truth&sincerity
トゥルース&スィンセラティ
第四拾参話『光の矢』
「青春だな…だが、君たちのようなガキにやられる私ではない」
パイが剣を持っていない左手を突き出した
「吹き飛べ」
くんっと何かに引っ張られたような感覚が襲ったかと思うと、そのままオレ達は後ろへと吹き飛ばされていた。何が起こったのか。もちろん、オレもゼータも解っていない。
魔法か?
「お前ーっ!!試し斬りとか言っておいて魔法使ってるんじゃねぇ!!」
「誰も切るだけとは言っていないだろう…それに、ゼータにはもう一度帰って来てもらわんといけないのでね…ゼータとは戦いたくないのだが?」
まだこんなこと言っているのか…こいつは
もちろん。ゼータの答えは決まっていた
「俺は…戻る気など無い!!」
台詞を言い終わるが早いか、ゼータはパイへと向かっていた
は、速い!!
「くっ!!」
キィィィィンッ!!
とてつもなく鋭く、高い音が響く
耳が痛い…思わず耳をふさいでしまうような、そんな音だった
「何だコレは!?」
剣からは光が発せられていた。それは段々大きく…
駄目ッ!!
「クッ!!」
交差した剣を先に弾き返したのはゼータのほうだった
たったあれだけの動作なのに…ゼータの額には大量の汗が湧き出ており、汗は重力に耐え切れずぽたぽたとしずくを地面に落としていった。
コレは…疲労による汗ではない?
「おい…ゼータ、大丈夫か…?顔が青いぞ?」
「大丈夫…さっきの光…なんか不気味な感じがして」
ゼータはあの光に強い反応を示していた
あの光は何に反応したのだろう?いままでゼータのあの剣は何度も他の剣と交じり合った事はあったが…あのように光り輝き、音を放つと言う事はなかった
「ゼータ…お前は少し休んでおけ…後はオレが…」
「嫌だ」
「……は?」
「嫌だ…俺は…俺自身にも勝つためにアイツに挑んでいるんだ…俺がアイツにつかまったのは俺自身が弱かったからだ…俺はエータ達と旅に出て少しは強くなったと思う。昔は勝てなかったアイツにも勝てると思った。
俺が戦う理由は…アイツに復讐する為、そして俺自身に勝つためでもあり、俺を試すためでも有るんだ!!」
ゼータの決意は固かった
こいつは…今まででもとても強いと思っていた…
だけど、それはオレの中だけの評価であって…ゼータ自身は違っていたんだ
ゼータが初めて戦った相手がこのパイなのだろう
そして初めて負けた相手なのだろう
だからゼータは自分が弱いと思ってたんだ
身を守る為に鍛えてきたオレとは違い…ゼータは初めからパイに勝つためだけに鍛えてきたのだ
アティックを襲った巨大なドラゴン
愛する人の為に戦う暗殺者セッド
恨みで我を忘れた死霊使いタウ
彼らとの戦いでゼータは確実に強くなっている
それを試したくて仕方が無かったのだろうか?
それならオレにはゼータを止める権利など無い。あるはずが無い
オレはゼータに向かって苦笑を浮かべた
オレは…最後までゼータには勝てなかったというわけだ
「その意気込み買った!」
「???」
「お前には負けたよ…でも…」
「でも?」
「こいつを倒して…お前を縛るものがなくなったとき…オレと一回戦え」
「えぇぇ!?」
「オレの今後の目標だ。お前を超える」
「………わかったよ。」
オレは会話が終わるとパイを見た。
今度こそは剣を振るうつもりなのだろう、左手は剣の柄を添え、両手もちをしている
こっちから来るのを待っているのだろうか…?
それなら望みどおりこっちからいってやろうじゃねぇか!!
「地光系聖剣術……」
そこまで呟き、オレはダッシュをかけた!
そして相手の間合いの一歩前まで来るとそこで剣を振り下ろした!!
「アースクラッシュ!!」
「なにっ!?」
剣をめり込ませた地面が弾けとんだっ
シータが使う魔法のように。
地面に敷き積もった瓦礫が爆風で吹き飛び、パイを襲う
しばらく土煙があたりを支配した…
オレはひとまずふうっと溜息をついた
「このぐらいじゃ死なねぇだろ…どうせ魔法の盾でもはって…!?」
戦闘再開は思ったより速かった
さっきの攻撃は相手への挑発…魔剣術の逆である聖剣術を使ってみたのだが…
その効果はあまり無かったようだ
「スリサズィサ!地に足を踏みしめ、左を天に仰ぐ、右を前に突き出し、その吐息は魔を放つ!」
爆煙の中より聞こえてきたのは呪文の詠唱。
続いて出てきたのは金色の光だったっ!
「なっ!?」
その光は体が地と接する部分を包み込み、そして…
「動けないっ!!」
「ホールダース。地属性の精霊魔法…その名の如く『足止め』の魔法の事だ」
いつの間にか後ろにいたのはパイ。間髪入れずに彼は剣を振り下ろす!
や、やべぇ!!?
「エータッ!!」
キィィィィィィ――――――ッ!!
目の前をさえぎったのはゼータの影と先ほどの光だった
「お、おい!ゼータ、大丈夫なのか!?」
「……俺は大丈夫……は、速く逃げろ!!」
「んな無茶苦茶なっ!!」
ゼータはそう言ってくれるものの…逃げる気が満々なオレもそれは体が許してくれなかった。
さっきの魔法はまだ効いているのである…
そう言っているうちにも光は大きくなっていくばっかりだった
やめて…もう…やめて!
駄目!!
「―ッ!!」
「ど、どうしたんだゼータ?」
「いいから逃げろっ!!」
げしっ!っとゼータがオレを蹴飛ばしてそこからどかした。
その拍子に魔法も解けたようで、…はじめっからこうしてくれれば良かったものを…
「ゼータ!手を離せっ!!」
「!!」
ギリリリリッ!!
焼けた鉄のこすれる音がした後、光が止んだ。
先ほどと同じ状況でゼータは額を汗でぐっしょり濡らしていた。
一方パイは平然と立っている。
…一体、ゼータの身体で何が起こっているんだ??
あの光は………
「何をする!!」
「きゃぁ!!」
じっと見ているなんて出来なかった
いくら魔力を大量に消費してお荷物な私でも
何かできることがあったと思った…だからっ!!
「剣を放せ!」
「放しませんっ!!」
「お、おい!シータなにやってんだよ!!」
視線をパイのほうに戻すと、そこには必死にパイから剣を取り返そうと頑張っている妹の姿があった…な、なんて無謀な!?
パイのほうも不意打ちだったのだろう…剣のもちどころが悪く、なかなか取り返せないでいた
「その手を離しなさいよぉ…んぐぐっ」
「それはこっちの台詞だ!!」
パイがこちらに手のひらを向けた
その瞬間から手のひらにはたくさんの精霊の魔力が集まっていく
こんな至近距離で魔法を撃つ気!?
「ウルレンズナースィズィ!」
「そ、そーはさせないわ!」
そうは言ったものの私に魔法を唱えるだけの魔力は無く
ついでに言うなら呪文も思いつかなかった
だけど…
私はとっさに人差し指をパイのほうに向けて叫んだ!
月は癒しに陰の鬼なり!月峰の名において来たれ!光の矢!!
彼が呪文を唱え終わるよりも早く
一本の細い光の矢が私の指先より生まれ
パイの胸へと突き刺さった
そこで、私の意識は途切れた
「し、シータ!?」
「シータっ!!」
あぁ…遠くで声が聞こえる…
でも、今は何も聞かない…聞きたくない
…流石にもう疲れた
ちょっと…眠るわ
「シータっ!シーター!!」
「おっ!おい!そんなに揺らすなよエータ!!」
「んな事いったってシータが!」
「寝てるだけさ」
「へ?」
ゼータにいわれて初めてシータをゆっくりと見てみる。
しっかりと息はしてるし…しかも気持ちよさそうな顔で寝ている……
「今まで魔法の連続だったんだから…寝かしてあげなよ」
「うっ……すまん」
オレはシータを四神やプシーのいるところに運んでいった。
「生きてるんだろ?…パイ=ラ=エデン」
「よく気がついたな」
「胸の傷が痛むんじゃないのか?」
「あの魔法…いや、魔法に近い術…あれはどうした事か魔剣術と同じ性質のようでな…」
「!?」
「私もはじめは驚いたが…しかしあれは魔剣術独特の『幻』だった
あの娘…も、たしかインスだったな……あの娘には別の力があるのかも知れんな」
「…お前には関係ないだろ」
「あぁ…そうだな」
「エターナのただ一人の生き残り…『忌むべき者ゼータ』」
「『エターナは姿を消した―いや、亡んだのだ―自分達の罪を忘れぬ様―一人の子を―残して…』…インスの食炎伝記の一番最後の部分…だったな。これが俺だというのか?」
「黒髪、黒眼はエターナしかいない…そのような服もエターナのものだ…お前以外に誰がいる? そしてこの異型のロングソード『カタナ』は『妖刀・最期の闇』…それに間違いが無い」
「……。」
「お前の記憶の奥にあった最強の魔剣術でもう一度世界を滅ぼし…私も死のう」
「無駄だ。」
「無駄かどうかは私の目で見極めさせてもらうっ 高等魔剣術ッ」
―最期の闇!!!
「なぜだ?…何故何も起きない!!」
「だから無駄だといったんだ。」
「何故だ!何故だ!私もエターナの血を引いているのだぞぉぉぉ!!」
「まだ解らないのか?」
「??」
「その刀は…俺専用なんだよ」
「なっ!?」
「理屈なんて関係ない。すくなくとも魔剣術は…お前のように血で染まった手で放てるものじゃない!!
魔剣術は…殺す為の技じゃない!生かす為の技なんだっ!それすらもわかっていないお前なんかに………渡してたまるか!!」
―高等魔剣術っ!!――――ッ!!
第四拾参話 END
作者の後書き
お、おろ(滝汗)もしかしてワケわからん!?や、ヤバ過ぎ!!!
とりあえパイ戦終了……なのか?やばいな…後二話もあるし;足りないと思ったらむしろ多かった…;;
さてはて、ゼーちゃん。頑張ってくれましたね?って言うか主人公組の見せ場っすか?
ちょっぴりゼーちゃんのこともわかって二倍お得?(違)というか…シータが謎?今から謎作ってどうするって感じ?
あぁ…今回の後書きは「?」が多い!?作者が読者に聞いてどうするー!!
さて、ここでちょっと戯言。
パイの詠唱である「地に足を踏みしめ、左を天に仰ぐ、右を前に突き出し、その吐息は魔を放つ」なんですが…コレは昔木賊が兄から貰ったカセットテープ(古)に入っていた曲の歌詞をアレンジしたものなんですよね
…これって著作権違反?(原形留めてないからわからんだろ)
と、これ以上書くとオーバーヒートしそうなのでこれにて43話はオシマイです〜。多分
ろう・ふぁみりあの勝手な暴走ッ
う―――うをおおおおっ!
なんかもー、燃えまくりっ! 暴走半島一直線ってェ感じですッ。いや房総半島。
ゼーちゃん最高ーですっ。ブラボーですっ。いやマジでカッコよさすぎーッ。
なんかなー、正直な話、今までゼーちゃんってば微妙に冷遇されてた気もするんですよ。
いやヘボいとかそーゆー意味じゃなくて、けっこー強い部類に入るから、敵と戦っても適当に互角に戦ったり、さくっと勝っちゃったりして、いわゆる
“見せ場” ってのが少なかったような印象が(なんかゼーちゃん的見せ場って、シータさんと被って結局、持ってかれてたような気もしたし)
でもここでっ。この話でっ。
くううううっっ、有難う御座いました木賊さんッ。二倍どころか万倍お得ッスよぅっ!
(・・・もしかしたら、今までの “戯言” の中で、一番ブッ飛んでるかも)。