truth&sincerity
トゥルース&スィンセラティ
第四拾八話『明らかになる事実』
「本当にお母さん…なの?」
声は聞こえるが姿は見えなかった。それだけに不安で、そして寂しかった。12年間探しつづけた…求めつづけた私のお母さん。姿なんて見てももう覚えてないから…自覚が無いかもしれないけど…それでも見たかった。私を産んでくれたお母さん。誰よりも尊敬するお母さん
「声だけじゃ…解らないよ…姿を見せてよお母さん!」
「………」
お母さんは黙ってしまった。長い…長い沈黙。姿を見られるのがそんなに嫌なのでしょうか?姿を見られたくないと言う事は…醜い姿になってしまったって事?でも、それでもいい、だから…
「お母さん!」
「解ったわ…後悔、しないわね?」
お母さんがどんな姿でも…私は後悔なんてしない。私は、ずっと貴女の事を求めていたから…貴女がそんな姿であろうと…私には…関係ないもの
次の瞬間。あたりが光に包まれた。さっきとは逆で明るすぎて眩しい。白くて何も無い世界。でも…さっきのような浮遊感は無い。それはこの地に光が射したからでしょうか?それとも慣れてしまったのでしょうか?……今の私には関係なかった。目の前の人物だけが…全てだったから
黒くて長い髪。白い…少し水色がかった見たことの無い服。滲んだ色で、偶然出来たような花の模様が裾の方に大きくついていた。
…その服は、何かに似ていた。そう…
「ぜー…た?」
「隠していてごめんね…私の…貴女の母の名前はシグマ=タグフォード。昔の名前は…シグマ=エタネテス=ツキミネ。
闇の民の名前は……『月峰 時雨真
「それは本当なのか!父さん!?…母さんがエターナって!」
「あぁ…彼女がインスの童話に出てきた少女。唯一最期の闇を仕える存在だった…」
「それは…父さんは知ってたのか!?…何で何も言ってくれなかったんだよ!」
晴れた闇。真っ白の世界にオレと父さんは居た。急に闇が光に変わったのは、母さんのせいだと父さんは言った。…そして、この世界は500年もの間閉ざされていた時の流れぬ場所であることも…オレは聞いてしまった。
母さんは最後の最期の闇後継者だったらしい…そして、何かの拍子にここに閉じ込められ、500年もの時を過ごしていたらしい…この"何か"と言うのは父さんも聞いていない。母さんのみの知る秘密なのだ…と
特別のものでないと扱えぬ2本の剣。
望みの光
最期の闇
この剣の後継は500年…いや、もっと昔から続いていたらしい。
「父さんは…食炎後の人間なのに…なんでこんな事を知っているんだ?食炎はエターナでなければ記憶を消されてるはずなのに…」
「望みの光は父さんの家に代々伝わった宝刀だ、由来を知らないわけが無いだろ」
「じゃぁ…最期の闇は?」
「全ては…母さんから聞いたんだ」
「母さんが…エターナ…?」
「そう。私がここに"封印"されて丁度500年立った22年前。私はガンマ=タグフォードに会ったの。貴女のお父さんよ」
私は目を見開き、まだ信じられないと言った表情でお母さんを見た。母さんはとても優しい笑顔で私を見つめていてくれる……でも、黒い髪と黒い瞳はゼータのことを思わせて…なんか変な感じがする。母さんはゼータにとても似ていた…歳の関係から行くと母さんがゼータに似ているんだけどね…
「…?ふういん?」
「そう。私は私達の"掟"を破ってしまったの…エターナの掟は絶対なの。だから私は何も無い、真っ暗で…時が進まない、永遠の闇の世界に閉じ込められてしまったの」
「で、でも…一回はそこから出れたんでしょ!!なんで帰ってきたの!私たちを置いてまで!!」
「……私は取り返しのつかないことをしてしまったのよ…」
「え?」
いままで…やさしい顔をしていたお母さんの表情が一気に曇った
「貴女にも話さなきゃいけないのかしら…500年前の事を…」
「……できれば…私も真実が知りたいわ」
「そうね…貴女にも知る権利はあるもの……ね。解ったわ。全部話してあげる」
光と闇の戦争がはじまったのはいつの日だっただろうか
ずっと…ずっと昔の話
私達の村は一番戦争が来るのが遅くて…
それは私の村が一番見つかり難い場所にあったからかもしれないけれど
その日は…確か使い魔の鳥が何処かに消えてしまって探しに行ってた
その頃は光と闇の人々は何のかかわりも無く
御互い"見て見ぬフリ"の関係だったわ
だから、村の外に出たからと言って何も言われなかったのだけれども
その日はちょっと運が悪かったのよね
私は光の民の中で一番の力を持つ者に会ってしまったの
それが…全ての始まりだったのよね
「風芭
深い森の中を当ても無く彷徨いつづける。ただ一匹の鳥を探す為に。でもそれは今日に限った事ではなくていつものことだった。だからこそこうしていられるのだろう
「仕方ないな…今日もアレを使うか」
そう言って私はその辺にある適当な木に手を当てて呟く。
「さて、今日も迷惑かけるな…風芭何処にいるか知ってるか?」
"ここに誰か来るよ…"
「…?村の者じゃないのか?」
"チガウ…優しい光を持った人"
「優しい…"光"?」
ガサッ
草を踏む音が聞こえた。私は木に添えていた左手を反射的に腰にさしてあった剣に触れる。このあたりでこう言う音が聞こえると言う事=獣が潜んでいると言うのが日常なのだが…さっきの木の言葉からするとどうも相手は人間らしい。しかも村の人間で無いとすると外敵である可能性も高い。私は息を潜めて姿勢を低くした。
『やられる前にやれ』…これが私のもっとうだ
がささッ!!
すぐ近くの草が揺れた。相手はそこにいる。私が足を踏ん張り、地を駆け出そうとしたその瞬間だった。
バサッ!!
「うわっ!!?」
目の前に大きな白い鳥が現れ、その純白羽根で私の顔を覆った。
「か、風芭!!前が見えん!はよはなれんか!」
バサッバサッ!!
大きな羽根が羽ばたき、その身体は一度宙を舞ったかと思うと急降下をして私の肩に止まった。この大きな鳥が私の使い魔である風芭だった。さっきまで音を立てていたのはこいつだったのだろうか?…いや違う。音を立てていた張本人はちゃんとそこに居たのだ。
「キサマ…誰だ…敵陣の者か!?」
「……。」
いきなり現れたそいつは意味不明なことを言って変な服を着ていた。今考えればその服は樹の大陸の旅人用の服だったのだが、私はそのとき自分の村の者達の着ている服しかしらなかったので、そのときのことは良く覚えている
空色の髪。真っ赤な瞳。頭につけられた模様付のバンダナ。血で染まってしまった赤と緑の麻の服。紺色のマントに……七色に輝く刃を持つ剣。
24〜25ぐらいの歳だろうか?
と、話を少し戻して…そう、彼は怪我をしていたのだった。
「怪我をしているではないか…どれ、診せてみろ」
「傷口に毒でも塗るつもりか?」
「何を言っておる。何故私が赤の他人に毒なんぞ使わねばならん」
彼は意味不明なことばかりを言っていた。私を誰かと間違えているのだろうか?
「殺るならとっとと殺れ。そのほうが楽だ」
「さっきからワケの解らん事ばかりを…お前は私に何の恨みがある。」
「何の恨みって……キサマ、本当に敵陣のものではないのか?」
「敵陣とはなんだ?私はシグマ。向こうにある村に住んでおる」
「なんと言う村だ?」
「蛍の都。」
「………??初めて聞く名だな…って痛ッ!?」
彼は右肩を押さえて蹲った。どうやらそこが傷口らしい。私は「そらみろ」と鼻で笑うとしゃがんで彼の肩に手を当てた。
「“生命を司る水ニンフよ、今こそ真の力を見せ、その力我に預けたり”…ケアー」
私の手から水が生まれ、それが彼の肩にかかって傷を癒してゆく。
「精霊術師か?」
「まぁ、そんなものだな。そう言えばお前、名をなんと言う?」
「?…シグマ、オレの名前を知らないのか?」
「初対面なのに知るわけが無いだろう」
彼はそのとき本当に不思議そうな顔をした。しかし、その理由は私にはわからなかった。
「オレはオメガ…『オメガ=インセクト=ウィシュラート』」
「変わった名前だな…」
「お前こそ。」
会話を交わした後、二人は笑った。特に理由は無いけれど…無性に可笑しくなってきて…
初めは意味不明で変わった人だと思ったけど…オメガは良い人だった。
木たちの言っていた『優しい』ってこう言う意味だったんだな…
「あ!そうだ…オレの仲間を知らないか!オレと同じ服をした奴なんだが…」
「いいえ。貴方以外はみていない」
「…そうか」
「っと…ちょっと待っておれ」
私はそう言って先ほどのように木の幹に手を置いた。そして開いているほうの手でオメガの手を掴んだ。
そのとき、私の体から光が発せられ木の言葉が頭の中に流れ込んできた。
「こやつ仲間を知らぬか?」
"…生きている人は居ないよ…一人もね"
「!?」
「そうか…有り難うな」
私が手を離した。
しばらく呆然としていたオメガだが、やがて驚きの顔で私に問う。
「い、今のはなんだ!」
「…?術とは言えぬほどの初歩的な術だが…お前は使えぬのか?」
「は、初めてみるぞ!?」
変わった奴だな…
私は正直そう思った。だけど…
だけどそんな彼が私には珍しく、興味のある存在だった…何故か惹かれるものがあった…だから、オメガを家の村に招待する事にした。
この人は優しい人。ちょっとぐらい世間離れしていても皆も解ってくれるだろうと…
オメガは家で手当てを施すとこの村から去っていった
だが私は言った。また来い…と また会いたかったから
数日後
オメガはまたやってきた。でも一人ではなかった
たくさんの人を連れて
オメガと同じような服装をした者が大半を占めていたが、所々に明らかに豪華な物を身に付けた者が居た。
「陛下。ここが私の申していた村です」
その中でも特に豪華な者に、オメガは敬礼をした。
「ここが異質な魔法を使うという民族の村だな…だれか、この村の長を呼んでくれ」
そう、彼は異国の王…バーリィの国王だった。
しかし、当然のことながら私たちはその事を知らない…
だって彼らと私たちは全く別の民族なのだから
私は村の人々をかき分けてオメガとバーリィ王の下まで出た。
そして"村娘"ではなく"役人"の顔でこういった。
「私が長…月峰家の者ですが…あなた方は一体何者でしょうか?」
、と
そのときオメガの表情が…先ほどまで無表情だった彼の顔が密かに変わった気がした。
が、そんな彼を置いて話し掛けてきたのは王の方だった。
「ほほう…貴女がここの長なのですか…私は隣りの国より参りましたバーリィの王を勤めているものだ……先刻は我らが兵を助けていただき…お礼をしに参りました」
「それはご丁寧にどうも」
私の言葉はあくまで冷静で、先日オメガと話していた可愛さは何処にも無かった。
「時に…貴女方には不思議な力があると聞いた。それを我ら見せていただけないでしょうか?」
「それは何故ですか?」
「私たちは貴女方の文化にとても興味がある…少し見せてもらうだけでいい…」
オメガが言ったのだろうか?ちらりとオメガのほうを見ても彼は俯いたまま顔を上げようとしない。
「しかし、私たちはこの力を物見の為に使う訳には行きません。」
「どうしてもですか?」
「はい。どうしてもです」
「ならば仕方有りませんね…大人しく彼らせて頂きます」
「それが良いでしょう…何度いわれても力を使う訳には行きませんから」
王達は案外あっさりと帰っていった。
それは私たちにとっては都合のいいことなのだけれども…
オメガは何故私達のところにあの王を連れてきたのでしょうか?
…もしやオメガは……いいえ、私は彼を信じる事にした。
彼は…私達の能力を見世物にしたいなどとは思ってないでしょうから
その夜のことでした…
私がいつものように夜警をしているとオメガが現れたのです。
「帰ったのじゃなかったの!?」
「いや、夜に歩くのは危険だからとここらでキャンプをしているだけだ…明日には帰る」
「そう…」
「すまない…こんな事になってしまって…」
「ううん。貴方は悪気があってしたことじゃないのでしょう?」
「悪気があっても無くても…どちらにせよシグマたちを嫌な気持ちにさせてしまった…」
「貴方のせいじゃないわ……それよりも、貴方はどうしてここにいるの?」
「あ、ああ…実は夜警をしていたら見方とはぐれちまってな…」
「またなの?」
私はクスリと笑うとまた木に手をつけて精神を集中させた
"怖いよ、怖いよ…!とても大きな邪悪なものがこっちに来る!"
"とても邪悪なものがこっちを見ている!"
"大事なものを奪おうとしているっ!"
"…駄目…駄目だよ…いやだ!逃げてェ!!"
一瞬何が起こったのかは解らなかった
目の前が真っ赤で……悲鳴が聞こえて……逃げて…?
「やはりここはエターナの領土だったか!でかしたぞオメガ!!」
後ろから聞こえてきたのは先ほどの王の声だった。
そしてそのもっと後ろからは燃え盛る炎の音とたくさんの悲鳴。
「おめ…が…?」
「…う、嘘だっ!!陛下!貴方は一体何をっ!?!?」
悲鳴は村の人たちの声…たくさんの黒い兵士が村の人たちを捕らえ、必死に逃げている村人達の声。
炎は私達の村を飲み込んでいる…
「何を怒こっているのだ?エターナは手に入れれたのだぞ?お前のおかげでだ」
「そんな事は聞いていない!帰るのではなかったのですか!?」
「あぁ、かえるさ…エターナの力を手に入れてな! お前は良く働いてくれた…お前をわざとこの付近で迷うように仕向け、そしてエターナの力を確認したところで我々が動く…敵を欺く時はまず味方からとはこのことだな……」
「陛下あぁぁぁ!!キサマ!力のためなら人が…犠牲になっても良いとでも言うのか!?」
「あぁそうだ。オメガ…お前は良く働いてくれた、そしてこれからも…その力。私の為に…」
「ふざけるなっ!!」
「ただ一つの欠点は…お前が真面目すぎた事だな…」
ヒュンッ!
何かが私の頬を掠った。
…弓矢だった。よく見ると無数の矢が雨の如くこちらに降り注いでいた
しかしその雨は私の目の前で止まる。いや、折れる。…斬れる
きらりと何かが反射した光が私の目に映った。
「そうか…次はオレを殺すのか…殺れるものなら殺ってみろ…っ!!
インスの聖剣士…望みの光のオメガをな!!」
光は彼の剣によるものだった。
虹色に光る刀身…それがとても人を殺める為に作られたものとは到底思えなかった。
まさに"聖剣"
まるで彼の住んだ心を現したような剣だった
「まさか光の民の最強で最高権力者インスの長が光の民を裏切るとはな…民たちはさぞ悲しむだろうに…」
「キサマのような者が王を務めるから国同士が荒れるのだ!!」
彼は次から次へと振ってくる矢の雨をなぎ払い、王との距離を縮めようとした
「…………皆が…お前の…せいで…っ!!」
私は腰にさしてあった刀を一気に引き抜いた!
黒くて毒々しい色の光…があたりを支配する
それを見た王は言った
「おぉ!それが伝説の望みの光の力に値する闇の名刀『最期の闇』!!まわりの戦場ではそれを扱うものがまだでないと聞いていたが…まさかこんな小さな村にあったとは!」
「………死ねェェェーーー!!!」
第四拾八話 END
作者の後書き
過去話です。これから約2話分ぐらい続きます。
思いのほか長くなってビックリ(ヲイ)
ここから先書くの怖いんです。でも書きました。
この後書き書いている地点でt&s残すところ終章だけです。本編終わりました。
いつぞやエータ君に語りかけていたオメガさんの正体が解りましたね。
それにしても過去の話かなり変わってます。ホントはもっと出会いから食炎の間が開くはずだったんですが…手が勝手に動いてハードな話が更にハードになりました
実はこれ書くのに一ヶ月くらいかかってます…;
間開けちゃいました…でもかけなかったんですよぅ(涙)
私の頭に浮かんだ言葉をそのまま書いたんでかなりざっちぃ話になってるかと思われます…
話の筋とおってるんだろうか…?読み返すの怖い;