れてたのね〜」
 
 「い、いや、俺は…」
 
 「あたしはきっとムリよね。だって、妖精な親戚いないもん」
 ロイのいいわけを無視してレッジはつづけた。 
 
 「どうかしら。普通の人でもときどきいます。『力』をそう、簡単に使えてしまう人」
 
 「ふ〜ん」
 
 「さてと、準備しましょうか。手伝ってくださる?」
 
 「もちろん!」
 ふたりは元気に返事をした。
 
 準備が完了したとき、聖堂の台の上は奇妙な空間となっていた。水をはった大聖杯、その中に浮かぶフクロウレルの羽根。そして大きな鏡がそのわきにおかれている。ふちのないその鏡はもちろん、持ち手すらついていない。これらの物はいかにも妖精じみていた。
 しかし、その横にはなぜかボールペンや使いさしのレポート用紙などがならんでいた。
 
 「こんなものかしら。それでははじめますね。あの、今度は左なので手伝ってくださいません?」
 
 「手伝うって…」
 
 「私、左利きですから。お願いします」
 サラはレッジにナイフを手渡した。
 
 「やだよ〜。あたしできないよ、そんなの」
 
 「俺もいやだべ」
 サラがロイの方を見たので、ロイもあとずさりながらいった。血を流すことは、サラにとってあたりまえのことのようである。二人のようすを見てサラは肩をすくめた。
 
 「しかたがありませんね」
 サラはレッジからナイフを受け取り、深く息を吸った。ナイフを握る右手に力が入る。唐突にナイフで左腕を斬りつける。真っ赤な血が一筋、サラの華奢な腕を伝って大聖杯に流れ落ちた。一滴の血が驚くほど一面に広がる。フクロウレルの羽根はもはや深紅になっていた。サラはなにやらもにょもにょと唱えている。
 
 やがて鏡を取り上げ大聖杯の中にいれた。大聖杯からは赤い煙がもうもうと立ちあがっている。しばしののち、サラは大聖杯から鏡を取り出した。鏡に変化はまったくない。それをサラはボールペンだのレポート用紙だのにむけた。
 
 「ふう。終わりました」
 突然サラはふりかえって言った。
 
 「え!?なにも起こらないじゃない」
 
 「起こっている」
 
 「え!?」
 ふりかえると聖堂の入り口におじさんが立っていた。
 
 「さすがサラだ」
 
 「サラに『だ』はつけないでください。いつも言っているでしょう。お父様」
 
 「ああ!!」
 ロイは唐突に声を上げた。
 
 「サラダ!あ〜、思いだしたべ」
 
 「なんなのよ、ロイ」
 
 「サラダだ、サラダ」
 ロイはどうやら『サラダ』という名前でサラのことを憶えていたようである。
 
 「久しぶりだなロイ君」
 
 シルバー教授をおじいさんと呼ぶには、ちとはやい。パリッとした茶色のスーツを軽く着崩してきている。白いものの混じった茶色の髪は、少し乱れている。瞳はサラと同じ青い色。その輝きはいっそう落ちついたもの。薄い唇には優しそうな笑みが浮かんでいる。厳格なおじ様といった姿だが、とっても柔らかな感じのする人だった。

 一同は場所を移し、教授の研究室にいた。
 教授の研究室の掃除はサラがおこなっているのだろう。部屋の感じが聖堂に似ている。
聖堂は実はサラの部屋だった。サラは幼い頃から祖母の住む、山の祠にいることが多かった。そのためか神聖な空気にふれると落ちつくのである。教授の研究室も確かに神聖な感じがしていた。ただ、机だけはシルバー教授の性格、無頓着さが出ていた。
 
 今、レッジとロイはサラの入れたお茶とついでにお昼をごちそうになっていた。サラお手製のハムサンドイッチである。紅茶も飲みながら、『白い衣の女の人』の話しをしていた。
 
 「そうか。ラーネッドくんは今、女神の塔にいると思うのだが」
 
 「女神の塔?どこかで聞いたような…」
 
 「それってどこにあるんだべか?」
 
 「尾の形をした三つの島の一番東の島だ。ここから遥か南西の島々だな」
 
 「外国だべか」

 「あの地域には国境はない。どの国の領土にも属さないんだ。さまざまな国の人がその地で研究を行っているはずだ」

 「あ!!思い出した」
 レッジは唐突に大声をあげた。

 「なんだべ?」

 「女神の塔のこと。そういえば『白い衣の女の人』がいってた」

 「なんだべ、はじめから行き先わかってたんかいな。さっさといけたべ」

 「それはどうだろう。女神の塔はそれ自体、かなりな『力』を持っているらしい。簡単には近づけまい」
 シルバー教授はあごをさすって考えこんでいる。

 「君たち知っているかね?この世界がたった一人の少女によって作られていることを」
 シルバー教授は突然話しを変えた。

 「え!?どういうことですか」

 「『女神』の『力』で我々は生きている、いや、生かされている、ということだ」
 優しそうなシルバー教授が思いっきり毒々しく言った。

 「そ、そうなんですか?」

 「そう、自然の摂理も『女神』の思うがまま」

 「そんな…」
 レッジは村の様子を思い浮かべた。あの村を流れる小川も、大好きな原っぱも、よく山菜をとる山も、みんな『女神』の思うがまま…。

 「ひどいと思うかね?」

 「思うよ!」
 ロイはめずらしく訛りもなく答えた。

 「…彼の息子からそんな言葉を聞くとはな」
 シルバー教授は悲しそうに首を振った。

 「いいかね、『女神』が自然を支えているのは事実だ。だがな、彼女は別に世界を支配しているわけではないのだ」

 「へ、どういうこと?」

 「『女神』は世界のバランスを保っているだけなのだ。雨雲が一箇所に集まらないようにしたり、日の光を各地に分けたり。どこかの地域を落とし入れようなどとは、考えていないはずだ。そんなことをすれば、世界のバランスが崩れるのが目に見えている。ところで、妖精をねらった事件がこの国では増えているだろう?」

 「そう聞きました」

 「妖精の『力』を恐れるものたちは『女神』を悪の支配者だと主張している。その考え方に人は簡単に流されてしまう。君たちも例外ではなかった」

 「ほんとだ。こ、恐い」

 「妖精は『女神』と同じ『力』を持っている。この国ではだから、妖精は襲われてしまうのだ。かなり組織的に。」

 「…お、おっかねえはなしだな。」

 「でも、なんで女神の塔に虹の鳥の羽根がいるのかな」
 
 「…きっと女神の塔で、なにかあったんだろうな。だからこそよけいに、女神の塔に辿り着くのはたいへんなはずだ」
 シルバー教授はなにげない口調で言っていたが、心のなかではかなりな不安を抱いていた。
 
 「女神の塔には、飛行艇ではいけないだろうな」
 
 「え、なんでですか?」
 
 「あの辺りの上空には結界がはってあるらしい。上空だけではない。あの島自体、結界の中にある。……船で尾の島に行って、そこから歩くのが、一番、確実か。かなり危険だが。…腕利きな船乗りが必要だな」
 
 シルバー教授は突然立ちあがると、せっせと机の引出しを引っ掻き回しだした。レッジとロイはシルバー教授の様子を呆然と見つめていた。
 
 「あった、あった。この船乗りをたずねるといい」
  シルバー教授は引っ張り出した名刺をレッジに手渡した。
 
 「彼はとても腕利きだよ。ともかく、紹介状を書くから、もっていきなさい」
 
 「ありがとうございます」
 
 「港町は妖精が多いかわりに、妖精を目の敵にする連中も多数いる。気をつけるんだ」
 
 「お父様、一ついいですか?」
 いままで入口で、ひたすら他の研究員の相手をしていたサラが振り向いて言った。

 「ん、なんだ?」

 「どうして二人とも手ぶらなのですか?」

 「え…あの…」
 レッジはフクロウレルから麻袋をもらい、使ったはいいが、物の出し方がわからないことを言った。
 
「あのじいさんは!!…すまないなそればっかりは私たちにもわからん。妖精道具専門の教授は出張中だしな。骨董屋なら分かるだろうが…」

 「骨董屋、そ〜だ、港町に骨董屋の知り合いがいるって言ってたべ。丘の店の。そん人に聞いてみよ」

 「うん、そ〜だね」

 「丘の店か。そこなら私も知っている。ところで、港町までの旅費はあるのかね?」
 返事ができないレッジとロイだった。

 結局、シルバー教授にお金を借りた。サラはレッジやロイとお別れするのが悲しいようだった。祠や学院での生活しか経験したことがないので年の近い友達は少ないのである。

サラとまたいつか会おうね、と約束したレッジとロイは学院を後にした。

 「サラ、私たちも女神のことについて情報を集めるとしよう」

 「そうですね、お父様」
 神聖な親子は今日も研究に戻っていったのであった。
 

 現在、レッジたちは港町行きの汽車に乗っている。借りたお金をいつか返さなきゃ、とレッジは自分に言い聞かせていた。言うまでもなくお金があったら、首都でお買い物をしていただろう。お金がなくて正解だったのかもしれない。

 港町は首都から汽車で二時間のところにある。二時間といっても険しい山をひとつ越えなくてはならない。トンネルなら楽々だが、歩きだとそうもいかない。なかなか、難しい地形の地にレッジたちは暮らしているのである。
 
 窓から見える景色もだんだん海のそば、という感じになってきていた。ところどころで小さな砂浜や松林が見えている。そして、とうとう窓いっぱいに海そのものが現れた。

 「海…これが海!!す、すごーい!青いっていうより、深緑?う〜ん、でも青い!!」
 
 レッジは思わず立ち上がって、窓の景色を見入った。村での生活しか知らない彼女にとっては、海はまったくのanother・world、なのである。

 「すごいね、ロイ?」

 「うん。まあ。でんも、俺、みたことあるわ」

 「海、いつ?」

 「ちっこい頃だ。父さんや母さんと一緒だったんよな」
 ロイは海に目を向けた。

 「ロイ、ずっと村にいたのかと思ってた」

 「俺もびっくりだ。ずっとじいちゃんと一緒だったかんな。でも、いろんなところで記憶が戻りよるよ」

 「ロイのご両親ってもう…」

 「んだ。いねえ。でも、いついなくなったんだろうな。いつまで、俺は一緒にいれてたんかな」
 ロイはふっと寂しそうな表情を見せた。

 「ロイ…」
 レッジは寂しそうなロイに何を言えばいいのか、わからなかった。ただ寂しそうなロイを見ているしかなかった。


(つづく)



ご挨拶

 優です!! だんだん話がドロドロしてまいります。ドロドロ童話〜(ちょっとイヤ?)

 私の頭もドロドロしそう。すでにペースト状にはなっているだろうと思われる、今日この頃です。(三章にしてこの状態か〜?)
 
 やっと、なんちゃって魔法?も登場しました〜。血で血を洗う?血魔法〜。痛そうです。でも、ちゃっちいです。ああ、もっとスケールの大きい魔法、使ってよ〜。でも、ま、『力』だし。

 そう、『力』だの、『女神』だの、『妖精』だの、キーワードっぽいのには『』(ニ重カッコ)がついてます。そうでもしないと分けわからん。たまに、なんちゃって『』(ニ重カッコ)もありますが、まあ、そんな気分になっただけでしょう。なんて便利なの、『』(ニ重カッコ)!!

 でも、使い方間違ってます。『』(ニ重カッコ)。中学生の私ってば、何やってんだか。
 『』(ニ重カッコ)の正式な使い方?私は知りませ〜〜〜〜ん。(無責任なわ・た・し)文法事典で調べてね。


登場人物

サラ(16)
 ロイのいとこ。たぶん、私の好きな、聖属性☆ 
 でも、血、流すのが仕事だから、どうなんでしょ?
可憐な少女、儚げな少女、らしいです。血の気が薄い。
そりゃ、毎回、血〜流していたらそうもなります。
 好きな食べ物はレバーとほうれん草。
鉄分とらないと修行はできない!!そうです。

シルバー教授(56)
 ダンディーなおじさま教授。中肉中背。茶色のスーツが似合う方?
 ロイのおじさん。ですが、血のつながりはありません。
(ロイのママと、サラのママが姉妹らしいです。)
 ラーネッドの恩師でもあるそうです。
 
 ちなみに、ラーネッドはレッジのお兄さんです。覚えていてくださいね。(濁点兄妹!)


 

ろう・ふぁみりあの勝手な戯言〜

 

かぎかっこ
・・・そいやオイラも『』の使い方なんて知らないし(知らないこと多すぎ)

それはさて置き。

魔法。
ちなみにオイラは大きな魔法よりも日用品のようないわゆる「便利な魔法」が好きだったり。
攻撃魔法見たいなドハデな魔法も良いですけどね。

ドロドロな童話〜
とゆーか外国の童話ってたいがいはドロドロしてるよーな。オイラの偏見かも(自爆)

さーて、さりげにラーネッドさんの登場が楽しみな使い魔。
次回はどんな話を読ませてくれるのか・・・待ち遠しいです〜


INDEX

→NEXT STORY
第四章 港町〜1〜