truth&sincerity
トゥルース&スィンセラティ

 

第参拾八話『生と死を彷徨って』

 


  

 

 

アイツ、感情の一部がかけていてそれを全て主人である召喚師に委ねているんだ。

忠誠信がとても高い…

…聞くところによると今の王はなにやらよくないことを企んでいるらしい…

そんなことに白虎を使われたら…それこそ滅亡を招くッ!!

 

 

 

 

そうか、蒼龍が言っていたのはこの事だったんだな。

それならあいつを助けてやりたい…

こいつはあんな外道王にこき使わされているだけなんだ。

こいつが好きでやっている事じゃないんだ。

あいつを助けてやりたい。

 

でも…どうすれば良いんだ?

術者を倒す?

白虎自身を倒す?

どちらも違う気がして仕方が無い。

ならどうすれば良いんだ?

 

オレが考え込んでいると白虎が突っ込んできた。

多少判断が遅れたもののオレは間一髪でかわすと考えるのをやめた。

 

「今は…考えてても仕方がねぇ!!」

 

とりあえず気に食わない…

 

「お前から倒す!!!」

 

オレは白虎を無視してラムダへとその刃を向けた。

ラムダが笑った。

 

刹那。

激痛。

深紅。

微笑。

無情。

 

全ては一瞬の出来事。

だがオレには全てが止まったようにゆっくりと流れていった。

 

「………ッ!!!」

 

誰かの声が聞こえたような気がした…

でも、もう何も聞こえない…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだって!!?」

「はい。たった今入った報告です。マゼスの裏組織を叩いたところ、その名前が出ました」

「…解った。ベータ、下がって良い…」

 

「どうされました?セッド御姉様」

「マリード、伝書魔機具を用意してくれ。…それで、デルタ…兄さんは今何処に?」

「えっと…確かいつものところだと思いますが…」

「解った。伝書魔機具が用意できたら呼びにきてくれ」

「…なにがあったんです?」

 

「最悪の場合……エータ達が危ないんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ!!」

 

ぎんっ!!

 

金属のぶつかる音

大量の荷物を持ったまま走りつづけていた私が

目的地で初めて聞いた音だった

 

目的地、つまりプシーさんの家

いや、今はその「跡」といった感じかしら?

 

帰ってきたときは驚きを隠せなかった

少し前まで家だったものが今は原型を留めていない

家が崩れ、それによってまわりの家まで被害が及んでいる

なんでこんな風になったのか…砲撃でもあったかのようなありさまだった

 

そこには金の長髪をした見るからに意地悪そうな奴

白髪の"少年"、驚くことに彼には猫のような耳がついていた

その無情な表情がもし笑みでも浮かべようものなら可愛いのに…とも思った

そしてその少年と剣を交えているプシー

プシーは長剣を握っていた。何処にでも売ってそうなロングソードだった

最後に、少年とプシーより少し間を置いて倒れている…兄さん

 

「シータちゃん!この子は私に任せて…貴方は自分のお兄さんをっ!!」

 

 

兄さん……?

 

「兄さん!!」

 

私は荷物を放り出して兄さんへ駆け寄った

背中から血が止まる事を知らないように流れつづけている

まだ息はあるものの…危険な状態

 

「生命を司る水…ニンフよ…汝偽りを捨て…我に力を与えよ」

 

呪文を唱えると私の手が淡い水色の光に包まれる

その手をそのまま兄さんの傷口に添えて呟いた…

 

―ヒーリングウォータ…

 

何処からか沸いてきた水が背中の傷口…そして腕の傷へと導かれる

腕の傷は治ったものの、流石に背中の大きな傷はそれだけでは治らなかった

 

「ベルカラグナズ……水の清、木の穣…癒しの調べ、母なる歌声…」

 

両手を重ね、印をつくり傷口に手を乗せる

 

―ブルールグロウっ!!

 

先ほどより強い青緑色の光が手を覆う

その手を伝って傷口へと光が流れ、傷を癒してゆく

 

癒しの魔法の最上級魔法

それが『ブルールグロウ』

これでなおらなければ………でもそんなことは考えたくなかった

全身全霊で魔力を高める

 

しばらく私の耳には何も聞こえなかった

すぐそこで戦っている二人の"音"さえも…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目をあける。

そこは懐かしい場所だった。

狭い木製の天井。

鳥の鳴き声。

そして

 

「エータのお寝坊さん。やっと起きたのね?」

 

目の前にいるのは女性。

ぼやけて見えるが…きっと凄くやさしそうな顔をしているんだろうな

だって、オレの…オレの母さんだから

 

「お父さんが稽古の時間だから早く起こせって言ったんだけど…あんまり気持ちよさそうに寝てるものだからついつい…」

「父さんが呼んでたの!?は、早く行かないと怒られるよ!!」

「ちゃんと顔を洗ってから行きなさいよ?」

「解ってるよ!…シータは?」

「シータは友達と出かけちゃったわよ?何でもお花摘みに行くとか…」

「そっか…」

「妹が居なくて寂しい?」

 

母の問いに「オレ」はめいいっぱい首を横にふった。

そっか…コレは過去のオレだ。

昔はよく父さんに剣の稽古受けて…その間はシータ、村の友達と遊びに行ってたなぁ…

 

「んじゃ行ってきます!」

扉を勢いよく開け、オレは木刀片手に外に駆け出した。

 

「…フゥ…エータやシータも今年で7歳…そろそろ潮時かしら…?」

 

潮時…?母さんは何を言っているんだ?

母さんは台所の死角にある細長い包みを持つと、外に出て行った。

何処に行くの?母さん…オレ達を置いていかないでくれ!!

 

母さん!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「兄さん…いかないで…私を…置いて行かないでよ…」

シータ?何を泣いているんだ…?

「私…一人ぼっちになっちゃうじゃない…」

泣かないでくれ…オレが居るじゃないか…

「行かないで…!」

何を…?

 

 

遅かった

何もかもが遅すぎた

私が買い物なんかに出かけなかれば良かったんだ

ずっと一緒に居ればよかった

兄さんはもう居ない…

 

誰よりも人が居なくなる悲しみを知っている

だからオレはシータから離れなかった

シータだけは悲しい思いをさせたくなかった

オレはいつまでもお前の側にいる

だから泣くなよ…な?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浮遊感。

ここは何処だ?…天国?

あぁ、オレ死んだんったな…

でもなんだろうか?この気持ちは……

 

―怖いか?

 

何が?

 

―死ぬのが…

 

オレは…死ぬことより誰かが一人ぼっちになることが怖い

 

―何故?

 

一人なんか…寂しすぎるだろう?『死ぬ』というのがまだ良く解らないからそう言う事が言えると思うんだが…オレはとにかく一人のほうが嫌だな

 

―そうか…

 

へ?

 

―オレはまだマシなほうだったんだな…

 

どう言うことだよ?ってかお前誰だ?

 

―すまないな、急に話し掛けるなんて事をして…

 

人の話聞けよ!申し訳ないと思うなら質問に答えろ!!

 

―オレは…って名前なんて聞いてどうする?

 

オレの自己満足。

 

―フッ

 

あ!てめぇ今笑っただろ!!

 

―あぁ、笑ったさ

 

む、ムカツク野郎……貴様ぁ!名を名乗れェ!!

 

―お前…自分の立場わかっているのか?

 

…………忘れてた。

 

―お前らしいな…

 

オレのこと…知ってたのか?

 

―いや、知らん

 

…………………。

 

―怒るなよ

 

呆れてるんだよ!!

 

―ははっ…威勢のいい奴だ。オレはオメガ…まぁ、もう会う事は無いだろうがな

 

会う事は無いって…

 

―有り難う少年よ。お前になら…この力、託せるな…

 

この力…?

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーんしょっと……えらい目にあったな」

『心配してきてみて正解だったわねー』

『貴方は何もしていないでしょう?朱雀』

『そーいう玄武だってそうじゃないッ!』

『働いてない二人は黙ってろ…』

 

瓦礫の山から声が聞こえた…

この声はイオタ

そして他の四神達

ガシャンと音が聞こえると、瓦礫を押しのけて声の主が現れた

 

私は…放心状態のまま動けなかった

 

「イオタちゃん!!っと…貴方達は??」

 

プシーは白虎を払いのけ、間合いを取って叫ぶ

 

「何が起こってんだよ…!なに??」

「やぁイオタクン。久しいね」

「………貴様、ラムダ!?」

「覚えていてくれて光栄だよ、そちらが君の四神かい?」

『俺はこいつの私有物ではない』

「おや?四神ってのは王に仕える犬のような存在ではないのか?」

 

『こいつ…最低ね』

『僕も同感です』

 

「……朱雀…?」

 

呟く。

朱雀…命の神…命…

 

「朱雀…朱雀…兄さんが…

朱雀!!兄さんを!!兄さんを生き返らせてぇぇ!!」

 

私は叫んだ

イオタや四神達が驚いた様子でこちらを見る

私からは視界がぼやけて…よく見えない

涙のせい

でもどうでも良かった

兄さんのことで頭がいっぱいだったから…

 

ふわりと朱雀が身体を浮かせてこちらに寄ってくる

そしてそっと兄さんの顔を撫でた

 

『…この人は…まだ死なせない…死ぬ理由など何処にも無いもの
そして…エータが死んだのは紛れもなく私達の責任

私は貴方の命を受けます…』

 

朱雀が微笑む

私はその微笑についていけず歪めた顔をする

思考回路が回りにくくなっていて

今でさえ何を考えているのかがわからない

 

ただ、兄さんが…兄さんが心配だから

今は朱雀に全てを委ねた…

 

 

 

 

第参拾八話 END


作者の後書き

 

あぅ…こんなにキャラが勝手にうごいて書いた話って初めてです;;;

気がつけばエータ君……になっちゃってるし…(滝汗)

しかもこんなところで出すつもり無かったオメガさんまで出て着ちゃってます;

そして四神集結。

もしかしてごちゃごちゃしてる?してますよね?すみません…(平謝り)

ってか即行で終わりのような雰囲気かもし出してますが…後7話は長いですよ?(苦笑)

んではこれ以上言うと恐ろしくなりそうなので後書きを終わらせていただきます…



ろう・ふぁみりあの勝手な戯言〜


「立てッ、立つんだッ、ジョー!」
「う、うおおおおおおおおっ!」
「立った! クララが立ったー!」

・・・・はっ!?
あまりにも面白すぎてつい思考がぶっ飛んでました(なんでやねん)、ろう・ふぁみりあです。

こ、この章っていままでの章に比べて、最初からスパート入ってるって感じですねー。
今までは、まずその国の王様がどうたら登場人物が並んで出てきて、ついでに双子(or双子の両親)と王族の秘密の関係が明かされるとかして。
でもって、最後の締めに入ってる・・・って、感じでしたが(使い魔の印象)。

今回は、最初からばーんと着ちゃっていやもぉなんていうかっ!
うーうー、エータ君死んじゃってなんかオメガって人が出てきたりして四神様大集合で白虎様はねこみみでっ(笑)
うー、こっから先どーなるんでしょっ。てゆーか、あと7話で終わりきれるんですかあー!?(絶叫)

 

・・・終わりきってるそうです(笑)。

 


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