truth&sincerity
トゥルース&スィンセラティ

 

第四拾九話『脳裏に焼きつく紅き炎』

 


  

 

 

 

「オメガッ!」

私の言葉に今にも"陛下"とやらに飛び掛ろうとしていた彼がぴたりと止まる。
私は抜き身の剣をもって彼に近づく。 彼は振り返ろうとはしなかった。
…私がこんなにも露に殺気を放っていると言うのに……気付いていない訳では…無いだろう?

「シグマ……」
「私は貴方を殺そうとしているのよ? 何故背を向ける!!」

私は半場ヒステリックに叫んだ。 目じりに"水"がたまっていくのが解る…剣を彼の背中に突きつけ、穴があくほど彼の後姿をにらんでやった。
間を置いて、予想に反した言葉が返ってきた。

「…言うまでも無いだろう」

あまりに優しいその口調に私はビクリとする。 それでも彼は振り返らない。

「死ぬのが…怖くないのか?」

思ったことがそのまま口に出てしまう。
すると彼はようやくこちらを振り向いた。 その顔は自信に満ちた微笑み。

「お前にオレは殺せない……そんな悲しい目の奴が、人を殺せる訳無いだろう?」

この戦場では似つかわしくないほどの優しい笑みで私の頭をぽんぽんと彼は叩いた。

「オレが、敵を取ってやるから…」

 

 

 

「シグマ様」

不意に後ろから声がした。

あたりの色が黄土色に変わり、時が止まっていた。私の剣はいつの間にか地面に落ちており、あたりの色と同じ黄土色になっていた

私は振り向く気にはなれなかった…何処も見る気が無い
何も…動く気にはなれない……

「シグマ様…」

ぐいっとからだが無理矢理動かされたように私は後ろを振り向いた。
そこに居たのは私だった
でもそれは私ではない…私の中のもう一人の私…

『月峰家』の私だ…

 

「貴女様は掟を犯した…決して他の国のものを村に入れてはならぬといったのに」
「…しかし!オメガは貴女だって許してくれたではないですか!」
「貴女様は掟を犯した…たくさんの人々を…貴方自身の力ではなくとも殺めてしまった」
「…っ!?」
「だから貴女様は犯した罪を償わなくてはなりません」
「………だから私は仇を取ろうとした!」
「罪は殺めによって償うものでは有りません!!」

 

 

 

「本当の償いとは死ではなく生き続けること…それを…貴女は一番多く学んでいたのでしょう?」
「………………私は…どうすれば…」
「その答えは永遠に時の進まぬ場所でお考え下さい……しかし私は貴女に答えを求めません。貴方自身が納得できる答えを探し出してください。

貴女には有り余るほどの時間がこれからやってくるのですから…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カシャンッ

 

時が動き出す。
しかしそこには私の姿は無く、刀だけがそこに残った。

「…シグマ?」

彼は私の名を呼ぶ。私はあなたの名を呼ぶことは出来ない…私はあなたを見る事ができる。だけどあなたには私を見つける事は出来ない。

「…弓兵!オメガをやれ!!」

先ほどより多い矢の雨がオメガに降り注ぐ。
しかしオメガは雨を避ける事はしなかった。雨は地面に紅い痕を残す。
オメガはそんな事に見向きもせずただ刀を見つめて立ちすくむ。

私はそんな彼を見ているだけ。私は大丈夫…そう言いたい。
でも云えない……

「オメガ、貴様は知っているか?彼女の行った場所は永遠の牢獄。エターナがとても大きな罪を犯したときにたどり着く時の流れぬ場所だ。彼女はこれから永遠にその牢獄の中で生き続ける……だが私たちにとっていなくなった彼女は死んだも同然だ…」

王は刀をひろった。
そのときオメガの体が大きく動いた。

「……その剣に…触れるな!!」

目に見えぬほどの速さで王に切りかかった。

キィンっ!!

黒い剣と虹の剣が交わる。

「死んだ女をまだ想い続けるのか?お前はそんなにバカな奴ではなかったはずだぞ…オメガ=インセクト=ウィシュラート!」
「…キサマが全部悪いのではないか!貴様が…キサマが!!」
「誤解をしているようだが…最初の出会いは私が仕組んだ訳ではないぞ。私はあくまでこの計画を思いついたのはオメガが『不思議な力を持つ女性と会った』のを知ってからだからな」
「ッ!?」
「普通不思議な能力と聞いてエターナを思い出さないお前が悪い…ましてやこの光闇戦争の真っ只中でな……そう、悪いのは皆あなただオメガ……そうだ…お前が悪いのだ!!」

 

グラッ…

その言葉を聞いた瞬間からオメガは王に押された。
体中に力が抜けたようだった…このままでは…っっ!!

 

「死ぬのはお前だ!オメガっ!!」

 

ドスッ!!

 

矢でうまれた赤い痕とは比べ物にならないほどのたくさんの赤が地を染める。
私は彼の身体を掴もうと手を伸ばす。
オメガも何かを掴むように手を伸ばすが…

双方何もつかめず…貴方は地面に叩きつけられた

 

いやぁぁ!!

 

その叫びすらも、時の止まった場所では意味をなさなかった。

 

(オレは…せっかく見つけた小さな幸せさえも自分の手で壊してしまったのか…)

「ふはははははっ!!これで望みの光も手に入った!これに四神の力を足せばさらに多くの力を手に入れれる!四国統一とて夢ではない!!」

(この命、この力…何のためにもって生まれたのだろう…力は皆を守る為に使えといわれていたのに…まるで逆の事をしている……オレは矛盾してるな…)

 

(ならせめて…もしこの剣が本当に"望みの光"なのだったら……彼女を…この世に…)

 

最後の力を振り絞って…彼は自分の剣で自らを貫いた。
そのとき発せられた光に私や王達が目を瞑った。

 

 

光がなくなったとき。私はオメガの横にいた。

「オメガ…」

 

オメガに話す事ができる

 

オメガの側にいる事ができる

 

オメガに触れることができる

 

 

 

だけど…オメガはもうここには居ない

 

 

なのになんで私はここにいるの?

 

 

私は彼の剣を握り締め。いつの間にか彼の頬に落ちていた自分の涙をふき取った。
目の前にいるのは間違いなく自分の敵。

私はオメガの剣を握り締めた。
まだ彼のぬくもりが残っていた…刀身は主の死を悲しむように紅い涙を流した。

 

自分が何故あそこにいたのか…そんな理由などもう頭から消えていた。
さっき聞いたばっかりなのに…
その代わり自分の納得できる答えは出来ていた

 

目の前にいるこの男を殺せ…と

 

 

「またあなたか…自分の剣の切れ味に悦びながら死ぬがいい!」

目の前の男はまだ何か言っている…

 

私には…そんな声は…聞こえない!!

 

「ああぁぁぁああぁぁぁ!!!!」

 

コレは音?解らない
耳に突き刺すような大きな音が周りを支配する。

交わる剣からは今まで診たことの無い気分の悪くなる光があふれ出ていた。

 

 

何でだろう…さっきまで村人達の事で頭が支配されていたのに…
いまはオメガのことしか頭に無い

何で…私のためなんかにまだ助かるかもしれない命を投げ出したの?
私は本当に罪な者…

だから貴方に対する償いを…!!

 

 

次の瞬間。光が弾けた

 

 

 

 

 

第四拾九話 END


作者の後書き

 

かなり繋ぎ悪いところから始まっているかと…
話の長さから考えて分けるにはここが一番良かったんですが…駄目駄目ですね
3話一気に書くのは話のつながりは良いけど分け方が大変
本日の教訓です。でもこの教訓何処に生かすんだろうか…;

短いですか?短いですよね?でもまだ長いほうなんですよ?
って誰に疑問してるんだか…

前回に引き続きハード。それにこの話全部過去じゃん;
皆さん荒れてます。私自身も荒れてます。
この話はどうやってオメガの死まで持っていこうかかなり悩まされました…その割にはキーボード打つスピード早かったですが…;

って言うか本当にこんなの書いたの私か?
「らいぞ」(謎)でかなりダークってましたがこっちも負けてませんね。
ん?木賊ってダーク書くの得意なのか?
う〜ん…シリアスギャグでハッピィなのが読むのは好きなんだけど…書くのと読むのは違いますね。

さて、え!?もう次回で最終!?
あぁ…終わった気がしない…げふっ


INDEX

NEXT STORY