truth&sincerity
トゥルース&スィンセラティ

 

第四拾六話『涙と笑顔は紙一重』

 


  

 

次の目的地。オレたちの最後の希望の場所だ。
ここにいなかったら選択は二択…また一から探しなおす……もしくは諦める。

それほど大事な場所だった…

 

「そういえば次は何処に行くの?…ほら!私寝てたから」
「あぁ、そう言えばシータには言っていなかったね」
「アティック、マゼス、ソーディス、バーリィ。父さんと母さんは何処にもいなかった。と、すればシータ。次は何処に行ったと思う?」
「………この大陸には無い…って別の大陸って事!?」
「いや、そこまで規模は大きくならねぇって。ここの大陸で、国には無い。つまり、何処の国にも属さない場所」

「…………国境?」
「そうだ。四つの国を繋ぎ合わせる中心の場所、そしてそれは誰も行った事が無い場所でもある。」

 

四つの国の中心。場所の名前なんて無論ついていない。

何故そんな肝心なところが誰もいったことのない場所かというと…そこに行った人々はみなそこに行った記憶を無くして帰ってきたからだ。四国は今まで何人もの兵をそこに向かわせたが…誰一人としてその場の謎を解いて来た者はいなかった。

今までの場所とは違う…。とても危険な場所。だからあいつは連れてこなかったんだ。あいつだけは危険な目にあわせたくなかったから…

 

「兄さん?」

 

いつの間にかオレの足は止まっていた。シータの声で正気に戻ったオレは再び動き出す。

真剣に考え事をしていたのか……
今更ながら気がついた。考え事といえばもう一つ、もちろん"インス"のこと。そしてまだみんなに教えていない夢に出てきたオメガのこと。

彼は誰だったのだろうか…名前は聞き出せたものの"何者か"までは聞き出せなかった。声とシルエットしか知らないため調べ様が無いが…何故かとても気になる存在だった。なにより夢で終わらせる存在ではないとオレの第六感がそう伝える。

いや、第六感といってもただの"カン"だけどな
そうだな、他に考え事は無かったかな?そんな無理に考え込む事でもないけど………あ。

一番大事なことを忘れてたな
ゼータのこと。

 

「ゼータってさ…7歳より前の事は記憶に無いんだよな?」
「ま、まあね。7歳ってのは正確じゃないんだけど…なんせ見た目でプシーさんが勝手に決め込んだから…」
「なるほど…で、今も記憶は無いのか?」
「あったら苦労しないよ。…でももしオレがエターナだったら…俺は500年も生きていることになる……それなら記憶が無くても納得行くけどね」
「そりゃそうだな。いや、待てよ………」

 

そう言えばパイの子孫は食炎伝説の時のこと覚えてた訳なんだよな…それってエターナの力が通用しなかった伝々で…ということはゼータも覚えているのでは?
それ以前になんで"純"のエターナが?…………あー…わかんなくなってきた

 

「エータどうしたんだい?急に頭抱え込んだりして…」
「いや、ただ考え事してたら整理つかなくなっただけだ」

 

普段しないことをするからか…

 

「ん?…聞くの忘れてたけどパイってどうなったの?」
「あぁ、シータの出した魔法で気絶したよ。最も命に別状は無いけどね」
「そう言えば…あんだけグッサリ行ってたのに命に別状は無いってのもスゲーよなぁ。シータ、アレ何の魔法だったんだ?」
「えぇ!?…私夢中だったから覚えてないの…ごめんなさい」
「い、いや!あやまることはねぇんだ!」
「…………。」

あれ?ゼータが顔を伏せてる…

「ゼータ?」
「わっ!?」

あらかさま驚くゼータ。いや、むしろこっちのほうが驚いたぞ。

「な、なんだい?」
「そりゃこっちの台詞だ。なんか考えてんなぁと思って声かけたら大声出して驚くし…」
「兄さんも考え事してるって解ってるんだったら気を利かせて放って置いてあげれば良かったのに…」
「いやいや、ヤケに気になってな…」

オレはとりあえず誤魔化すように笑って…右手で頭をかいた。そういやそうだよな、別にゼータが何考え様がオレの知ったこっちゃぁねぇし……

「は、はは…心配させてごめん。何でもないから」
「何かあったらいえよ?」
「………有り難う」

ゼータが申し訳なさそうに笑った。こう言う笑いされると…嬉しいんだか申し訳ないんだか解らないんだよな……まぁ、ゼータの性格を考えるとこれで普通なんだが…ねぇ。

バーリィに来る前ほどではないが…ゼータは考え事をする時間が多い。それはオレもシータも知っていた。本人がそれに気付いてるかは知らんが…
一人で考え込むのもいいが…たまにはオレらにも話してもらいたいものだな。

ま、深入りするのも悪いけど。

 

「シータ。あの時使った魔法の詠唱。いつもとは大きく違ってたけど…それも覚えてない?」
「う〜ん…確かにあの時は精霊魔法を使った時のものとはちょっと違うかなって思ったけど……どんな詠唱までは覚えてないわね…ごめんなさい…」
「そう、なら良いんだけどね……」

そう言ってゼータは俯いた。また考え事でもはじめようというのだろうか?

「何か気になることでもあるのゼータ?」
「ううん。なんでもないさ」

 

決して「なんでもない」事は無い。それはハッキリわかったが…それを問う事はオレには許されないのだと…そう思った。

 

 

森の中にもちゃんとした道はある。だけどそれはきっとここに住んでいる人間にしかわからないでしょう…もし他の大陸から人が来たものならばきっと『文明の栄えていない国』だと思うででしょうが…そうでもないのです。それがここの人間のルールなのだから

深い森の中、その俗に『ここに住んでいる人間』の言う『獣道』

がさっ

と音が聞こえたように思えました。はじめのうちはそれこそ"思った"だけで『無私っ!もとい無私よ!!』の一言ですんだのでしょうが…そうもいかないらしいです。音は段々大きく…それは何かが近づいてきている事を知らせた

常識でしょう

 

「そろそろか…?」
「そのようだな…」

何がくるかなんて予想はついています。どうせまたこの森に住む魔物でしょう。森族はここにはいません。だって誰も近づけない国境ですから……ね。私たちは姿勢を少し低めにして敵を待ちました

しかし、予想は大きく外れました

 

『まさか、本当に来るとはね…怖気付いたのかと思ったのに…』
「え?」

声。でした…しかも女の人の。こんな森の奥に女性の声…ありえない話でした。しかし現にここにいる…もしかしたら女の声をした男の人かもしくは魔物!
なんてのも思いましたが…それはそれでどうしようもなく怖いんで却下

だとか考えているうちに声の主は現れました

『こなければ良かったのに…ね』
「……あ、あんたは」

黒に近い灰色の髪。金色の目。顔はまさしくあの人でした。でもいつもと違うのは金色の糸の髪止めと『黄色』がメインカラーの服

彼女は……

「セッド!何でこんな所に…」
『セッド…そうだな、今はそう呼ばれてたっけな…』
「"そう呼ばれてた"って……?」

『私は"黄龍"。この地を護る者……たとえ貴方がインスだろうがなんだろうが、"光の者"をここに通すワケには行かないッ!』

 

―黄龍!?―

 

「な、何言ってるんだ!?セッド!!護る者って…」
「セ…セアディアルド=スカウリング=ラッシュ…ッ」
『そ、シータには教えたな…光の民としての私の名前…』
「その名前は創造主の名前じゃねぇか!!……………ん?光の民"として"??」

『そう言う事。闇の民としての私の名が"黄龍"。私は闇の民の神…だ』

「じゃ、じゃぁ…ここは…」
『エターナの故郷。そして永遠に閉ざされるべき場所…だから私はここに誰も近づけさせない…そう、500年前に誓ったから…な』

 

そこまで言って彼女は自分のエモノであるあの大鎌を構える。マゼスにいた頃は暗殺者らしく黒い服を着ていたためその姿を"死神"と思わせたが…鎌を持った黄色の服を来た神
それは何に例えていいのか…?いや、例えられなかった

 

息苦しいほどの殺気。セッドと戦った時もそうだったが…彼女に勝つことはまず無理だろう。もちろん今のオレでもだ。だけどここで諦める訳には行かない…

父さんと母さんに会う為にっ!!

 

「エータっ!?」

 

先に飛び掛ったのはオレだった。何も考えずにその行動に出たわけではなかった。だが、"セッド"相手に先手を取ろうが取られようが関係ないと思った。
どちらにせよ…オレたちには不利だ

 

『よく解ってるじゃないか』

オレの心を読んだかのようにセッドは言った。彼女は軽々しくオレの剣を鎌で弾くと素早く、そして茶化すようにオレの額に人差し指を当てた。刹那

 

『吹き飛べ』

オレの体が宙を舞った。前にもこんな事があった…そう、パイだ。彼女は彼を同じ事をした……とすると…これはエターナの技なのか?
それほど考える時間も無く、地に足を、手をついた。一度食らった事があるだけに体制はすぐに立て直せた。ゼータが心配しているようにこっちを見ているが…オレは"大丈夫だ"という合図を送った。

それにはもう一つの合図もこめられていたようだ。今度はゼータが"自分の剣"で彼女に向かった。しかし二人とも馬鹿ではない。オレと同じ行動は二度としないだろう

 

『キサマは……』

攻撃に移ろうとしたセッドの動きが一瞬とまった。その理由は…なんとなくわかった。"ゼータのこと"だろう。しかし止まったのはほんの一瞬。ゼータが攻撃を加える寸前には既に元の動きを取り戻しており、さほど差し支えは無かった。

「"聖域を司る風・・・ウィントゥよ・・・汝偽りを捨て・・・我に力を与えよ"!!ウィンダードッ!」

 

やや後ろのほうにいたシータが魔法を放った。その"風"はオレの横を通り過ぎてセッドに向かった。風と同じようにゼータも向かう。

『チッ!クソッ風か!!』

二つも同時には出来ないと言う事か…。舌打ちをしたセッドは鎌で思いっきり地面を刺したかと思うと屈みこんだ。

次の瞬間、地面が、土が、セッドを庇うようにして盛り上がり、ゼータの攻撃を防いだが風の刃はそれを切り刻んだ。

土は風に弱いと言う事か…?壁が破られたセッドは無防備だった。ゼータはそれを見逃す分けなかったゼータは一度剣を鞘に収め、強く踏み込んで…まるで風のように突き抜けた。

 

『ッ!?居合抜きだと!?』

セッドの利き腕に紅い大きな筋が出来ていた。そこから流れてくるのは言うまでも無く血。と言う事はもちろんゼータのほうの剣にも血がついている。

『………。』
「もう戦えない…だろ?俺の技が間剣術だけと思ったら大間違いだ」

ゼータは茶化しているのか、本気で言っているのか和からない口調で問う。かりに戦えたとしても、全力は出せないだろう。

 

『何故…お前達はこの先へ進もうとする?』

 

今更…何を言う。馬鹿げた質問だったが…セッドの目は本気だった。
だから…オレも本気で答えよう

 

「両親に会う為だよ」

『生きて帰れなくても……か?』

「ああ。」

『辛い事になっても…か?』

「…??あぁ。」

 

最後の質問は、何故かセッドの声の調があらかさま下がった様だった。それが疑問だったが…とりあえず返事をする事にした。

セッドはまだ諦めきれないように…目線を泳がせて考えていたが、やがて顔を上げて左手に持った鎌をトンッと地面を叩いた。

 

『行け』

「へ?」
『私の気が変わる前に行けといってるんだ』
「で、でもだな……」
『この先の湖の前にやしろがある……そこに行けば全てがわかるだろう』

「あ、あぁ!…有り難うなセッド!」
『黄龍だ』

 

オレ達は黄龍が顔を伏せているうちにその場を立ち去った。振り返ってはいけない……何故かそう思いながら。

 

「あっさり片付いちゃったわね。さすがはお二人さん♪」
「そんなわけ無いだろ…アイツは…もともと戦う気なんか無かったんだ」

「え?」

「あんな悲しい目をしたセッドさん……もしかしたら玄武の時以上かもしれないね」
「え?え?」
「シータ…まさか気付いてなかったのか!?」
「エ…エヘヘ……」

「「呆れた。」」

 

 

 

 

 

 

私は…迷っていたのか?決して通してはいけなかったのに…"得にあの三人は"

ごめん…な。シグマ、ガンマ……二人の約束破っちゃったな……

でも…私、あの三人…止めれなかった…

あんなに優しい子達を…悲しい目に合わせてしまう…なのに止めれなかった

どうして?どうして…どうしてなんだ………

 

真実を知るだけであの子達は悲しまなければいけない…どうして…なんでだよ

あの子達は何もしてないし、シグマやガンマも…何も…悪い事なんて……

 

クソッ…くそぉ………

 

 

 

『黄龍』として涙を流したのは何百年ぶりだっただろう……

シグマ、ガンマ、エータ、シータ……そしてゼータ

もし貴方達が悲しんで、誰かを恨みたくなったら私を恨め…

それが…私にできる唯一の償いだから…な

 

 

 

 

 

 

第四拾六話 END


作者の後書き

 

いきなりハード?そうでもない?そして久し振りのグリーンカラーv いや、最後のは関係ないですが…
いやー意味深、意味深。とくにおーりゅーさん。意味深な台詞吐き過ぎ。そして戦闘終わんの早すぎ…と言うか本当は戦闘しないでおこうとした場所なんで突然過ぎなんて事も?

何処でどの話を出そうか…物凄く悩みどころです最終章。ある意味通常の章より難しいかも……だって小説完結までかいた事がないんですよぉ〜〜(爆)

しょっぱなからこんなあやふやで良いんでしょうかこの作者。
っていうかここでセッド…黄龍が出ると思った方いますか?思った方は素直に手を上げてくださいね〜(マテ)

それにしても…ここまでかいてゼーちゃんの性格がようやく固まりました(遅!?)っていうか初めの方消したい…;やばいよ!雰囲気が全然変わってるー!!暇があったらリメイク書きたいけど時間と気力が許してくれないよぉ(コラ)

では、少々暴走気味木賊ですが…終章のt&sをとくとお楽しみください…


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