Rainbow Bird
優
第12章 白い町〜2〜
「だ、だれっ!?」
振り向いたレッジたちの前にいたのは、背の低い老婆。
サラのローブと違って、黒に近い灰色のローブを纏い、フードを被っている為表情は見ることができない。
手にはつえを持っている。つえの先には大きな赤い宝石が輝いていた。
しかし、その宝石の赤はブラッドルビーよりもずっと薄い色合いだった。
「ババです。私の祖母」
「ああ!!サラの『力』のお師匠さんだべか!!」
サラは『人』であるにもかかわらず、『力』を使える。ただそのためには自らの血を流さなくてはならない。
その方法を教えているのが、このババである。
「お主がロイか。ジジの孫、新たなる『ナイト』じゃな。そしてお主が・・・・・・」
ババはなんとも言えない表情をしてレッジを見つめた。フード皺に哀れむような、灰色の目がそこにはあった。
「レッジです」
「ついでにオレがジィンクでこっちがラレア・・・・って聞いてないなこりゃ」
ジィンクのいうとおり。ババはレッジを見つめ続けていた。
レッジがどうも居心地が悪いと感じはじめた頃になって、ようやく、ババはジィンクとラレアに目を向けた。
「妖精の『力』じゃな」
ぼそりとつぶやいて、再びレッジに目を向けた。
「安心せい。町の者は安全なところにおる」
「どこにいるんだべ?」
ロイはすかさず聞いた。
「ルストが引連れているバケモノが、この町を襲いかかって来た日には、皆さんもう、この地を放棄していましたから。この町、妖精学の研究が盛んなので、占い、予言の類いもよーく信じられるんです」
どうやら、この町の人々の『力』は強力だったようだ。
「どうせ、通り道だっただけじゃしな。町に残っておるのは、女神の塔の結界をやぶれんようなバケモノ。雑魚ばかりじゃ。それさえいなくなってしまえば、皆も、また戻ってこよう」
確かにバケモノは、もともとは黒革ジャン。雑魚である。
「でも、あのバケモノも、もとは『人』だったんですよ!」
「知っておる。なんのためにわしがここに残っておると思う?まったく」
レッジはよくわからないうちに、怒られてしまった。
「ま、この町のことは大丈夫じゃ、このわしもおるしな!」
ババは自信たっぷりに言い放った。
「で。女神の塔、だろ?」
「あ、はい」
「今あそこは危険だ。『古のもの』と、『新たなるもの』のバランスが崩れ始めた。その上ルストじゃ。――― いつかは起こるだろうと思っておったわ」
最後のほうは独り言のようだ。ババは低い声で述べている。
「いにしえ?あらたなる??」
「ああ、そうじゃ」
ババの話では、もう、だいぶ前からそれははじまっていたらしい。
「はじめは小さな亀裂にすぎなかった・・・・」
レッジらの故郷の島ではその影響は皆無だった。
しかし、『古のもの』と『新たなるもの』の『力』のバランスが崩れ、ところどころでその影響が出てきているらしい。
「じゃからな、女神の塔のまわりはとくに危険な状態になっておる。全てはあそこからはじまっているからな」
「ところで・・・・いにしえ?あらたなる?ってなんのことですか?」
レッジは慣れない敬語を使って尋ねた。
「古のレインボーバードと、新たなるレインボーバードの『力』じゃ」
「どういうこと!?」
ババはふっと笑みを浮かべたようだった。
「ロイ、お主ならわかるのではないかえ?」
わからない。
ロイは横に首を振る。
「記憶、ないのかの?」
「ああ、そうだべ・・・」
ロイはうつむく。砂漠の遺跡、あそこで一体何があったんだろう。
思い出せるのは母の面影、誰かの自爆・・・・・・・。
「そうか・・・・・。ルストの言うことは信じられなかったが。本当だったか」
ババはつぶやいた。
「わしやジジは知っている。『女神』のことを。彼女が押さえているものが、新たなるレインボーバードの『力』じゃ」
「え?!ジジのことも知ってるべか!?」
「ああ、わしもジジと一緒に旅をしたものじゃ。今のお前たちのように、リマを守りながら、な」
「リマ?」
レッジが聞き返すと、ババの目は途端に緩やかになった。
「リマインド。『女神』と呼ばれる前のあの子の名前じゃ。リマはの、今も『力』を押さえている。そうしなければ世界のバランスが崩れるらしいからな」
――― 『女神』が世界を支えている。
「ルストはそれが間違いだと言ってやまないのじゃが。だからこそ、あやつは女神の塔に攻撃をしかけておる。どこで研究したのか、『力』を使ってな。だから危険なのじゃ、あそこは。」
「でも、羽根を持っていかなきゃ!」
レッジは慌てた。止まっている暇はない。
「女神の塔へ行くのなら、ルストに気をつけるんじゃ。あとは・・・・暴走した『力』にもな。ところで、レッジよ、お主、羽根を何に使うか知っているのかえ?」
レッジ、ロイ、ラレア、ジィンクそしてサラ。一同の空気に一瞬、緊張が走る。
「兄が、羽根を何に使うかご存知なんですか?」
いつになく大人びた口調で、レッジは問い詰めた。
「だいたい、予想はついておる。わしの口からは言えないが、な」
沈黙が辺りを包む。
「それでも・・・・・女神の塔へは向かわなきゃ」
押さえきれない義務感がレッジにはある。義務というよりも宿命に近いのかもしれない。
「そうか。行くのか。女神の塔へ行くには、洞窟を越えねばなるまい」
「洞窟?海を越えられるの?」
「それは行ってみればわかることじゃ」
ババはふわりと浮かびあがった。浮かぶと言っても50CMほど。
「さ、行こうかの」
「ババも行くの?」
「わしはいかんよ。洞窟までは」
ババは飄々と答える。
「どういう・・・・・・」
――― オォオオオオゥウウウウ ―――
――― ゴヴウウウオオオオオオ ―――
「え・・・・・・・・。」
咆哮がドーム中にこだまする。
「バケモノ!?」
「あやつらは、妖精の『力』に飢えているからの。たいしたもんじゃよ、ルストは」
ババは杖を握る手に力を込めた。それに呼応するように杖の先についた宝石が輝き始める。
どうやら、ババの杖についた宝石は、ブラッドルビーと同じもののようである。ただ、レッジのブラッドルビーは、ババのものと比べると異様なほど濃い。
ババはその杖を振るって、祭壇に乗った黄金の聖杯を叩いた。
途端にからっぽだった器から、水が溢れ出した。
「ここに飛びこめ。サラ、案内してやるがよい」
「ババは?!」
レッジの言葉にババはニヤリと笑う。
「わしがあんな雑魚どもにやられると思うか?まあ、任しておけ。そのためにここに来たんじゃからな」
ババの姿になぜか、あの懐かしい骨董屋の姿が重なった瞬間だった。
レッジたちが無事、水に―― 実際は、特殊な液体だったのだが ――に吸い込まれたのを確認すると、ババはドームの扉を、念力で開いた。
バケモノがなだれ込んでくる。咆哮をあげて、残虐な光をその目に称えて。
獲物を探して、ぎらぎらとその目で辺りを見まわす。
――― グオオオオォ・・・!!―――
ババの存在に気がついた一匹が、まるで指すようにして、一同の注意を向ける。
「まったく。しょうがない雑魚どもじゃ」
ババは、杖を握りなおした。
ババは眠りを誘う『力』をバケモノに放つ。
一斉に眠りこけだした。
――― ゴオオオオ・・・・―――
――― グオオオオオオオオ・・・・―――
ドームに鼾がこだまする。
あまりにも簡単に効き過ぎである。
「やっぱり雑魚じゃの」
肩をすくめて、ババは懐からなにやら粉を取り出した。
「・・・・・ほれ、ちぃいいっとばかり痛いが、がまんせいよ」
そう呼びかけて、バケモノどもに薬をまいた。
この薬こそ、ババがここに来た理由。
研究者たちの努力の結晶。
今は雑魚を戻す薬しかできていない。
『力』を持ちすぎたもの――― 例えばそう、ドラゴン ―――を治す薬はまだない。
しかし、いつか必ず、他の被験者たちも治す薬ができるだろう。
レッジの知らないところで。
挨拶
・・・・・さ。
ややこしい。
ああ、ややこしい。ややこしい。
頭がこんがらがりそうであります。ちゅうか、こんがらがっております。
まとめますと・・・・
レンボーバードはいにしえにもいたし新たに生まれたものもいる・・・
と、こういうわけなんですね?たぶん。(作者やろ、わたし)
今回は、ババ様大活躍☆と、なっております。
外伝になりそうな人です。ババ様。(書かんやろうけど 爆)
あとは・・・『女神』のお名前。リマインドといいます。キーパーソン♪
ついでに。
レインボーバードも虹の鳥も同じものです。
同じものなんだけど・・・・統一しろよ自分(←一人ツッコミ。)
以上!
さて次回は〜洞窟をさくさく進みます。展開はやっ(汗)