truth&sincerity
トゥルース&スィンセラティ
第四拾五話『有り難う』
「あっ」
マリードがいきなり声を発したかと思うと、ごそごそとベータの持っている袋を漁り出した。
きっとアレが荷物なのだろう…心配そうにミューが近づいた
「どうしたんだマリード?」
「えーっと…あったっ!」
ミューをそっち退けてマリードは見つけたものを手にもち、オレのほうへてとてとと歩いてきた。まぁ、走れば倒れるから無理に急げとは言わないが…
そう言えば…マリードアレからもまだ運動しないんだろうか…
「この本を…」
マリードは一冊の本を差し出す。
俺はこの本を知っている…そうだ、これはアティックの書庫にあった破れた本。
意味深なところで途切れやがって…色んな意味で記憶に残っている本だった。
その本は今ではもう修復されており、裏表紙も破れた最後のページではなく、ちゃんとした裏表紙だった。
「どうしたんだ?これ…」
「マゼスに巣食っていた大手裏組織の建物内にあった…おそらくパイが同業者に頼んで盗んできたものだったんだろう。今日ここに来た理由はそれを渡すためでもある。」
セッドが言う。おそらく裏組織を潰したのはセッドだろう…彼女は元暗殺者。その実力はマゼス一…いや、樹の大陸一かもしれない。
パイが盗んだというのなら話もわかる。あの本はエターナについても書かれていたのだから
オレはページをめくった。
闇の民は一つの異なる光の種族に手を貸した。それが・・・
光の民・インス
目がさめた
清々しいといえば清々しい
夢を見ていたような気がする
楽しいとも、怖いとも思わない夢
そう言う夢にかぎってすぐに忘れてしまうものなのよね
そう。私は夢を覚えていない。何かひっかかるんだけど…ね
覚えてないものは覚えてないんだもの…仕方ない仕方ない
さて、「起きよう」かな…
「シータっ」
「おはよう〜久し振りに良く眠れたわ〜〜」
「だろうね。丸一日眠っていたんだから…」
え?まる、丸一日!?
あたりを見回す…って…森?
木漏れ日がちかちかと光る森の中
「バーリィから離れたの?」
「あぁ…もうあの国には用は無いからね」
ゼータが優しく微笑みながら言う
思わず素で流してしまいそうな話を必死にせき止めて
「ちょ、ちょっと!プシーさんといなくていいの!?ゼータの旅の終着点はあそこでしょ!?」
「違うよシータ…俺は、君達と会った瞬間から終着点は変わってしまったんだ…」
頭に疑問符をたくさん並べて…困ったあげく私は兄さんを見た
兄さんも優しく微笑み…じゃなくて乾いた笑み?かな?アレは…
「エータ、その顔はなんだよ」
「お前がいるとシータの料理を独り占めできなくなると思ってなぁ…」
「……怒るわよ兄さん」
全く関係ない。兄さんに同意を求めた私がバカだったわ
兄さんなんて無私もとい…無視無視
さて、話を戻してっと…
「ゼータ?」
「俺は決めてたんだよ。自分のすべき事が終わっても…シータとエータについて行くって。自分だけ用事済ませてそれじゃぁさよなら、なんてずるいじゃないか。」
「……ゼータ…」
「それに俺、エータとの約束が残ってるしな」
「約束って?」
私が質問しても、二人とも笑うだけだった
なによ、なによ二人してっ!にやにやにやにやにや笑ってくれちゃってぇ…
もーっ!私だけ仲間はずれなんてずるい!!
「教えてよ〜!!」
「男同士の秘密だ!な、ゼータ」
「…は、はははっ」
その日は今まで旅していた中で一番楽しかった日かもしれない
思い出の一日…私はこの日を一生忘れない
これから、何が起こっても…
「お前は残れ」
「どうしてだよ!ゼータ兄ちゃんは連れて行ってあたいはつれて行かねぇのか!!」
街を出る時だった…
シータを背負って、今から次の目的地へと行くオレをイオタは引き止めた
引き止めた?言い方が違ったかな?
"駄々をこねた"とでも言って置こうか
「お前には家族がいるだろう」
「ゼータ兄ちゃんにもいるじゃねぇか!」
「お前はまだ子供だ」
「うっ!?」
盲点だったのだろう。イオタはあっさりと口を閉じた
こうなればオレの勝ちだ…。
「今から行くところは今まで以上に危ない。今まで言ってきた王都と違って全くの未知の場所だ。何が起こるか解らない…だからお前は自分の国へ帰れ」
「でもっ!」
「面白そうとかで行くところじゃない!」
怒鳴った。敵以外に…久し振りに。
イオタはビクッとして顔を俯かせる。
…ちょっと言い過ぎたかな…?だけど、ついてこられちゃこいつの為にならないしな
「違う…」
「?」
「面白そうだったからなんて理由じゃない!」
「お、おい…イオタ??」
イオタが顔を上げた。
瞳から流れる水………
「絶対帰ってこいよな!!絶対だぞ!ようが終わったらまずあたいのところに来い!!」
「…???あ、あぁ…」
「あたいは待ってるぞ!!10年経とうが20年経とうが…そっちのほうが都合いいからな!!」
「は?」
「い、いや…違う。と、とにかく待ってるぞ!なるべく早くな!!」
「あぁ。そのくらいわかってら」
一頻りイオタは話すと涙をぬぐってオレとの逆方向に走り出した。
そして一回振り返って…
「絶対だぞ!!」
釘を打った。
「あぁ!!」
また会おう。
全てが終わったら…オレが成長して、お前も成長したら
お前の行動には一つも悩まされてたが…お前はオレたちの中で楽しみを与えてくれた
ま、悪いところもそれに勝るぐらいはあったけど…今は水に流しといてやるよ
オレが帰っていく頃にはもっと成長してろよ
心も…身体も。
『時は満ちた』
限りなく黒に近い灰色の髪をした彼女は呟いた。
聖なる言葉を…
『500年もの時間をかけてようやく清算されようとする過去の過ち。しかし、これでいいのだろうか?彼女達には何も罪は無い…彼女達にさせていいのか?いや、彼女ら以外にはできのことなのだが…これではあまりにも可哀想。
今ならまだ間に合う、清算までには…
止めるべきか、否、そのまま清算させてしまうか…考えさせてもらおう
そして…彼女達も考えて…彼女達にも選ぶ権利はあるのだから
できることならば誰も悲しまなければいい…
しかし、それが出来ぬのだから…
過ちは、過ちによって拭い去らなければならない
こんな世界を創った私を許してくれとはいわぬ
私だって…悲しい思いは…もう、したくないもの…』
白虎の章 第四拾五話 END
作者の後書き
あ、終わっちゃいましたね白虎の章…これ書くのに一〜二ヶ月しかかかってないんじゃないだろうか?…なんがずばずばーっと書いちゃいました。おかげで内容無茶苦茶だったかもしれません…ごめんなさい;
もしかして今章で謎増えました?張り切りすぎたら何もかも中途半端になってしまったかもしれません。
いろいろ忘れかかってた事とか記憶のふちから掘り出してイロイロと書き加えてます。
実のところ。食炎伝説ってば私の中でいっぱい変わってるんですよね…今からも変わるかもしれないし…最後まで侮れませんね。
イオタ姫とも別れていよいよラスト。
ガンマさんとシグマさん。ちゃんと見つかるでしょうか?このまま見つからないって終わり方もいいかもしれないしね(笑)あぁ!シータ!魔法撃たないで!
エータとシータの見た夢とか…ねぇ?って言うかもう深読みして最後解っちゃった人もいるかと思われますが……今は秘密でお願いしますね?ね?(汗)
さて、BGMはそのままに!(謎)SSS前代未聞の長期連載小説に幕を閉じる日がついに!
ではここまで付き合ってくださった皆様。覚悟よろしくお願いしますねv
水浅葱 木賊
ろう・ふぁみりあの勝手な戯言〜
と。いうわけで、白虎の章完結です。
この章は、ゼータ=リトゥール率が高くて、使い魔的に大満足でしたッ!(そのことで言いがかり的な文句もいいましたけど(自爆))。
・・・い、いや、別に「ゼーちゃんが大活躍してればなんでもオッケーさぁ♪」ってわけじゃないッスよ!?
物語では、エータさんとシータさんの両親やら、食炎伝説やらの話が一気にまとまったって感じでしたねぃ。
・・・とはいえ、まとまったーつっても、まだまだ解決には至ってないようですけど。
それは最終章に話を譲るってことで。
さて、今回の話。
イオタさんです。
ええもう、彼女です。つーか、イオタさんはゼータさんの次に好きなキャラだったりして。
・・・・いや、ここでまた暴走するのもナンですから冷静に行きますけどハイ(核自爆))。
うーん。イオタさんとの別れ。
むーん(って唸ってばっかだな自分)。どうにもこういうシーンって苦手ですねー。
嫌いってわけじゃないとは思うんですけど、「弱い」んですー。泣けますよぅ(涙)。
成長したイオタさんと、エータさんの話を見てみたいな、とか思う今日この頃。
さてさて、話の最後に出てきた誰かのモノローグ。
安心してください、オイラは全然、最後がわかりません。
なにせ、パイさんがラスボスだと思ってましたから―――あ。
あー、もしかしてもしかするとアレっすか!? アノ人がラスボスっすか!?
だとしたら、意外といえば意外かもしれないけど、王道と言えば王道な展開かーっ!?
とか、意味深な言葉を残しつつ、ここら辺でー(長いなァ、今回の戯言)。