truth&sincerity
トゥルース&スィンセラティ

 

第四拾弐話『光の民"インス"』

 


  

 

 

 

 

ゼータが剣を持っていないほうの手で鳩尾を突いた

いつまでも術が続くとは限らないから…ゼータはそれを解ってやってくれたのでしょう

完全に気絶を止めたのを見計らうと、私はゼータに回復呪文をかけた

傷は浅いから、命には別状は無いみたい

 

「お、おい…シータ、上級魔法使ったばっかりなのにいいのか?」

「このぐらい大丈夫よ、ごめんね…オトリにするような真似して…」

「いや、あのぐらいしかあいつを倒す手は無かったから…むしろこんな俺でも役に立てて嬉しいぐらいさ」

「そんな…私は…」

「シータが居てくれたから倒せたようなもんだよ…本当にありがとな…シータ」

 

「…らぶらぶもーど突入中すみませーん」

「ぎょ!?」「きゃっ!?」

 

横からニョッと顔を出してきたのは兄さんでした

兄さんは呆れた顔をして…溜息を一つ漏らした

 

「んま、無事だって事はいいことなんだが…なぁ、時と場所と場合を考えろナ?」

「…う゛……そ、そうだ…プシーさんは?」

「あ、あぁ…さっきの戦いで数本骨を折ったらしくってな。今、玄武に治して貰ってる」

「………大丈夫なのか?」

「もちろんさ。四神の"癒し"の玄武だぞ?…ただ、当分の安静は確かだな」

「そうか…なら良いんだが…」

「とにかく今は四神たちに任せよう……

 

そうそう、それに…いまは前の敵もどうにかせんと…いかんしな」

 

それを思い出し、後ろの…パイに目をやった

彼は無表情だった

 

「オレ達の実力に驚いて声も出ないのかぁぃ?」

「………そうだな…本当に倒すとは思ってなかったからな」

「へぇ、アンタでも弱音を吐く事って有るんだな…」

「弱音?何を馬鹿な事を…」

 

パイはオレの台詞がえらく面白く感じたらしく、腹を抱えて笑った。

そして不気味で不適な笑みを浮かべるとオレ達に言った。

 

「お前等など私一人で十分だ」

 

すると後ろに置いていたと思われる…ゼータの剣を鞘から抜いた

奴が…奴が持っていたのかっ!!

 

「なんて綺麗な輝きなんでしょうね…この"最期の闇エンドダーク"はねっ!!」

「お前にその剣は使いこなせない…」

「果たして本当にそうか?」

「それが本当に最期の闇エンドダークなら…エターナの民しか使えない。そして…そのエターナはゼータ一人だッ!!」

「……エターナが一人。そうだな…"純"エターナなら君一人かもしれないな…」

 

「なんだと?」

 

「私が…エターナの血を…引いていたらどうだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「風が強いね…ユレア、今日は外に出てはいけないよ」

「え〜」

「文句を言うな!!………あー…エーティアル君元気かなぁ?」

「んにゅ?まだ未練でも残ってんちゃうん〜?にひひひひ」

「変なことと笑い方しないでよ!ただ友人として心配してんのよ!」

「ホントにぃ?」

「……焼くわよ……あら?」

「それってマゼスんとこの伝書魔機具やん」

「んーラブレターかしら?」

「ありえるけど…ちゃうやろ…」

 

「どれどれ??…………っ!?」

「うぎゃっ!いきなり立ち上がらんといてぇや!!」

「それどころじゃないッ!!首相と軍隊長を集めて今すぐ会議よ!!」

「え゛!?一体何が起こったン!?」

「話してる暇はないっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだな…君達はゼータから本来の食炎伝説を聞いているか?」

「あ、あぁ…一応は」

「なら話は早いな…私の祖先はエターナの討伐をしていたリーダーだったそうだ」

「なッ!?」

「討伐されたエターナはまず私の祖先の下へ連れて行かれ、そこから各地へ送られたと私の実家に会った伝書に記されていた

エターナの力は女のほうが力が強いらしい…そこでだ…」

「まさか…無理矢理自分の子供を生ませたとか……」

「察しがいいな。そのとおりだ」

「最低………ね」

 

「そこで生まれた子供が継いだエターナの血…薄かれど私に受け継がれているという訳だ」

「ちょ、ちょっと待てよ!エターナについての記憶はエターナ自身が消したんじゃなかったのか!?エターナの本当の力を知っているやつなんて今の世の中いないし…お前の話は信じがたい……」

「もっともだ…だが、エターナの血を受け継いでいた先祖には…エターナの力は効かなかったと言う考えは出来ないか?」

「あ…」

「そう言うことだ…私は折角持つ力を無駄にしたくないと思ってな…エターナのことを調べに調べたら…ゼータ、お前がいたというわけだ」

「……ッ」

「私の目的はエターナの力を手に入れること…そのためには…他人の命などどうでもいい」

「……外道め…」

 

「さて、話は終わりにして…お前らの身体でこの剣の試し斬りをさせていただこうか」

「……お前がその剣を使いこなせないとは断定できないって事か…あ、後もう一つ聞きたい事があるな…」

「なんだ?このさいだ…"冥土の土産"という奴で話してやろう」

 

オレは密かに間合いを開けながら…かすかに笑った。

今聞けることは聞いておこう。

ラムダが言った事…きっとアイツはこいつから教わったんだと思う

 

「"インス"ってなんだ?何のことなんだ?」

 

この問いに、彼は一瞬驚いた顔をした。

オレはそれを見逃さなかった。

 

「インスとは光の少数民族名。彼らは蒼龍のセアリュー、玄武のカゲン、朱雀のソズディナ、白虎のリィシュのような王族民族のような存在…そして…

唯一闇の民と交友関係が有った光の民族でもある」

 

「その民族が…なんで俺たちと関係あるんだよ…」

「……ラムダが言ったのか?…奴…口が過ぎたようだな…
しかし…君は親から聞かなかったのか?」

「親は今捜しているところだっ!七歳の時に母親、八歳の時に父親がいなくなったんだ!」

 

「なるほど……それでか…では教えてやろう
君はインスの末裔、そしてインスが代々守ってきた"望みの光ウィッシュライト"の後継者だ」

 

 

「「え……」」

 

オレとシータの声が重なった。

 

 

「そ、そんな…」

 

そんなことを急に言われても…そう、オレ達もプシーさんと一緒だったのだった

どうりで蒼龍達四神がそわそわしていると思ったらそう言うことだったわけか…

オレ達は父さんに…母さんに…騙されていたのか?

それともただ教わる時期が遅かっただけか?

それとも…オレにこの剣を託して自分で"真実"を見つけろといいたかったのだろうか?

解らない…解らない解らない解らない解らない………

 

「ガンマ=タグフォードは名誉など気にしなかった奴だからな…アイツ自身が英雄だろうが先祖が英雄だろうが関係なかったのだろう…

それにしても、ガンマに子供がいるとは…私も君がゼータと同行して調べるまで知らなかったな」

 

ただお父さんから貰った珍しい剣

そうとしか思わなかった剣が伝説にも残る聖剣で

そして兄さんがその使い手

そんなこと急に言われても…私はどうとも思わない

兄さんは兄さんだし…お父さんもお父さんです

 

でも兄さん自身はそうは行かないみたい

顔をうつむかせて…すっかり落ち込んでる

父さんが騙したとでも思っているのかしら?

兄さんは人一倍悩み易い人だから

今の兄さんを私は癒せるだろうか?

 

「兄さん…」

「シータ。オレには解らない。オレがそんな重役の祖先を持つ人間だなんて、父さんがオレを騙していたなんて…本当かどうかわからない…だが…何も知らなかった自分が怖いんだ」

 

「やっぱりね」

 

シータの言葉にオレは顔を上げ、あっけらかんとした表情をする

そして、シータはそれをみていつものようににっこり笑う

 

「エーティアル=タグフォードは…ちょっと鈍感で不器用で心配性な頼りない私、シルフィーア=タグフォードの兄。そうでしょ、兄さん?」

「あ…」

「ガンマ=タグフォードも…子供をほっぽいてお母さんを探す…いい人なんだか悪い人なんだかわからない変わった私の父。たとえ外で英雄やらインスやら呼ばれても、それは変わりないでしょ?」

「………。」

「回りの判断でお父さんを疑っちゃ駄目だよ…お父さんは人一倍信実な人だったでしょ?
信じようよ…自分の家族を…」

「…あぁ」

 

 

 

「話は終わったか?」

「あぁ、ばっちりさ。もう何も悩む事は無い…あとはお前の根性を叩きなおすだけだ!!」

「エータ…本当にいいのか?」

「なに心配してんだよゼータ。早くあの汚い手からお前の剣を取り返そうぜ」

 

兄さんはぱっとウィンクをした

ゼータはそれを見て安心したようにこくりと首を一階縦に振った

 

もう迷う事なんか無い

もう悩む事なんか無い

私たちは真実に向かって突き進む

後戻りなんかしたくない

だから…お父さん、お母さん

出会った時には全てを話してね

 

 

「さぁ!かかって来い!!」

「言われなくとも行ってやるさ!!シータ!お前は休んでおけ!!」

 

兄さんとゼータ

二人はそれぞれの剣を構えてパイへと向かった

過去への終止符を打つ為に

 

 

 

 

 

 

第四拾弐話 END


作者の後書き

 

前話よりちと短め…だけどここが一番キリが良かったから終わって見ました。

エータとシータの出生…というか家系が明らかになった…というのかな?

ついでにパイさんがゼータを狙う理由もチョコチョコと書いて見ましたが…なんか濃い話のはずなのに薄いなぁ(どう言う判断だ)

これでt&sの主なことは半分ぐらい明らかになったかもしれない…え?後もう半分?さぁ?(ヲイ)

兄妹の絆って素晴らしいですね〜。

うちの兄妹が大して素晴らしくないからよけいに思うのだけれども(笑)

とか書いてるうちに次って43?…もしや"らすとすぱーと"とか言う奴??


ろう・ふぁみりあの勝手な戯言〜


 はいども、ろう・ふぁみりあですっ。
 いやもぉなんというかっ。すっげぇキリが良い所で終わりすぎですよぅ!

 さてさて、光と闇。
 ここにきてやっとプロローグの「食炎伝説」が繋がったーって感じですねっ。
 エータ君の持つ剣が “望みの光” だってことは、薄々わかってましたけど、特殊人(なんだそりゃ)とまでは流石に想像しませんでしたー。

 あと、ラストのシータさんっ。
 ちょっとこのごろ、エータさんと小さな溝ができていましたけど・・・・うんうん、良い妹じゃのう。
 ウチの妹とは大違いだ(爆)。
 ・・・しかし、シータさんが兄貴の慰め方が上手いのか、それともエータ君の性格が単純なのか・・・スパッ、と立ち直る人だなぁ(笑)。

 残す謎は、失踪したタグフェード父母ですねっ。
 でもその前に、「最後の闇」と「望みの光」の対決が、激・気になりますっ!


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