truth&sincerity
トゥルース&スィンセラティ

 

第参拾七話『食炎伝説』

 


 

 

 

「ん?」

 

ふとオレは手元に一冊の本があるのに気がついた

 

「なんだこりゃ?童話の食炎伝説じゃねぇか…」

「なんだって?おかしいな…そんな本あったっけなぁ」

「あーこの本ならあたいも読んだ事あるぞ〜!」

 

イオタがそう言ってペイっと本をぶんどってしまった。

 

「むかーしむかし。光にあふれた大陸

緑あふれる大陸。大いなる故郷とも呼ばれる樹の大陸のお話しです

 

あるときとっても強い騎士さんがいました。

しかしその騎士さんは国同士の戦いにまきこまれて大怪我をしていました。

自分の仲間が居なくなって寂しくて、傷が痛くて死んでしまいそうになったとき、一人の女の子と出会いました。

女の子はその騎士さんをとても心配して一生懸命手当てをしました。

騎士さんは心優しい女の子が好きになりました。

女の子にとって騎士さんは今まで出会った事の無い不思議な格好をしていたので、そのことにとても興味を持っていました。

お話をしているうちに女の子も騎士さんが好きになりました。

女の子はとても嬉しそうに近くにあった木に手を触れました。

するとどうでしょう。木の声が聞こえてくるではありませんか。これには騎士さんもビックリしました。

しかし木とおしゃべりをする女の子をみて自分の心も気持ちよくなりました。

騎士さんはこのことを自分の国に帰って誰かに知らせたいと思いました。

 

 

その日のうちに騎士さんは帰ってしまいましたが、女の子は寂しくありませんでした

また来ると信じていたからです。

 

それから少し経って、騎士さんはもう一度女の子の前に現れました。

しかし騎士さんだけではありませんでした。

騎士さんの国の王様も来ていたのです。

 

王様は女の子に木とおしゃべりをして欲しいといいました。

しかし女の子は怯えてそれをしてはくれませんでした

 

王様はそのまちの長老様と会ってお話をしました。

『どうか私達の町にきてくれませんか?』と

しかし長老様はそれを断りました

『私たちの力はたくさんの人たちに見せる力ではない』と

 

それに怒った王様は無理矢理そこの人々を連れ去ってしまいました。

 

最初は王様が一方的に人々を使っていたけれど。

そのうち好きなように使われていた人たちも怒ってしまいました。

 

そんなとき騎士さんは王様や人々を一生懸命止めようとしました。

騎士さんは争い事が嫌いでした。

しかし、とても怒っていた王様は騎士さんの言う事など聞き入れず、騎士さんを殺してしまいました。

 

女の子は一緒にお家を探してくれた騎士さんが大好きでした。

その騎士さんが死んでしまった事を聞いてしまった女の子は深く傷つき泣いているました。

町の人たちは女の子が敵のために泣くことに酷く怒り、女の子を真っ暗なお部屋に永遠に閉じこめてしまいました。

 

騎士さんと女の子は本当はとても大きな力を抑える存在でした。

その二人がいなくなってしまったとき。それぞれの大きな力は止まらなくなってしまい…

それぞれの光と不思議な力で全てがなくなってしまいました。

 

不思議な力を持った生き残った人たちは、この悲しい出来事を二度と起こらぬようにとすべての思い出を消してしまって、そして自分たちも消えました。

そして思い出がなくなった残った人たちは新しい国を作ろうと、そして新しい楽しい思い出を作ろうと頑張りました

この悲しいお話を、みんなは「食炎」と呼びました。

それは怒った王様とそれを静めようとした時に昇った炎が、まるで全ての国を食べていく様子からそういわれたといいます

そして女の子は今も真っ暗なお部屋に閉じ込められているといわれています。

 

おしまい。」

 

 

「……待てよ…これ、ただの童話じゃないぞ?」

 

一般に光と闇の暴走は領土争いから来ているといわれる。

闇が光の域に入ったことで戦争がはじまった。

そしてそれに対するゼータの聞いた話では、

光が闇の力を手に入れようとエターナの討伐を行い、独立戦争を起こす。

この話はどちらかといえば後者だが、童話のせいもあり少し個人的な話になっている。

一人の少女が引き起こした災い。

騎士と少女の「大きな力を支える」という能力

 

だめだ。ますますわからない…

 

オレは手に汗を握ってイオタから本を返してもらい、表紙を見た。

古ぼけた表紙からはこの文字だけが読み取れた

 

- 食炎伝説 -

インス童話抜粋

 

インス……?

 

 

 

どがぁぁぁっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「たくさん買いましたね〜」

「えぇ…お、重いから早く帰りましょうか」

 

私たちは買い物を終えて家に帰ろうとしていました

またしばらく家にこもる事を予想してたくさんの食料を買ったらとても荷物が重くなって…

徴兵令ってのがなければ問答無用で兄さんを荷物もちにさせていたのに…

何から何まで不便な町ね

 

「それにしても………っ!?」

「どうかされました?」

 

急にプシーさんの声が途絶えたので反射的に振り返る

そこには険しい顔をした当の本人

私には何が起こったのかが解らなかったけど、プシーさんがこれほどの顔をするぐらいなのだから何かあったのでしょう…

しかし、私が話し掛けてもプシーさんは反応しませんでした

必死に何かを感じ取ろうとしている…そんな感じにも思えました

 

「家の方角から爆発音が聞こえたわ!!」

「え?あ?ちょ、ちょっとー!!」

 

再び声を発したかと思うと、今度は急に駆け出した

……荷物も持たずに

 

これ、私が持っていくの…?

 

緊迫した雰囲気とは裏腹に、私の頭の中には荷物の事しかなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆煙の中、煙から必死に逃げ出そうと駆け出した。

途中にある瓦礫に気をつけながら、しかし逃げる事が優先されているようで意味のない動作だったかもしれない。

脚を何度か瓦礫にぶつけ、ようやく煙の外に出た。

 

そこは瓦礫の海だった。

何が起こったのかはまだ解らない。

だがこれだけは解る…

何者かがこの家を中心に何らかの攻撃を加えたこと。

そしてそれによって近くの家が巻き添えを食らったこと。

…ゼータとイオタを……

 

一体誰がこんな事を…………ッ!!?

許さない!!

 

「任務完了…次の支持を待つ…」

 

 

何処からとも無く高く小さな声が響く。

声の質からして子供の声だろう…

感情の全くこもっていない言葉。

それは今のオレの怒りに触れるのには十分すぎるものであった。

 

「誰だっ!!」

 

振り返るとそこには半目を開いた白髪の"少女"。

白いワンピースのすそが塵の混じった風で舞う。

視線を上に戻す…白髪、光の入りようによっては水色にも見える白い瞳。

そして…猫のような白い毛並みの耳。

 

一瞬、ユレアを思い出す。

彼女は猫の血が混じった獣人だと聞いたが、もう少し猫の血が人の血より勝っていればこんな感じになっていたかもしれない…そう思った。

しかし、少女はユレアとは全く違う印象を受ける。

少女からは何も感じない…

まるで感情が欠けているように見えた。

 

そこまで考えて思い出す。

自分が"怒っていた"ことを…

 

オレはその少女を睨み返す。

 

「お前は誰だ!!」

 

オレの問いに彼女は答えない。

少女はこっちを向いてはいるものの…焦点が合っていないのか?

視線が交わっているとは思えなかった。

 

「おいっ!!」

「これだから愚民は困る。人にものをたずねる時はまず自分から名乗れと教わらなかったのかい?」

 

声の主は少女の後ろから現れた。

金髪を腰まで伸ばし、金銀の装飾物、服を身につけた見るからに貴族の野郎。

平民から見る貴族の悪いイメージの全てを習得している…。

彼からはそんな感じがする。

むかつく奴No.1に間違いなく入るだろう。

 

「ね?エーティアル=タグフォード」

「!?」

「何で名前を知っている?って顔してるねぇ〜。
私はラムダ。ラムダ=メシル=バーリィ

言わなくても解ると思うけど……一応ここの国の王だね」

 

嫌味口満開の台詞を淡々と続ける「ラムダ」。

王。

こいつはそういった。

しかしオレが今まで見てきた「王」とは果てしなく違っていた。

 

ナヴェーナ

モティクト

イオタ

デルタ

マリード

ファイ

 

皆それぞれ違う国の王でも、「優しさ」は変わらなかった。

今まで上の者に興味の無かったオレも…

少しは貴族を憎んでいたオレでも…

今まで会った王たちはオレの中で決して忘れられない大切な存在になっていた。

オレの王に対する気持ちは、少なくとも今まではいい印象ではなかった。

そう……今こいつを思う気持ちこそが…

昔のオレが王に対して持っていた気持ちだ!!

 

「お前が王だと?フザケルな」

「ふざけているのはどっちなんでしょう?
貴方こそ何故平民の暮らしなんてしているんですか?私には到底解りませんねぇ」

「お前みたいな王にはわかんねぇだろうなっ!オレ達国民の暮らしなんてな!!」

 

と、ラムダは急に表情を変えた。

「疑問」と「呆れ」の表情に…

 

「…何を勘違いしているんです?貴方だって元々は王族のようなものでしょう?」

「はぁ?」

「貴方は"インス"の末裔でしょう?…それともそれすら知らないのかい?」

「いんす?…インスって…おい!何のことだ!!」

「はぁ…どうやら自分の"立場"というモノを知らないようですね…可哀想な事だ」

「だから!な……ッ!!」

 

もう一度。前の台詞を繰り返そうとしたその時。

オレの左腕を何かがかすめた。

ぬるりと生ぬるい液体がゆっくりと腕を伝い、地面に滴り落ちる。

数秒間を空けて右手を左腕に持っていく。

鋭い何かで斬られた痕があった。

 

「しかし、あいにく貴方に構ってる暇は無いんですよね。
とっとと片付けちゃいましょう?」

「御意」

 

無愛想な声が後ろから聞こえる。

さっきの少女だった。

この傷は彼女がつけたのだろうか?

否。

彼女は武器を持っていない。

否。

……武器ならあった。

 

彼女の周りに「金の剣」が幾つも浮かんでいた。

同じような光景を見たことがある…シータだ。

あいつの魔法で武器や盾を造り出す魔法というものがあった。

オレは魔法というものはよくわかんねぇ。

でも…あの少女の周りに浮かんでいる金の剣は、間違いなく魔法で出したものだろう。

そう、さっきオレの腕をかすめたものはあの中の金の剣のうちの一本なのだ。

 

腕の激痛によりその思考は一気に現実へと戻された。

目の前には既に金の剣が迫ってきている。

今度はその剣を素早くかわし、相手と更に間を取る。

 

腰にさしていた剣を抜き取ると、「少女」と面と向き合った。

相変わらずその瞳からは何も感じられない。

 

ふと少女が右手を振り上げた。

すると金の剣一箇所に集結し、一本の金の大剣と化した。

少女はそれを軽々ともつと、無表情のままオレに向かってきた。

 

キィンッ!!

 

二本の剣は音を立てて交差する。

しかしすぐに互いに剣を弾くと相手の間合いから飛びのいた。

 

強い。

 

直感だった。

少女は、『少女』とは思えない力を持っていた。

もしかしたらオレより上かもしれない…

さっきの魔法といい、とても普通の少女とは思えない………

…なら?

 

「……もしかして…こいつ…」

 

オレは解ってしまったかもしれない…彼女のことが

なぜなら、今まで会ってきた「あの人たち」に似ていたからだ。

そして、あの人たちが言っていた特徴。

そうだ…。こいつが…

 

「白虎…か?」

 

「我が名は四神白虎。我が主の命により汝の命を頂く…」

 

無情な声が響いた。

 

 

 

 

第参拾七話 END


作者の後書き

 

いきなり戦闘なんですよ奥さん(誰だよ)

そう言えば連載当時に比べて文字数が多くなったなぁとか…;間もあまり空けないようにしたし…内容が行き届いてるかが心配どころ(苦笑)

冒頭の童話。かなり悩みました。3回ぐらい書きなおしました。話がかみ合わなくなって消そうかと思いました。でも書きます。一応重要(?)なんで……

そしてラムダと白虎の登場!

いや、ラムダはとことん私の嫌なキャラに仕立て上げてます(笑)こいつだけは嫌われても構わないなぁとか思ったり…

さぁて、ゼータとイオタ、どうなっちゃったんでしょうね?(半分忘れてた)

日に日に主人公らしくなってきたエータ君。

まぁ最後の10話構成章なんで頑張ってもらいましょv



ろう・ふぁみりあの勝手な戯言〜


・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っは!

もー、「面白い」以外にいうことないですっ! 冒頭の童話から始まって、ラムダ&白虎さんの登場!
いやいやいやっ、もー今回は隅から隅まで楽しめましたっ。

特に、エータ君が「白虎か?」と少女の正体を看破したシーン!
思わず「うおおおおおっ!? そーか、なるほどっ!」とか叫んでしまいましたッ!

サイコーに面白すぎましたっ。
とゆか次回、どんな展開を見せてくれるのかメチャクチャ楽しみですー!!


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