truth&sincerity
トゥルース&スィンセラティ
第参拾九話『王の末裔』
「へぇ〜、感動的ストーリーだねぇ」
「良くこんな時に茶化せるわね…ラムダ=メシル=バーリィ!!」
プシーが剣を構えなおす
言うまでもなく、彼女は本気で怒っている
だがラムダはそれに動じない
それどころか楽しんでいるようにも見える
「そうか、貴方たち愚民にはこんな素晴らしいと思う感性はないんですね」
「…腐ってる…」
ラムダ自身に攻撃できないのがもどかしい…
プシーはそんな苛立ちを持っているでしょう
どんなにラムダを狙いたくとも白虎が邪魔をする
『白虎…いいかげんにしろ!!』
『……。』
蒼龍が少年…白虎に話し掛けるが、彼のほうは全く気付く気配が無い
蒼龍が面食らった顔をする
玄武もその意味がわかったのか、険しい顔をする
『白虎の様子がおかしい…』
『えぇ、まるで僕たちに気がついていないようですね』
『コレはただあの無神経野郎にこき使われてるだけじゃなさそうだな…』
そこまで言い終わると蒼龍は攻撃体制に入った
脚を大きく開き、腰を低くして右の指先を白虎に向ける
『プシー』
「…?」
『メシルはお前に任せたぞ』
「え?…えぇ、解ったわ…でも"メシル"って…」
プシーはそこまで言ったが…続きは聞かなかった
「蒼龍!あたいはサポートするぜ!」
『悪いがこいつには蒼龍術は聞かない!イオタは下がってろ!』
イオタは自分のやる事がなくなって膨れっ面をする
ややあって…二人の会話が終わって少しの間があく
そして、何を合図にしたかは解らないけど…
二人は一斉にそれぞれの相手へと向かった
『日ごろの恨み、ここで晴らしてやるぜ』
『………。』
ラムダは丸腰だった
どうせ白虎が全てやってくれるのだろうと思ったからだ
しかしこっちのほうが人数の多い今、ラムダにとって絶対不利であった
「覚悟ッ!!」
ぎぃん!!
鈍い金属音が鳴る
さっきも行ったとおりラムダは武器を持っていない
ありえない音だった
しかし、彼は武器を持っていた
「私だって一応白虎術の一つや二つ使えますよ?」
イオタが使える蒼龍術と同じように、彼もまた「金」属性の白虎術が使えたのだ
しかしプシーは勝ち誇った笑みを浮かべる
「でも、貴方が武術に長けているとは思いがたいわねぇ」
「これでも一応騎士団長直々に稽古付けてもらってるんですが?」
プシーは軽く舌打ちをした
『いつもより動きが遅いんじゃないのか!?』
ヒュッ!
小柄な白虎の身体に拳が打ち込まれる
大人の姿の蒼龍が子供の姿の白虎に拳を打ち込む姿はあまり良い風には見えないが…しかし決して蒼龍が有利な訳ではない…それはみてわかる
白虎がつけた蒼龍の傷は普通の傷ではなかった
腐敗したようにどす黒い血…いや、あれは血と言えるのだろうか?
それが服やマントにべっとりとついていた
『へっ…操られてるほうが良いかもしらねぇなぁ…』
白虎が剣を大振りに横に振る
蒼龍はそれをしゃがんで避けるとそのまま地面をけって白虎の懐に入り込む
『いつもの嫌味口がねぇからな!』
脚を大きく上げて白虎の顔に蹴りを入れた、やはり小柄な白虎は思い切り吹き飛ばされた
ハァ…と息を整える蒼龍
こっちはこれで勝負がついたな…と、思ったとき。白虎はむくりと起き上がり、またもや蒼龍に攻撃を仕掛けた
『…………ったくしつけぇよお前!!』
「う、く…」
「兄さん!?」
『終わったわよ。エータってすごいわね、生きたいと思う思念が強かったから簡単ですんだわ。お疲れ様』
私は起き上がったところの兄さんに思いっきり抱きついた
兄さんはまだ寝ぼけたような顔をしていたけど…
そんなことはお構いナシだった
「シータ…お前、泣いてただろ…」
「当たり前じゃない!!兄さん死んでたのよ!泣かずに居られるほうがおかしいのよ!」
「ごめんな…お前を一人にしない…悲しませない…おいていかれることの辛さ、誰よりも知ってたはずなのに…」
「…っ!!そんな台詞…もう…無私…もとい無視よッ!!兄さんが帰ってきてくれたから…もう…いいの!!」
涙を見られるのが恥ずかしくて顔を兄さんの胸に埋めた
かえってきてくれたのが嬉しかったから
もう離さないって、放っておかないって決めたから
「ティアラ…」
「?」
「ラムダのティアラを壊せ、アレが…元凶だ」
傷はふさがっているものの、病み上がりの身体で兄さんはフラフラと立ち上がった
私は何度も静止させようとしたが…無理だった
落ちてあった剣を拾い、構える
「ファイド…力を貸してくれ…」
兄さんのその言葉に反応するように、剣の先端にポッと小さな炎がともった
その炎は段々と大きなものへと変わっていき、最終的には剣全体に行き届いた
剣を握り締め、ダッシュをかけてラムダに突進した
「炎光系聖剣術ッ!!」
―パーガトリィッ!!!
ガシャンッ!
炎を纏った剣はラムダのティアラを砕いた
しかしというかやはりというか…
それだけでは炎は収まらなかった
「あああぁぁぁああぁぁああぁぁぁッッ!!!」
ラムダは断末魔を発しながら倒れこんだ
炎はラムダの全てを包み込み…そしてやがては消えていった
燃えるもの全てを燃やし尽くしたという感じで…
しかし妙な事に、ラムダには焦げの一つも入っていなかった
すすも無い…
確かに今ラムダは炎に焼かれていたというのに…
「兄さん…?何したの?」
「こいつの罪を焼いてやったのさ」
「…???…そうだ!白虎は!!」
『くぅ…あぁぁっ!!』
『お、おい白虎!!』
ふと白虎のほうを見ると、白虎は頭を抱えてうめき出した
すると後ろから玄武が出てきて白虎の頭をそっと撫でた
よくみると玄武の手が淡い水色の光に覆われているのがわかる
バシッ!!
呻き声が止んだかと思うと、白虎は玄武の手を払いのけた
そして無愛想な顔をゆっくりと持ち上げた
無表情ではあるが、さっきと違いどこか生気を感じさせる顔になっていた
「少年」の姿には似合わしくない顔かもしれません
『触るな玄武、錆びるだろ』
「錆びるッ!?」
『ま、まぁ…白虎が無事でよかったです』
「オレの突っ込みは…」
「無私…もとい無視ですわv」
オレの愚痴を謀ったのようにシータが言葉を言った。
その動作がなんか無性に面白く思えて、オレは思わず微笑をこぼした。
『それにしても…まさか操られてるとはな…』
『申し訳ない…四神たるものが人間に操られるとは』
「まぁまぁ、元に戻ったんだから良いじゃない♪ね?白虎君」
プシーが剣を鞘に戻しながらにっこりと笑う。
まぁ、確かに一件落着といったところだからな。
…っと?
「ん?こいつ女じゃないのか?」
「何言ってるのよ兄さん。男の子でしょ?」
『二人には悪いが…白虎には性別が無いぞ?』
はぃ?
「でも蒼龍には有るよな?」
『まぁ、白虎以外は"一応"あるな、たいした意味は持たんが…』
『創造主は気まぐれだからね』
創造主といわれ、ふとセッドを思い出す
…気まぐれといえば気まぐれですね…
一人で納得し、とりあえず私は性別の事は忘れようと思った
気まぐれな創造主か…
そのうち神だけじゃなく人にまで両性生物創るんじゃないだろうかとか
一人不安に思ってとりあえず今のことは忘れようとした。
「はっっ!くしゅん!!」
「セッド御姉様、風邪ですか?」
「誰か噂してるのかしら??」
「さて、こいつどうする?」
オレはラムダを指差して皆に問う
はっきり言ってこいつのしたことは許せる事じゃない。
一応…オレも死んでたって話しだし…
このまま王を続けさせる訳には行かない。
「誰か代役立てるって訳にも…絶対王政の国には無理な話だからねぇ…」
「そうだな…とりあえず召喚師の末裔が居ない事にはなぁ」
プシーとイオタが言う。
白虎に聞くところによると、今の王・ラムダは昔に肉親が全て死んでしまっているらしい。
これではこいつ以外に代役が立てない…
「そう言えば兄さん。さっきのわざはどうしたの?」
「あ、アレか?アレはなぁ…」
『………。』
「ん?どうしたの白虎君?」
プシーをじっと見ている白虎の姿。
そんな白虎に少々戸惑いながら笑みを見せるプシー
すると白虎は目を見開いてこういった
『セシル…』
「へ?」
白虎は戸惑うプシーにお構いなしに「セシル」と呼びつづける。
無論、オレやシータやイオタもその意味はわからない。
が、四神達は何かを知っているようで皆驚きと"喜び"の目でプシーを見る。
『セシル…生きてたのね?』
『決定だな…』
「??何のこと?私には解らないワ…セシルって誰?」
勝手に話を進める四神。
…段々イライラしてきたオレ達人間組。
「おいっ!ちゃんと説明しろ!!」
「そーだぞせーりゅう!!あたいらにもわかるように説明しやがれってんだ!!」
いい具合に兄さんとイオタが意気投合
最近この二人仲良いわね…
そう言う事は無私…もとい無視して
すると白虎がプシーの前に跪いて言った
『その昔、食炎直後の頃…この国には双子の国王が居たのだ』
「ふた・・・ご?」
『そう、その二人のうち兄のほうだけが召喚の力を持っていた…それが』
『セシルという名前の男だ。』
蒼龍の答えに白虎が首を縦に振った
『が、セシルは国王になる一日前に死んだ…いや、殺されたのだな…弟のメシルに』
「メシル…って!ラムダ=メシル=バーリィ!!?」
『メシルは国王になったのちに領土戦争で大活躍していた…だからその英雄の名は後にミドルネームとして受け継がれている訳だ…』
「でも、セシルって人死んじゃったんでしょ?なんで私なの?」
『汝は子孫だ…セシルの』
「!?」
プシーは驚きを隠せなかった。
そりゃそうだ、今まで普通に暮らしてきたのにいきなり王族と言われても「はいそうですか」と納得できる訳無い。
プシーはとことん困り果てていた。
「わ、私はでも、プシー=リトゥール!名前も普通だし、親からも何も聞かされてなかったわ!」
『その…』
「??」
『その髪と、目の色が何よりの証拠だ… 水色がかった白髪はセシルしか居ない…』
「…そんな…急に…」
「急に言われても困ります…そうだろう? 『プシー=セシル=リトゥール』」
「誰だ!!?」
後ろから聞こえてきた声にオレはとっさに剣を構えて振り返った。
そこには男二人と女が一人、中央にいるもう一人の男を囲んでいるように建っていた。
囲んでいる三人はおそらく兵士か何かだろう…
そして中央にいる男
淡い黄色の髪に紫の瞳…頭にはバンダナのようなものをつけた黒服の男。
そいつの腕の中には…
「ゼータ!!」
瓦礫の中のはずのゼータが居た。
第参拾九話 END
作者の後書き
一件落着と思いきや〜次の相手がやってきましたねぇ(苦笑)う〜ん…また戦闘シーン書くの?うごぅ(吐血)
多分久々に「無私」連発してます、今までの分をここで返してるんでしょうか?
それにしても兄さん、一話で復活させるのは早すぎたかも……やはりここは某ゲームアニメの如く5〜10話ぐらい居ないほうが良かった?(それはしすぎ)
そしてプシーさん。あの人王族だったんですよ。ハイ。 ちなみにセシルとメシルは思いつき(苦笑)救世主って意味の「メシア」をもじってつけました。
そして必殺技「パーガトリィ」はカトリック教で出てくる「煉獄」の英単語。死後、罪人が罪滅ぼしで焼かれるところです。個人的に「煉獄」って響き好きなんでいれてみましたv
次回でとうとう40話…(汗)後10話で終わりだよぅ…なんか寂しいなぁ;